それってつまり、うまれたときから愛してるってこと

多賀 はるみ

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 中学三年間はあっという間に過ぎた。無事に高校受験も終わり、春休みをぼんやり過ごしていたら、玄関の扉がガチャリと開いた。

「ただいま」

 そこにはシュウ兄がいた。
 約二年、会っていなかったシュウ兄が。

 咄嗟に「お帰り」と言えば、「おう」と返事が返ってきた。ここで、少し違和感。あれ?   シカトされない。
 母さんがリビングから顔を出す。

「あら、シュウお帰りー」

「ただいま」

「シュウ兄が帰ってくるなんて珍しいね」

 さっきシカトされなかったので、思い切って話しかけてみた。

「お前の合格祝いするって、お袋から連絡きたからさ」と頭をポンポン叩かれた。

 何が起こっているのだろう。あんなに避けられていたのに、それが一切無かったかのように俺に接してくる。

「そうよー。今日は、お祝いよ!   ご馳走作るから、シュウも久々に帰ってきてーって、お母さんが電話したの」
 
 母さんはご機嫌だ。

 シュウ兄にほらよ。と、細長いラッピングされた箱を渡された。

「お前が行く高校って、◯◯高校だろ?   あそこ、制服あるのにネクタイは自由だったなぁと思って。ネクタイ、合格祝いにやるよ」

「あ、りがと」

「ん。おめでとう」

「ほら、玄関で話してないで。シュウは荷物、部屋に置いてきなさい。こっちには、どれくらいいられるの?」

「んー。一週間くらいかな」

 一週間。結構長くいられるんだ。あんなに、帰ってこなかったのに。どういう風の吹き回しだろう。

 チラとシュウ兄を見やると、家を出ていったあの頃よりもだいぶ大人びて見えた。
 元から身長は高い方だったが、また少し伸びてるんじゃないか……   俺も身長は伸びたはずなのに、あの頃と目線がそんなに変わらない気がする。
 髪の毛も少し染めているのか、茶髪になっているし、耳にはキラリと緑色に光ったピアスが存在感を出していた。
 チラっと見ているつもりだったが、見過ぎていたのかシュウ兄は笑って俺の頭をクシャクシャっとして、荷物を持って二階の部屋に上がっていった。

 二階に上がるシュウ兄を見送り、手の中のプレゼントのラッピングを外して中を見たら、濃い緑色のネクタイがそこにはあった。


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