異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

第159話 王立学院襲撃事件 後編

校舎を出て、周囲を見渡す。校門の方に４人の賊が見えている。他に賊が見当たらないのを確認している
「イールス、賊が４人だな…どうする？ 待つか？」
グレイスが周囲を見ながら聞く
「ここで待っていても、既に相手に見付かっています。 包囲されるなら、なるべく見渡せる所か入口を閉じられる場所が良いと思います」
イールスが賊を見ながら言う
「包囲されるなら、守り易い方が良いな…それに門の方なら騎士が早く来てくれるだろう」
グレイスが門の方の賊を見て、賊が何か合図をしているのを見ている。講師と上級生の生徒達が相談して、イールス先頭に門の方に歩いていく

賊達が驚いた様にイールス達を見ている
「校舎で待機しないか…思いきった行動だな」
男がイールスを見て言う
「大変申し訳有りませんが、外に出たいので、退いて貰えますか？ 生徒達が非常に困っています」
イールスが頭を下げながら言うと、生徒達が驚いた様に見ている
「は？ 襲われていて…退けか？ 頭おかしいのか？ 死にたいのか？」
賊の男が苦笑いしていると、男が爆笑している
「愉快だな！！ 豪胆にも賊に退けとは！！ 死にたくなければ大人しくしている事だ！」
男が笑いながら言う
「大変申し訳ないのですが、何故このような暴挙に出たのですか？ 王家に何か恨みでも？ それとも何か目的でも？ 非才の未熟者ですので理解が出来ません」
イールスが頭を下げながら言う
「まずは小僧を捕まえろ！！ その後でイールスとか言う小僧の場所を教えて貰おうか？」
賊が笑いながら言うと、２人の賊がイールスに接近してくる。イールスは間合いに入るのを待ちながら、賊達の動きを見ている

賊が間合いに入ると、イールスが闘気をまとい、一気に接近して、賊に向けて剣を振り抜き、返す剣でもう１人に剣を振り抜いて、２人の賊が地面に転がると、男子生徒が慌てて剣を奪い、賊の武器奪い始める
「小僧！！何者！！ 危険だ！！ 早く殺せ」
賊が驚き、慌てて怒鳴ると、男が剣を抜き、イールスを牽制するように構えている
「油断したな…こんな学院にこれ程の使い手が居たとは…」
男が呟き、イールスに近付いている。闘気をまとい、一気にイールスに近付き、剣を振り抜くと、イールスが慌ててかわしながら、剣を叩き付けている

男とイールスの打ち合いが始まると、剣が空を切る音と金属がぶつかる音が鳴り響いている
「小僧、腕は互角か…残念だったな…勿体無いが、そろそろ死んで貰うぞ」
男がイールスを見ながら言うと、剣を落とし腰の剣を抜き闘気をまとっている
「え！ 魔剣！」
イールスが男の剣を見て驚いた様に呟く
「剣の性能の所為にして良いぞ…小僧の剣の腕は騎士団長クラスだろう」
男が魔剣を構えながら言う
「下賤な身の半人前が騎士団長クラスなんて、恐れ多い事です。大変申し訳ないのですが、過大評価し過ぎです」
イールスが剣を構えながら言う
「は？ 半人前？ どこかだ！！ 俺と互角に打ち合い、それで半人前か？ 頭がおかしいのか？」
男が驚き口に出すと、生徒達がイールスを見ながら苦笑いしている
（どう見ても達人に見えますけど…半人前なのか？ 過大評価ではなく、正当な評価と思いますが…）

イールスが男の剣をかわしながら、徐々に追い詰められている
「イールス様！！」
アリシナが泣きそうな声で叫ぶと、イールスの制服が既に数ヶ所斬られ、所々血が滲んでいる
「そろそろ死んで貰おうか？ 」
男が魔剣を構えながら闘気をまとっている

どうにかしないと…魔剣では剣を受け止める事が出来ない…剣をかわすのもギリギリだし…何をしたら？ 時間稼ぎもそろそろ限界か…

「最後に名前を聞いておこうか？ 我はディオルバルク・ランドルセイルバウムである！ あの世で誇るが良いぞ」
男がイールスを睨みながら言う
「イールスと申します。未熟者の半人前です」
イールスが考えながら言う
「は？ イールス…そうか…お前がイールスか？ 勿体無いな…」
男が呟き、徐々に間合いを詰めようとするが、イールスが下がり間合いを取り剣を構えている
「魔力の源よ、雷となりてあらわれよ！サンダー」
イールスが小声で呟く様に魔法を使う準備をしていると、男がイールスに接近して、剣を振り、イールスがかわして横に飛び退く様に間合いを取ろうとするがすぐに男が接近して、剣を振り抜く。イールスは迫る魔剣目掛けて剣を振り下ろし、剣と剣が当たった瞬間男の剣に稲光が走る
「ギャーーーー」
男が痺れた様に悲鳴をあげている
「魔力の源よ、雷となりてあらわれよ！サンダー」
イールスがそのまま小声で魔法を放ち、男の剣を伝わる
「ギャーーーーーー」
男が叫ぶと、イールスが剣を持つ腕目掛けて剣を叩き付け、男が魔剣を落とすと、イールスが剣で凪払い、男の腕が、砕ける音と共に男が地面を転がりながら倒れる

「嘘だ！！」
賊が転がった男を見て慌てていると、門から騎士が走ってくる
「御覚悟を」
イールスが剣を構えながら言うと、集まって来ていた賊達がイールスを見てから騎士を見て慌てている
「そこまでだ！！ 捕らえよ」
騎士達が叫び、賊に突進していくと、賊達が慌てて応戦していると、一部の男達が門の方に走っていくと、門の近くで弾き飛ばされている
「ここを通りたければ、勝って見せてくれ！！ どんどんかかってこい！！」
リゼッタが笑顔で叫び、他の騎士達が苦笑いしている

騎士達が賊を拘束していると、騎士が講師に聞き取りをしている

セレベレスバウム準男爵が苦笑いしながらイールスの元に来る
「イールス殿、ディオルバルクを倒したのは、イールス殿で間違いないですか？」
準男爵が苦笑いして聞いている
「本当に勝てないと思いました、魔剣持ちなんて…剣では勝てなかったです」
イールスが苦笑いしている
「そうですか…勝てるわけ無いな…あのディオルバルクを倒す人が王立学院にいる方がおかしい…」
準男爵が諦めたようにため息を吐いている
「ちょっと黒幕を聞き出したいのですが…何故狙われたか、知りたいです」
イールスが考えながら聞く
「ギゼルナム商会の関係者だ…イールス殿恨みでも買いましたか？」
「やっぱり…仕返しに行くしか無いかな？ 楽しい王立学院の講義を邪魔したのだから…賠償金ぐらいは貰わないと…」
イールスが笑みを浮かべている