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27:誕生日パーティー
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冬華祭の10日後の朝。
祥平は、今日もピエリーに起こしてもらうと、ピエリーのお腹に顔をすりすりしてから、のろのろと起き上がった。ぴるるるっとご機嫌な声を上げて、ピエリーが祥平の肩に乗った。
「ピエリーちゃん。おはよう。今日は楽しいパーティーだー!」
「ぴるるるっ!」
祥平は、いつもより少し早くシャキッと覚醒すると、寝間着から冬華祭で着たお洒落服に着替えて、脱衣場の洗面台に向かった。
今日は、朝食を食べたら、ダンテが、神殿までドーラを迎えに行ってくれる。ミミーナが、いつもより少し早く出勤してくれるので、一緒にパーティーの準備をする予定だ。ドーラも一緒にパーティーの料理を作りたいということなので、とりあえず、時間がかかる料理の下拵え等を、ミミーナと一緒にやる。本格的な調理は、ドーラが来てからだ。
祥平は、機嫌よく、いつもの朝の家事をして、朝食後に、神殿に向かうダンテを見送った。パタパタと急いで洗濯物を干し終える頃に、ミミーナがやって来た。手には、キレイに包装されたダンテへのプレゼントと、キレイな生花と、お洒落な花瓶が入った袋を持っていた。ダンテへのプレゼントは、一旦、祥平の部屋に置き、2人で居間を立食パーティー用にセッティングしてから、台所へと向かった。
煮込み系のちょっと時間がかかる料理の下拵えが終わる頃に、ドーラがやって来た。台所にひょこっと顔を出したドーラは、冬華祭でお土産に買った髪飾りを着けてくれていた。
「おはよう! ショーヘイ! ミミーナさん! ちゃんとエプロン持ってきたわ! ニー先生がくれたの。この前のお礼だって」
「おー。可愛いじゃん。似合ってるよ」
「あら。本当に。刺繍が素敵ねぇ」
「ありがとう! さっ! 早速、作りましょう!」
淡い桃色のエプロンを着けたドーラが、やる気満々に腕捲りをした。誕生日パーティーということで、今日はお洒落仕様のダンテも、台所に入ってきた。
「私も一緒にやるよ」
「ダンテさん、今日の主役じゃないですか」
「皆で一緒にやった方が楽しいから、一緒にやりたいよ」
「んー。まぁ、いっか。じゃあ、一緒にやりましょうか。ガンダナの皮を剥いてくださいよ」
「了解」
「ショーヘイ。雇い主に手伝ってもらうのに、何の躊躇もないわね」
「え? だって、一緒にやった方が楽しいじゃん?」
「そうだけどね! あ、ミミーナさん。このお肉が硬くて切れないんだけど、どうしたらいいの?」
「あぁ。それはね、ちょっとコツがいるのよ。こう、肉の繊維にそって切ってみて?」
「うん。あ、すごい。サックリ切れたわ」
「ピエリーちゃーん。味見してー」
「あっ。いいな。ショーヘイ。私も味見したい」
「ダンテさんは、後で普通に食ってください」
4人でわちゃわちゃお喋りしながら料理をして、ちょうど昼頃に、パーティー料理が完成した。皆で手分けして料理を運び、人数分のラーリオ茶を淹れたら、パーティーの始まりである。
祥平は、んんっと軽く咳払いしてから、お茶が入ったマグカップを片手に、へらっと笑って口を開いた。
「それでは! ダンテさんの誕生日にかんぱーい! おめでとうございます!」
「「「かんぱーい」」」
お茶が入ったマグカップを、カチンカチンと軽くぶつけて乾杯をすると、早速、美味しいご飯の時間だ。テーブルの上いっぱいの料理を見て、ダンテの目がキラキラと輝いた。
「どれもお洒落で素敵だなぁ。ちょっと食べるのが勿体無いくらい」
「いや、普通に食いましょうよ。全部美味しいんで!」
「うん」
ダンテが、とても嬉しそうに笑って、ハルハルというキャベツとレタスの中間みたいな野菜で作った皿にのせた『ポテサラもどき』を一口で食べた。ダンテから、幸せそうな空気が漂っている。
祥平も、ミミーナとドーラが一緒に作っていた、カナッペもどきをパクンと一口で食べた。サクサクのほんのり甘さ控えめなペッタの食感と、ねっとりしたモッツァレラチーズみたいな味の果物、甘酸っぱいハンナナのジャムが、絶妙に合わさって、口の中が幸せになる。他にも、ダンテが好きなバーナンの揚げ物や、リンデルという一口大のカブっぽい野菜をちょっとくり抜いて薄味で煮込んで、ガルーの煮込みを入れたもの等、色々な美味しいものがある。
ダンテも、ピエリーも、ドーラも、ミミーナも、皆、美味しそうに、楽しそうに食べている。祥平は、もぐもぐ咀嚼しながら、むふっと笑った。美味しいものは、誰かと一緒に楽しく食べた方が、より美味しい。祥平は、異世界に来てから、そう強く思うようになった。多分、ダンテの影響が強い気がする。
美味しくて、楽しくて、多分、幸せってこんな感じなんだろうな、と思いながら、祥平は、3人と楽しくお喋りしながら、美味しい料理をもりもり食べた。
多めに用意した筈の料理がキレイに無くなり、皆、お腹いっぱいになったら、プレゼントの時間である。祥平は、ミミーナと一緒に、いそいそと自室に行き、箱に入れて包装したプレゼントを手に取った。
ドーラ達と一緒に、ダンテにプレゼントを渡すと、ダンテが照れたように、でも、すごく嬉しそうに笑った。早速、プレゼントを開けたダンテが、嬉しそうな歓声を上げた。
「3人とも、本当にありがとう! 大切に使うよ!」
「傷薬は出番が無い方がいいわよ」
「いやぁ。任務で割と小さな怪我をすることが多いから、本当に助かるし、嬉しいなぁ。ありがとう。ドーラちゃん」
「いーえー! ふふっ」
「ミミーナさんもありがとう。大切に着るよ」
「うふふ。ちょうど素敵な黒い布地があったんです。今度は、ショーヘイに旦那様の色のガナータを作りますから、是非とも着てくださいな。防御力の為に」
「新聞効果って怖いよな……馴染みの市場の人から、すげぇお祝い言われて、オマケしてもらってるんだけど。俺」
「ははは……私も職場で、竜騎士以外の人から声をかけられまくってるよ……」
「だって、2人とも新聞の一面に出てたじゃない。新聞見て、ビックリどころじゃなかったわ。私」
「えぇ。私も、まさかここまでとは予想外でしたわ」
「暫くは、恋人のフリを続けるんでしょ?」
「うん。その方が無難かなって。『実は恋人のフリでしたー!』とか言って、貴族がわんさか押し寄せてきたら嫌だし」
「それは嫌過ぎるわ」
「ショーヘイが作ったマグカップ、可愛いね。もしかして、この絵はピエリー?」
「そうですよ。残念ながら、俺に絵心は無かったんですけど」
「十分可愛いし、ピエリーだって分かるよ。本当にありがとう。明日から、このマグカップを使うよ」
「へへっ。喜んでもらえて、嬉しいです!」
ダンテの手放しの喜びようが、ちょっと照れくさいが、それ以上に、本当に嬉しい。3人でコツコツ頑張ってきた甲斐がある。準備もすごく楽しかったし、パーティーも大成功だ。
午後のお茶の時間には、ミミーナが作ってきてくれていたケーキを食べて、後片付けも、皆でわちゃわちゃ喋りながらやった。
夕方になる前に、ダンテと一緒に、ドーラを神殿に送り届ける。ドーラがスキップするような軽やかな足取りで歩きながら、弾けるように笑った。
「次はショーヘイの誕生日ね!」
「あー。もうそろそろ冬が終わるか」
「ショーヘイは、夏のはじめの生まれなのかい?」
「はい。ダンテさんと初めて会った日が誕生日でした」
「じゃあ、ショーヘイの誕生日パーティーもしなきゃね」
「やー。この歳でパーティーはちょっと恥ずかしいですよ」
「あら! いくつになっても誕生日パーティーをしてもいいじゃない! 『生まれてきてくれて、ありがとう!』って日なんだから!」
「……そっかな?」
「そうよ!」
「ドーラちゃんの誕生日はいつかな?」
「真夏の一番暑い頃よ」
「今年は、ドーラちゃんの誕生日パーティーもしよー。それも盛大に! 神殿の部屋を借りようぜ。ニー先生とかも呼んでさ」
「あはっ! 楽しみにしてる!」
誕生日は、『生まれてきてくれて、ありがとう』の日。ドーラの言葉が、祥平には、とても眩しく思えた。
祥平は、今日もピエリーに起こしてもらうと、ピエリーのお腹に顔をすりすりしてから、のろのろと起き上がった。ぴるるるっとご機嫌な声を上げて、ピエリーが祥平の肩に乗った。
「ピエリーちゃん。おはよう。今日は楽しいパーティーだー!」
「ぴるるるっ!」
祥平は、いつもより少し早くシャキッと覚醒すると、寝間着から冬華祭で着たお洒落服に着替えて、脱衣場の洗面台に向かった。
今日は、朝食を食べたら、ダンテが、神殿までドーラを迎えに行ってくれる。ミミーナが、いつもより少し早く出勤してくれるので、一緒にパーティーの準備をする予定だ。ドーラも一緒にパーティーの料理を作りたいということなので、とりあえず、時間がかかる料理の下拵え等を、ミミーナと一緒にやる。本格的な調理は、ドーラが来てからだ。
祥平は、機嫌よく、いつもの朝の家事をして、朝食後に、神殿に向かうダンテを見送った。パタパタと急いで洗濯物を干し終える頃に、ミミーナがやって来た。手には、キレイに包装されたダンテへのプレゼントと、キレイな生花と、お洒落な花瓶が入った袋を持っていた。ダンテへのプレゼントは、一旦、祥平の部屋に置き、2人で居間を立食パーティー用にセッティングしてから、台所へと向かった。
煮込み系のちょっと時間がかかる料理の下拵えが終わる頃に、ドーラがやって来た。台所にひょこっと顔を出したドーラは、冬華祭でお土産に買った髪飾りを着けてくれていた。
「おはよう! ショーヘイ! ミミーナさん! ちゃんとエプロン持ってきたわ! ニー先生がくれたの。この前のお礼だって」
「おー。可愛いじゃん。似合ってるよ」
「あら。本当に。刺繍が素敵ねぇ」
「ありがとう! さっ! 早速、作りましょう!」
淡い桃色のエプロンを着けたドーラが、やる気満々に腕捲りをした。誕生日パーティーということで、今日はお洒落仕様のダンテも、台所に入ってきた。
「私も一緒にやるよ」
「ダンテさん、今日の主役じゃないですか」
「皆で一緒にやった方が楽しいから、一緒にやりたいよ」
「んー。まぁ、いっか。じゃあ、一緒にやりましょうか。ガンダナの皮を剥いてくださいよ」
「了解」
「ショーヘイ。雇い主に手伝ってもらうのに、何の躊躇もないわね」
「え? だって、一緒にやった方が楽しいじゃん?」
「そうだけどね! あ、ミミーナさん。このお肉が硬くて切れないんだけど、どうしたらいいの?」
「あぁ。それはね、ちょっとコツがいるのよ。こう、肉の繊維にそって切ってみて?」
「うん。あ、すごい。サックリ切れたわ」
「ピエリーちゃーん。味見してー」
「あっ。いいな。ショーヘイ。私も味見したい」
「ダンテさんは、後で普通に食ってください」
4人でわちゃわちゃお喋りしながら料理をして、ちょうど昼頃に、パーティー料理が完成した。皆で手分けして料理を運び、人数分のラーリオ茶を淹れたら、パーティーの始まりである。
祥平は、んんっと軽く咳払いしてから、お茶が入ったマグカップを片手に、へらっと笑って口を開いた。
「それでは! ダンテさんの誕生日にかんぱーい! おめでとうございます!」
「「「かんぱーい」」」
お茶が入ったマグカップを、カチンカチンと軽くぶつけて乾杯をすると、早速、美味しいご飯の時間だ。テーブルの上いっぱいの料理を見て、ダンテの目がキラキラと輝いた。
「どれもお洒落で素敵だなぁ。ちょっと食べるのが勿体無いくらい」
「いや、普通に食いましょうよ。全部美味しいんで!」
「うん」
ダンテが、とても嬉しそうに笑って、ハルハルというキャベツとレタスの中間みたいな野菜で作った皿にのせた『ポテサラもどき』を一口で食べた。ダンテから、幸せそうな空気が漂っている。
祥平も、ミミーナとドーラが一緒に作っていた、カナッペもどきをパクンと一口で食べた。サクサクのほんのり甘さ控えめなペッタの食感と、ねっとりしたモッツァレラチーズみたいな味の果物、甘酸っぱいハンナナのジャムが、絶妙に合わさって、口の中が幸せになる。他にも、ダンテが好きなバーナンの揚げ物や、リンデルという一口大のカブっぽい野菜をちょっとくり抜いて薄味で煮込んで、ガルーの煮込みを入れたもの等、色々な美味しいものがある。
ダンテも、ピエリーも、ドーラも、ミミーナも、皆、美味しそうに、楽しそうに食べている。祥平は、もぐもぐ咀嚼しながら、むふっと笑った。美味しいものは、誰かと一緒に楽しく食べた方が、より美味しい。祥平は、異世界に来てから、そう強く思うようになった。多分、ダンテの影響が強い気がする。
美味しくて、楽しくて、多分、幸せってこんな感じなんだろうな、と思いながら、祥平は、3人と楽しくお喋りしながら、美味しい料理をもりもり食べた。
多めに用意した筈の料理がキレイに無くなり、皆、お腹いっぱいになったら、プレゼントの時間である。祥平は、ミミーナと一緒に、いそいそと自室に行き、箱に入れて包装したプレゼントを手に取った。
ドーラ達と一緒に、ダンテにプレゼントを渡すと、ダンテが照れたように、でも、すごく嬉しそうに笑った。早速、プレゼントを開けたダンテが、嬉しそうな歓声を上げた。
「3人とも、本当にありがとう! 大切に使うよ!」
「傷薬は出番が無い方がいいわよ」
「いやぁ。任務で割と小さな怪我をすることが多いから、本当に助かるし、嬉しいなぁ。ありがとう。ドーラちゃん」
「いーえー! ふふっ」
「ミミーナさんもありがとう。大切に着るよ」
「うふふ。ちょうど素敵な黒い布地があったんです。今度は、ショーヘイに旦那様の色のガナータを作りますから、是非とも着てくださいな。防御力の為に」
「新聞効果って怖いよな……馴染みの市場の人から、すげぇお祝い言われて、オマケしてもらってるんだけど。俺」
「ははは……私も職場で、竜騎士以外の人から声をかけられまくってるよ……」
「だって、2人とも新聞の一面に出てたじゃない。新聞見て、ビックリどころじゃなかったわ。私」
「えぇ。私も、まさかここまでとは予想外でしたわ」
「暫くは、恋人のフリを続けるんでしょ?」
「うん。その方が無難かなって。『実は恋人のフリでしたー!』とか言って、貴族がわんさか押し寄せてきたら嫌だし」
「それは嫌過ぎるわ」
「ショーヘイが作ったマグカップ、可愛いね。もしかして、この絵はピエリー?」
「そうですよ。残念ながら、俺に絵心は無かったんですけど」
「十分可愛いし、ピエリーだって分かるよ。本当にありがとう。明日から、このマグカップを使うよ」
「へへっ。喜んでもらえて、嬉しいです!」
ダンテの手放しの喜びようが、ちょっと照れくさいが、それ以上に、本当に嬉しい。3人でコツコツ頑張ってきた甲斐がある。準備もすごく楽しかったし、パーティーも大成功だ。
午後のお茶の時間には、ミミーナが作ってきてくれていたケーキを食べて、後片付けも、皆でわちゃわちゃ喋りながらやった。
夕方になる前に、ダンテと一緒に、ドーラを神殿に送り届ける。ドーラがスキップするような軽やかな足取りで歩きながら、弾けるように笑った。
「次はショーヘイの誕生日ね!」
「あー。もうそろそろ冬が終わるか」
「ショーヘイは、夏のはじめの生まれなのかい?」
「はい。ダンテさんと初めて会った日が誕生日でした」
「じゃあ、ショーヘイの誕生日パーティーもしなきゃね」
「やー。この歳でパーティーはちょっと恥ずかしいですよ」
「あら! いくつになっても誕生日パーティーをしてもいいじゃない! 『生まれてきてくれて、ありがとう!』って日なんだから!」
「……そっかな?」
「そうよ!」
「ドーラちゃんの誕生日はいつかな?」
「真夏の一番暑い頃よ」
「今年は、ドーラちゃんの誕生日パーティーもしよー。それも盛大に! 神殿の部屋を借りようぜ。ニー先生とかも呼んでさ」
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