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24:美味しい冬華祭
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いつも人が多い中央広場は、いつも以上に沢山の人がいた。特設ステージみたいなものもあり、屋台もいつもより多い気がする。
祥平は、ワクワクしながら、ダンテを見上げて、声をかけた。
「何から食います?」
「そうだねぇ。あ、あそこの恋人達が食べてるやつはどう? 私も初めて見るやつだから」
「なんか、一緒に一つのやつを食ってますね」
「そういう食べ方をするものなのかな? 冬華祭だから、そういうのがあっても不思議じゃないかも。あっちの恋人達も、一緒に飲み物飲んでるし」
「あ、本当だ。一つのコップにストローが二本ですね。うーん。なんという甘々イチャイチャ空間。恋人祭りをちょっと舐めてたかも」
「ははっ。まぁ、気にせず美味しいものを食べよう」
「はい!」
人混みの中、祥平は、ダンテにピッタリくっついて、いい匂いがしている屋台に向かった。
細長い棍棒? みたいなものがあったので、屋台の近くで早速食べてみる。周りを見れば、ポッキーゲームのように、2人同時に食べていた。防御力アップの為にも、ちょっと真似をしてみることになった。
ダンテが細長い棍棒みたいなものの中心を持って、少し屈んでくれたので、同時に齧りつく。なんとなく、ダンテの萌黄色の瞳を見ながら食べ始める。ちょっと硬いが、ゴリゴリ食べていると、ふわっとバターのような匂いが鼻に抜け、ふんわりとした甘さが口に広がる。硬いが、美味しい。祥平は、三分の一くらい、ゴリゴリゴリゴリ齧ると、口を離した。なんとなくダンテを見上げながら、もぐもぐ咀嚼していると、ガガガガッとあっという間に口に全部入れたダンテが、頬袋状態で、機嫌よさそうに目を細めた。ちょっと面白い。ゴクンと飲み込んだダンテが、おっとり笑った。
「これ美味しいね」
「はい。ちょっと硬いけど、美味かったです」
「もう一本食べたいけど、次に行こうか」
「はーい」
「そういえば、祥平の目って真っ黒ではないんだね」
「そうですよー。パッと見は黒ですけど」
「うん。黒に近い茶色? みたいな?」
「ダンテさんは、キレイな萌黄色ですよね。春っぽい」
「はる?」
「冬と夏の間の季節です。俺の故郷には、春がありました」
「へぇー。あ、次はあれ食べない?」
「どれです?」
「なんかの肉の串焼き」
「食べます!」
人混みをかき分けるようにして、串焼きが売っている屋台の前に移動する。
「タレ焼きとミーミル、どっちにしよう」
「両方買います? ダンテさんなら二本くらい余裕でしょ」
「それもそうだね」
甘めの匂いがする串焼きと、スパイシーなミーミルの実の匂いがする串焼きを買い、其々一本ずつ持って、歩きながら食べ始める。一口大のものが、五つ串に刺さっている甘めのタレがついた香ばしい肉は、砂ずりのような食感で、噛むとじわぁっと肉汁が溢れてくる。
「んまいです」
「クークル鳥の肉だね。タレ焼きちょうだい」
「はい」
腕を組んだまま、ダンテの口元にタレ焼きを差し出すと、ダンテが一気に二つの肉を食べた。ミーミル味の方を差し出されたので、一つだけ食べる。ミーミル味もスパイシーでシンプルに美味い。祥平は、口の中のものを飲み込むと、持っている串焼きの下の方の肉を歯で挟み、串の上の方へと移動させた。早々とミーミル味を食べきったダンテに、残りのタレ焼きを差し出すと、ダンテは躊躇なくタレ焼きの肉を一気に二つ食べた。
串を近くにあったゴミ箱に捨てると、次は、薄いパンのようなもので甘いクリームと酸味のあるキャニックの実を包んだものを食べた。先に、ダンテが持っているものに祥平が齧りつき、ダンテが大きく一口食べたい。クリームがちょっとカスタードクリームっぽくて、爽やかな酸味のあるキャニックの実と抜群に相性がいい。素直に美味しい。ダンテがあっという間に食べきったので、次の屋台を物色する。
歩きながら、何気なくダンテを見上げれば、口元にクリームがついていた。祥平は、組んでいない方の手を伸ばし、ダンテの口元を指で拭った。
「あ、もしかして、クリームついてた?」
「はい。このクリーム、家でも作れないかな」
「ミミーナさんに聞いてみようか」
「ですね。ミミーナさんなら、作り方を知ってそうな気がします」
指についたクリームを舐めとると、祥平は、スパイシーな匂いがしている屋台を指差した。
「次は、あれ食いたいです。初めて見るやつです」
「なんだろ。あ、あれかも。ヒーリョク」
「ヒーリョク」
「えーとね、小さめの魔獣なんだけど、一度番になったら、ずっとくっついてて、絶対に離れないんだ」
「へぇー。そういう魔獣なら、験担ぎの意味もあるのかな?」
「多分? 食べてみよう。私も食べたことが無いんだ」
「ワクワクしますね」
「うん」
大ぶりの肉が串に刺さっているものは、ミーミルの実で味付けがされていた。少し筋張っていて硬めだが、噛めば噛む程、肉の旨味が口の中に広がる。祥平が一口齧った肉を、大口を開けて齧ったダンテが、もぐもぐ咀嚼しながら、祥平を見下ろして、目をキラキラと輝かせた。
ちゃんと口の中のものを飲み込んだダンテが、おっとり笑った。
「これ、すっごく美味しい。酒にも合いそう。こんな美味しいものを食べたことが無いなんて、勿体無いことしてたなぁ」
「普段の屋台であります?」
「見たことが無いから、多分、冬華祭限定なんじゃないかな。一年中、売ってくれればいいのに」
「確かにー。美味しかったですね。次はどれいきます?」
「んー。あ、そろそろ飛竜が飛ぶ時間だ。祥平、ちょっと移動しようか。失礼」
「うぉっ!?」
ダンテが、組んでいた腕を離して、祥平を子供のように抱っこした。急に目線が高くなって驚いた祥平は、思わずダンテの頭を抱えるようにしがみついた。
「軽いなぁ。ショーヘイ。ちゃんと食べてる?」
「毎日もりもり食べてますよ」
「ちょっと飛び跳ねるねー」
「うぉー!?」
祥平を抱っこしたまま、ダンテが、その場でぴょーんと高く飛び上がった。一番近くの一階建ての家の屋根まで飛び、そこを足場に、また更に高く飛び上がる。怖くはない。むしろ、なんか楽しい。ぴょーん、ぴょーんと飛び跳ねながら、ダンテが、三階建ての集合住宅の上で、祥平を下ろした。
「気分悪くなってない?」
「大丈夫です」
「よかった。あっちの方を飛ぶよ。……上はちょっと冷えるね。くっついとく?」
「はーい」
祥平は、飛竜が飛ぶという方向を向いた。ダンテに後ろからゆるく抱きしめられる。服越しに伝わるダンテの体温が温い。三階建ての集合住宅の上は、下よりも風が強くて寒いので、風向き的にもダンテが風除けになっていて、寒さが少しマシになる。ピエリーが、ぴるるるっと鳴きながら、頬にすりすりと顔を擦りつけてきたので、祥平は、ピエリーを抱っこして、やんわりと優しくピエリーの背を撫でた。
祥平の頭の上に顎をのせたダンテが、前方に向かって指を指した。ダンテの指の先を見れば、五匹の飛竜の姿が見えた。
「始まったね」
「おぉー。遠目からですけど、デカくないですか? ピエリーちゃんもあんなに大きくなれるんですか?」
「うん。この上空も飛ぶよ。色とりどりの花びらをね、空から撒くんだ」
「へぇー。あ、本当だ。低めに飛び始めましたね。おぉー! すげー! きれーい!!」
「下から見るのは初めてだけど、キレイなもんだねぇ」
一度空高く舞い上がった飛竜達が、低めに飛び始め、色とりどりの沢山の花びらを撒き始めた。花びらが風で舞い、とても美しい。祥平達の上も飛竜が飛んでいき、はらはらと花びらが落ちてきた。
ものすごくキレイだったけれど、この後の掃除はどうするのだろうか。祥平は、花びらが落ちている足元を見下ろして、ふと思った。
ダンテの腕の中で方向転換して、ダンテを見上げれば、案の定、ダンテの頭にも花びらがついていた。片手を伸ばして、ダンテの頭の上の花びらを取ってやると、ダンテがおっとり笑った。
「ありがとう。ショーヘイ。此処は少し寒いし、食べ歩き第二弾に行く?」
「行きます! あ、ダンテさん。お酒飲みたいなら、飲んでもいいですよ」
「んー。魅力的だけど、今はいいかな。回し食いするし。さ、下に行こうか」
祥平は、再びダンテに抱っこされた。ダンテの腕の中は、安定感が半端ない。なんとなくダンテの頭にしがみつきながら、祥平は、楽しくて、ゆるく口角を上げた。
祥平は、ワクワクしながら、ダンテを見上げて、声をかけた。
「何から食います?」
「そうだねぇ。あ、あそこの恋人達が食べてるやつはどう? 私も初めて見るやつだから」
「なんか、一緒に一つのやつを食ってますね」
「そういう食べ方をするものなのかな? 冬華祭だから、そういうのがあっても不思議じゃないかも。あっちの恋人達も、一緒に飲み物飲んでるし」
「あ、本当だ。一つのコップにストローが二本ですね。うーん。なんという甘々イチャイチャ空間。恋人祭りをちょっと舐めてたかも」
「ははっ。まぁ、気にせず美味しいものを食べよう」
「はい!」
人混みの中、祥平は、ダンテにピッタリくっついて、いい匂いがしている屋台に向かった。
細長い棍棒? みたいなものがあったので、屋台の近くで早速食べてみる。周りを見れば、ポッキーゲームのように、2人同時に食べていた。防御力アップの為にも、ちょっと真似をしてみることになった。
ダンテが細長い棍棒みたいなものの中心を持って、少し屈んでくれたので、同時に齧りつく。なんとなく、ダンテの萌黄色の瞳を見ながら食べ始める。ちょっと硬いが、ゴリゴリ食べていると、ふわっとバターのような匂いが鼻に抜け、ふんわりとした甘さが口に広がる。硬いが、美味しい。祥平は、三分の一くらい、ゴリゴリゴリゴリ齧ると、口を離した。なんとなくダンテを見上げながら、もぐもぐ咀嚼していると、ガガガガッとあっという間に口に全部入れたダンテが、頬袋状態で、機嫌よさそうに目を細めた。ちょっと面白い。ゴクンと飲み込んだダンテが、おっとり笑った。
「これ美味しいね」
「はい。ちょっと硬いけど、美味かったです」
「もう一本食べたいけど、次に行こうか」
「はーい」
「そういえば、祥平の目って真っ黒ではないんだね」
「そうですよー。パッと見は黒ですけど」
「うん。黒に近い茶色? みたいな?」
「ダンテさんは、キレイな萌黄色ですよね。春っぽい」
「はる?」
「冬と夏の間の季節です。俺の故郷には、春がありました」
「へぇー。あ、次はあれ食べない?」
「どれです?」
「なんかの肉の串焼き」
「食べます!」
人混みをかき分けるようにして、串焼きが売っている屋台の前に移動する。
「タレ焼きとミーミル、どっちにしよう」
「両方買います? ダンテさんなら二本くらい余裕でしょ」
「それもそうだね」
甘めの匂いがする串焼きと、スパイシーなミーミルの実の匂いがする串焼きを買い、其々一本ずつ持って、歩きながら食べ始める。一口大のものが、五つ串に刺さっている甘めのタレがついた香ばしい肉は、砂ずりのような食感で、噛むとじわぁっと肉汁が溢れてくる。
「んまいです」
「クークル鳥の肉だね。タレ焼きちょうだい」
「はい」
腕を組んだまま、ダンテの口元にタレ焼きを差し出すと、ダンテが一気に二つの肉を食べた。ミーミル味の方を差し出されたので、一つだけ食べる。ミーミル味もスパイシーでシンプルに美味い。祥平は、口の中のものを飲み込むと、持っている串焼きの下の方の肉を歯で挟み、串の上の方へと移動させた。早々とミーミル味を食べきったダンテに、残りのタレ焼きを差し出すと、ダンテは躊躇なくタレ焼きの肉を一気に二つ食べた。
串を近くにあったゴミ箱に捨てると、次は、薄いパンのようなもので甘いクリームと酸味のあるキャニックの実を包んだものを食べた。先に、ダンテが持っているものに祥平が齧りつき、ダンテが大きく一口食べたい。クリームがちょっとカスタードクリームっぽくて、爽やかな酸味のあるキャニックの実と抜群に相性がいい。素直に美味しい。ダンテがあっという間に食べきったので、次の屋台を物色する。
歩きながら、何気なくダンテを見上げれば、口元にクリームがついていた。祥平は、組んでいない方の手を伸ばし、ダンテの口元を指で拭った。
「あ、もしかして、クリームついてた?」
「はい。このクリーム、家でも作れないかな」
「ミミーナさんに聞いてみようか」
「ですね。ミミーナさんなら、作り方を知ってそうな気がします」
指についたクリームを舐めとると、祥平は、スパイシーな匂いがしている屋台を指差した。
「次は、あれ食いたいです。初めて見るやつです」
「なんだろ。あ、あれかも。ヒーリョク」
「ヒーリョク」
「えーとね、小さめの魔獣なんだけど、一度番になったら、ずっとくっついてて、絶対に離れないんだ」
「へぇー。そういう魔獣なら、験担ぎの意味もあるのかな?」
「多分? 食べてみよう。私も食べたことが無いんだ」
「ワクワクしますね」
「うん」
大ぶりの肉が串に刺さっているものは、ミーミルの実で味付けがされていた。少し筋張っていて硬めだが、噛めば噛む程、肉の旨味が口の中に広がる。祥平が一口齧った肉を、大口を開けて齧ったダンテが、もぐもぐ咀嚼しながら、祥平を見下ろして、目をキラキラと輝かせた。
ちゃんと口の中のものを飲み込んだダンテが、おっとり笑った。
「これ、すっごく美味しい。酒にも合いそう。こんな美味しいものを食べたことが無いなんて、勿体無いことしてたなぁ」
「普段の屋台であります?」
「見たことが無いから、多分、冬華祭限定なんじゃないかな。一年中、売ってくれればいいのに」
「確かにー。美味しかったですね。次はどれいきます?」
「んー。あ、そろそろ飛竜が飛ぶ時間だ。祥平、ちょっと移動しようか。失礼」
「うぉっ!?」
ダンテが、組んでいた腕を離して、祥平を子供のように抱っこした。急に目線が高くなって驚いた祥平は、思わずダンテの頭を抱えるようにしがみついた。
「軽いなぁ。ショーヘイ。ちゃんと食べてる?」
「毎日もりもり食べてますよ」
「ちょっと飛び跳ねるねー」
「うぉー!?」
祥平を抱っこしたまま、ダンテが、その場でぴょーんと高く飛び上がった。一番近くの一階建ての家の屋根まで飛び、そこを足場に、また更に高く飛び上がる。怖くはない。むしろ、なんか楽しい。ぴょーん、ぴょーんと飛び跳ねながら、ダンテが、三階建ての集合住宅の上で、祥平を下ろした。
「気分悪くなってない?」
「大丈夫です」
「よかった。あっちの方を飛ぶよ。……上はちょっと冷えるね。くっついとく?」
「はーい」
祥平は、飛竜が飛ぶという方向を向いた。ダンテに後ろからゆるく抱きしめられる。服越しに伝わるダンテの体温が温い。三階建ての集合住宅の上は、下よりも風が強くて寒いので、風向き的にもダンテが風除けになっていて、寒さが少しマシになる。ピエリーが、ぴるるるっと鳴きながら、頬にすりすりと顔を擦りつけてきたので、祥平は、ピエリーを抱っこして、やんわりと優しくピエリーの背を撫でた。
祥平の頭の上に顎をのせたダンテが、前方に向かって指を指した。ダンテの指の先を見れば、五匹の飛竜の姿が見えた。
「始まったね」
「おぉー。遠目からですけど、デカくないですか? ピエリーちゃんもあんなに大きくなれるんですか?」
「うん。この上空も飛ぶよ。色とりどりの花びらをね、空から撒くんだ」
「へぇー。あ、本当だ。低めに飛び始めましたね。おぉー! すげー! きれーい!!」
「下から見るのは初めてだけど、キレイなもんだねぇ」
一度空高く舞い上がった飛竜達が、低めに飛び始め、色とりどりの沢山の花びらを撒き始めた。花びらが風で舞い、とても美しい。祥平達の上も飛竜が飛んでいき、はらはらと花びらが落ちてきた。
ものすごくキレイだったけれど、この後の掃除はどうするのだろうか。祥平は、花びらが落ちている足元を見下ろして、ふと思った。
ダンテの腕の中で方向転換して、ダンテを見上げれば、案の定、ダンテの頭にも花びらがついていた。片手を伸ばして、ダンテの頭の上の花びらを取ってやると、ダンテがおっとり笑った。
「ありがとう。ショーヘイ。此処は少し寒いし、食べ歩き第二弾に行く?」
「行きます! あ、ダンテさん。お酒飲みたいなら、飲んでもいいですよ」
「んー。魅力的だけど、今はいいかな。回し食いするし。さ、下に行こうか」
祥平は、再びダンテに抱っこされた。ダンテの腕の中は、安定感が半端ない。なんとなくダンテの頭にしがみつきながら、祥平は、楽しくて、ゆるく口角を上げた。
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