障王

泉出康一

文字の大きさ
77 / 211
第2章『ガイ-過去編-』

第13障『拷問リレー』

しおりを挟む
???(白い部屋)にて…

「(何処だ、ココ…)」

ガイは突然何処かへ移動していたのだ。

「(タレントか。しまったな…他にもハンディーキャッパーがいたのか…!くそっ!俺とした事が迂闊だった…)」

そこは約10メートル四方の部屋で、中央は透明な壁で仕切られていた。その壁の向こうには誰かがいる。

「お前が俺をここに連れてきたハンディーキャッパーか?」

ガイは透明な壁の向こうにいる男に尋ねた。

「その通りだ。」
「誰だお前。あいつの仲間か?」
「俺は道田みちだ智蔵ともぞう。お前がさっきボコボコにしてた智雄ともおの父親だ。」
「父親…」

ガイは父親と聞き、一瞬、何か思い詰めたような表情をした。

「父親なら、息子の人殺しぐらい止めてやれよ。」

しかし、智蔵は首を振った。

「…息子は今年で35歳。親として、なんとしてでも結婚させてやりたいんだ。本人もそれを望んでいる。」
「女児と結婚か?」
「智雄が小さい女の子が好きというのなら仕方がない。」
「でも人殺しは犯罪だろ。止めろよ。親としてよ。」

その時、智蔵は部屋の天井を見上げた。

「智雄はな…殺した子を食べるのが趣味なんだ…」
「は…?」

ガイは呆気に取られていた。

「世間一般では、息子の趣味は蔑まれ、嫌悪され、犯罪として扱われる。誰も、息子の趣味を肯定してはくれない。世界は息子の敵だ…」

智蔵は自分の胸に手を置いた。

「それなら!親である俺が!息子の唯一の救いになって何が悪い!」
「(何だこいつ…)」

ガイには智蔵の言葉の意味が理解できなかった。

「じゃあ、始めようか。」

智蔵が指パッチンをすると、テーブルが現れた。その上にはナイフと金槌が置いてあった。

「…?」
「俺のタレント『拷問リレーゴーカムトゥワイス』は度胸試しの能力。」

智蔵は右手小指を金槌で殴った。

「うぅッ…!!!」

小指は潰れた。

「な、何してるんだ⁈」

その時、透明の壁に文字が現れた。

〈スロット開始〉

「スロット…?」

すると、透明な壁に描かれた数字が回り始め、数秒後、それは止まった。

〈1ー1ー3〉

その数字列が表示されると、さらにその下に文字が現れた。

〈3倍のダメージを受けて下さい。制限時間は5分です。〉
「は?」

すると、カウントダウンの表示が始まった。

「拷問リレーがはじまったぞ。」
「拷問リレー…?」

ガイには今何が起こっているか、訳がわからなかった。

「説明するぞ。まず、俺が自分で自分を痛めつける。そして、スロットが開始される。数字は1~3まで。その数字の3つをかけた数の分だけ倍にして、相手に自分でダメージを与えさせる。ちなみに、相手の自傷ターン中はもう1人は自傷行為を出来ない。」
「カウントダウンの意味は…?」
「もし、カウントダウンまでに課題として出されているダメージを受けなければ、そいつは死ぬ。」
「なッ⁈」

ガイはそれを聞き、驚愕した。

「お前が課題をクリアすれば、次はお前が自分でどのくらい自分を痛めつけるかを決める事ができる。そこからは同じだ。順番ずつゲームは続いていく。俺が死ぬか、タレントを解除するまでな。」
「それで度胸試しか…」

〈残り時間3分40秒〉

「(とりあえず、このターンを終わらせるしかない…)」

ガイは金槌で自分の右手小指を叩き潰した。

「くッ…!!!」

それを見た智蔵は驚いた。

「(コイツ、躊躇う事なく指を潰しやがった…)」

智蔵はこのタレントで負けた事はない。何故なら、相手は自傷行為をしない、いや、できないからだ。よく考えてみて欲しい。自分で自分の指を潰す、果たしてそんな事、常人の精神力で出来るものなのだろうか。否、無理だ。
しかし、ガイはやってのけた。躊躇いもせず。常人では無い。それを智蔵も悟ったのだ。

「(3倍ってことはあと2本か…これはキツイな…)」

ガイは右手薬指を金槌で潰した。

「(うッ…あと1本…)」

その時、ガイの動きが止まった。

「(動かない…当然か。こんなゲーム、何の覚悟もなく出来る訳がない。今までの相手だってそうだ。皆、一つ目の課題すらこなす事は出来なかったのだから。だが俺は別だ。息子を守るためなら、俺の命ぐらい…)」

すると、ガイは喋り始めた。

「まんまとお前のペースにハマるとこだったよ…」
「なに…?」

ガイは透明な壁を左手で殴った。しかし、壁は壊れなかった。

「残念だが、ここは俺が作った仮想空間だ。だから、ここにあるものは絶対に壊れない。俺たち以外はな…」

透明な壁にはガイの血が付いている。
それを見たガイはクスクスと笑い始めた。

「(コイツ、壊れたか?)」

次の瞬間、ガイは勝利を確信した顔で智蔵を指差した。

「なるほどな。理解した!お前のタレントの欠点を!」
「な、なにぃ…⁈」

ガイはナイフで自分の右手首を深く切った。

「うぅッ…!」
「な…⁈」

智蔵はガイの行動に驚嘆した。

「やっぱり。今、何してんだって思ったな。」
「な、なんだと…」
「何故ナイフと金槌が置いてるのか。何故、お前が何してんだって思ったのか。その2つの点から分かったこと…それは、斬撃と打撃のダメージは別って事だろ。」
「た、確かにそうだが…それのどこが欠点なんだ…」

ガイは中央の透明な壁に自分の血を塗りたくった。

「(こいつ、一体何を考えている⁈)」

智蔵はガイの行動が理解できない。

「(くそ…血が足りない…!)」

ガイは左手首も切った。そして、壁に血を塗っていく。

〈残り時間1分3秒〉

「こんくらいでいいかな。」

透明な壁の端の部分はガイの血で真っ赤になっていた。

「おっしゃ!ラスト一本!」

ガイは右手中指を潰した。

「くぁ~!痛い!」

すると、透明な壁に文字が浮かんだ。

〈あなたのターンです。ダメージを決めて下さい。〉

「ま、まさか…!」
「あぁ!そうだよ!」

透明な壁に文字が浮かんだ。

〈スロット開始〉

「お前が壁に血をつけた理由…それは、お前の自傷を俺から見えなくするためか⁈」
「そ…その通り…だ…はぁ、はぁ…いててて…」

〈3ー2ー1〉
〈6倍のダメージを受けて下さい。制限時間は1時間です。〉

「んなッ⁈」
「どうやら制限時間は受けるダメージと比例してるみたいだな…」
「これが俺のタレントの欠点か!」
「その通りだ…相手が斬撃か打撃か、どっちで自傷したか分からなければ、自分は運が悪ければ2種類のダメージを受ける羽目になる…それに、相手がどのくらいダメージを受けたか分からなければ、自分も目安が分からない…つまり、ちょっとずつダメージを受けなければ分からないという地獄を味わう!」

智蔵は焦りを感じ始めた。

「指3本で5分だ…1時間、単純計算で指36本分のダメージ…お前、そんなに指ないよな…」

智蔵は完全に焦っている。

「(あ、焦るな…奴のダメージは6倍されている。って事はつまり、アイツは指6本分のダメージを受けたのか⁈)」

焦り、考え込む智蔵。それに対し、ガイは質問する。

「どうする…斬撃か打撃か…決めたのか…?」

その時、智蔵は部屋の端まで走った。

「(奴の見える角度まで行くんだ!奴の姿さえ見えれば、どんなダメージかが分かる!)」

智蔵は部屋の端からガイの方を見た。しかし、ガイの姿は見えなかった。

「お前…!机を倒して隠れているのか⁈」

ガイは血の壁、机、部屋の端で完全に智蔵から見えない位置にいる。

「くそ!」

智蔵は壁を殴った。

「おいおい…どうしたんだよ…ココの物は壊れないって、お前が言ったんだぞ…忘れたのか…?」
「くッ…!」

智蔵は机のところへ戻った。

「(や、やってやる…どっちか分からなくてもやってやるぞ…!)」

智蔵は金槌で次々と自分の指を潰していく。

「ア"ア"ァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

智蔵の右手の指はぐちゃぐちゃに潰れていた。

「ほら…早くやれよ…その調子じゃ…制限時間過ぎるかもだぞ…」
「ッ!!!?!?!」

智蔵は金槌で自分の頭部や足を殴りまくった。

「(俺は負けない!負けられない!智雄を守るんだ!)」

智蔵の体はもうボロボロだ。

「…頑張ってるとこ悪いんだけどさ、俺、金槌なんて使ってないよ。」

ガイは言い放った。

「正解はナイフでした…」

それを聞くと、智蔵は手に握られた金槌を床に落とした。

「無駄な怪我しちゃったな、お前…アハハハハ…」

智蔵は床に跪いた。

「おれは…」
「もう、諦めろ…お前はもう勝てない…」

智蔵は黙り込んでいる。

「タレントを解除しろ…お前の大好きな息子が家で待ってるぞ…」
「…智雄…」

智蔵は息子の顔を思い浮かべた。

「『拷問リレーゴーカムトゥワイス』解除…」

マンション内、705号室、部屋内にて…

ガイたちは智雄の部屋に現れた。

「智雄…父さんを…許してくれ…」

智蔵はベッドの上で気絶している智雄の横で意識を失った。

「ガイ…!」

椅子に縛られている有野はガイを見た。
ガイの腹部からは大量の血が出ている。そう、ガイが受けたダメージは、自分の腹をナイフで2回刺したものだったのだ。
ガイは落ちていた包丁で、有野を縛っていた縄を切った。

「ゲーセン…また…今度…な…」

ガイは床に倒れ、気を失った。

「ガイ…!起きて…!ガイ!!!」

この戦い、智蔵が追い詰められているように見えていたが、実は追い詰められていたのはガイの方であった。
万一、1倍が出た時のために必要以上のダメージを受けたガイにとって、1時間丸々智蔵に耐久されたら、大量出血で確実に死んでしまう。だから、ガイはあえて余裕なフリをしたり、相手を挑発して、智蔵の動揺を誘った。そうする事で、智蔵に負けを認めさせ、能力を解除させようと仕組んだのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...