パンストおじさん、異世界でどっぴゅん☆

丸井まー(旧:まー)

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2:勇者の能力

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過労で倒れた父王の代わりに執務を行っている第一王子の元に、魔術師長がやって来た。
魔術師長の死んだ魚のような目を見て、要件を察してしまう。


「殿下。勇者の件なのですが……」

「……聞きたくないが、聞こう」

「勇者の能力が分かりました」

「能力?聖剣を使うだけではないのか?」

「聖剣も使えるのですが……勇者は剣に触れたことさえなかったそうなので、それなりに剣を扱えるようになるには、かなりの時間が必要になるかと。しかし、勇者が持つ能力を使うのであれば、すぐに魔王討伐に向かえます」

「あぁ。捕えていた小物の魔物で実験でもしたのか。それで、その能力とは?」

「……あの、正直に言っても怒らないでくださいね?」

「私が怒るようなことなのか」

「ふざけてないんです。本当にふざけてないんです。全てはふざけた存在のせいなんです」

「いいから話せ」

「はい……その、ですね……あの、ですね……」


魔術師長が気まずげな顔で、もじもじし始めた。微妙に頬を赤らめ、言いくそうに、若干早口で話し始める。


「お、お、お、男のあ、あれをですね、魔物にかけますと、その、魔物が浄化されるみたいです!」

「男のあれ?ちゃんとハッキリ言え」

「うえっ!?あの、ほら、あれです。あれですよ!」

「あれとは何だ」

「うっ、うっ、うぅ~……せ、精液、です……」


魔術師長が真っ赤になって俯いた。そういえば、魔術師長は魔術馬鹿故にそういう経験が一切なく、かなり初な男だと噂に聞いたことがある。30が近い歳だが、周囲からこっそり『聖処女』『ユニコーンも近づく乙女』と呼ばれているらしい。男なのに。性的なことに対して初過ぎるのと、中性的な美貌が相まって、『妖精さん』とも呼ばれている。
第一王子はなんだかセクハラでもしているような気分になってきた。魔術師長は顔を真っ赤にして、涙目になっている。変態が変態のせいで、なんとも申し訳なくなってきた。


「何というか……すまない」

「い、いえ。そ、それとですね、勇者の衣装についてなんですが、神から祝福を授かっているもののようです」

「あのド変態丸出しの衣装が?」

「は、はい。耐毒、耐熱、耐精神汚染、その他、魔物が仕掛けてくるあらゆる攻撃に対する耐性があります。それに防寒も問題ないようです」

「あんなに布面積が小さいのに」

「そ、それと、あの頭に被っているものは、その、脱げない、みたいです……」

「は?」

「ぱ、ぱん、ぱん……ぱ、パンティー……ストッキング……」

「魔術師長。そんなに言いにくいなら、パンストと略せ。まだマシだろう。顔がヤバいくらい赤いぞ」

「うぅ……は、はい。そ、その、パンストに神の祝福が強く宿っていて、パンストに勇者の力が集中しているみたいです。そもそも勇者は、ぱ、パンストを脱ぐ気がないみたいですし、その、実際脱いだら弱体化してしまいます。……あの、し、した……いえ、勇者の服?も同様です」

「では、あの気持ち悪い姿で魔王討伐に向かうと?」

「は、はい。それが1番確実に魔王を倒せるかと……」

「……嘘だろう……」

「残念ながら……それと……」

「まだあるのか」

「あ、はい。勇者は魔術は使えないようなのですが、その、浄化はできるようです。それと、その、浄化に必要?な、その、魔法?とでも言うべきものが使えるみたいでして……」

「なんだ、それは」

「あ、あ、相手をですね、その、あの、きょ、強制的に、は、は、は、はつ、発情、させることができます……」

「気持ちが悪い」

「それと……それと……」

「まだあるのか」

「あの、その、たっ、倒す相手と、その、あの、つ、繋がる?と言いますか、あのえっと、せ、せ、せ、性行為をすると勇者の能力が使えるみたいですっ!!」

「はぁ!?」

「せ、せ、せ、せい、性行為をしなければ、その、あの、浄化の能力が半減するようで……逆に言えば、小物の魔物を操っている大物の魔物を、その、あの、せ、性行為で浄化してしまえば、小物の魔物も連鎖反応的に浄化できるようです」

「なるほど……心底気持ちが悪い能力だが、要はその場の首魁を、その、なんだ。アレすればいいだけの話なのだろう?」

「は、はい。魔王も、その、あの、アレしちゃえば、残っている魔物を一掃することができるかと」

「……魔物が気の毒になるな……」

「殿下……敵に情けは無用かと……」

「それはそうなんだが、まさか魔物達もあんな気持ちが悪い変態にそっちの意味で襲われるとは思っておるまい……」

「……それはそうですね」

「魔物可哀想」

「……世界を救う為に尊い犠牲になってもらうしかありませんね……」

「はぁ……魔王討伐の人員編成を考え直すぞ。女は連れていけない。予定では回復と結界をする神官が女だっただろう?流石に未婚の若い女に、あんなド変態が魔物を性的に襲うところを見せる訳にはいかない」

「そうですね……」

「あと魔術師も変更だ。稀代の天才らしいが、まだ15歳だろう?教育に悪い。もし性癖が歪んだら大変だ」

「はい」

「気持ちが悪い変態のあれこれを見ても平気そうな、心臓に剛毛が生えてそうな者を見繕ってこい。誰もいなければ、気の毒だがお前が魔王討伐に同行しろ」

「御意」

「はぁ……連れて行く軍人達の選抜もしなくては……聖剣を使わないなら、遅くとも10日後に魔王討伐へと出発するぞ。そのつもりで急いで各所に準備をさせろ」

「御意」


魔術師長が退室した後、第一王子は鈍く痛む頭を抱えた。父王が過労で倒れ、ベッドの住人になっている以上、自分以外に魔王討伐の戦に同行できる王族はいない。弟が一人いるが、かなり歳が離れていて、まだ3歳である。第一王子が頑張らなければならない。これもいつかは王になる自分に与えられた試練であろう。
第一王子は大きな溜息を吐いて、将軍を呼び出すよう、側にいた護衛の軍人に頼んだ。


(つづく)
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