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何故か上司と結婚することになりまして
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春を思わせる小春日和の今日。オーバンは、見合いの席で、驚愕のあまり固まっていた。目の前には、上司であるシプリアノが平然とした顔で座っている。
今日の見合いは、叔母がセッティングしてくれた。オーバンに似合いの相手が来てくれるという話だったのに、目の前にいるのは直属の上司である。
オーバンは、顔を引き攣らせたまま、シプリアノに声をかけた。
「隊長。隊長って、今日は見合いだって言ってませんでした?」
「今まさに見合いの場にいるな」
「誰と?」
「俺とお前が見合い中だ」
「なんで!? 叔母さん、どういうこと!?」
「えー? シプリアノ隊長とは、オーちゃん、長い付き合いなんでしょ? そろそろ愛も芽生える頃かしらー? って思ってぇ」
「芽生えねぇから。一緒に野糞したこともある相手と愛なんて芽生えねぇから」
「あらやだ。オーちゃんったら下品よ。ごめんなさいねぇ。シプリアノ隊長」
「いえ。いつものことですから」
「隊長。俺がいつも下品みたいに言うのはやめてください」
「オーバン」
「あ、はい」
「見合いをした。ということで、結婚するぞ」
「はいっ!? 正気ですか!?」
「この上なく正気だ」
「……実は、隊長って俺のことが好きだったりとか……」
「ないな」
「ないのかよ。えー! じゃあ、何で結婚することになるんですかーー!!」
「上官達からの見合い攻撃がいい加減鬱陶しい」
「あぁ。そりゃあ、仕方がないですよ。顔良し、家柄良し、先の戦では戦果上げまくり、将来の期待値が大きい。自分の身内に取り込みたい要素しかないじゃないですか」
「そんな面倒な結婚をして堪るか。それくらいだったら、お前と結婚するわ」
「俺の意思は?」
「あると思うのか?」
「横暴だーー!!」
「煩い。叫ぶな。第一、お前、同性愛者だろう。結婚相手なんて見つけられるのか? 自力で」
「は? 無理ですけど?」
「だったら俺にしておけ」
「えぇ……でもでもぉ、隊長って微妙に俺の好みじゃないっていうかぁ」
「贅沢言うな。平凡顔」
「平凡ですいませんねー! 副隊長の腕章着けてても一平卒に間違われててすいませんねーー!! ……俺って、そんなに存在感無いんですかね」
「仕事はすこぶるできるが、影は薄い」
「知ってましたよ。ちくしょー」
「式は来月だ」
「早くないですか!?」
「もう、式場も押さえているし、衣装も手配済みだ。招待状も送ってある」
「隊長。そこまでしてて、改めて見合いする必要ありました?」
「まぁ、一応形だけでもな」
「俺の意思はーー!?」
「ないな」
オーバンは、しれっとした顔でカフェオレを飲むシプリアノの渋くて格好いい男前な顔をキッと睨んだ。
「家庭内では上官と部下じゃありませんからね! 対等な立場ですからね! 家庭内暴力があった場合は、即! 離婚です!」
「まぁいいだろう。じゃあ、これにサインしろ」
「……隊長。婚姻届って書いてありますけど」
「さっさと外堀を埋めきってしまうぞ」
「ちなみに、逃してくれたりとかは?」
「すると思うか? この俺が」
「ですよねー……うぅ……さようなら、俺の夢」
「お前の夢?」
「えっとー、儚げ美人なダーリンとー、小さな家で犬を飼って、のんびり老後を過ごすー、みたいな?」
「ふーん。まぁ、軍を引退した後なら、犬を飼ってもいいぞ」
「隊長。今すぐ俺好みの儚げ美人になってください」
「無理言うな」
「筋肉ムキムキのちょー男前が伴侶かぁ。しかもおっさん」
「誰がおっさんだ」
「隊長。40手前はおっさんですよ」
「お前だって34だろうが。四つしか違わん」
シプリアノが逃してくれるとは思えないので、オーバンは渋々婚姻届にサインをした。
シプリアノは、とても優れた軍人だ。個人の戦闘能力が高く、戦況を見る目が非常に優れていて、指揮能力も高い。死地に送られたことが何度もあるが、その度に戦況をひっくり返して、最終的に自国を勝利へと導いた。勿論、自国の勝利は、シプリアノの活躍だけによるものではないが、国や軍の上層部が無視できない存在感を残している。オーバンは、戦が始まる3年前にシプリアノの副隊長になり、それからずっと、シプリアノと共に死地を潜り抜けてきた。ありふれた茶髪茶目で、地味な顔立ちをしており、存在感が薄いと自分でも思っている。
対して、シプリアノは、金髪碧眼の渋い男の色気が溢れる男前である。軍の内外にファンがいるくらいだ。仕事ができるし、絶対に部下を捨て駒のように扱ったりしない。人として、上司としては、この上なく慕っているが、結婚して、愛せるかは、実に微妙なところである。
翌日。早速婚姻届を役所に提出して、オーバンとシプリアノは男夫婦になった。
ーーーーーー
オーバンの朝は早い。日が昇る頃に起き出して、自宅の狭い庭で軽い筋トレをした後、走り込みがてら、朝市へと向かう。今日使う食材を買ってから自宅へ帰り、急いでシャワーを浴びて、朝食を作り始める。
シプリアノは、絶望的に料理が下手だ。行軍中に何度かエグい目にあっているので、シプリアノには台所侵入禁止令を出している。オーバンもそこまで料理上手というわけではないが、シプリアノよりも遥かにマシなので、料理担当はオーバンになった。
今朝の朝食は、ふわふわ甘めのオムレツをトマトソースとチーズと一緒に挟んだサンドイッチに、ハムとシャキシャキレタスたっぷりのサンドイッチ、野菜たっぷりのスープに、ぶっとい腸詰め肉を1人四本ずつ焼いた。身体を使う仕事だから、2人とも結構な量を食べる。いつも弁当も作っているので、朝は大忙しなのである。
台所で珈琲を淹れていると、髪が濡れたままのパジャマ姿のシプリアノが台所の入り口から声をかけてきた。
「おはよう。腹減った」
「おはようございます。飯は出来てますよ。珈琲淹れてるんで、ちょっとだけ待っててください」
「ん」
シプリアノは、戦場では何でも飲むが、それ以外だと、激甘なカフェオレしか飲まない。他に甘いものを食べないので、激甘カフェオレを愛飲していても大丈夫かと思うが、軍を引退したら、少し控えさせようかと思っている。
ガツガツと朝食を食べ終えると、2人揃ってバタバタと手分けして朝の家事を終わらせて、出勤する。仕事の話をしながら、歩いて小半時の職場へと向かう。
軍の建物に入り、自分達の部屋に向かって、朝礼をしたら、今日のお仕事開始である。今は戦時下ではないので、軍人の仕事はもっぱら治安維持と訓練だ。殺人事件が立て続けに起きているので、今はその捜査をメインでしている。
オーバンは、部下を数名連れて、足早に聞き取り調査へと向かった。
聞き取り調査で有益な情報を得てから、数日、軍の建物に泊まり込み、なんとか殺人事件の犯人を確保できた。そろそろ自分のベッドで寝たくなってきていたので、早めに犯人を確保できて何よりである。
取り調べや事後処理が終わると、オーバンは約一週間ぶりに、シプリアノと一緒に自宅に帰った。
自宅にはまともな材料が無いので、少し遠回りをして、夜遅くでも営業している惣菜屋で惣菜やパンを大量に買い、家に帰った。
オーバン達が暮らすこの家は、シプリアノの持ち家だ。婚姻届を提出した翌日に、即金で買ったらしい。ちょっと古いが、小ぢんまりとした感じが可愛くて、オーバン的には気に入っている。
シプリアノと結婚して早一ヶ月。寝室は別だし、特別変わったことなどない日々を送っている。
オーバンが夕食の後片付けをし終えた頃に、風呂上がりのシプリアノがパジャマ姿で台所の入り口から顔を出した。
「カフェオレ」
「寝る前に飲むと寝付きが悪くなるでしょ。温かいミルクで我慢してください。貰い物の蜂蜜入れてあげますから」
「ちっ。妥協してやろう」
「明日は休みだから、俺は昼前まで起きませんからね」
「分かっている。朝飯は適当に買ってくる」
「そうしてくださーい。はい。ミルク」
「ん」
オーバンは、手早く温めた蜂蜜入りのミルクが入ったマグカップをシプリアノに差し出した。行儀悪く立ったまま飲み始めたシプリアノに小言を言ってから、自室に向かい、風呂場へ移動する。
家の風呂場は、ぶっちゃけ狭い。オーバンもシプリアノも、ガタイがいいので、浴槽が割と狭い。毎日、お山座り状態でお湯に浸かっている。それでも、戦場にいた頃に比べたら、毎日が天国のようである。毎日、まともな食事がとれて、身体を清潔にできて、何より生命の危険がない。平和バンザイである。2年前まで戦をしていた隣国とは反対側の国と若干きな臭い感じになっているので、この平和がいつまで続くかは分からない。ずっと平和でいられたら幸せなのだろうが、オーバン達が暮らす国は土壌が豊かで、更には良質な宝石が採掘できるので、他国から狙われやすい状態なのである。
風呂上がりのほこほこした状態で、パンツとパジャマの下だけを着ると、オーバンは台所へ向かった。シプリアノは下戸だから酒は飲まないが、オーバンは酒豪の部類に入る。味に拘りはないので、安酒でも楽しく酔えたらそれでいい。
オーバンがお気に入りの安い酒の瓶とグラスを持って居間に行くと、シプリアノがだらしなくソファーに寝転がっていた。オーバンに気づいたシプリアノが、くいっも器用に右眉を上げて声をかけてきた。
「服を着ろよ。真冬だぞ。今」
「風呂上がりは暑いんですよ。そういうシプリこそ、寝るんならベッドで寝てくださいよ」
「気が向いたらな」
「はいはい」
「チーズは?」
「俺の肴を食う気ですか」
「酒には拘らん癖に、チーズにだけは拘るだろう。お前」
「チーズが一番の好物なんで」
「あれがいい。ナッツとドライフルーツが入ってるやつ」
「えぇー。あれ、ちょっとお高いんですけどー」
「高給取りが何ケチ臭いこと言ってんだ」
「もー。しょうがないなー」
オーバンは台所へ戻って、とっておきのナッツとドライフルーツが入ったチーズを取り出し、食べやすい大きさに切った。皿に盛ったチーズを持って居間に戻ると、シプリアノがむくっと起き上がった。ローテーブルの上にチーズを盛った皿を置くと、シプリアノが早速一つ手に取り、口に放り込んだ。
「んまい」
「口に入れたまま喋らない。もー」
「オーバン」
「なんですー?」
「そろそろ結婚して一ヶ月が経つだろう」
「そうですね」
「お前、いつ、俺に手を出す気だ」
「はい?」
「不能か」
「んな訳あるか。現役バリバリいつでも元気いっぱいですけど?」
「流石に、結婚したのにセックスは無しは気の毒だし、浮気を許すつもりもないから、妥協してケツを貸してやる」
「いやいやいやいや。妥協してケツを差し出さないでくださいよ。大事ですよー!? ケツ!!」
「据え膳だぞ。とっとと食え。痛くしたら、お前のちんこをへし折るが」
「何それ怖い。えー。シプリってケツ使ったことあるんですか?」
「ある訳ねぇだろ」
「ですよね。ちなみに、俺はピカピカの童貞です」
「マジかよ。大惨事になる予感しかねぇな」
「ですよね。いやまぁ、確かにセックスは憧れますけどー。今まで恋人ができるどころか男娼も買ったことないですしー。このまま一生童貞でもいいかなーと思わなくもないです」
「ヘタレか」
「うっさいです」
「知識くらいはあるだろ」
「まぁ、一応。主にエロ本から仕入れたやつが」
「浄化剤とローションはある」
「え? なんで?」
「夜の夫婦生活の為に必要だからに決まっているだろう」
「えーー。おっさん抱くんですかー?」
「お前もおっさんだろ」
「35まではギリギリお兄さんです」
「世間一般的には、おっさんだ。まぁ、それはどうでもいい。これ食ったら俺の部屋に行くぞ」
「え、マジでセックスするんですか」
「ちゃんと拡張もしてある」
「はいっ!? え、まさか自分で?」
「当たり前だろうが。他人にケツを触らせる訳ねぇだろ」
「マジっすかー。えー。……ちょっと見せてもらえたりとか?」
「それは嫌」
「セックス誘ってきたのに」
「それとこれとは話が別だ」
「あ、はい」
「この俺にここまでさせたんだ。セックス、するよな?」
「…………し、します」
「よし。言質はとったぞ」
オーバンは、もぐもぐチーズを食べながら話すシプリアノのセックスのお誘いに乗ることにした。色気の欠片もない誘い方だが、ぶっちゃけセックスに興味はある。この歳まで童貞だったし、好みとは違うシプリアノと流されて結婚してしまったので、この先一生童貞だろうなぁと思っていた。
オーバンは、安酒を飲みながら、もぐもぐとチーズを食いまくっているシプリアノをじっと見た。ちょっと腹立つくらい凛々しい男前である。渋い大人の男の色気もある。オーバン好みの儚げ美人とは程遠い、生命力溢れるムキムキマッチョである。自分が勃起するか、若干不安はあるが、一度でいいから、セックスというものを体験してみたい。
シプリアノがチーズの殆どを食べ終えると、オーバンはシプリアノと共に、二階のシプリアノの部屋に向かった。
シプリアノの部屋は、物が少ない。オーバンもそうなのだが、いつ死んでもおかしくない仕事なので、持ち物は必要最低限にしている。
シプリアノがばさっと掛け布団を雑にベッドの下に落とし、戸棚から小さな紙袋と大きめの瓶を取り出した。浄化剤とローションだろう。色気もクソもなく、シプリアノがパジャマを脱ぐのを眺めながら、オーバンもズボンとパンツを脱ぎ捨てた。
ベッドに上がって、なんとなく向かい合って胡座をかいて座る。シプリアノとは、キスをしたのも結婚式の一回だけだ。シプリアノの身体は、古傷がいくつもあるが、ムッキムキのバッキバキな筋肉質な身体をしていた。オーバンも同じような身体をしているので、ベッドの耐久性が心配になってきた。大柄で筋肉質な二人がくんずほぐれずして、ベッドは壊れないだろうか。
オーバンの心配をよそに、シプリアノが小さな紙袋と透明な液体が入った瓶を手渡してきた。
「浄化剤とローション」
「あ、はい」
「痛くしやがったら、お前のちんこをへし折る」
「想像しただけで玉ヒュンするからやめてください。ていうか、童貞舐めないでくださいよ。キスのやり方もなんとなくしか分かりませんからね」
「ちっ、これだから童貞は」
「ちなみにシプリ。ご経験は二桁ですか? 三桁ですか?」
「人をヤリちんみたいに言うな。二桁止まりだ。言っとくが、全部女だからな」
「十分ヤリちん認定できますね」
「喧しい。さっさと始めるぞ」
「あ、はい」
全裸のシプリアノが立ち上がって、トンッとオーバンの肩を押して、押し倒してきた。シプリアノに跨られたオーバンは、きょとんとしてシプリアノを見上げた。
「シプリ?」
「キスの仕方から教えてやるよ」
「マジですか」
シプリアノが、悪戯っ子のように、にまっと笑った。
シプリアノがオーバンに覆い被さってきて、オーバンの唇に触れるだけのキスをした。意外と柔らかい唇の感触に、ちょっぴりドキッとする。触れているシプリアノの身体は熱い。生きた人間の身体だ。冷たい死体を運んだことは数え切れないくらいある。その中には、オーバンにとって大事だった友人も含まれている。なんだか、ぐっと上手く言葉にできない思いがこみ上げてきた。シプリアノの『生きた』体温が、妙に心に沁みてくる。
オーバンは、戯れるように何度もシプリアノに唇を優しく吸われながら、なんとなく、シプリアノの熱い肌に触れた。シプリアノの筋肉質な肩に触れ、太い二の腕に触れ、脇下から肋骨のあたりへと撫で下ろし、背筋が逞しい背中を撫で回す。間近にあるシプリアノの目が笑っている。オーバンが、はぁっと息を吐くと、ぬるりとシプリアノの舌がオーバンの口内に入ってきた。シプリアノのぬるついた舌が、歯列をなぞり、歯の裏側をつつーっと撫で、上顎をねっとりと舐め回してくる。特に上顎を舐められると、腰のあたりがぞわぞわして落ち着かない。
オーバンがシプリアノの身体を撫で回しなから、されるがままになって、目を泳がせていると、シプリアノが唇を触れ合わせたまま囁いた。
「舌、出せ」
オーバンは、言われるがままに舌を伸ばした。シプリアノがオーバンの舌を咥え、じゅるっと優しく吸い、舌同士を擦り合わせるように、舌を絡めてきた。なんだか悔しくなる程気持ちがいい。流石、経験人数二桁といったところか。
お互いの息が荒くなるまで、長いキスをした。微妙に不本意だが、シプリアノのキスは本当に気持ちよくて、オーバンのペニスは勃起した。
シプリアノが伏せていた身体を起こして、オーバンの盛り上がった胸筋を撫で回しながら、にやっと笑った。
「気持ちよかっただろう? 童貞」
「なんか悔しい」
「ふはっ。俺の乳首を舐めてみろ」
「あ、はい」
オーバンは腹筋だけで身体を起こすと、自分に跨がっているシプリアノのムッキリ盛り上がった胸筋をむんずと両手で掴んだ。弾力性のある柔らかい感触が、地味に楽しい。シプリアノの胸筋をふにふにと揉んでから、胸筋の下の方にある淡い茶褐色の存在感が薄い乳首に顔を近づける。シプリアノの乳首は、乳輪は大きめだが、乳首自体は小さい。ちょこんとした感じがちょっぴり可愛い。本体はムキムキゴツいおっさんだけど。
オーバンはおずおずと、ぺろっとシプリアノの乳首を舐めてみた。特に味はしない。なんとなくシプリアノの顔を目だけで見上げながら、チロチロと舐めてみる。じわじわとシプリアノの乳首が硬くなってきた。くにっと舌先でシプリアノの乳首をやんわりと押し潰すと、シプリアノが楽しそうな笑みを浮かべ、オーバンの短く刈っている髪をかき混ぜるように、わしゃわしゃと頭を撫で回してきた。
「咥えて吸ってみろ。……っ、そうだ。いい子だ。オーバン」
「んー」
「もう少し強く吸え……はっ……舌で乳首を転がせ。そう。緩急をつけて乳首を吸ってみろ。~~っ、あぁ、上手だ。オーバン」
シプリアノの言うとおりに乳首を弄ると、シプリアノがどこか堪えるように微かに眉間に皺を寄せながら、クックッと低く笑った。褒めるように頭を撫でられると、なんだか悪い気がしない。ぴんと勃った乳首から口を離して、反対側の乳首も同じように弄る。口で乳首を弄りながら、濡れた乳首を恐る恐る指で優しく摘めば、シプリアノが笑みを深めた。
「指でくにくに揉んでみろ。あぁ……いいぞ。優しく引っ張れ。はっ、んっ……ふはっ! お前は何でも覚えが早いが、こっちもか」
「んっ。ありがとうございます?」
「はぁ……乳首はもういい。ケツを舐めろ。浄化剤を入れた後でな」
「あ、はい。浄化剤ってどうやって使うんです?」
「座薬と一緒だ。中に入れて、30数えろ。そうしたら、中がキレイになる。舐めても問題ない」
「どういう原理なんですか。これ」
「さぁな。魔法薬の一つだから、理屈は知らん」
「ふぅん」
浄化剤とは、なんとも不思議なアイテムである。シプリアノが立ち上がった。何気なくシプリアノの股間を見れば、赤黒い巨根が垂直に近い角度で勃起していた。
「ちんこでっか!?」
「お前は普通だな」
「普通ですいませんねー! うわぁ、血管バキバキ……何この凶器ちんこ……すげぇ」
オーバンは、特に意味もなく拍手をした。シプリアノのペニスは赤黒く、太くて長くて、皮がズル剥けだった。カリが大きくて、これで歴代の女達をあんあんひんひん言わせてきたのだろう。妙に貫禄があるペニスである。
シプリアノが、オーバンに尻を向けて四つん這いになった。上体を伏せ、シプリアノが両手で自分のムッキリした筋肉質な肉厚の尻肉を掴み、ぐにぃっと大きく広げた。
きゅっと閉まった赤黒いアナルや赤い会陰、ぶらんとぶら下がっているずっしりとした大きな陰嚢やペニスが丸見えになる。意外なことに、シプリアノはケツ毛は生えていなかった。他の体毛は、金色だからあまり目立たないが、普通に生えている。
「ケツ毛は無いんですねー」
「そんなもん、処理済みだ」
「マジですか。ちなみに、どうやって?」
「脱毛サロンに行った」
「脱毛サロンって男専門もあるんですか?」
「ある訳ないだろ。女が行くところだ」
「どんだけ猛者なんですか」
「煩い。さっさと浄化剤を入れろ」
「あ、はい」
オーバンは、浄化剤が入った袋を手に取り、まんま座薬な形の浄化剤を一つ摘んだ。座薬ならば、指の熱で溶けてしまったりする。オーバンは急いで、無造作にシプリアノのアナルに浄化剤を突っ込んだ。
「えいっ」
「うぉっ!? ちょっ、一言言えよ!」
「あ、すいませーん。入れました」
「ちっ。30数えろ」
「はーい」
オーバンは、浄化剤が出てこないようにシプリアノのアナルの表面を指の腹で押さえたまま、頭の中で30数えた。
指の腹に触れているシプリアノのアナルは、熱くて、微かにひくひくと収縮している。なんか、ちょっといやらしい。
頭の中で30数え終わると、シプリアノのアナルから指を離し、自分の尻肉を掴んでいるシプリアノの手に手を重ね、じっと間近でシプリアノのアナルを見つめた。ほんの微かに皺が広がったり狭くなったりする様子がよく見える。排泄孔だが、なんともいやらしい。オーバンは、べろーっとシプリアノのアナルを舐めてみた。特に味はしない。シプリアノのアナルをベロベロと舐め回すと、シプリアノが腰をくねらせて、低く唸った。
「ちょっと柔らかくなったら、舌を入れて上下左右に動かして解せ」
「んっ。はい」
「~~っ、う、はっ、あぁ……くそっ、やべぇ……」
シプリアノの小さな低い喘ぎ声が聞こえてくる。シプリアノをちゃんと気持ちよくさせていると思うと、もしや自分は天然テクニシャンなのでは? と思えてくる。口に出したら、『調子に乗るな』と殴られそうなので、絶対に言えないが。
オーバンは、シプリアノのアナルが柔らかくなるまで、しつこいくらいにシプリアノのアナルを舐め回した。
シプリアノに教えられるがままに、ローションを使って指でシプリアノのアナルを解している。シプリアノに教えてもらった前立腺を指の腹ですりすり擦ると、シプリアノが腰をくねらせて、低く喘ぎ、きゅっ、きゅっと括約筋でオーバンの指を締めつけてくる。シプリアノの中は、熱くて、柔らかくて、ぬるぬるしていて、括約筋の締まりがキツい。シプリアノが自分でムッキリむっちりな尻肉を広げたままだから、アナルの中にオーバンの指が入っているところがよく見える。シプリアノのアナルは皺を伸ばしきり、従順にオーバンの太い指を三本も飲み込んでいる。人体ってすごい。
オーバンは、そろそろ我慢の限界がきた。シプリアノは、ぶっちゃけ好みじゃないが、なんだか妙にいやらしくて、ちょっと可愛い気がする。シプリアノの熱いアナルの中にペニスを突っ込みたくて、うずうずする。
オーバンは、ずるぅっと揃えた指をアナルの中から引き抜くと、ローションの瓶を手に取り、10代の頃のように元気いっぱいな角度で勃起している自分のペニスにローションを垂らした。ひんやりとしたローションのぬるついた感触が、更に興奮を煽ってくる。
オーバンは、ぬちぬちとローションを手でペニスに馴染ませると、左手をシプリアノの手に重ね、右手で自分のペニスの竿を掴み、ひくひくと大きく収縮している濡れたシプリアノのアナルにペニスの先っぽを押しつけた。熱いアナルの感触だけでも、いっそ射精しちゃいそうな気がする程興奮する。
オーバンは、ぐっと下っ腹に力を入れて、腰を動かし、シプリアノのアナルの中へとペニスを押し込み始めた。キツい括約筋を通り過ぎれば、ペニスが熱くて柔らかいものに包まれていく。堪らなく気持ちがいい。今ちょっとでも動いたら、絶対に射精しちゃうくらい、シプリアノの中は気持ちがいい。
オーバンはペニスを根元近くまで挿れると、大きく息を吐いて、なんとなくシプリアノの汗ばんだ腰を撫で回した。シプリアノの尻がビクッと震え、きゅっとアナルでペニスを締めつけられる。
オーバンは、男のプライドを捨てることにした。童貞なんだから、早漏でもしょうがない。だって気持ちがいいんだもん。
オーバンは、本能が赴くままに、めちゃくちゃに激しく腰を振り始めた。
「おっ!? あっ! あっ! ちょっ、はげしっ、あぁっ! くそっ!」
「あ、あーー、やばいやばいやばい。も、でるっ……あ、あ、あーー」
パンパンパンパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く程強く激しくシプリアノの尻に下腹部を打ち付け、オーバンは早々とシプリアノの腹の中に精液をぶち撒けた。
はぁー、はぁー、と荒い息を吐きながら、オーバンはずるぅっと射精したのに萎えていないペニスをシプリアノのアナルから引き抜いた。小さく口を開けて、ひくひくしているシプリアノのアナルから、こぽぉっと白い精液が溢れ出てきた。大変いやらしい。赤い会陰へと伝っていく精液を見てるだけで、萎えていないペニスが益々元気になる。
オーバンは、なんとなくキスがしたくなって、シプリアノの腰をさわさわと撫で回した。
「シプリ。キスがしたいです」
「……しょうがないな」
シプリアノが、のろのろと体勢を変え、ころんと仰向けになった。シプリアノの顔は、健康的に日焼けした頬が真っ赤に染まっていて、涙と鼻水と涎が垂れていた。仕事中は鋭く光る瞳が、今はとろんとしている。シプリアノの蕩けた顔に、何故だかちょこっとドキッとした。
オーバンは、シプリアノの膝を立てさせ、足を大きく広げてもらって、足の間を陣取ると、シプリアノに覆い被さって、シプリアノの鼻水が垂れている唇に優しく吸いついた。何度も何度もシプリアノの唇を吸いながら、自分のペニスの竿を掴んで、シプリアノのアナルにペニスの先っぽを押しつける。
シプリアノの口内に舌を突っ込み、舌を絡めあわせながら、ゆっくりとペニスをシプリアノのアナルの中に押し込めば、シプリアノが低く唸った。シプリアノの前立腺は、腹側にあった。意識して腹側を突き上げるように腰を振れば、シプリアノが大きく喘いだ。
「あぁっ! くそっ! あたるっ! あっ! あっ! あぁぁぁぁっ!!」
「乳首も弄りますねー」
「あぁっ!? くそがっ! 無駄に学習能力が高いっ!! あ、あ、あーーっ!!」
「んちゅ。ありがとうございます?」
オーバンは、腰を振りながら、シプリアノに教えてもらった通りに、シプリアノの乳首を舐めて吸って舌で優しく転がした。緩急をつけて乳首を吸うと、きゅっ、きゅっ、とアナルが締まる。ものすごく気持ちがいいし、ものすごく興奮する。
シプリアノが喘ぎながら、ちゅっちゅくちゅくちゅく乳首を吸うオーバンの頭を抱きしめた。頭に直接シプリアノの低い喘ぎ声が響くような感じがする。
「あっあっあっ! くそっ! いくっ! いくっ! あ、あーーーーっ!!」
「ん、はぁっ……俺もっ、限界っ、は、は、あーーっ」
腹に熱い液体がかかる感覚がすると同時に、きゅうっとキツくアナルでペニスを締めつけられた。オーバンは我慢しきれずに、またシプリアノの腹の中に精液を吐き出した。
荒い息を吐きながら、シプリアノが、抱きしめているオーバンの頭をやんわりと撫でた。悪い気がしない。むしろ、なんとも心地よい。
オーバンは、頭を動かして、シプリアノの濡れた唇に吸いついた。くちゅっと優しく唇を吸うと、シプリアノもオーバンの唇を吸ってくれる。何度も何度もキスをして、ぬるぬると舌を絡めあっていると、またむくむくとオーバンのペニスが元気になった。
シプリアノが、クックッと低く笑った。
「好きなだけ貪れ。童貞」
「もう童貞は卒業しましたよ」
「お前は本当に無駄に学習能力が高い」
「ありがとうございまーす」
「もっと俺を気持ちよくしろ」
「頑張ります」
オーバンは、とても頑張りつつ、朝が近くなるまで、シプリアノの熱い身体と快感に溺れた。
ーーーーーー
オーバンは床で目覚めた。セックスの最中に、案の定、ベッドが壊れ、それでも興奮がおさまらなかったので、最後の方は床でズッコンバッコンヤりまくった。
すぐ隣を見れば、シプリアノがぐっすり寝ていた。よくよく見れば、目尻に小さな皺がある。寝顔すらダンディーな男前って、ちょっとズルい気がする。
オーバンが特に意味もなくシプリアノの寝顔を観察していると、シプリアノの長い睫毛が震え、シプリアノがゆっくりと目を開けた。そして、ガッとオーバンの顔を片手で鷲掴んだ。そのまま、ギリギリと強く締めつけられる。
「いたいいたいいたいいたい」
「俺の方が痛い。ヤリ過ぎだ。童貞」
「シプリだってノリノリだったじゃないですかー!!」
「煩い。腰とケツが痛すぎて動ける気がしねぇんだよ。ごらぁ」
「ちゃ、ちゃんとお世話しますぅ!」
「当たり前だ。童貞」
「童貞はシプリで卒業しましたけど」
「童貞卒業の感想は?」
「最高」
「ふん。当然だ。俺が教えたんだからな」
「シプリ」
「なんだ」
「思い出したら、ちんこ勃っちゃった」
「へし折る」
「やめてください。ごめんなさい」
「どんだけ元気なんだ。お前は」
「えへっ。なんか俺、絶倫だったみたいです?」
「次は手加減を覚えさせる」
「あ、はい」
「腹減った。カフェオレとハム山盛りのサンドイッチ」
「はーい。用意してきまーす」
「俺は今日はお前のベッドから動かない。新しいベッドを買ってこい。とにかく頑丈なやつ」
「あ、はい。……シプリ」
「なんだ」
「何で、俺とセックスしようと思ったんです?」
「……さぁな。20年後に教えてやるよ」
「えーー。じゃあ、二十回目の結婚記念日にでも教えてくださいよ」
「オーバン」
「はい?」
「早くカフェオレとサンドイッチ」
「はいはい」
オーバンは腹筋だけで起き上がり、全裸のまま、台所へ移動した。色んな液体で汚れたままの身体を洗いたいが、まずはシプリアノのご要望を叶えねば。無理をさせたのは、多分オーバンだし。
オーバンは、手早くサンドイッチを作り、シプリアノ好みのカフェオレも作って、自分用の珈琲も一緒にお盆に乗せて、軽やかな足取りで二階に向かった。
二十回目の結婚記念日の夜に、オーバンの耳元で囁いたシプリアノの初めての愛の言葉は、オーバンだけの宝物になった。
(おしまい)
今日の見合いは、叔母がセッティングしてくれた。オーバンに似合いの相手が来てくれるという話だったのに、目の前にいるのは直属の上司である。
オーバンは、顔を引き攣らせたまま、シプリアノに声をかけた。
「隊長。隊長って、今日は見合いだって言ってませんでした?」
「今まさに見合いの場にいるな」
「誰と?」
「俺とお前が見合い中だ」
「なんで!? 叔母さん、どういうこと!?」
「えー? シプリアノ隊長とは、オーちゃん、長い付き合いなんでしょ? そろそろ愛も芽生える頃かしらー? って思ってぇ」
「芽生えねぇから。一緒に野糞したこともある相手と愛なんて芽生えねぇから」
「あらやだ。オーちゃんったら下品よ。ごめんなさいねぇ。シプリアノ隊長」
「いえ。いつものことですから」
「隊長。俺がいつも下品みたいに言うのはやめてください」
「オーバン」
「あ、はい」
「見合いをした。ということで、結婚するぞ」
「はいっ!? 正気ですか!?」
「この上なく正気だ」
「……実は、隊長って俺のことが好きだったりとか……」
「ないな」
「ないのかよ。えー! じゃあ、何で結婚することになるんですかーー!!」
「上官達からの見合い攻撃がいい加減鬱陶しい」
「あぁ。そりゃあ、仕方がないですよ。顔良し、家柄良し、先の戦では戦果上げまくり、将来の期待値が大きい。自分の身内に取り込みたい要素しかないじゃないですか」
「そんな面倒な結婚をして堪るか。それくらいだったら、お前と結婚するわ」
「俺の意思は?」
「あると思うのか?」
「横暴だーー!!」
「煩い。叫ぶな。第一、お前、同性愛者だろう。結婚相手なんて見つけられるのか? 自力で」
「は? 無理ですけど?」
「だったら俺にしておけ」
「えぇ……でもでもぉ、隊長って微妙に俺の好みじゃないっていうかぁ」
「贅沢言うな。平凡顔」
「平凡ですいませんねー! 副隊長の腕章着けてても一平卒に間違われててすいませんねーー!! ……俺って、そんなに存在感無いんですかね」
「仕事はすこぶるできるが、影は薄い」
「知ってましたよ。ちくしょー」
「式は来月だ」
「早くないですか!?」
「もう、式場も押さえているし、衣装も手配済みだ。招待状も送ってある」
「隊長。そこまでしてて、改めて見合いする必要ありました?」
「まぁ、一応形だけでもな」
「俺の意思はーー!?」
「ないな」
オーバンは、しれっとした顔でカフェオレを飲むシプリアノの渋くて格好いい男前な顔をキッと睨んだ。
「家庭内では上官と部下じゃありませんからね! 対等な立場ですからね! 家庭内暴力があった場合は、即! 離婚です!」
「まぁいいだろう。じゃあ、これにサインしろ」
「……隊長。婚姻届って書いてありますけど」
「さっさと外堀を埋めきってしまうぞ」
「ちなみに、逃してくれたりとかは?」
「すると思うか? この俺が」
「ですよねー……うぅ……さようなら、俺の夢」
「お前の夢?」
「えっとー、儚げ美人なダーリンとー、小さな家で犬を飼って、のんびり老後を過ごすー、みたいな?」
「ふーん。まぁ、軍を引退した後なら、犬を飼ってもいいぞ」
「隊長。今すぐ俺好みの儚げ美人になってください」
「無理言うな」
「筋肉ムキムキのちょー男前が伴侶かぁ。しかもおっさん」
「誰がおっさんだ」
「隊長。40手前はおっさんですよ」
「お前だって34だろうが。四つしか違わん」
シプリアノが逃してくれるとは思えないので、オーバンは渋々婚姻届にサインをした。
シプリアノは、とても優れた軍人だ。個人の戦闘能力が高く、戦況を見る目が非常に優れていて、指揮能力も高い。死地に送られたことが何度もあるが、その度に戦況をひっくり返して、最終的に自国を勝利へと導いた。勿論、自国の勝利は、シプリアノの活躍だけによるものではないが、国や軍の上層部が無視できない存在感を残している。オーバンは、戦が始まる3年前にシプリアノの副隊長になり、それからずっと、シプリアノと共に死地を潜り抜けてきた。ありふれた茶髪茶目で、地味な顔立ちをしており、存在感が薄いと自分でも思っている。
対して、シプリアノは、金髪碧眼の渋い男の色気が溢れる男前である。軍の内外にファンがいるくらいだ。仕事ができるし、絶対に部下を捨て駒のように扱ったりしない。人として、上司としては、この上なく慕っているが、結婚して、愛せるかは、実に微妙なところである。
翌日。早速婚姻届を役所に提出して、オーバンとシプリアノは男夫婦になった。
ーーーーーー
オーバンの朝は早い。日が昇る頃に起き出して、自宅の狭い庭で軽い筋トレをした後、走り込みがてら、朝市へと向かう。今日使う食材を買ってから自宅へ帰り、急いでシャワーを浴びて、朝食を作り始める。
シプリアノは、絶望的に料理が下手だ。行軍中に何度かエグい目にあっているので、シプリアノには台所侵入禁止令を出している。オーバンもそこまで料理上手というわけではないが、シプリアノよりも遥かにマシなので、料理担当はオーバンになった。
今朝の朝食は、ふわふわ甘めのオムレツをトマトソースとチーズと一緒に挟んだサンドイッチに、ハムとシャキシャキレタスたっぷりのサンドイッチ、野菜たっぷりのスープに、ぶっとい腸詰め肉を1人四本ずつ焼いた。身体を使う仕事だから、2人とも結構な量を食べる。いつも弁当も作っているので、朝は大忙しなのである。
台所で珈琲を淹れていると、髪が濡れたままのパジャマ姿のシプリアノが台所の入り口から声をかけてきた。
「おはよう。腹減った」
「おはようございます。飯は出来てますよ。珈琲淹れてるんで、ちょっとだけ待っててください」
「ん」
シプリアノは、戦場では何でも飲むが、それ以外だと、激甘なカフェオレしか飲まない。他に甘いものを食べないので、激甘カフェオレを愛飲していても大丈夫かと思うが、軍を引退したら、少し控えさせようかと思っている。
ガツガツと朝食を食べ終えると、2人揃ってバタバタと手分けして朝の家事を終わらせて、出勤する。仕事の話をしながら、歩いて小半時の職場へと向かう。
軍の建物に入り、自分達の部屋に向かって、朝礼をしたら、今日のお仕事開始である。今は戦時下ではないので、軍人の仕事はもっぱら治安維持と訓練だ。殺人事件が立て続けに起きているので、今はその捜査をメインでしている。
オーバンは、部下を数名連れて、足早に聞き取り調査へと向かった。
聞き取り調査で有益な情報を得てから、数日、軍の建物に泊まり込み、なんとか殺人事件の犯人を確保できた。そろそろ自分のベッドで寝たくなってきていたので、早めに犯人を確保できて何よりである。
取り調べや事後処理が終わると、オーバンは約一週間ぶりに、シプリアノと一緒に自宅に帰った。
自宅にはまともな材料が無いので、少し遠回りをして、夜遅くでも営業している惣菜屋で惣菜やパンを大量に買い、家に帰った。
オーバン達が暮らすこの家は、シプリアノの持ち家だ。婚姻届を提出した翌日に、即金で買ったらしい。ちょっと古いが、小ぢんまりとした感じが可愛くて、オーバン的には気に入っている。
シプリアノと結婚して早一ヶ月。寝室は別だし、特別変わったことなどない日々を送っている。
オーバンが夕食の後片付けをし終えた頃に、風呂上がりのシプリアノがパジャマ姿で台所の入り口から顔を出した。
「カフェオレ」
「寝る前に飲むと寝付きが悪くなるでしょ。温かいミルクで我慢してください。貰い物の蜂蜜入れてあげますから」
「ちっ。妥協してやろう」
「明日は休みだから、俺は昼前まで起きませんからね」
「分かっている。朝飯は適当に買ってくる」
「そうしてくださーい。はい。ミルク」
「ん」
オーバンは、手早く温めた蜂蜜入りのミルクが入ったマグカップをシプリアノに差し出した。行儀悪く立ったまま飲み始めたシプリアノに小言を言ってから、自室に向かい、風呂場へ移動する。
家の風呂場は、ぶっちゃけ狭い。オーバンもシプリアノも、ガタイがいいので、浴槽が割と狭い。毎日、お山座り状態でお湯に浸かっている。それでも、戦場にいた頃に比べたら、毎日が天国のようである。毎日、まともな食事がとれて、身体を清潔にできて、何より生命の危険がない。平和バンザイである。2年前まで戦をしていた隣国とは反対側の国と若干きな臭い感じになっているので、この平和がいつまで続くかは分からない。ずっと平和でいられたら幸せなのだろうが、オーバン達が暮らす国は土壌が豊かで、更には良質な宝石が採掘できるので、他国から狙われやすい状態なのである。
風呂上がりのほこほこした状態で、パンツとパジャマの下だけを着ると、オーバンは台所へ向かった。シプリアノは下戸だから酒は飲まないが、オーバンは酒豪の部類に入る。味に拘りはないので、安酒でも楽しく酔えたらそれでいい。
オーバンがお気に入りの安い酒の瓶とグラスを持って居間に行くと、シプリアノがだらしなくソファーに寝転がっていた。オーバンに気づいたシプリアノが、くいっも器用に右眉を上げて声をかけてきた。
「服を着ろよ。真冬だぞ。今」
「風呂上がりは暑いんですよ。そういうシプリこそ、寝るんならベッドで寝てくださいよ」
「気が向いたらな」
「はいはい」
「チーズは?」
「俺の肴を食う気ですか」
「酒には拘らん癖に、チーズにだけは拘るだろう。お前」
「チーズが一番の好物なんで」
「あれがいい。ナッツとドライフルーツが入ってるやつ」
「えぇー。あれ、ちょっとお高いんですけどー」
「高給取りが何ケチ臭いこと言ってんだ」
「もー。しょうがないなー」
オーバンは台所へ戻って、とっておきのナッツとドライフルーツが入ったチーズを取り出し、食べやすい大きさに切った。皿に盛ったチーズを持って居間に戻ると、シプリアノがむくっと起き上がった。ローテーブルの上にチーズを盛った皿を置くと、シプリアノが早速一つ手に取り、口に放り込んだ。
「んまい」
「口に入れたまま喋らない。もー」
「オーバン」
「なんですー?」
「そろそろ結婚して一ヶ月が経つだろう」
「そうですね」
「お前、いつ、俺に手を出す気だ」
「はい?」
「不能か」
「んな訳あるか。現役バリバリいつでも元気いっぱいですけど?」
「流石に、結婚したのにセックスは無しは気の毒だし、浮気を許すつもりもないから、妥協してケツを貸してやる」
「いやいやいやいや。妥協してケツを差し出さないでくださいよ。大事ですよー!? ケツ!!」
「据え膳だぞ。とっとと食え。痛くしたら、お前のちんこをへし折るが」
「何それ怖い。えー。シプリってケツ使ったことあるんですか?」
「ある訳ねぇだろ」
「ですよね。ちなみに、俺はピカピカの童貞です」
「マジかよ。大惨事になる予感しかねぇな」
「ですよね。いやまぁ、確かにセックスは憧れますけどー。今まで恋人ができるどころか男娼も買ったことないですしー。このまま一生童貞でもいいかなーと思わなくもないです」
「ヘタレか」
「うっさいです」
「知識くらいはあるだろ」
「まぁ、一応。主にエロ本から仕入れたやつが」
「浄化剤とローションはある」
「え? なんで?」
「夜の夫婦生活の為に必要だからに決まっているだろう」
「えーー。おっさん抱くんですかー?」
「お前もおっさんだろ」
「35まではギリギリお兄さんです」
「世間一般的には、おっさんだ。まぁ、それはどうでもいい。これ食ったら俺の部屋に行くぞ」
「え、マジでセックスするんですか」
「ちゃんと拡張もしてある」
「はいっ!? え、まさか自分で?」
「当たり前だろうが。他人にケツを触らせる訳ねぇだろ」
「マジっすかー。えー。……ちょっと見せてもらえたりとか?」
「それは嫌」
「セックス誘ってきたのに」
「それとこれとは話が別だ」
「あ、はい」
「この俺にここまでさせたんだ。セックス、するよな?」
「…………し、します」
「よし。言質はとったぞ」
オーバンは、もぐもぐチーズを食べながら話すシプリアノのセックスのお誘いに乗ることにした。色気の欠片もない誘い方だが、ぶっちゃけセックスに興味はある。この歳まで童貞だったし、好みとは違うシプリアノと流されて結婚してしまったので、この先一生童貞だろうなぁと思っていた。
オーバンは、安酒を飲みながら、もぐもぐとチーズを食いまくっているシプリアノをじっと見た。ちょっと腹立つくらい凛々しい男前である。渋い大人の男の色気もある。オーバン好みの儚げ美人とは程遠い、生命力溢れるムキムキマッチョである。自分が勃起するか、若干不安はあるが、一度でいいから、セックスというものを体験してみたい。
シプリアノがチーズの殆どを食べ終えると、オーバンはシプリアノと共に、二階のシプリアノの部屋に向かった。
シプリアノの部屋は、物が少ない。オーバンもそうなのだが、いつ死んでもおかしくない仕事なので、持ち物は必要最低限にしている。
シプリアノがばさっと掛け布団を雑にベッドの下に落とし、戸棚から小さな紙袋と大きめの瓶を取り出した。浄化剤とローションだろう。色気もクソもなく、シプリアノがパジャマを脱ぐのを眺めながら、オーバンもズボンとパンツを脱ぎ捨てた。
ベッドに上がって、なんとなく向かい合って胡座をかいて座る。シプリアノとは、キスをしたのも結婚式の一回だけだ。シプリアノの身体は、古傷がいくつもあるが、ムッキムキのバッキバキな筋肉質な身体をしていた。オーバンも同じような身体をしているので、ベッドの耐久性が心配になってきた。大柄で筋肉質な二人がくんずほぐれずして、ベッドは壊れないだろうか。
オーバンの心配をよそに、シプリアノが小さな紙袋と透明な液体が入った瓶を手渡してきた。
「浄化剤とローション」
「あ、はい」
「痛くしやがったら、お前のちんこをへし折る」
「想像しただけで玉ヒュンするからやめてください。ていうか、童貞舐めないでくださいよ。キスのやり方もなんとなくしか分かりませんからね」
「ちっ、これだから童貞は」
「ちなみにシプリ。ご経験は二桁ですか? 三桁ですか?」
「人をヤリちんみたいに言うな。二桁止まりだ。言っとくが、全部女だからな」
「十分ヤリちん認定できますね」
「喧しい。さっさと始めるぞ」
「あ、はい」
全裸のシプリアノが立ち上がって、トンッとオーバンの肩を押して、押し倒してきた。シプリアノに跨られたオーバンは、きょとんとしてシプリアノを見上げた。
「シプリ?」
「キスの仕方から教えてやるよ」
「マジですか」
シプリアノが、悪戯っ子のように、にまっと笑った。
シプリアノがオーバンに覆い被さってきて、オーバンの唇に触れるだけのキスをした。意外と柔らかい唇の感触に、ちょっぴりドキッとする。触れているシプリアノの身体は熱い。生きた人間の身体だ。冷たい死体を運んだことは数え切れないくらいある。その中には、オーバンにとって大事だった友人も含まれている。なんだか、ぐっと上手く言葉にできない思いがこみ上げてきた。シプリアノの『生きた』体温が、妙に心に沁みてくる。
オーバンは、戯れるように何度もシプリアノに唇を優しく吸われながら、なんとなく、シプリアノの熱い肌に触れた。シプリアノの筋肉質な肩に触れ、太い二の腕に触れ、脇下から肋骨のあたりへと撫で下ろし、背筋が逞しい背中を撫で回す。間近にあるシプリアノの目が笑っている。オーバンが、はぁっと息を吐くと、ぬるりとシプリアノの舌がオーバンの口内に入ってきた。シプリアノのぬるついた舌が、歯列をなぞり、歯の裏側をつつーっと撫で、上顎をねっとりと舐め回してくる。特に上顎を舐められると、腰のあたりがぞわぞわして落ち着かない。
オーバンがシプリアノの身体を撫で回しなから、されるがままになって、目を泳がせていると、シプリアノが唇を触れ合わせたまま囁いた。
「舌、出せ」
オーバンは、言われるがままに舌を伸ばした。シプリアノがオーバンの舌を咥え、じゅるっと優しく吸い、舌同士を擦り合わせるように、舌を絡めてきた。なんだか悔しくなる程気持ちがいい。流石、経験人数二桁といったところか。
お互いの息が荒くなるまで、長いキスをした。微妙に不本意だが、シプリアノのキスは本当に気持ちよくて、オーバンのペニスは勃起した。
シプリアノが伏せていた身体を起こして、オーバンの盛り上がった胸筋を撫で回しながら、にやっと笑った。
「気持ちよかっただろう? 童貞」
「なんか悔しい」
「ふはっ。俺の乳首を舐めてみろ」
「あ、はい」
オーバンは腹筋だけで身体を起こすと、自分に跨がっているシプリアノのムッキリ盛り上がった胸筋をむんずと両手で掴んだ。弾力性のある柔らかい感触が、地味に楽しい。シプリアノの胸筋をふにふにと揉んでから、胸筋の下の方にある淡い茶褐色の存在感が薄い乳首に顔を近づける。シプリアノの乳首は、乳輪は大きめだが、乳首自体は小さい。ちょこんとした感じがちょっぴり可愛い。本体はムキムキゴツいおっさんだけど。
オーバンはおずおずと、ぺろっとシプリアノの乳首を舐めてみた。特に味はしない。なんとなくシプリアノの顔を目だけで見上げながら、チロチロと舐めてみる。じわじわとシプリアノの乳首が硬くなってきた。くにっと舌先でシプリアノの乳首をやんわりと押し潰すと、シプリアノが楽しそうな笑みを浮かべ、オーバンの短く刈っている髪をかき混ぜるように、わしゃわしゃと頭を撫で回してきた。
「咥えて吸ってみろ。……っ、そうだ。いい子だ。オーバン」
「んー」
「もう少し強く吸え……はっ……舌で乳首を転がせ。そう。緩急をつけて乳首を吸ってみろ。~~っ、あぁ、上手だ。オーバン」
シプリアノの言うとおりに乳首を弄ると、シプリアノがどこか堪えるように微かに眉間に皺を寄せながら、クックッと低く笑った。褒めるように頭を撫でられると、なんだか悪い気がしない。ぴんと勃った乳首から口を離して、反対側の乳首も同じように弄る。口で乳首を弄りながら、濡れた乳首を恐る恐る指で優しく摘めば、シプリアノが笑みを深めた。
「指でくにくに揉んでみろ。あぁ……いいぞ。優しく引っ張れ。はっ、んっ……ふはっ! お前は何でも覚えが早いが、こっちもか」
「んっ。ありがとうございます?」
「はぁ……乳首はもういい。ケツを舐めろ。浄化剤を入れた後でな」
「あ、はい。浄化剤ってどうやって使うんです?」
「座薬と一緒だ。中に入れて、30数えろ。そうしたら、中がキレイになる。舐めても問題ない」
「どういう原理なんですか。これ」
「さぁな。魔法薬の一つだから、理屈は知らん」
「ふぅん」
浄化剤とは、なんとも不思議なアイテムである。シプリアノが立ち上がった。何気なくシプリアノの股間を見れば、赤黒い巨根が垂直に近い角度で勃起していた。
「ちんこでっか!?」
「お前は普通だな」
「普通ですいませんねー! うわぁ、血管バキバキ……何この凶器ちんこ……すげぇ」
オーバンは、特に意味もなく拍手をした。シプリアノのペニスは赤黒く、太くて長くて、皮がズル剥けだった。カリが大きくて、これで歴代の女達をあんあんひんひん言わせてきたのだろう。妙に貫禄があるペニスである。
シプリアノが、オーバンに尻を向けて四つん這いになった。上体を伏せ、シプリアノが両手で自分のムッキリした筋肉質な肉厚の尻肉を掴み、ぐにぃっと大きく広げた。
きゅっと閉まった赤黒いアナルや赤い会陰、ぶらんとぶら下がっているずっしりとした大きな陰嚢やペニスが丸見えになる。意外なことに、シプリアノはケツ毛は生えていなかった。他の体毛は、金色だからあまり目立たないが、普通に生えている。
「ケツ毛は無いんですねー」
「そんなもん、処理済みだ」
「マジですか。ちなみに、どうやって?」
「脱毛サロンに行った」
「脱毛サロンって男専門もあるんですか?」
「ある訳ないだろ。女が行くところだ」
「どんだけ猛者なんですか」
「煩い。さっさと浄化剤を入れろ」
「あ、はい」
オーバンは、浄化剤が入った袋を手に取り、まんま座薬な形の浄化剤を一つ摘んだ。座薬ならば、指の熱で溶けてしまったりする。オーバンは急いで、無造作にシプリアノのアナルに浄化剤を突っ込んだ。
「えいっ」
「うぉっ!? ちょっ、一言言えよ!」
「あ、すいませーん。入れました」
「ちっ。30数えろ」
「はーい」
オーバンは、浄化剤が出てこないようにシプリアノのアナルの表面を指の腹で押さえたまま、頭の中で30数えた。
指の腹に触れているシプリアノのアナルは、熱くて、微かにひくひくと収縮している。なんか、ちょっといやらしい。
頭の中で30数え終わると、シプリアノのアナルから指を離し、自分の尻肉を掴んでいるシプリアノの手に手を重ね、じっと間近でシプリアノのアナルを見つめた。ほんの微かに皺が広がったり狭くなったりする様子がよく見える。排泄孔だが、なんともいやらしい。オーバンは、べろーっとシプリアノのアナルを舐めてみた。特に味はしない。シプリアノのアナルをベロベロと舐め回すと、シプリアノが腰をくねらせて、低く唸った。
「ちょっと柔らかくなったら、舌を入れて上下左右に動かして解せ」
「んっ。はい」
「~~っ、う、はっ、あぁ……くそっ、やべぇ……」
シプリアノの小さな低い喘ぎ声が聞こえてくる。シプリアノをちゃんと気持ちよくさせていると思うと、もしや自分は天然テクニシャンなのでは? と思えてくる。口に出したら、『調子に乗るな』と殴られそうなので、絶対に言えないが。
オーバンは、シプリアノのアナルが柔らかくなるまで、しつこいくらいにシプリアノのアナルを舐め回した。
シプリアノに教えられるがままに、ローションを使って指でシプリアノのアナルを解している。シプリアノに教えてもらった前立腺を指の腹ですりすり擦ると、シプリアノが腰をくねらせて、低く喘ぎ、きゅっ、きゅっと括約筋でオーバンの指を締めつけてくる。シプリアノの中は、熱くて、柔らかくて、ぬるぬるしていて、括約筋の締まりがキツい。シプリアノが自分でムッキリむっちりな尻肉を広げたままだから、アナルの中にオーバンの指が入っているところがよく見える。シプリアノのアナルは皺を伸ばしきり、従順にオーバンの太い指を三本も飲み込んでいる。人体ってすごい。
オーバンは、そろそろ我慢の限界がきた。シプリアノは、ぶっちゃけ好みじゃないが、なんだか妙にいやらしくて、ちょっと可愛い気がする。シプリアノの熱いアナルの中にペニスを突っ込みたくて、うずうずする。
オーバンは、ずるぅっと揃えた指をアナルの中から引き抜くと、ローションの瓶を手に取り、10代の頃のように元気いっぱいな角度で勃起している自分のペニスにローションを垂らした。ひんやりとしたローションのぬるついた感触が、更に興奮を煽ってくる。
オーバンは、ぬちぬちとローションを手でペニスに馴染ませると、左手をシプリアノの手に重ね、右手で自分のペニスの竿を掴み、ひくひくと大きく収縮している濡れたシプリアノのアナルにペニスの先っぽを押しつけた。熱いアナルの感触だけでも、いっそ射精しちゃいそうな気がする程興奮する。
オーバンは、ぐっと下っ腹に力を入れて、腰を動かし、シプリアノのアナルの中へとペニスを押し込み始めた。キツい括約筋を通り過ぎれば、ペニスが熱くて柔らかいものに包まれていく。堪らなく気持ちがいい。今ちょっとでも動いたら、絶対に射精しちゃうくらい、シプリアノの中は気持ちがいい。
オーバンはペニスを根元近くまで挿れると、大きく息を吐いて、なんとなくシプリアノの汗ばんだ腰を撫で回した。シプリアノの尻がビクッと震え、きゅっとアナルでペニスを締めつけられる。
オーバンは、男のプライドを捨てることにした。童貞なんだから、早漏でもしょうがない。だって気持ちがいいんだもん。
オーバンは、本能が赴くままに、めちゃくちゃに激しく腰を振り始めた。
「おっ!? あっ! あっ! ちょっ、はげしっ、あぁっ! くそっ!」
「あ、あーー、やばいやばいやばい。も、でるっ……あ、あ、あーー」
パンパンパンパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く程強く激しくシプリアノの尻に下腹部を打ち付け、オーバンは早々とシプリアノの腹の中に精液をぶち撒けた。
はぁー、はぁー、と荒い息を吐きながら、オーバンはずるぅっと射精したのに萎えていないペニスをシプリアノのアナルから引き抜いた。小さく口を開けて、ひくひくしているシプリアノのアナルから、こぽぉっと白い精液が溢れ出てきた。大変いやらしい。赤い会陰へと伝っていく精液を見てるだけで、萎えていないペニスが益々元気になる。
オーバンは、なんとなくキスがしたくなって、シプリアノの腰をさわさわと撫で回した。
「シプリ。キスがしたいです」
「……しょうがないな」
シプリアノが、のろのろと体勢を変え、ころんと仰向けになった。シプリアノの顔は、健康的に日焼けした頬が真っ赤に染まっていて、涙と鼻水と涎が垂れていた。仕事中は鋭く光る瞳が、今はとろんとしている。シプリアノの蕩けた顔に、何故だかちょこっとドキッとした。
オーバンは、シプリアノの膝を立てさせ、足を大きく広げてもらって、足の間を陣取ると、シプリアノに覆い被さって、シプリアノの鼻水が垂れている唇に優しく吸いついた。何度も何度もシプリアノの唇を吸いながら、自分のペニスの竿を掴んで、シプリアノのアナルにペニスの先っぽを押しつける。
シプリアノの口内に舌を突っ込み、舌を絡めあわせながら、ゆっくりとペニスをシプリアノのアナルの中に押し込めば、シプリアノが低く唸った。シプリアノの前立腺は、腹側にあった。意識して腹側を突き上げるように腰を振れば、シプリアノが大きく喘いだ。
「あぁっ! くそっ! あたるっ! あっ! あっ! あぁぁぁぁっ!!」
「乳首も弄りますねー」
「あぁっ!? くそがっ! 無駄に学習能力が高いっ!! あ、あ、あーーっ!!」
「んちゅ。ありがとうございます?」
オーバンは、腰を振りながら、シプリアノに教えてもらった通りに、シプリアノの乳首を舐めて吸って舌で優しく転がした。緩急をつけて乳首を吸うと、きゅっ、きゅっ、とアナルが締まる。ものすごく気持ちがいいし、ものすごく興奮する。
シプリアノが喘ぎながら、ちゅっちゅくちゅくちゅく乳首を吸うオーバンの頭を抱きしめた。頭に直接シプリアノの低い喘ぎ声が響くような感じがする。
「あっあっあっ! くそっ! いくっ! いくっ! あ、あーーーーっ!!」
「ん、はぁっ……俺もっ、限界っ、は、は、あーーっ」
腹に熱い液体がかかる感覚がすると同時に、きゅうっとキツくアナルでペニスを締めつけられた。オーバンは我慢しきれずに、またシプリアノの腹の中に精液を吐き出した。
荒い息を吐きながら、シプリアノが、抱きしめているオーバンの頭をやんわりと撫でた。悪い気がしない。むしろ、なんとも心地よい。
オーバンは、頭を動かして、シプリアノの濡れた唇に吸いついた。くちゅっと優しく唇を吸うと、シプリアノもオーバンの唇を吸ってくれる。何度も何度もキスをして、ぬるぬると舌を絡めあっていると、またむくむくとオーバンのペニスが元気になった。
シプリアノが、クックッと低く笑った。
「好きなだけ貪れ。童貞」
「もう童貞は卒業しましたよ」
「お前は本当に無駄に学習能力が高い」
「ありがとうございまーす」
「もっと俺を気持ちよくしろ」
「頑張ります」
オーバンは、とても頑張りつつ、朝が近くなるまで、シプリアノの熱い身体と快感に溺れた。
ーーーーーー
オーバンは床で目覚めた。セックスの最中に、案の定、ベッドが壊れ、それでも興奮がおさまらなかったので、最後の方は床でズッコンバッコンヤりまくった。
すぐ隣を見れば、シプリアノがぐっすり寝ていた。よくよく見れば、目尻に小さな皺がある。寝顔すらダンディーな男前って、ちょっとズルい気がする。
オーバンが特に意味もなくシプリアノの寝顔を観察していると、シプリアノの長い睫毛が震え、シプリアノがゆっくりと目を開けた。そして、ガッとオーバンの顔を片手で鷲掴んだ。そのまま、ギリギリと強く締めつけられる。
「いたいいたいいたいいたい」
「俺の方が痛い。ヤリ過ぎだ。童貞」
「シプリだってノリノリだったじゃないですかー!!」
「煩い。腰とケツが痛すぎて動ける気がしねぇんだよ。ごらぁ」
「ちゃ、ちゃんとお世話しますぅ!」
「当たり前だ。童貞」
「童貞はシプリで卒業しましたけど」
「童貞卒業の感想は?」
「最高」
「ふん。当然だ。俺が教えたんだからな」
「シプリ」
「なんだ」
「思い出したら、ちんこ勃っちゃった」
「へし折る」
「やめてください。ごめんなさい」
「どんだけ元気なんだ。お前は」
「えへっ。なんか俺、絶倫だったみたいです?」
「次は手加減を覚えさせる」
「あ、はい」
「腹減った。カフェオレとハム山盛りのサンドイッチ」
「はーい。用意してきまーす」
「俺は今日はお前のベッドから動かない。新しいベッドを買ってこい。とにかく頑丈なやつ」
「あ、はい。……シプリ」
「なんだ」
「何で、俺とセックスしようと思ったんです?」
「……さぁな。20年後に教えてやるよ」
「えーー。じゃあ、二十回目の結婚記念日にでも教えてくださいよ」
「オーバン」
「はい?」
「早くカフェオレとサンドイッチ」
「はいはい」
オーバンは腹筋だけで起き上がり、全裸のまま、台所へ移動した。色んな液体で汚れたままの身体を洗いたいが、まずはシプリアノのご要望を叶えねば。無理をさせたのは、多分オーバンだし。
オーバンは、手早くサンドイッチを作り、シプリアノ好みのカフェオレも作って、自分用の珈琲も一緒にお盆に乗せて、軽やかな足取りで二階に向かった。
二十回目の結婚記念日の夜に、オーバンの耳元で囁いたシプリアノの初めての愛の言葉は、オーバンだけの宝物になった。
(おしまい)
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