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26:だらだらごろごろ

 魔物の繁殖期が終わり、なんとか事後処理も終わらせて、各隊交代で一週間の休暇がもらえることになった。
 団長が気を利かせてくれて、アルネはゲオルグと同じタイミングで休みをもらえた。

 ざっくり半年。魔物の繁殖期に向けて鍛錬鍛錬また鍛錬の日々を過ごしたかと思えば、『魔の森』で過酷な闘いの日々を過ごし、やっと落ち着いたー! 帰れるー! と思って帰還したら事後処理祭りだった。
 アルネの隊は死者が出なかったのだが、騎士団全体だと数名の死者が出た。
 それだけ魔物の繁殖期は危険であった。

 残業していたゲオルグを待って、心身ともに疲れた状態で家へと向かって歩き始めた。
 季節はすっかり初夏である。歩いているだけでもじわっと暑い。


「ゲオルグさん。今日は晩飯を外で食いましょうよ。キンキンに冷えた酒が飲みてぇです」

「いいぞ。揚げ物食いたい」

「いいですねー。揚げたての肉とキンキンに冷えた酒」

「この近くに酒の種類が多い店がある。そこに行くか?」

「うん。案内お願いしまーす」


 ゲオルグの案内でこぢんまりとした店に入った。
 落ち着いた雰囲気の店内に入ると、テーブル席に座り、冷たい酒と揚げ物を数種類注文した。
 すぐに運ばれてきた酒を乾杯してから一気に飲み干し、ぷっはぁと大きく息を吐いた。


「あーー。生き返るー。ざっくり半年お疲れ様でしたー。次は五年後くらいですね」

「だな。次が最後になるな。俺は。騎士の引退は五十だから」

「あ、そっか。引退後のことは考えてるんです?」

「なんも考えてない。……結婚したし、家政婦を雇うのをやめて専業主夫でもするか?」

「あ、いいですねー。家に帰ったらいつでもゲオルグさんがいるのは嬉しいかも。ゲオルグさんの飯、めちゃくちゃ美味いですし。あ、暇になったら手芸教室とかに通うのもありじゃないですか? 可愛いぬいぐるみを自作したりとか」

「暇を持て余したらやるか」

「あとは槍の教室とか? ゲオルグさんって剣も使えるから、子供向けの剣や槍の教室をしてもよさそうですね。少人数で、庭でできるような感じの規模の教室」

「割とデカい街だから、騎士を目指す子どももそれなりに多そうだしな」

「自分で言うのもなんですが、黒鷲騎士団って人気がありますもんね」

「お前は引退後のことは考えているのか?」

「んー。結婚したしなー。結婚する前は、領地に帰って、領地で剣を教えたりのんびり過ごせばいいかなーって思ってたんですけど。ゲオルグさんと剣の教室でもやるかなぁ。剣の鍛錬とエロ本読むのとセックス以外、趣味らしい趣味なんてねぇし。あ、でも菓子作りは続けてぇかも」

「菓子作りが新たな趣味ってことでいいんじゃないか?」

「そうですね。素敵な奥さんっぽいな。俺」

「はいはい。この後、帰って寝倒すのと、バーで追加の酒を飲むの、どっちがいい?」

「バーで飲んで連れ込み宿コースがいいんですけど、流石に疲れが溜まってるので寝たいです。セックス祭りは明日の夜でー」

「……いかん。腹が満腹になったら一気に眠気が」

「俺もです。寝たい。やっと完全に終わったー! って気が抜けちゃってます」

「俺もだ。帰って寝るか」

「明日は一日寝て回復させて、夜ははっちゃけるってことで」

「構わん」

「溜まりすぎて金玉爆発しそう」

「金玉ないだろ。お前」

「比喩ですよ」


 だらだら喋りながら飲んで食べて、しっかり満腹になったら店を出た。
 夜風が心地いい中を手を繋いで家へと帰る。家に帰り着くと、ゲオルグがアルネの唇にキスをした。
 なんとなく嬉しくなって、アルネもゲオルグに抱きついて触れるだけのキスをした。
 帰還してからは、一応家に帰れてはいたが、すれ違いな日が多くて、なんだかまともにキスをするのも久しぶりな気がする。


「ムラムラびっちゃんこだけど眠い」

「風呂に入って寝るぞ」

「ちなみに俺は夏場は寝る時パン一派です」

「襲われたいか?」

「クソだせぇパンツを穿きます。股間に『元気が一番!』って刺繍してあるやつ」

「クソだせぇパンツ何枚持ってるんだよ」

「十枚はないですね」

「多いわ」


 顔を見合わせてクックッと笑うと、着替えを取りに二階へ上がった。
 ゲオルグと一緒だと我慢ができないので、別々に風呂に入った。
 明日は絶対に一緒に風呂に入る。頭と身体を洗ってもらいたいし、ついでにスケベな悪戯をされたい。

 風呂上がりにパン一で脱衣場から出て二階のゲオルグの部屋に行くと、デッカい兎と栗鼠のぬいぐるみが書物机の上と椅子に鎮座していた。
 襟なしのゆるめのシャツとパンツしか着ていないゲオルグが寝転がって本を眺めていたので、すぐ隣に寝転がって本を覗き込んだ。


「なんだ。エロ本じゃないや」

「お前と一緒にするな」

「結婚してからは料理本も買うようになりましたー」

「エロ本しか買ってなかったのかよ」

「うん。ていうか、ゲオルグさんだってほぼパン一じゃないですか」

「シャツは着てるだろ」

「なんかあれっぽい。なんだっけ。彼シャツ」

「なんだそれ」

「彼氏のシャツを着るというものです」

「服のサイズは変わらないから普通にお前の服も着れるな」

「ゲオルグさん、お洒落さんだから俺の服も普通に着こなしそう」

「ちと若すぎる感があるな。十歳差はデカい」

「そうです? ゲオルグさん、下半身が元気すぎて四十歳とは思えないですよ」

「誕生日がきたから四十一だ」

「えっ。いつ!?」

「修羅場遠征中」

「えーー! 来年はお祝いするから教えてくださいよーー!!」

「誕生日を祝われる歳でもない」

「誕生日は祝うものなんですぅ。誕生日の祝いと銘打って堂々と酒やケーキを楽しめる日なんですよ!」

「はいはい。お前の誕生日は?」

「来月の半ばです」

「じゃあ、ちょっといい店に行くか? 酒も飯も美味い店。デザートの種類も豊富だった筈だ」

「行くーー! ちょー行きてぇです!」

「遠征が被らなければいいな」

「もし被ったら、帰還してから二人の誕生日祝いってことで行っちゃいましょう」 

「ははっ! そうだな」

「ところで。これ、なんの本なんです?」

「買ったはいいが積んでた冒険小説」

「へぇー。冒険小説を読んでたのは子どもの頃ですね。面白いなら次読ませてくださいよ」

「エロ本しか読まないんじゃないのか」

「たまには普通の読書を楽しむのもありかなって。エロ本しか読まないんで。輪姦ものの」

「お前の性癖はどこで拗れた」

「二番目の兄が隠してたエロ本読んでから?」

「人が隠してるものを読むな」

「兄上とはエロ本の趣味が合うんじゃないかなー。性格はあんま合わないけど。堅物クソ真面目なんで。いや、堅物クソ真面目なのに輪姦もののエロ本持ってるって時点でかなり面白いな」

「お前の兄はどこで性癖を拗らせたんだろうな……」

「さぁ?」

「そろそろ寝るか」

「うん。おやすみのキス~」

「ん」

「んふっ。おやすみなさい。ゲオルグさん」

「おやすみ。アルネ」


 アルネはゲオルグにぴったりくっついた。
 割と暑いのだが、ゲオルグの体温と匂いになんとなく安心する。ちょっと不思議だなと思いながらも、すやぁっと寝落ちた。

 目が覚めたのは翌日の午前のお茶の時間くらいだった。
 まだ眠っているゲオルグの寝顔を間近でまじまじと眺めて、なんとなくゲオルグの唇にキスをした。

 ぼんやりと、休みの間にお揃いのピアスを買いに行くのもありかなぁと思いついた。
『愛』と呼べる感情を抱いているのかはまだ分からないが、それでもゲオルグとずっと一緒にいるんだなぁと思っている。引退後の話をしたり、新たな発見があったり、きっと小さなことの積み重ねが『愛』に繋がっていくんじゃないかと思う。

 ゲオルグが自然と目覚めるまで、アルネは眠るゲオルグに寄り添っていた。

感想 3

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