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58:初デート
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祥平は、いつもより少し早めにピエリーに起こしてもらうと、ピエリーの腹に顔を埋めて、すーはーすーはーとピエリーを吸った。猫吸いならぬ飛竜吸いである。ザラザラの鱗の感触が地味に楽しい。ピエリーが、ぴるるるるっと楽しそうな鳴き声を上げた。
今日は、初デートである。今更感が割とあるが、初デートなのである。祥平は、ピエリーを抱っこして、いそいそとベッドから下りた。チラッとダンテの方を見れば、ダンテは、まだぐっすりと寝ている。いっそ映画みたいにキスをして起こしてやろうかと思ったが、ダンテにはいつもの時間に起きてもらうつもりなので、今はやめておくことにする。
祥平は、軽やかな足取りで、階下の脱衣場に向かい、顔を洗って、気合を入れて髭を整えた。先に洗濯物を仕掛けてから、庭に出る。寝間着姿では、地味に辛い寒さになってきた。祥平は、手早くアルモンを収穫すると、裏の水道でアルモンを洗い、台所へと向かった。
手早くナータの粥を作り、同時進行で、挽肉入りの巨大オムレツを作る。これもダンテの好物だ。ちゃんとキレイな形に完成したオムレツに満足して、アルモンのジュースを作っていると、台所に髪がボサボサのダンテがやって来た。
「おはよう。ショーヘイ。ピエリー」
「おはようございます。今日は、ダンテさんが手紙を書いてる間に、家のことを済ませちゃいますね。ミミーナさんが来たら、今日は出かけることを伝えておきます」
「うん。晩ご飯はどうする?」
「今の時期の、ダンテさんのオススメってあります?」
「リバクトーンっていう魚が美味しい季節だね。切り身を揚げて、野菜たっぷりのあんをかけたやつが絶品のお店を知ってるよ」
「それで! 晩飯はそれがいいです!」
「うん。私も食べるのは久しぶりだから、楽しみだなぁ」
「じゃあ、ミミーナさんには、晩飯もいらないことを伝えておきますね」
「うん。お願いします。私は、朝ご飯を食べたら、手紙を書いておくよ」
「はい。お願いします。朝飯出来たんで、食べますか」
「うん。お腹空いた」
ダンテと一緒に、朝食を居間のテーブルに運んで、早速食べ始める。朝からもりもり美味しそうに食べてくれるダンテを眺めるのが、実に楽しい。胸の奥がぽかぽかしてくる。
朝食の後片付けも、ダンテが手伝ってくれた。一緒にお喋りをしながら、手早く後片付けを済ませると、祥平は、自室に行ってガナータを羽織り、洗濯物を干し始めた。お洒落服に着替えて、シーツを回収してから、寝間着と一緒に二回目の洗濯をしていると、ミミーナが出勤してきた。ミミーナに、今日はデートをすることを伝えると、ミミーナが嬉しそうに笑った。『残りの家事は任せておいて!』と言ってくれたので、ありがたくお願いした。明日は、ちゃんと仕事をするつもりである。
ミミーナとバトンタッチをして、自室に行き、ダンテとお揃いのペンダントと、去年の冬華祭で買ってもらった指輪を着ける。コートと、財布を入れた肩掛け鞄を持って、祥平は部屋を出た。
居間に行くと、お洒落な服を着たダンテがいた。ダンテに、前髪を上げてもらったら、出かける準備完了である。ダンテも、お揃いのペンダントと指輪を着けていた。打ち合わせとかしていないのに、同じことをしているのが、気恥ずかしいが、かなり嬉しい。
祥平は、ミミーナに見送られて、ダンテと腕を組んで、家を出た。
先に郵便屋に寄ってから、ちょっとお高めだけど、お洒落な服を扱っている店に向かう。店に入ると、ダンテが、ぽんと手を叩いた。
「ショーヘイ。折角だし、お互いの服を選び合わない?」
「おっ。楽しそうですねー。でも、俺は、流行り廃りは分かりませんよ」
「気にしなくていいよ。私に似合うかな? って服を探してくれたら嬉しいな」
「そういうことなら、気合を入れて探します。ダンテさん、男前だから何着ても似合いそうですけど」
「あはは。ありがとう。じゃあ、服の売り場が離れてるから、いったん解散ということで。いい感じの服を見つけたら、また合流して、試着してみようか」
「はーい。ピエリーちゃん。協力してね」
「ぴるるるるっ!」
祥平は、いつもの如く肩に乗っているピエリーと一緒に、ダンテに似合う服を探し始めた。折角なので、黒いシャツを探しているのだが、お洒落な店なだけあって、黒いシャツも種類が豊富で、どれがいいのか分からない。段々、全部同じに見えてきた。祥平は、一度シャツコーナーから離れて、今度はズボンを見に行った。ズボンは、すぐに決まった。濃い水色の細身のズボンで、ポケットのところに、赤い飛竜の刺繍が施してあるものだ。まるで、ダンテの為に作られたものみたいだ。即決で、このズボンに決めると、祥平はシャツコーナーに戻った。時間をかけて、襟付きの黒いシャツを選んだ。襟のところに繊細な刺繍が施してあって、とてもお洒落である。ボタンの形が四角なのも面白いし、胸ポケットもついていて、胸ポケットにも小洒落た刺繍が施してある。ダンテに、とても似合うと思う。
シャツとズボンを持って、ダンテの元へ向かうと、ダンテも、ちょうど選び終えたところだった。とりあえず試着をしてみようということで、2人で試着コーナーに向かった。
ダンテが選んでくれたものは、ダンテの髪色に近い濃い緑色の、首元がちょっとあいた襟なしのシャツだった。首周りや裾のあたりにお洒落な刺繍が施してある。寒くないようにか、黒いお洒落感のあるストールもある。ズボンは、細身の黒いもので、ダメージジーンズっぽい加工がしてあった。この国にも、ダメージジーンズってあるのか。着てみれば、サイズはピッタリだった。試着室から出ると、ダンテも同じタイミングで出てきた。祥平が選んだ服を着たダンテは、問答無用で格好よかった。男前すごい。
「ダンテさん、服のサイズは大丈夫ですか?」
「大丈夫。祥平は?」
「大丈夫です。ダンテさん、めちゃくちゃ似合いますねー」
「祥平も似合ってるよ。寒くない?」
「ストールがあるから平気です」
「よかった。じゃあ、これを買おうか」
「はい」
「あー……あの、よかったら、お揃いのペンダントを買わない?」
「いいですね! 初デート記念ということで」
「うん。……ちょっと照れくさいね」
「ははっ。確かに」
祥平は、照れたように笑うダンテを見上げて、へらっと笑った。
試着した服から着替えて、会計をする前に、装飾品のコーナーを覗いてみた。銀色の小さなヒーリョクを象ったものがついているペンダントがあったので、それを買うことにした。ヒーリョクは、番になると、ずっとくっついていて、絶対に離れないらしい。そういえば、去年の冬華祭で食べた気がする。
会計をして、服屋を出ると、中央広場で買い食いをしてから、中央広場の近くの古本屋に立ち寄った。エロ本目的ではなく、純粋に普通に読む本が欲しかったので。ダンテのオススメの本を探したり、一緒に楽しそうな本を探していると、あっという間に時間が過ぎた。三冊の本を買うと、夕食を食べに、絶品料理があるという店へと向かい、ダンテと腕を組んで歩き始めた。
ダンテのオススメの魚料理は、ガチで美味しかった。揚げてあるふわふわの魚に、たっぷりかけてある野菜のあんが絶妙に美味しくて、なんとも幸せな気分になる。美味しそうに食べているダンテを見ると、二倍幸せな気分になった。美味しそうにもりもり食べるダンテは、可愛くて、癒やされる。本当に最高過ぎる。
他にも、ダンテのオススメの料理を注文して、お腹いっぱいになるまで、美味しい料理を堪能した。
暗くなった道を、腕を組んで寄り添って歩きながら、祥平は、ダンテの横顔を見上げた。すぐにダンテがこちらを見下ろして、おっとりと笑った。
「楽しかったですね」
「うん。パーティー用にいい服が買えてよかったよ。ショーヘイの服を選ぶのが、すごく楽しかったから、またしたいなぁ」
「いいですねー。俺も楽しかったです。ダンテさん。ダンテさん」
「ん?」
「帰ったら、イチャイチャしましょうか」
「う、うん……」
暗くても分かる程、ダンテの顔がぶわっと赤くなった。ダンテの反応が可愛くて、正直堪らん。
祥平は、ルンルン気分で、ダンテとのんびり歩いて、家に帰った。
今日は、初デートである。今更感が割とあるが、初デートなのである。祥平は、ピエリーを抱っこして、いそいそとベッドから下りた。チラッとダンテの方を見れば、ダンテは、まだぐっすりと寝ている。いっそ映画みたいにキスをして起こしてやろうかと思ったが、ダンテにはいつもの時間に起きてもらうつもりなので、今はやめておくことにする。
祥平は、軽やかな足取りで、階下の脱衣場に向かい、顔を洗って、気合を入れて髭を整えた。先に洗濯物を仕掛けてから、庭に出る。寝間着姿では、地味に辛い寒さになってきた。祥平は、手早くアルモンを収穫すると、裏の水道でアルモンを洗い、台所へと向かった。
手早くナータの粥を作り、同時進行で、挽肉入りの巨大オムレツを作る。これもダンテの好物だ。ちゃんとキレイな形に完成したオムレツに満足して、アルモンのジュースを作っていると、台所に髪がボサボサのダンテがやって来た。
「おはよう。ショーヘイ。ピエリー」
「おはようございます。今日は、ダンテさんが手紙を書いてる間に、家のことを済ませちゃいますね。ミミーナさんが来たら、今日は出かけることを伝えておきます」
「うん。晩ご飯はどうする?」
「今の時期の、ダンテさんのオススメってあります?」
「リバクトーンっていう魚が美味しい季節だね。切り身を揚げて、野菜たっぷりのあんをかけたやつが絶品のお店を知ってるよ」
「それで! 晩飯はそれがいいです!」
「うん。私も食べるのは久しぶりだから、楽しみだなぁ」
「じゃあ、ミミーナさんには、晩飯もいらないことを伝えておきますね」
「うん。お願いします。私は、朝ご飯を食べたら、手紙を書いておくよ」
「はい。お願いします。朝飯出来たんで、食べますか」
「うん。お腹空いた」
ダンテと一緒に、朝食を居間のテーブルに運んで、早速食べ始める。朝からもりもり美味しそうに食べてくれるダンテを眺めるのが、実に楽しい。胸の奥がぽかぽかしてくる。
朝食の後片付けも、ダンテが手伝ってくれた。一緒にお喋りをしながら、手早く後片付けを済ませると、祥平は、自室に行ってガナータを羽織り、洗濯物を干し始めた。お洒落服に着替えて、シーツを回収してから、寝間着と一緒に二回目の洗濯をしていると、ミミーナが出勤してきた。ミミーナに、今日はデートをすることを伝えると、ミミーナが嬉しそうに笑った。『残りの家事は任せておいて!』と言ってくれたので、ありがたくお願いした。明日は、ちゃんと仕事をするつもりである。
ミミーナとバトンタッチをして、自室に行き、ダンテとお揃いのペンダントと、去年の冬華祭で買ってもらった指輪を着ける。コートと、財布を入れた肩掛け鞄を持って、祥平は部屋を出た。
居間に行くと、お洒落な服を着たダンテがいた。ダンテに、前髪を上げてもらったら、出かける準備完了である。ダンテも、お揃いのペンダントと指輪を着けていた。打ち合わせとかしていないのに、同じことをしているのが、気恥ずかしいが、かなり嬉しい。
祥平は、ミミーナに見送られて、ダンテと腕を組んで、家を出た。
先に郵便屋に寄ってから、ちょっとお高めだけど、お洒落な服を扱っている店に向かう。店に入ると、ダンテが、ぽんと手を叩いた。
「ショーヘイ。折角だし、お互いの服を選び合わない?」
「おっ。楽しそうですねー。でも、俺は、流行り廃りは分かりませんよ」
「気にしなくていいよ。私に似合うかな? って服を探してくれたら嬉しいな」
「そういうことなら、気合を入れて探します。ダンテさん、男前だから何着ても似合いそうですけど」
「あはは。ありがとう。じゃあ、服の売り場が離れてるから、いったん解散ということで。いい感じの服を見つけたら、また合流して、試着してみようか」
「はーい。ピエリーちゃん。協力してね」
「ぴるるるるっ!」
祥平は、いつもの如く肩に乗っているピエリーと一緒に、ダンテに似合う服を探し始めた。折角なので、黒いシャツを探しているのだが、お洒落な店なだけあって、黒いシャツも種類が豊富で、どれがいいのか分からない。段々、全部同じに見えてきた。祥平は、一度シャツコーナーから離れて、今度はズボンを見に行った。ズボンは、すぐに決まった。濃い水色の細身のズボンで、ポケットのところに、赤い飛竜の刺繍が施してあるものだ。まるで、ダンテの為に作られたものみたいだ。即決で、このズボンに決めると、祥平はシャツコーナーに戻った。時間をかけて、襟付きの黒いシャツを選んだ。襟のところに繊細な刺繍が施してあって、とてもお洒落である。ボタンの形が四角なのも面白いし、胸ポケットもついていて、胸ポケットにも小洒落た刺繍が施してある。ダンテに、とても似合うと思う。
シャツとズボンを持って、ダンテの元へ向かうと、ダンテも、ちょうど選び終えたところだった。とりあえず試着をしてみようということで、2人で試着コーナーに向かった。
ダンテが選んでくれたものは、ダンテの髪色に近い濃い緑色の、首元がちょっとあいた襟なしのシャツだった。首周りや裾のあたりにお洒落な刺繍が施してある。寒くないようにか、黒いお洒落感のあるストールもある。ズボンは、細身の黒いもので、ダメージジーンズっぽい加工がしてあった。この国にも、ダメージジーンズってあるのか。着てみれば、サイズはピッタリだった。試着室から出ると、ダンテも同じタイミングで出てきた。祥平が選んだ服を着たダンテは、問答無用で格好よかった。男前すごい。
「ダンテさん、服のサイズは大丈夫ですか?」
「大丈夫。祥平は?」
「大丈夫です。ダンテさん、めちゃくちゃ似合いますねー」
「祥平も似合ってるよ。寒くない?」
「ストールがあるから平気です」
「よかった。じゃあ、これを買おうか」
「はい」
「あー……あの、よかったら、お揃いのペンダントを買わない?」
「いいですね! 初デート記念ということで」
「うん。……ちょっと照れくさいね」
「ははっ。確かに」
祥平は、照れたように笑うダンテを見上げて、へらっと笑った。
試着した服から着替えて、会計をする前に、装飾品のコーナーを覗いてみた。銀色の小さなヒーリョクを象ったものがついているペンダントがあったので、それを買うことにした。ヒーリョクは、番になると、ずっとくっついていて、絶対に離れないらしい。そういえば、去年の冬華祭で食べた気がする。
会計をして、服屋を出ると、中央広場で買い食いをしてから、中央広場の近くの古本屋に立ち寄った。エロ本目的ではなく、純粋に普通に読む本が欲しかったので。ダンテのオススメの本を探したり、一緒に楽しそうな本を探していると、あっという間に時間が過ぎた。三冊の本を買うと、夕食を食べに、絶品料理があるという店へと向かい、ダンテと腕を組んで歩き始めた。
ダンテのオススメの魚料理は、ガチで美味しかった。揚げてあるふわふわの魚に、たっぷりかけてある野菜のあんが絶妙に美味しくて、なんとも幸せな気分になる。美味しそうに食べているダンテを見ると、二倍幸せな気分になった。美味しそうにもりもり食べるダンテは、可愛くて、癒やされる。本当に最高過ぎる。
他にも、ダンテのオススメの料理を注文して、お腹いっぱいになるまで、美味しい料理を堪能した。
暗くなった道を、腕を組んで寄り添って歩きながら、祥平は、ダンテの横顔を見上げた。すぐにダンテがこちらを見下ろして、おっとりと笑った。
「楽しかったですね」
「うん。パーティー用にいい服が買えてよかったよ。ショーヘイの服を選ぶのが、すごく楽しかったから、またしたいなぁ」
「いいですねー。俺も楽しかったです。ダンテさん。ダンテさん」
「ん?」
「帰ったら、イチャイチャしましょうか」
「う、うん……」
暗くても分かる程、ダンテの顔がぶわっと赤くなった。ダンテの反応が可愛くて、正直堪らん。
祥平は、ルンルン気分で、ダンテとのんびり歩いて、家に帰った。
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