【3章完結!】最弱の「色使い」の冒険譚〜追放された少年は第二の人生を歩む〜

やのもと しん

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4章 「魔物の王」

168話 「第一席の能力」

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「そこまでにしておけよ。あんま騒ぐと周りの迷惑になるんだよ」

 あまりに騒がしかったためファルベが止めに入る。ラルフも相手するのに困っている様子だったし、下手に実力があるものだから誰も止めようとしない。
 ならば、ここはファルベの出番だ。義務感のようなものに突き動かされて、騒ぎ立てる男――ディータの肩に手を置く。
 ディータはこちらを恨めしげに睨みつけ、

「アイナハル王国代表のガキか……てめぇ、今口答えしたのか? おれがぁ、誰か分かって言ってんのかよぉ!」

 ラルフに向けていた怒りの矛先がこちらに向かう。

「誰かは分かってるよ。だけど強ければなにをしても許されるって訳じゃない。お前のいる国とここは違うんだよ」

 ヴォーキンと同じグルドラ帝国出身なら武力のみが全てを決めるというルールで生きてきたのだろう。だから横暴な態度を慎もうとしない。しかし、ここは帝国じゃない。

「うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ! 雑魚がしゃしゃり出やがってよぉ!」

 ディータが顔を真っ赤に染めて剣を抜く。

「ディータ君、それは……!」

「ラルフ! テメェは黙ってろ!」

 輝く刃をラルフに突きつけ、強引に黙らせている。

「おれのぉ言うことを聞かねぇ雑魚はぁこの場で殺す!」

「血気盛んすぎるだろ。……ラルフ、どうしたら良いと思う?」

「うーん、正直仕事の前に荒事起こすのは良くないんだけど……多分、収まりそうにないよねぇ」

 剣呑な雰囲気のディータは未だにファルベに殺意マックスの視線を向けている。

「ファルベ君、ちょっとだけ相手してあげてくれるかな。病み上がりで調子良くないだろうけど」

「了解。大仕事の前の準備運動だと思うさ。支障が出ないくらいの時間で終わらせてくるよ」

「クソども……どこまでおれぉコケにすればぁ気が済むんだぁ……!」

「まあまあ、戦うにしてもこの場じゃ狭いしもう少し開けた場所にしないかい? 他の人を巻き込むのも申し訳ないしさ」

 ラルフが宥めつつ、ディータの腕を掴んでどこかへ連れて行く。

「離せ! 今すぐあのガキをぉ……!」

「もうちょっと我慢してね~近くに広場があるからそこでしようね~」

 まるで赤ちゃんと接しているような感じがしてくる。強さにかまけて誰からも否定されないから、精神が成長していないのか。

 強引にディータを連れて行くラルフの後をファルベもついて行く。

 この場から離れる前に、ルナたちの元に寄り声をかける。

「すぐ終わらせてくるから、ここで待ってろ」

「はい。ししょーの実力を疑ってないですから。早く帰ってきて下さいね」

 ルナの頭を撫でてから、ファルベはラルフたちを追う。


 ファルベが出て行く直前、一部始終を見ていたヴォーキンがファルベを追って外に出て行く。
 近くにいたクルーガーはどう動くべきか迷っていた。

「姫様、どう致しますか。あの者達の決闘を見学されますか?」

「結果が見え透いている争いほど、退屈なものもありませんわね。そんなものを見るほど私様の時間は安くありませんわ」

「そうですか。自分も姫様の意見に同意ですが……まさかそこまで即否定されるとは思っておりませんでした」

「ふん、もう少しでも戦力が拮抗しておれば私様も興味を引かれていたはずですわね。ところでクルーガー? 賭けをしましょう」

「賭け……ですか」

 唐突な提案にクルーガーは困惑する。マリナの提案が突然なのはいつものことだが、賭け事を始めるのはあまり見たことがない。

「そうですわ。ファルベともう一人……あの、騒がしい輩……なんという名前でしたっけ」

「ディータ様ですね。一応グルドラ帝国における中級冒険者の第一席ですので覚えておいても損はないかと」

「知らない覚えない記憶に残らない。小さな世界の頂点だからと騒ぎ立てる者に割く容量はないですわ」

「もう少し敵を作らない言い方をして欲しいところですが……グルドラ帝国から来て下さった精鋭の方達からの視線を感じますよ」

 敵視されているわけではないが、こちらに注目する視線を感じる。

「視線を浴びるのは私様の役目でもありますわね。そんなことより、本題ですわ。ファルベとデ……なんとかの決闘、どのくらいの時間で終わると思います?」

「それを賭けようという話ですか?」

「そうですわ。正直、どちらが勝つかなんて賭けにもならないですし。なら、勝負が終わる時間がいつか。それでかけてみませんこと?」

「あまり気乗りはしませんが」

「私様の命令ですわ」

「分かりました」

 マリナの命令であればどんなものでも断れない。クルーガーは覚悟を決めると、ファルベとディータの結果を予測し、その時間を計測する。

「では、私様からですわ――」





 広場のような場所に連れてこられたディータとファルベ。

「ここなら大丈夫だ。存分にやりあうといい」

 そう言ってラルフが二人から離れようとする。そして、ファルベの隣を通りすがった時、心配そうな視線と共に声がかかる。

「本当に手間をかけさせちゃってごめんね」

「問題ない。ちゃっちゃと終わらせるよ」

 剣を抜き、構える。それに反応したディータが血走らせた眼球をこちらに向けてくる。

「最強すぎる能力と戦わせるのはクソガキとはいえ可哀想だからよぉ。事前におれのぉスキルを教えてやるよ。今からクソみてえなガキはこの能力で無様に殺されんだぁ!」

 ディータが手を天に突き立てる。すると、ディータの周囲に幾つもの武器が生み出される。剣、刀、斧、棍棒、薙刀。その種類は数えきれない。

「――『武器錬成』。一席に相応しい最強のスキルだろぉが!」

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