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特別な立場の人を特別扱いしない事が親しくなるきっかけになるとは限らない
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子供の頃――私には、友人と呼べる人間がいなかった。
それは、私が『王族』である事を無視して、友情を築いてくれる相手が中々いないせい……。
お母様や、レノックスおじ様はそう考えていたみたいだけれど……本当は違う。
幼い子供は無垢だ。
いくら両親に、『王女に取り入れ』と命令されたとしても、好きな相手とは遊ぶし、嫌いな相手とは遊ばない。
私は、誰にも相手にされなかった。
『私達は上流貴族だから、先に通してちょうだい!』
そう言って、観客の列に並ぶ事無く、劇場に入ろうとする子に、『貴族だろうが平民だろうが、きちんと順番を守るべき』
そう、諭してしまうような子供だったから。
『これ嫌い!』
そう言って、グリルチキンを投げ捨てる子に、『この鶏は、あなたが生きる為に殺された。命を無駄にするな』
そう、お説教してしまうような子供だったから。
皆、私から離れていった。
頭が固く、いい子ぶりっこをする、めんどくさい奴。
それが、まわりの子達から見た、私だった。
だから……またやってしまったと思ったの。
捕まえたセミを、誇らし気に見せに来たあなたに、可愛くない態度を取ってしまった時は。
でも、あなたは他の皆のように、私を白い目で見たりしなかった。
それどころか、まるで……宝石のように瞳を輝かせて……。
レオと過ごすようになって、私の世界は変わった。
『ようやくあなたをプリンセスでは無く、一人の女の子として見てくれる人に出会えたわね』
お母様はそう喜んで下さったけど……そうじゃない。
彼がくれた愛情は、そんなありふれたラブ・ロマンスみたいに、陳腐なものじゃなかった。
王族である事に、私は誇りを持っていた。
制限だらけの生活。頭がパンクしそうになる程の、勉強漬けの毎日。
それでも私は、王女である自分が好きだった。
尊敬するお母様の後継者として努力すべき運命を、決して不幸だなんて思わなかった。
次期女王として、礼儀と、正義と、道徳を重んじる人間でありたいと願っていた。
その結果、『友人候補』の子供達には、距離を置かれてしまったけれど。
でも、レオだけは違った。
『命の尊さを教えて下さり、ありがとうございます』と、手紙をくれた。
どんな相手にも礼儀を払い、いつ何時も正義を貫き、思い遣りを忘れないあなたは、素晴らしいお方です、と……繰り返し伝えてくれた。
私に取り入ろうとする大人達は、私が『王女』である事を必死になって忘れているフリをして……馴れ馴れしく、親し気に接してきたけれど。
レオにとって私は、どれほど親しくなろうとも、『王女』だった。
いつでも敬い、守り、尽くしてくれて。
私が大切にしている『王女である私』を……彼も同じように大切にしてくれた。
でも不思議なの。『王女』として扱われながらも……あなたならきっと、たとえ私が王女でなかったとしても、同じように愛してくれたに違いないって……そんな確信を持つ事も出来て。
あなたはそれほどに深い愛で、いつでも私を包んでくれた。
海というよりは、沼のように粘度の高い愛情に、ちょっと……恐怖を感じる事もあったけれど。
私が脱いだストッキングを、こっそり嗅ごうとしていた時とか。
私が捨てて置いてと頼んだ紙屑を、広げて、アイロンで皺を伸ばして、アルバムに収めていた時とか。
私が喜んでくれると思ったと言って、薔薇の花束を血まみれの手に抱えて差し出してきた時とか。
それでも、どんな時も私を信じ、愛してくれたレオのお陰で、私は自分に自信が持てた。
女王として国を背負う大役には、屈強な精神力が欠かせない。レオの愛は、それを支える、太く強固な心の柱となって……
いつの間にか、私の中にも芽生えていた。レオの愛を怖いなんて言えない位、熱い想いが。
立場上、わかりやすく彼を特別扱いをするわけにはいかなかったから……レオにも他の人間にも悟られないよう、落ち着いて振舞いはしたけれど。
かけがえの無い、たった一人の人。
レオナルド・レノックス無くして、今の私はあり得ない。
だから、レオを苦しめる人間は、たとえ誰であろうと許さない。
そんな確たる信念が……私に気付かせたのかもしれない。
「お初にお目にかかります。この度、誉れある女王陛下の護衛騎士の大役を仰せつかりました、クリス・ハドソンでございます」
彼女に初めて出会った時――
私への敬意や、就任の喜びなど微塵も感じない、棒読みの挨拶を聞きながら、思ったの。
この人は……私のレオを、何かよからぬ事に巻き込むに違いないと――。
それは、私が『王族』である事を無視して、友情を築いてくれる相手が中々いないせい……。
お母様や、レノックスおじ様はそう考えていたみたいだけれど……本当は違う。
幼い子供は無垢だ。
いくら両親に、『王女に取り入れ』と命令されたとしても、好きな相手とは遊ぶし、嫌いな相手とは遊ばない。
私は、誰にも相手にされなかった。
『私達は上流貴族だから、先に通してちょうだい!』
そう言って、観客の列に並ぶ事無く、劇場に入ろうとする子に、『貴族だろうが平民だろうが、きちんと順番を守るべき』
そう、諭してしまうような子供だったから。
『これ嫌い!』
そう言って、グリルチキンを投げ捨てる子に、『この鶏は、あなたが生きる為に殺された。命を無駄にするな』
そう、お説教してしまうような子供だったから。
皆、私から離れていった。
頭が固く、いい子ぶりっこをする、めんどくさい奴。
それが、まわりの子達から見た、私だった。
だから……またやってしまったと思ったの。
捕まえたセミを、誇らし気に見せに来たあなたに、可愛くない態度を取ってしまった時は。
でも、あなたは他の皆のように、私を白い目で見たりしなかった。
それどころか、まるで……宝石のように瞳を輝かせて……。
レオと過ごすようになって、私の世界は変わった。
『ようやくあなたをプリンセスでは無く、一人の女の子として見てくれる人に出会えたわね』
お母様はそう喜んで下さったけど……そうじゃない。
彼がくれた愛情は、そんなありふれたラブ・ロマンスみたいに、陳腐なものじゃなかった。
王族である事に、私は誇りを持っていた。
制限だらけの生活。頭がパンクしそうになる程の、勉強漬けの毎日。
それでも私は、王女である自分が好きだった。
尊敬するお母様の後継者として努力すべき運命を、決して不幸だなんて思わなかった。
次期女王として、礼儀と、正義と、道徳を重んじる人間でありたいと願っていた。
その結果、『友人候補』の子供達には、距離を置かれてしまったけれど。
でも、レオだけは違った。
『命の尊さを教えて下さり、ありがとうございます』と、手紙をくれた。
どんな相手にも礼儀を払い、いつ何時も正義を貫き、思い遣りを忘れないあなたは、素晴らしいお方です、と……繰り返し伝えてくれた。
私に取り入ろうとする大人達は、私が『王女』である事を必死になって忘れているフリをして……馴れ馴れしく、親し気に接してきたけれど。
レオにとって私は、どれほど親しくなろうとも、『王女』だった。
いつでも敬い、守り、尽くしてくれて。
私が大切にしている『王女である私』を……彼も同じように大切にしてくれた。
でも不思議なの。『王女』として扱われながらも……あなたならきっと、たとえ私が王女でなかったとしても、同じように愛してくれたに違いないって……そんな確信を持つ事も出来て。
あなたはそれほどに深い愛で、いつでも私を包んでくれた。
海というよりは、沼のように粘度の高い愛情に、ちょっと……恐怖を感じる事もあったけれど。
私が脱いだストッキングを、こっそり嗅ごうとしていた時とか。
私が捨てて置いてと頼んだ紙屑を、広げて、アイロンで皺を伸ばして、アルバムに収めていた時とか。
私が喜んでくれると思ったと言って、薔薇の花束を血まみれの手に抱えて差し出してきた時とか。
それでも、どんな時も私を信じ、愛してくれたレオのお陰で、私は自分に自信が持てた。
女王として国を背負う大役には、屈強な精神力が欠かせない。レオの愛は、それを支える、太く強固な心の柱となって……
いつの間にか、私の中にも芽生えていた。レオの愛を怖いなんて言えない位、熱い想いが。
立場上、わかりやすく彼を特別扱いをするわけにはいかなかったから……レオにも他の人間にも悟られないよう、落ち着いて振舞いはしたけれど。
かけがえの無い、たった一人の人。
レオナルド・レノックス無くして、今の私はあり得ない。
だから、レオを苦しめる人間は、たとえ誰であろうと許さない。
そんな確たる信念が……私に気付かせたのかもしれない。
「お初にお目にかかります。この度、誉れある女王陛下の護衛騎士の大役を仰せつかりました、クリス・ハドソンでございます」
彼女に初めて出会った時――
私への敬意や、就任の喜びなど微塵も感じない、棒読みの挨拶を聞きながら、思ったの。
この人は……私のレオを、何かよからぬ事に巻き込むに違いないと――。
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