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1:フィガロ
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フィガロ・カルバン少年は途方にくれていた。
先週引っ越してきたばかりであるが故に土地勘が全くない場所で、迷子らしき幼児に遭遇し、現在めちゃくちゃ泣いている幼児にしがみつかれていて動けない。隣には自称・同級生で隣の席だという赤毛の美少女がいる。フィガロは、美少女アンジェリーナの重い荷物を両手に持っていた。
「ねぇ、フィガロ。どうする? この子を放っては帰れないわ」
「……領軍の詰所どこ?」
「詰所に連れていくの?」
「迷子なら地域課の軍人が親を探してくれる」
「へぇ。そうなのね。でもね、残念なお知らせがあるの」
「なに」
「私、詰所の場所知らないのよね。詰所に行ったことないもの」
「……マジで?」
「マジよ」
「まぁぁまぁぁぁぁ!! あぁぁぁぁ……」
フィガロはこの状況をどうしたらいいのか思い浮かばず、現実逃避をするように空を見上げた。いっそ憎々しい程澄み渡った雲一つない青空を見上げながら、どうしてこうなったんだっけ……と自分の記憶を振り返った。
ーーーーーー
フィガロは今年で10歳になる。土の宗主国サンガレア領の中で一番大きな街である通称・中央の街から、一週間前にバーバラの街に引っ越してきた。フィガロは父親であるガイナと2人で、小さな一軒家に住んでいる。
この世は男女比が平等ではなく、6:4で男の方が多い。土の宗主国では複婚や同性婚が認められており、土の宗主国王都とサンガレア領の中央の街には男同士でも子供をつくることができる施設が存在する。
フィガロの両親は男夫婦だった。三ヶ月前に離婚をしたので過去形である。もう1人の父親バーナードは女と浮気をした挙げ句、相手の女に子供ができ、ガイナとフィガロを捨てて、浮気相手の女と結婚をした。離婚の話し合いを隠れてこっそり覗いていた時に、『俺の子供はこれから増えるからさ。別にいらねぇし、フィガロはお前にやるよ』というバーナードの台詞を聞いた瞬間から、バーナードのことを父親とも家族とも思わなくなった。フィガロの父親はガイナだけだし、家族もガイナだけだ。
ガイナはサンガレア領軍に勤める軍人だ。離婚が決まってから、別の街への異動を希望し、フィガロと2人でバーバラへ引っ越した。ガイナは口が悪いし、すぐに手を出すし、顔が怖いが、少なくともフィガロを捨てたバーナードなんかよりも、ずっと優しい。泣くことなんて無縁そうな厳つい大男なガイナが、フィガロがバーナードに捨てられたことを悲しんで、こっそり泣いていたことを知っている。自分が裏切られて捨てられたことよりも、フィガロが捨てられたことの方が憐れで悲しかったらしい。
フィガロはそもそも、何をしてもいい加減で仕事が休みの日でも全然構ってくれないバーナードよりも、口煩いが仕事が忙しくてもいつも全力で構ってくれるガイナの方が好きだったから、別にバーナードがいなくてもガイナがいればいい。フィガロは自分のことを可哀想だなんて全然思っていない。自分がガイナに愛されてることを知ってるから、全く可哀想なんかじゃない。
中央の街からバーバラの街へ引っ越すことが決まった時、ガイナは『ダチと別れることになってわりぃ』と辛そうな顔をしたが、フィガロは特に仲がいい友達はいなかったので、何の問題もない。
昨日初めて登校したバーバラの小学校は、一言で言うと不愉快だった。授業が始まる前に担任の先生から言われて、教室の前の方で自己紹介をさせられた。多分30人以上いる生徒達からじろじろ見られて、ざわざわひそひそされた。そもそも、転校生というもの自体が珍しいらしい。なんだか見せ物にされたみたいで気分が悪かった。話しかけてくる生徒もいたが、ムカムカしていたので、普通に無視した。『感じが悪い』とひそひそ話をされたが、フィガロはまるで気にしなかった。ひそひそ話をする方が感じが悪い。言いたいことがあるなら直接ハッキリ言えばいい。
今日も学校で誰とも話すことなく、授業が終わるなり、フィガロは真っ直ぐに住み始めたばかりの家に帰った。帰ってすぐに洗濯物を取り込み、夕食を作ろうと台所でごそごそしている時にガイナが帰ってきた。まだ午後のお茶の時間だ。今日は早く帰れたらしい。
帰って来たガイナに、台所で何をしていたのかと聞かれたから、フィガロは素直に『今から晩飯作る。家のことは俺がやるよ。父さんは仕事あんじゃん』と答えた。そして、ガイナから拳骨をくらった。『子供は食って寝て遊ぶのが仕事だ。職務放棄すんじゃねぇ。家のことは俺がやっから、つまんねぇ気ぃ使ってねぇで、お前はちゃんと遊んでこい。暗くなる前には帰れよ』と言って、ガイナに玄関から放り出された。フィガロはもうすぐ10歳だ。別に外で遊びたい歳なんかじゃない。
フィガロはぶすっとしたまま適当に歩き出した。バーバラに来て、まだ近所の飲食店と小学校くらいにしか行ったことがない。適当に街を歩いて帰るかと思って、とりあえず大通りがあるという方向へと歩いた。
賑やかな大通りを歩き、適当に脇道に入ってみると、道の隅っこにしゃがんで俯いている赤毛の少女がいた。少女の両脇に置かれた二つの手提げの袋からは野菜や瓶が覗いている。フィガロは本当に小さい頃から、『女子供と年寄りには優しく親切にしろよ』と、ガイナから言い聞かせられている。フィガロは一応赤毛の少女に声をかけることにした。
「何してんの」
「あら。フィガロ」
俯いていた赤毛の少女が顔を上げた。かなりの美少女である。しかし、初対面の筈なのに何故フィガロの名前を知っている上に馴れ馴れしく名前を呼ぶのか。
「誰」
「アンジェリーナ・ヒューストンよ。隣の席じゃない。昨日自己紹介したでしょ」
「覚えてない」
「あらそう」
「何してんの」
「サンダルが壊れたの。買ったばかりなのに。おつかいから帰る途中なんだけど……」
アンジェリーナが脱いだ右足のサンダルを見せてきた。靴底がべらっと中途半端に剥がれてしまっている。
「家どこ。親は?」
「家は喫茶店よ。ここからじゃ小一時間はかかるの。お父さん達はお仕事中。端末を忘れちゃったから、迎えに来てもらうのも無理なのよ」
「ふーん。……ん」
フィガロはその場で自分のサンダルを脱いで、アンジェリーナにずいっと差し出した。別にフィガロは裸足でも問題ない。今は春になったばかりだし、夏のように地面が火傷しそうな程熱いって訳でもない。アンジェリーナが驚いたように目をパチパチさせた。
「なに?」
「履いて帰れば?」
「貴方はどうするのよ」
「別に問題ねぇし」
「……本当に借りていいの?」
「ん」
アンジェリーナがおずおずといった様子でフィガロのサンダルを受け取った。アンジェリーナがほっとしたように頬を緩めた。
「ありがとう。本当に助かるわ。どうしたらいいのか全然思いつかなくて、困ってたの」
「別に」
「ねぇ。貴方は何をしてたの? 家は近くなの?」
「……暇だから適当に歩いてただけ」
「じゃあ、うちのお店に来てよ。お礼にフルーツサンドをご馳走させて。フレディおじいちゃんのフルーツサンドは街で一番美味しいのよ!」
「別に礼とかいいし」
「サンダルも返さなきゃいけないもの。それに助けてもらったのにお礼をしないなんてあり得ないわ。貴方が私の立場だったら何もしないの?」
「……するけど」
「でしょ?」
フィガロはにっこりと笑ったアンジェリーナに頷くことしかできなかった。本当に礼なんていいのだが、アンジェリーナの言うことは一理あるし、サンダルは一足しか持っていないので、返してもらわねば少し困る。こんなことなら、バーバラに引っ越した次の日に買い物に出た折、『ついでに新しいサンダルも買うか?』と、ガイナに聞かれた時に頷いておけばよかった。
仕方がないので、フィガロはアンジェリーナの家の喫茶店に行くことにした。フィガロは裸足のまま、無言でアンジェリーナの荷物を持ち、歩き始めた。アンジェリーナが少し慌ててサンダルを履いてフィガロを追いかけてきた。歩いていると、アンジェリーナとは歩く速さが微妙に違うことに気づいて、フィガロはアンジェリーナに合わせて歩く速さを緩めた。アンジェリーナはサイズが合わないサンダルを履いているから仕方がない。
脇道を道なりに5分も歩かないうちに、今度は道のど真ん中で蹲っている小さな子供を見つけた。フィガロが声をかけると、多分5歳か6歳くらいの男の子が泣きながらフィガロの腹に頭突きをするように勢いよく抱きついてきた。『ママ』と何度も言いながら大声で泣くだけで、幼児の名前を聞いても、親の名前を聞いても答えない。多分間違いなく迷子なのだと思う。そして冒頭に戻る。
フィガロは暫く考えて、自分が端末を持っていることを思い出した。
端末とは、遠隔地同士でも会話や文章のやり取りができる便利な魔導製品だ。今時、小学生でも持っている程広く普及している。フィガロの端末には、ガイナの連絡先しか入っていない。連絡先を交換するような友達なんていなかった。
フィガロは一度両手に持っていた荷物を地面に置き、泣きまくっている幼児をくっつけたまま、尻ポケットに入れていた端末を取り出して操作した。
『迷子発見。詰所の場所が分かんないし、現在地も分かんない。助けて』
それだけの文章を端末に打ち込んで、ガイナに送った。
ガイナなら多分フィガロを見つけてくれる。多分だけど。ガイナが来てくれたらなんとかなる。
フィガロはアンジェリーナにその事を伝えて、泣いている幼児をくっつけたまま、道のど真ん中から道の端っこに移動した。迷子になった時はその場から動かない方がいいとガイナに言われている。ガイナならフィガロを見つけてくれるし、助けてくれる。だって、ガイナだから。
フィガロはめちゃくちゃ泣いている幼児の頭をやんわり撫でた。
先週引っ越してきたばかりであるが故に土地勘が全くない場所で、迷子らしき幼児に遭遇し、現在めちゃくちゃ泣いている幼児にしがみつかれていて動けない。隣には自称・同級生で隣の席だという赤毛の美少女がいる。フィガロは、美少女アンジェリーナの重い荷物を両手に持っていた。
「ねぇ、フィガロ。どうする? この子を放っては帰れないわ」
「……領軍の詰所どこ?」
「詰所に連れていくの?」
「迷子なら地域課の軍人が親を探してくれる」
「へぇ。そうなのね。でもね、残念なお知らせがあるの」
「なに」
「私、詰所の場所知らないのよね。詰所に行ったことないもの」
「……マジで?」
「マジよ」
「まぁぁまぁぁぁぁ!! あぁぁぁぁ……」
フィガロはこの状況をどうしたらいいのか思い浮かばず、現実逃避をするように空を見上げた。いっそ憎々しい程澄み渡った雲一つない青空を見上げながら、どうしてこうなったんだっけ……と自分の記憶を振り返った。
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フィガロは今年で10歳になる。土の宗主国サンガレア領の中で一番大きな街である通称・中央の街から、一週間前にバーバラの街に引っ越してきた。フィガロは父親であるガイナと2人で、小さな一軒家に住んでいる。
この世は男女比が平等ではなく、6:4で男の方が多い。土の宗主国では複婚や同性婚が認められており、土の宗主国王都とサンガレア領の中央の街には男同士でも子供をつくることができる施設が存在する。
フィガロの両親は男夫婦だった。三ヶ月前に離婚をしたので過去形である。もう1人の父親バーナードは女と浮気をした挙げ句、相手の女に子供ができ、ガイナとフィガロを捨てて、浮気相手の女と結婚をした。離婚の話し合いを隠れてこっそり覗いていた時に、『俺の子供はこれから増えるからさ。別にいらねぇし、フィガロはお前にやるよ』というバーナードの台詞を聞いた瞬間から、バーナードのことを父親とも家族とも思わなくなった。フィガロの父親はガイナだけだし、家族もガイナだけだ。
ガイナはサンガレア領軍に勤める軍人だ。離婚が決まってから、別の街への異動を希望し、フィガロと2人でバーバラへ引っ越した。ガイナは口が悪いし、すぐに手を出すし、顔が怖いが、少なくともフィガロを捨てたバーナードなんかよりも、ずっと優しい。泣くことなんて無縁そうな厳つい大男なガイナが、フィガロがバーナードに捨てられたことを悲しんで、こっそり泣いていたことを知っている。自分が裏切られて捨てられたことよりも、フィガロが捨てられたことの方が憐れで悲しかったらしい。
フィガロはそもそも、何をしてもいい加減で仕事が休みの日でも全然構ってくれないバーナードよりも、口煩いが仕事が忙しくてもいつも全力で構ってくれるガイナの方が好きだったから、別にバーナードがいなくてもガイナがいればいい。フィガロは自分のことを可哀想だなんて全然思っていない。自分がガイナに愛されてることを知ってるから、全く可哀想なんかじゃない。
中央の街からバーバラの街へ引っ越すことが決まった時、ガイナは『ダチと別れることになってわりぃ』と辛そうな顔をしたが、フィガロは特に仲がいい友達はいなかったので、何の問題もない。
昨日初めて登校したバーバラの小学校は、一言で言うと不愉快だった。授業が始まる前に担任の先生から言われて、教室の前の方で自己紹介をさせられた。多分30人以上いる生徒達からじろじろ見られて、ざわざわひそひそされた。そもそも、転校生というもの自体が珍しいらしい。なんだか見せ物にされたみたいで気分が悪かった。話しかけてくる生徒もいたが、ムカムカしていたので、普通に無視した。『感じが悪い』とひそひそ話をされたが、フィガロはまるで気にしなかった。ひそひそ話をする方が感じが悪い。言いたいことがあるなら直接ハッキリ言えばいい。
今日も学校で誰とも話すことなく、授業が終わるなり、フィガロは真っ直ぐに住み始めたばかりの家に帰った。帰ってすぐに洗濯物を取り込み、夕食を作ろうと台所でごそごそしている時にガイナが帰ってきた。まだ午後のお茶の時間だ。今日は早く帰れたらしい。
帰って来たガイナに、台所で何をしていたのかと聞かれたから、フィガロは素直に『今から晩飯作る。家のことは俺がやるよ。父さんは仕事あんじゃん』と答えた。そして、ガイナから拳骨をくらった。『子供は食って寝て遊ぶのが仕事だ。職務放棄すんじゃねぇ。家のことは俺がやっから、つまんねぇ気ぃ使ってねぇで、お前はちゃんと遊んでこい。暗くなる前には帰れよ』と言って、ガイナに玄関から放り出された。フィガロはもうすぐ10歳だ。別に外で遊びたい歳なんかじゃない。
フィガロはぶすっとしたまま適当に歩き出した。バーバラに来て、まだ近所の飲食店と小学校くらいにしか行ったことがない。適当に街を歩いて帰るかと思って、とりあえず大通りがあるという方向へと歩いた。
賑やかな大通りを歩き、適当に脇道に入ってみると、道の隅っこにしゃがんで俯いている赤毛の少女がいた。少女の両脇に置かれた二つの手提げの袋からは野菜や瓶が覗いている。フィガロは本当に小さい頃から、『女子供と年寄りには優しく親切にしろよ』と、ガイナから言い聞かせられている。フィガロは一応赤毛の少女に声をかけることにした。
「何してんの」
「あら。フィガロ」
俯いていた赤毛の少女が顔を上げた。かなりの美少女である。しかし、初対面の筈なのに何故フィガロの名前を知っている上に馴れ馴れしく名前を呼ぶのか。
「誰」
「アンジェリーナ・ヒューストンよ。隣の席じゃない。昨日自己紹介したでしょ」
「覚えてない」
「あらそう」
「何してんの」
「サンダルが壊れたの。買ったばかりなのに。おつかいから帰る途中なんだけど……」
アンジェリーナが脱いだ右足のサンダルを見せてきた。靴底がべらっと中途半端に剥がれてしまっている。
「家どこ。親は?」
「家は喫茶店よ。ここからじゃ小一時間はかかるの。お父さん達はお仕事中。端末を忘れちゃったから、迎えに来てもらうのも無理なのよ」
「ふーん。……ん」
フィガロはその場で自分のサンダルを脱いで、アンジェリーナにずいっと差し出した。別にフィガロは裸足でも問題ない。今は春になったばかりだし、夏のように地面が火傷しそうな程熱いって訳でもない。アンジェリーナが驚いたように目をパチパチさせた。
「なに?」
「履いて帰れば?」
「貴方はどうするのよ」
「別に問題ねぇし」
「……本当に借りていいの?」
「ん」
アンジェリーナがおずおずといった様子でフィガロのサンダルを受け取った。アンジェリーナがほっとしたように頬を緩めた。
「ありがとう。本当に助かるわ。どうしたらいいのか全然思いつかなくて、困ってたの」
「別に」
「ねぇ。貴方は何をしてたの? 家は近くなの?」
「……暇だから適当に歩いてただけ」
「じゃあ、うちのお店に来てよ。お礼にフルーツサンドをご馳走させて。フレディおじいちゃんのフルーツサンドは街で一番美味しいのよ!」
「別に礼とかいいし」
「サンダルも返さなきゃいけないもの。それに助けてもらったのにお礼をしないなんてあり得ないわ。貴方が私の立場だったら何もしないの?」
「……するけど」
「でしょ?」
フィガロはにっこりと笑ったアンジェリーナに頷くことしかできなかった。本当に礼なんていいのだが、アンジェリーナの言うことは一理あるし、サンダルは一足しか持っていないので、返してもらわねば少し困る。こんなことなら、バーバラに引っ越した次の日に買い物に出た折、『ついでに新しいサンダルも買うか?』と、ガイナに聞かれた時に頷いておけばよかった。
仕方がないので、フィガロはアンジェリーナの家の喫茶店に行くことにした。フィガロは裸足のまま、無言でアンジェリーナの荷物を持ち、歩き始めた。アンジェリーナが少し慌ててサンダルを履いてフィガロを追いかけてきた。歩いていると、アンジェリーナとは歩く速さが微妙に違うことに気づいて、フィガロはアンジェリーナに合わせて歩く速さを緩めた。アンジェリーナはサイズが合わないサンダルを履いているから仕方がない。
脇道を道なりに5分も歩かないうちに、今度は道のど真ん中で蹲っている小さな子供を見つけた。フィガロが声をかけると、多分5歳か6歳くらいの男の子が泣きながらフィガロの腹に頭突きをするように勢いよく抱きついてきた。『ママ』と何度も言いながら大声で泣くだけで、幼児の名前を聞いても、親の名前を聞いても答えない。多分間違いなく迷子なのだと思う。そして冒頭に戻る。
フィガロは暫く考えて、自分が端末を持っていることを思い出した。
端末とは、遠隔地同士でも会話や文章のやり取りができる便利な魔導製品だ。今時、小学生でも持っている程広く普及している。フィガロの端末には、ガイナの連絡先しか入っていない。連絡先を交換するような友達なんていなかった。
フィガロは一度両手に持っていた荷物を地面に置き、泣きまくっている幼児をくっつけたまま、尻ポケットに入れていた端末を取り出して操作した。
『迷子発見。詰所の場所が分かんないし、現在地も分かんない。助けて』
それだけの文章を端末に打ち込んで、ガイナに送った。
ガイナなら多分フィガロを見つけてくれる。多分だけど。ガイナが来てくれたらなんとかなる。
フィガロはアンジェリーナにその事を伝えて、泣いている幼児をくっつけたまま、道のど真ん中から道の端っこに移動した。迷子になった時はその場から動かない方がいいとガイナに言われている。ガイナならフィガロを見つけてくれるし、助けてくれる。だって、ガイナだから。
フィガロはめちゃくちゃ泣いている幼児の頭をやんわり撫でた。
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