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46:悶々ムラムラダンテさん

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 ダンテは、眠れずに朝を迎えた。ショーヘイは、ダンテの腕を抱き枕のようにして、くっついて穏やかな寝息を立てている。ダンテの足に、祥平のすべすべつるつるの柔らかい足が絡まっている。

 昨夜、ショーヘイに誘われて、ついつい、いやらしいことをしてしまった。ショーヘイが、『男同士だと、割と簡単にヤる』とか言っていたが、ちょっとどうかと思う。思うのだが、ショーヘイにいやらしく誘われて、抗えなかった。結局、ショーヘイの足を触れたり、舐めたりしながら、三回も射精してしまった。ショーヘイも二回射精していた。ショーヘイは、終始楽しそうに笑っていた。

 ショーヘイが、ダンテといやらしいことをして、興奮してくれたことに喜ぶべきなのか否か。そりゃあ、将来的なことを考えたら、ダンテに性的興奮してくれたら嬉しい気はするが、なんだか急展開過ぎて、頭がついてこない。

 昨夜、ある程度興奮がおさまったら、一緒にシャワーを浴びて、洗濯済みの寝間着に着替えてから、一緒に横になった。ショーヘイは、ダンテにくっついて、すんすんとダンテの匂いを嗅いでから、『ねーれーるー』と呟いて、すぐに寝落ちた。ダンテは、どうにも落ち着かなくて、ぴったりとくっついているショーヘイの体温やほのかに香るショーヘイの匂いにドキドキして、全く眠れなかった。

 ショーヘイが、ダンテとの関係を先に進めようとしてくれたのは、素直に嬉しい。が、やはり、結婚前にいやらしいことをするのは、正直どうかと思う。というか、勢いあまって、ショーヘイを襲ってしまいそうで、自分がちょっと怖い。ダンテは、できたら、ショーヘイを抱きたいと思っているが、それをしていいのは、今ではない。もう少し時間をかけて、お互いを知り合って、ちゃんと恋人になって、結婚してからにするべきだ。

 だが、くっついているショーヘイに、現在進行系でムラムラしている。昨夜、三回も出したのに、ちょっとでも油断すると、ペニスが勃起してしまいそうだ。気持ちよさそうに眠るショーヘイを離すのは、ちょっと可哀想だから、したくはないので、ダンテは一晩中ムラムラに耐えていた。

 ダンテは、小さく溜め息を吐いて、首を動かして、ショーヘイの寝顔を眺めた。すぴーと小さな寝息を立てて寝ているショーヘイが、なんだかいつもより幼く見えて、正直かなり可愛い。髭が生えた男を可愛いと思う日がくるとは、全く予想もしていなかったが、今は、ショーヘイがとても可愛く見える。

 薄暗い中で、ショーヘイの耳に着けている萌黄色の石がついたピアスが見える。買った時は、ただ単に防御力を上げたかっただけだが、今は、ショーヘイをダンテが独占しているような気がして、ちょっと気分がいい。しかし、こうも気持ちが変化するのなら、できたら、もっとロマンチックな感じで、ピアスを渡したかった気もする。ショーヘイの寝間着の広めの襟元から、チラリと革紐が見えている。ダンテが作ったピエリーの牙のペンダントを、ずっと身に着けてくれているようだ。嬉しくて、なんだかそわそわしてしまう。

 ダンテは、思い切って慎重に寝返りを打ち、ショーヘイの小柄な身体をゆるく抱きしめた。鼻先をショーヘイの頭に埋めれば、微かな汗の匂いと洗髪剤の匂い、それからショーヘイの匂いがした。胸いっぱいにショーヘイの匂いを吸い込むと、なんとなく落ち着くと同時に、下腹部がむずむずしてくる。今にも勃起してしまいそうなのを堪えながら、ダンテは、ショーヘイの頭に頬擦りをした。
 腕の中のショーヘイの体温が心地よくて、なんだか愛おしくて、ぶっちゃけムラムラする。

 ダンテは、男同士のセックスの仕方なんて知らない。そもそも、男女のセックスの仕方も、ふんわりとしか知らない。座学の閨の授業も一応あったが、興味が無かったので、殆ど聞き流していた。当時は、ピエリーを育てつつ、どんどん大きくなるピエリーに乗って飛ぶのが面白くて、他の事は、割りとどうでもよかった。

 ショーヘイと、いつかは家族になりたい。ずっと一緒に美味しいものを食べて、たくさんお喋りをして、一緒に笑って、一緒に寝起きして、手を繋いで買い物や散歩に行ったりして。些細な事で、一緒に笑い合える今の関係を、ずっと続けていきたい。

『結婚』という単語が頭にチラつくが、結婚をするのは、まだ少し早い気がする。それに、ショーヘイと結婚するとなると、実家の両親や兄達が煩そうだ。
 年越しの日に呼び出されて実家に帰れば、ショーヘイのことを根掘り葉掘り聞かれた。とりあえず、恋人だとは伝えておいたが、あまりショーヘイに関する詳しい事は話さなかった。父からは『必ず『神様からの贈り人』と結婚しろ。その方が、我が家に箔が付く』と言われた。ショーヘイと結婚したら、間違いなく、両親から、ショーヘイと共に、社交界に連れ出されるだろう。自分達の自慢の為に。それだけは絶対に嫌だ。育ててもらった恩は一応あるが、ダンテは、半分はパラスに育ててもらったようなものなので、そこまで付き合ってやるつもりはない。ショーヘイを見世物にするつもりは欠片もない。結婚をする前に、両親や兄達をどうにかしないと、落ち着いて結婚をすることはできない。

 ダンテは、両親の顔を思い浮かべて、憂鬱な溜め息を吐き、すりすりとショーヘイの頭に頬擦りをした。ムラムラしているけれど、ショーヘイを抱き締めているだけで、なんだか癒やされる。この先、いよいよ結婚がしたくなったら、パラスに相談してみよう。最悪、実家との縁を切ってもいい。竜騎士の給料だけで、十分ミミーナもショーヘイも雇えるし、普通に今の生活ができる。そもそも、竜騎士になってからは、一切金銭的援助をしてもらっていない。貯金もそこそこあるし、定年退職である55歳まで勤めれば、老後の心配もしなくて大丈夫だろう。

 引退したら、ピエリーに乗って、ショーヘイと自由気ままな旅をするのもいいかもしれない。考え始めたら、どんどん夢が膨らんでいく。ショーヘイに見せたい景色や、ショーヘイに食べさせたいものが、沢山沢山ある。

 ダンテは、ショーヘイが自然と目覚めるまで、ムラムラを堪えながら、ショーヘイとの楽しい将来のことを夢想していた。

 ショーヘイが目覚めたので、ダンテは抱き締めていた腕を離した。くわぁっと大きな欠伸をしたショーヘイが、眠そうな顔でダンテを見て、そこから自然な動きでダンテの唇に触れるだけのキスをした。一気に、ぼっと顔が熱くなる。
 ショーヘイが、へらっと笑って、ダンテの熱い頬にキスをしてから、起き上がった。


「おはようございまーす。あー。ちょっと寝過ぎました。ピエリーちゃんがまだ起きてないの、珍しいですねー」

「あ、えっと、多分、ピエリーは疲れてたから」

「ありゃ。じゃあ、もう少し寝かせときましょうか。ミミーナさんが来たら、昼飯はいらないことを伝えとかないとですね」

「あ、うん」


 ショーヘイは、とても普段通りである。昨夜、いやらしい事をしたとは思えないくらい、普通だ。なんだか、ちょっと釈然としない。

 ショーヘイがベッドから下りたので、ダンテも起き上がり、ベッドから下りた。なんとなくショーヘイの側に立つと、ショーヘイがダンテを見上げて、にまーっと笑った。


「シャワー、一緒に浴びます?」

「そ、それはっ……えーと、また今度で?」

「おや。残念? じゃあ、お先にシャワーをどうぞ。俺はアルモンを採ってきます」

「あ、うん」


 残念って、どういう意味なのだろう。ショーヘイは、ダンテと一緒にシャワーを浴びたかったのだろうか。だが、今、一緒にシャワーを浴びたりなんかしたら、絶対に勃起してしまう。朝から、いやらしい事をするのは、よくない。

 ダンテは、ドキマギしながら、着替えを持って、階下の風呂場に向かった。 


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