大家族のお兄ちゃんは恋なんかしてる暇はない!

丸井まー(旧:まー)

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37:笑顔がいっぱい

 デイビッドにも手伝ってもらって買い溜め祭りを終わらせ、皆で手分けして家の大掃除も済ませた。
 今日はいよいよ年越しの日である。

 リードはいつもの時間に目覚めると、着替えてから階下に向かい、顔を洗って一回目の洗濯を仕掛けた。
 今日はご馳走をたくさん作って夜更かしパーティーだ。
 毎年恒例の鶏の丸焼きも作るが、マリアンナとデイビッドが普段は中々作れない料理をたくさん作りたいと張り切っている。二人とも本当に料理をするのが好きみたいだ。

 今日の朝食当番はリードなので台所へ向かい、早速朝食を作り始める。大量の野菜を刻んでスープにして雑穀を入れる。いつもより少し多めに肉を入れた。今日は年越しの日だから特別である。
 シェンリーの離乳食が始まったばかりなので、シェンリー用の離乳食も作る。大量の卵で、ちょっと贅沢にチーズ入りのオムレツを作っていると、マリアンナが台所へやって来た。


「おはよう。リード君。ほんとに朝早いのねぇ。とてもいい匂い。うん。目の下の隈と顔色もかなりマシになってるわね」

「おはようございます。マリアンナさん。こんなに寝かせてもらったの初めてです。すごく身体が軽いです」

「うふふ。よかったわ」


 マリアンナには客室で寝てもらっている。ここ二年はないのだが、以前はたまに祖父オースティンの飲み友達が来て泊まったりしていたので、客室はそのままにしてあった。

 シェンリーを抱っこしたダービーが台所へやって来た。


「おはよ。シェンリー、朝までぐっすりだったー」

「おはよう。ダービー。よかった。寝れたんだね」

「おはよう。ダービー君。シェンリーちゃんもおはよう。あら。ご機嫌さんね。ふふっ。可愛いわぁ。抱っこしてもいいかしら?」

「はいですー。シェンリー。マリアンナおばあちゃんだよー」

「女の子はちょっと華奢な感じがするわねぇ。私は男の子だけだったから、なんだか新鮮だわ」

「おはよ……お兄ちゃん、洗濯ありがと」

「あ、フローラ。おはよう」

「お腹空いたー。一回目の洗濯物干したらちびっ子達起こしてくるわ」

「よろしくね」


 マーカーやデイビッドも起きてきた。双子が『デイビッドさん! 髭剃りするとこ見せて!』とはしゃいで、一緒に洗面台へと向かった。
 リードは髭が薄くて生えるのが遅い方なので、基本的に髭剃りは二日に一度だ。ちょこっと伸びても淡い金色なので目立たない。楽でいいのだが、事務長みたいな格好いい口髭に密かに憧れている。

 全員が起きてきたら賑やかに朝食を食べ、リード達が手分けして洗濯と掃除をしている間に、デイビッドとマリアンナが早速ご馳走の仕込みをしてくれることになった。
 シェンリーとちびっ子は双子がみてくれているので、フローラと一緒に洗濯物を干す。


「ねぇねぇ。お兄ちゃん。デイビッドさんもマリアンナおばあちゃんもすごくいい人ね。優しくて温かい感じ?」

「そうだね。いっぱい助けてもらったからお礼がしたくてパーティーをしようと思ったんだけど、また助けられてるなぁ。なんかこう……二人にがっつり恩返しがしたいんだよねぇ」

「お兄ちゃんが健康で笑ってれば、それだけで十分喜びそうな気がするわ」

「僕は健康優良児だよ。十年以上風邪も引いたことないし」

「いつも疲れてるじゃない。生活に疲れた人妻みたいよ。お兄ちゃん」

「どこでそんな言葉を覚えてきたのさ……フローラ達が一緒に頑張ってくれてるから、前ほど疲れてないよ」

「そう? まぁ、私も結婚するのは成人して二年後の予定だしね。社会経験なしで結婚するのもちょっとねー。せめて二年くらいは社会の荒波に揉まれておかないと! モブリットさんもそれでいいって言ってくれてるしね!」

「モブリット君が来るの楽しみだね」

「ほんとに! モブリットさんが来る日はとびきり可愛い髪型にして!」

「いいよー。よし。洗濯物おーわり。台所の手伝いに行こうか」

「うん! マリアンナおばあちゃんから習えるだけ料理を習っておきたいわ! 美味しいものをお腹いっぱい食べるのってほんと幸せー。お兄ちゃんのご飯も美味しいけどね! 自分で作ったやつはまだ微妙」

「フローラのご飯も美味しいよ?」

「まだまだ修行しなきゃなのよ! モブリットさんに美味しいご飯を食べてもらいたいもの! 一緒に作るのも楽しいけどね!」

「ははっ。ぼちぼち頑張っていこうね」

「うん!」


 フローラが手を握ってきたので、手を繋いで台所へ移動した。
 台所ではふわふわと美味しそうな匂いが漂っている。リードも鶏の丸焼きを作ろうと腕捲りをして手を洗い、魔導冷蔵庫からまるごとの鶏を取り出した。

 デイビッドが興味津々な様子で近寄ってきたので、鶏の中身を取り出している間に、腹の中に詰める野菜と香草を刻んでもらう。


「鶏の丸焼きって食べるの何年ぶりだろ? ばあちゃんと一緒に料理をするようになってからは、連休中は色んな料理を作って遊んでたもんなー」

「二人で楽しいことができるのって素敵だね」

「まぁな! 三日間のパーティー中の飯は期待しててくれ! 人数が多いからいつもよりいっぱい色んな料理を作れるし、皆美味そうに食ってくれるから作り甲斐があってめちゃくちゃ楽しい!」

「僕達も美味しいものがいっぱいで幸せー。あ、デイビッド。野菜とか切り終わったら鶏のお腹の中に突っ込むよ」

「俺やってみていい?」

「いいよ。みっちみちに詰め込んじゃって。それが終わったら表面に塩と香草擦り込んで、後は弱火でじっくり焼くだけ」

「へぇー。意外と簡単なんだな。もっと手のかかるものかと思ってた」

「うーん。おばあちゃんに教えてもらった作り方なんだよね。多分、作り方も色々あるんじゃない?」

「塩と香草ってこんな感じで大丈夫か?」

「うん。完璧。じゃあ、焼こうか」

「うん。美味しく焼き上がってくれよー」

「ははっ。大丈夫だよ」


 午前のお茶の時間にちょっと一休みをして、いつもより豪華な昼食を作り、夜のパーティーに向けてどんどんご馳走を作っていく。
 デイビーとミアは冬生まれで、二人とも五歳と四歳になった。
 二人ともマリアンナのお手伝いがしたいと言い出して、マリアンナが笑顔で快諾してくれたので、二人も今日は台所のお手伝いだ。
 フローラも新しい料理を覚える気満々なので、リードと一緒にデイビッドから教えてもらいながら初めて作るご馳走に挑戦している。

 夕方になるとちびっ子達と一緒に洗濯物を取り込んで畳み、早めに順番に風呂に入ったら、ちょうどパーティー開始にいい時間になった。
 ご馳走を温めて居間のテーブルに並べると、わぁっ! と嬉しそうな歓声が上がった。

 今夜は夜更かしをする予定なので、フローラから上は皆珈琲、ちびっ子達には美味しいと評判の林檎ジュースを用意して、乾杯してから何種類もあるご馳走を食べ始めた。
 隣に座っているデイビッドが鶏の丸焼きを食べて、満面の笑みを浮かべた。


「めちゃくちゃ美味いな! ご馳走! って感じなのもなんか嬉しい」

「よかった。あっ! この魚のパイ包み焼きすっごい美味しい! サクサクしっとりー。美味しい……ほんと美味しい……幸せ……」

「ははっ! たらふく食えー!」

「おにいちゃん。おにくとって。おにいちゃんもたべてー。ミアもおてつだいしたの!」

「お肉ってこれ? あ、揚げた鶏肉に卵ソースかかってる」

「おいしー!」

「美味しーい! 揚げた鶏肉を甘酢に漬けてるんだ。卵ソースと合うー」

「ミアね、たまごのからをむいたの!」

「すごいね。ミア。すっごく美味しいよ」

「えへへー」


 皆、すごく楽しそうに美味しそうにご馳走をもりもり食べている。
 笑顔がいっぱいで、なんだかすごく嬉しい。
 隣のデイビッドをちらっと見ると、デイビッドと目が合った。
 デイビッドが嬉しそうに笑い、リードの頬に素早くキスをした。
 なんだか胸の奥がぽかぽか温かい。リードはちょっと照れくさくなって、デイビッドの皿を色んな料理で山盛りにした。

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