異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇

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第293話 魔法戦 後編

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アリーオ軍は前方で起きた閃光と地響きに騒然としている
「アリーオ様、何が起きたのでしょうか?」
副官が青ざめてアリーオの横顔を見ている
「何が… 魔法か? あんな魔法有るのか? 何が起きた? 報告は? イールスが魔法戦仕掛けると聞いていたが… ゴブリンの魔法か? イールス軍はどうなっている? 誰かーーーー教えてくれーーーーー 何が起きた!!」
アリーオが急に叫ぶと、周囲の騎士達も顔を見合せている

しばらくして、アリーオ軍の元にウィールが到着してアリーオ達の所に案内される
「クリストファー隊副官ウィールです。 報告に参りました」
「クリストファー隊の? ウィール何が起きた?」
アリーオがウィールを見て言う
「イールス様とリシリア様の魔法戦の先制攻撃魔法で渓谷が崩壊しました……」
ウィールが詳しく説明していると、アリーオが頭を抱えて震えている
(はーーーーー あの閃光はイールスの魔法なのか!! 渓谷が崩壊? イールス何をしているんだ!! こんな事が知られたら大変な事になるぞ!! この報告は本当か? 嘘か夢か? どうする? イールスが怒ったら軍を1人で滅ぼせそう… イールスが怒ったら国も1人で滅ぼせる? どうしたら? どうする? どうすれば?………)

イールスは、クレーターを見て考えている
「困ったな… ゴブリン逃がしたかも… 追撃するには、馬車が通れないし……… 少し手前から緩やかに… 魔法で穴を空けて通路を作って… ついでに邪魔な山も全部吹き飛ばそうかな?」
イールスが呟いている
「兄様、頑張ります」
リシリアが嬉しそうにイールスの顔を見ている
「先にあの山を吹き飛ばそう」
イールスが笑顔で言うと、後ろで聞いていたシルビアの顔が引き攣っている
(今、邪魔な山を吹き飛ばすと… 山消し飛ばせるだけに本気なのですか? 先にクリストファー様達に伝えた方が良いですが… 完全な力業にしてないですか? 実力を隠す気も無さそうな… 記録はしておきますが… このクレーターの大きさは………)

数日間、イールスとリシリア達は、魔法を何回も放ちながら渓谷を進みクラウザー達が馬車が通れる様に土木仕事を続けて、安全を確保している

「あ! 渓谷を抜けた」
イールスが笑顔で森を見ている
「はい! 兄様、魔法沢山使えて楽しかったです」
リシリアが笑顔でイールスの横で森を見ている
「1度戻って、全軍で突破しようか? あれ? 道が無い…… 道を作りながら進まないといけないかな?」
イールスが周囲を見て言う
「兄様、途中左に道が有りました」
リシリアが思い出したように言う
「え! 横から攻撃されたら大変な事になりそう… ディオルバルグさん達に偵察を頼もうかな? この当たりなら、クラウザーさんの方が知っているかな?」
イールスが迷っていると、カミューが周囲を見て戻ってくる
「イールス様、山2つ分街道から外れていますが、あの山の方角に鉱山町が有ります。 この森の中にも何ヵ所か村が有ったと思います」
カミューが笑顔で説明している
「カミュー詳しいね」
「出身はあの付近の村です」
カミューが笑顔で説明している

村跡があるなら良いし… 生き残りがいれば良いかも… クラウザーさん達に偵察に向かって貰い、バロン達に道を作って貰おうかな? ウイングストリームで一直線に木を吹き飛ばすかな?

イールスが考えながら笑みを浮かべているのをリシリアが横で微笑みながら見ている

イールスが森に近付き魔法を放つ準備をしている
「兄様、どの魔法を使うのですか?」
リシリアが笑顔でイールスを見ている
「ウイングストリーム」
イールスが魔法を放ち、イールスの前から螺旋状に風の刃が吹き荒れながら、まっすぐに森の木々を吹き飛ばして、螺旋状の竜巻が収まり土埃が消えるのを待っている
「ウイングストリームで森に道を作るのですか? 頑張ります」
リシリアが満面の笑顔で言うと、ロイドが苦笑いしている
(あーーー 一言でも良いので相談して下さい… 自重も無くなり、やり放題ですが… 森を焼き尽くさなくて良かったです… )
「ロイド、バロン達に倒した木材も復興で使うから保管しておいてと言っておいてね」
イールスが笑顔で言う
「薪にしか出来ないですが…… 伝えておきます」
ロイドが諦めたように言う

アリーオ軍は元渓谷入口を見て絶句している
「アリーオ様、イールス将軍の認識を変える必要が…」
フライクルベルト子爵が言うと、レイクルスベルト子爵も頷いている
「イールス… 最早自重をするのも止めたのか? 自重云々よりも… 地形を勝手に変えて良いのか? もう… イールス1人で良くないか?」
アリーオが泣きそうになりながら崩れ落ちている
「先の戦いで必死に戦った兵士達が不憫に思います」
レイクルスベルト子爵が暗い顔をしている
「イールス将軍が戻るまで、引きながら軍の維持をしていれば… 多くの兵士が帰れたと… イールス軍の兵士の実力… 今更ながら推し測り間違いたと思いますが……… こんな魔法有るのかーーーーーー!! 信じられん!! ……… 誰か説明をしてくれーーーーーー」
フライクルベルト子爵が急にキレた様に叫び始める
「こんな事を国王陛下に報告したら… 誰か信じるか? どうすれば良いのか? そもそもこの道……… 数日で作る方もおかしいだろう!! どうして報告をしてこない!! イールス軍の副将は何しているんだーーーーーー!!………」
レイクルスベルト子爵も叫び始める
「ゴブリンよりもイールスが怖い…… 帰ってこの事を話したら… ここにどれだけの人が観光に来るか… イールスーーーーーーー目立ちすぎだ!! 自重はどこにいったんだ!! 誰かイールスの手綱を握ってくれーーーーーーーーーーー!!」
アリーオも叫んでいる。 周囲の騎士達も顔が引き攣りながらアリーオ達を見ている
(叫びたくなるのは解りますが… もしイールス将軍様が敵になるなら、戦わずに降伏します… 敵になる前に逃げます!! イールス将軍の敵になるぐらいなら、忠義よりもイールス様に味方します… 生き残りたいし… )
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