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世界の終わり
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「世界は、終わった……」
「なに、また陛下に、触らないで! とか言われたか?」
不幸のどん底で呟く俺に、呑気なリアクションを返してくるアラン・カーティス。
「その程度でここまで落ち込むか!」
「いや落ち込んでただろ実際に、先週。こけそうになった陛下を支えたら、そう言われたって」
ああ、何も知らない同期の桜が羨ましい。
俺だって、ついさっき陛下から衝撃の告白をされなければ・・・目の前のこいつのように、間抜け面を浮かべながら昼飯をかき込めていただろうに。
「無知とは愚かだ……けれど、幸せな事かもしれない……」
「よくわかんねえけど。話す気がねえなら、無駄に負のオーラ放つなよ。飯がまずくなる。ただでさえ、お前といると落ち着いて食事出来ねえのに」
そう文句を言いながら、同じ食堂で昼食をとっている侍女達の方を横目で見るアラン。
「ほら見てる。今日もめっちゃ見てる。お前、性格以外は非の打ち所がねえからな」
面白くない、といった様子で口を歪める同期にため息が出る。
「アラン、確かに俺は容姿端麗、文武両道で、史上最年少で女王の護衛騎士になった、名門貴族の跡取り息子だ。だから、死ぬほど女にモテる」
「そーゆーとこ。唯一の欠点、そーゆとこ」
「でもそんなものに何の価値がある? 見知らぬ大勢に好意を持たれるより、誰よりも愛するたった一人の女性に選んでもらうのが、男の幸せじゃないのか?」
「陛下の事か? まあ、そういう意味で、お前は可哀想な奴だと言えなくもないか……。いくらモテても、本命には振り向いてもらえるはずないもんな」
ドリアを口に運びながら嫌な笑みを浮かべるアランの言葉が、胸に突き刺さる。
「だって、一介の騎士と、シルクバニア王国の女王様じゃ、どう考えても身分が違いすぎる――」
最後まで聞くに堪えられず、テーブルを叩きつけて遮った。
突然の事に驚き、丸い目を見開くアラン。
「問題は身分だと思ってた……だから励んだんだ。幸い我が家は国内でも指折りの名門貴族。だから努力次第では、陛下の婿候補になれるかもしれないと……」
豆がつぶれて血が噴き出ても剣を振り、睡眠不足で侍女を『母上』と呼び間違えてしまうほどに疲労がたまっても、勉強をしまくった。
全ては陛下にお近づきになる為――。
大国を治める大切な御身を、直接お守りしたかった。
重圧を背負う細い肩を、この手でお支えしたかった。
そしてあわよくば、あんな事やこんな事をしたかった。
努力の甲斐もあり、俺は騎士団の訓練学校を首席で卒業。入団2年目にして、希望通り女王の護衛騎士を拝命する事ができたわけだが……。
俺の今までの努力は、一体なんだったんだろう。
「なあ、マジでどーしたんだよレオ。まさか……陛下に告って……ふられた……とか?」
上目使いで、こちらの表情を伺いながら探りを入れてくるアラン。
しかし、テーブルに置かれたままの俺の手がピクリを動いたのを見て、自分が図星をついたのだと理解したらしい。慌てた様子でフォローを始めた。
「だ、大丈夫だよ! 女は他にいくらでもいるから! それこそお前ならよりどりみどり、だろ? あ! なんなら俺の知り合いの子紹介してやっから! すっげー可愛い子! だから元気出せ! な!?」
「アラン……同期の中でも、どんじりの成績をキープし続ける出来損ないのお前に、腫物ののごとく扱われるのは非常に不本意だが……慰めてくれた事、感謝する」
「ああ……え? ちょっと待て、前半部分ひどくね? 心配してやってる同期に何言ってくれてんのお前」
「だが俺は、騎士団を辞める」
「ああ……え? はぁあ!?」
俺の辞職宣言に、不出来だが優しい同期の叫び声が、広い食堂に響き渡った。
「なに、また陛下に、触らないで! とか言われたか?」
不幸のどん底で呟く俺に、呑気なリアクションを返してくるアラン・カーティス。
「その程度でここまで落ち込むか!」
「いや落ち込んでただろ実際に、先週。こけそうになった陛下を支えたら、そう言われたって」
ああ、何も知らない同期の桜が羨ましい。
俺だって、ついさっき陛下から衝撃の告白をされなければ・・・目の前のこいつのように、間抜け面を浮かべながら昼飯をかき込めていただろうに。
「無知とは愚かだ……けれど、幸せな事かもしれない……」
「よくわかんねえけど。話す気がねえなら、無駄に負のオーラ放つなよ。飯がまずくなる。ただでさえ、お前といると落ち着いて食事出来ねえのに」
そう文句を言いながら、同じ食堂で昼食をとっている侍女達の方を横目で見るアラン。
「ほら見てる。今日もめっちゃ見てる。お前、性格以外は非の打ち所がねえからな」
面白くない、といった様子で口を歪める同期にため息が出る。
「アラン、確かに俺は容姿端麗、文武両道で、史上最年少で女王の護衛騎士になった、名門貴族の跡取り息子だ。だから、死ぬほど女にモテる」
「そーゆーとこ。唯一の欠点、そーゆとこ」
「でもそんなものに何の価値がある? 見知らぬ大勢に好意を持たれるより、誰よりも愛するたった一人の女性に選んでもらうのが、男の幸せじゃないのか?」
「陛下の事か? まあ、そういう意味で、お前は可哀想な奴だと言えなくもないか……。いくらモテても、本命には振り向いてもらえるはずないもんな」
ドリアを口に運びながら嫌な笑みを浮かべるアランの言葉が、胸に突き刺さる。
「だって、一介の騎士と、シルクバニア王国の女王様じゃ、どう考えても身分が違いすぎる――」
最後まで聞くに堪えられず、テーブルを叩きつけて遮った。
突然の事に驚き、丸い目を見開くアラン。
「問題は身分だと思ってた……だから励んだんだ。幸い我が家は国内でも指折りの名門貴族。だから努力次第では、陛下の婿候補になれるかもしれないと……」
豆がつぶれて血が噴き出ても剣を振り、睡眠不足で侍女を『母上』と呼び間違えてしまうほどに疲労がたまっても、勉強をしまくった。
全ては陛下にお近づきになる為――。
大国を治める大切な御身を、直接お守りしたかった。
重圧を背負う細い肩を、この手でお支えしたかった。
そしてあわよくば、あんな事やこんな事をしたかった。
努力の甲斐もあり、俺は騎士団の訓練学校を首席で卒業。入団2年目にして、希望通り女王の護衛騎士を拝命する事ができたわけだが……。
俺の今までの努力は、一体なんだったんだろう。
「なあ、マジでどーしたんだよレオ。まさか……陛下に告って……ふられた……とか?」
上目使いで、こちらの表情を伺いながら探りを入れてくるアラン。
しかし、テーブルに置かれたままの俺の手がピクリを動いたのを見て、自分が図星をついたのだと理解したらしい。慌てた様子でフォローを始めた。
「だ、大丈夫だよ! 女は他にいくらでもいるから! それこそお前ならよりどりみどり、だろ? あ! なんなら俺の知り合いの子紹介してやっから! すっげー可愛い子! だから元気出せ! な!?」
「アラン……同期の中でも、どんじりの成績をキープし続ける出来損ないのお前に、腫物ののごとく扱われるのは非常に不本意だが……慰めてくれた事、感謝する」
「ああ……え? ちょっと待て、前半部分ひどくね? 心配してやってる同期に何言ってくれてんのお前」
「だが俺は、騎士団を辞める」
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