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第一章 メルトヴァル学院での日々
人の話はきちんと聞きましょう
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和やかな昼時に乱入してきた不審者もとい、自称ヒロインさん。年頃の娘らしからぬその登場の仕方は、私でさえ思わず言葉を失うものでした。
「ちょっと、聞いてるの⁉」
誰からも歓迎されていないことに気がついていないのでしょうか?この少女は。ここはっきり拒絶した方がいいのでしょう。
「失礼ですが、私はあなたをしりません。こちらが酷いことをしたかのように責め立てられるのは迷惑です」
「なっ…………⁉」
もとが無表情だけに余計に冷た聞こえたでしょうが、不愉快さもあって刺が入っていたと思います。
私にそんな態度を取られるとは思っていなかったのでしょう、彼女は目に涙を溜めて傷ついた様子をみせました。あ、これ近くに主たちがいるからでしょうね。その前に、主たちのほうをチラッとみたの、分かっていますよ?
「そんな………っ、私たち、小さい頃から一緒だったじゃない‼」
「何を仰ってるんですか?私は幼少の頃から主──クルシェット様に仕えていますから、あなたに会ったことなどありませんよ」
「そんなハズない‼あなたはあたしの『聖獣』なのよ⁉ゲームではそうだったもの‼」
『ゲーム設定』の話を持ち出してきましたね。たしかにゲームではそうでしょうが、現実は違いますよ?
「私はあなたのモノではありません。そもそも友人ですらないのに、何故あなたと食事を共にしなければならないのですか?」
「なんでって───」
「先程から聞いていれば妄想甚だしい。行きましょう、リュミエル。相手にする必要はありませんよ」
「なによ!モブがあたしの───⁉」
そう言って私の肩を抱いてきたのは成り行きを静かに見守っていたルティウス様でした。文句を言おうとした自称ヒロインさん、固まりましたね。
「え?え⁉なんでここに前作の攻略キャラだったルティウスがいるの………?」
「………それを教える義理はありませんね。君は身分を弁えたほうがいい」
「は………?だってあなた、公爵子息でしょう?『聖なる乙女』であるあたしのほうが偉いのよ?」
ルティウス様を呼び捨てましたよ、彼女。一応ルティウス様、平静を装ってますが、若干魔力が漏れ出てるんですよね………
というか、図書室の一件の際、『お前が引き起こしたトラブルからリュミエルを助けたのはルティウス殿下だ』と彼女は説明を受けたはずなのですがね。それに、編入手続きの際に他国の王族が留学しているってことも話してあるはずなのですが………
そしてさも自分が一番立場が上だと言ってますが……レシェウス様いわく、『聖なる乙女』は『聖獣』と対であるが故に、『聖獣』から認められて契約していないと正式な『聖なる乙女』だとは認定されないのだそうです。
まあ、なにが言いたいかというと、私が彼女と契約を結ばない限り、『聖なる乙女』と名乗ってはいけないんですよね。
「無礼者が‼ルティウス様はストランディスタ王国第二王子であらせられるのだぞ‼」
そう叫んだのはシルディオ様です。護衛騎士として黙っていられなかったのでしょうね。
「は⁉デタラメなこと言わないで‼前作のゲームでは公爵子息だったもの‼」
「お前の頭の中はどうなっているんだ?それに関しても予め説明を受けたはすだが?そもそも、ルティウスが王族だということは、失礼な態度を取らないようにと学院に籍を置く者にはみな徹底させるように兄上が指示を出していたから、知らないとは言わせない」
「なにそれ………そんな設定聞いたことない………!あたし、今日この学院に来たばかりで、知らなかったのは無理もないじゃないですか‼……あ!それか、ライバル令嬢の誰かがあたしに意地悪して教えないようにしたんですよ‼」
……………この方は何を言っているのでしょう?ルティウス様が王族だという話は、私たちに群がって媚を売ろうとしてきた方々がいたため、他の貴族への牽制として、急遽、昼食兼自由時間前に連絡事項として担任から直接クラス毎に話したはずですから、邪魔なんてする暇もありませんよ?
それを指摘して差し上げたら分かりやすく動揺していました。たぶん、お腹がすいたとか、退屈だとか思って聞き流したのでしょうね。
といいますか……誰かって誰のことだか分からない人から嫌がらせされたとか言うつもりですか?この方は。
ゲームヒロインとして転生したつもりの方は、みんか頭がパッパラパーな方ばかりなのでしょうか。
………あとソール様?そのどこから取り出したのか分からない短剣はどうするおつもりですか?投げちゃ駄目ですよ?
自称ヒロインさん、言い訳を必死に考え中なのか、こちらに全く気がついていないんです。
「ソール様、その短剣───」
「大丈夫です。一発で仕留めます」
「いやいやいやいや。気持ちは分かるけど、証拠が残る殺り方はやめようか、ソール」
シャウド。あなた止める振りして止める気ありませんね?証拠が残らなければ殺ってもいいって言っているように聞こえますよ⁉
最終的に彼女の相手が面倒臭くなってきたので、彼女が考え込んでいる間に放置して教室へ戻りました。
あ、もちろんソール様には思い留まって頂きましたよ?さすがに留学生の彼らに手を汚させる訳には参りませんからね。
余談ですが。彼女の動向を探ろうとシャウドを魔法科一年として潜り込んでもらったのに、彼女、魔法科じゃなくて何故だか普通科だったんですよね。
後で調べたところ、予想通りといいますか……ヒロイン補正がかかると思っていたのか、全く予習もしていなかったのか、制御の段階で躓き、魔法に関しては“才能なし”と判定されたそうです。筆記はまあ、そこそこだったようなのですが。
このままフラグが折れた!と喜びたいところなのですが、さすがにそれは楽観的過ぎますかね……………
「ちょっと、聞いてるの⁉」
誰からも歓迎されていないことに気がついていないのでしょうか?この少女は。ここはっきり拒絶した方がいいのでしょう。
「失礼ですが、私はあなたをしりません。こちらが酷いことをしたかのように責め立てられるのは迷惑です」
「なっ…………⁉」
もとが無表情だけに余計に冷た聞こえたでしょうが、不愉快さもあって刺が入っていたと思います。
私にそんな態度を取られるとは思っていなかったのでしょう、彼女は目に涙を溜めて傷ついた様子をみせました。あ、これ近くに主たちがいるからでしょうね。その前に、主たちのほうをチラッとみたの、分かっていますよ?
「そんな………っ、私たち、小さい頃から一緒だったじゃない‼」
「何を仰ってるんですか?私は幼少の頃から主──クルシェット様に仕えていますから、あなたに会ったことなどありませんよ」
「そんなハズない‼あなたはあたしの『聖獣』なのよ⁉ゲームではそうだったもの‼」
『ゲーム設定』の話を持ち出してきましたね。たしかにゲームではそうでしょうが、現実は違いますよ?
「私はあなたのモノではありません。そもそも友人ですらないのに、何故あなたと食事を共にしなければならないのですか?」
「なんでって───」
「先程から聞いていれば妄想甚だしい。行きましょう、リュミエル。相手にする必要はありませんよ」
「なによ!モブがあたしの───⁉」
そう言って私の肩を抱いてきたのは成り行きを静かに見守っていたルティウス様でした。文句を言おうとした自称ヒロインさん、固まりましたね。
「え?え⁉なんでここに前作の攻略キャラだったルティウスがいるの………?」
「………それを教える義理はありませんね。君は身分を弁えたほうがいい」
「は………?だってあなた、公爵子息でしょう?『聖なる乙女』であるあたしのほうが偉いのよ?」
ルティウス様を呼び捨てましたよ、彼女。一応ルティウス様、平静を装ってますが、若干魔力が漏れ出てるんですよね………
というか、図書室の一件の際、『お前が引き起こしたトラブルからリュミエルを助けたのはルティウス殿下だ』と彼女は説明を受けたはずなのですがね。それに、編入手続きの際に他国の王族が留学しているってことも話してあるはずなのですが………
そしてさも自分が一番立場が上だと言ってますが……レシェウス様いわく、『聖なる乙女』は『聖獣』と対であるが故に、『聖獣』から認められて契約していないと正式な『聖なる乙女』だとは認定されないのだそうです。
まあ、なにが言いたいかというと、私が彼女と契約を結ばない限り、『聖なる乙女』と名乗ってはいけないんですよね。
「無礼者が‼ルティウス様はストランディスタ王国第二王子であらせられるのだぞ‼」
そう叫んだのはシルディオ様です。護衛騎士として黙っていられなかったのでしょうね。
「は⁉デタラメなこと言わないで‼前作のゲームでは公爵子息だったもの‼」
「お前の頭の中はどうなっているんだ?それに関しても予め説明を受けたはすだが?そもそも、ルティウスが王族だということは、失礼な態度を取らないようにと学院に籍を置く者にはみな徹底させるように兄上が指示を出していたから、知らないとは言わせない」
「なにそれ………そんな設定聞いたことない………!あたし、今日この学院に来たばかりで、知らなかったのは無理もないじゃないですか‼……あ!それか、ライバル令嬢の誰かがあたしに意地悪して教えないようにしたんですよ‼」
……………この方は何を言っているのでしょう?ルティウス様が王族だという話は、私たちに群がって媚を売ろうとしてきた方々がいたため、他の貴族への牽制として、急遽、昼食兼自由時間前に連絡事項として担任から直接クラス毎に話したはずですから、邪魔なんてする暇もありませんよ?
それを指摘して差し上げたら分かりやすく動揺していました。たぶん、お腹がすいたとか、退屈だとか思って聞き流したのでしょうね。
といいますか……誰かって誰のことだか分からない人から嫌がらせされたとか言うつもりですか?この方は。
ゲームヒロインとして転生したつもりの方は、みんか頭がパッパラパーな方ばかりなのでしょうか。
………あとソール様?そのどこから取り出したのか分からない短剣はどうするおつもりですか?投げちゃ駄目ですよ?
自称ヒロインさん、言い訳を必死に考え中なのか、こちらに全く気がついていないんです。
「ソール様、その短剣───」
「大丈夫です。一発で仕留めます」
「いやいやいやいや。気持ちは分かるけど、証拠が残る殺り方はやめようか、ソール」
シャウド。あなた止める振りして止める気ありませんね?証拠が残らなければ殺ってもいいって言っているように聞こえますよ⁉
最終的に彼女の相手が面倒臭くなってきたので、彼女が考え込んでいる間に放置して教室へ戻りました。
あ、もちろんソール様には思い留まって頂きましたよ?さすがに留学生の彼らに手を汚させる訳には参りませんからね。
余談ですが。彼女の動向を探ろうとシャウドを魔法科一年として潜り込んでもらったのに、彼女、魔法科じゃなくて何故だか普通科だったんですよね。
後で調べたところ、予想通りといいますか……ヒロイン補正がかかると思っていたのか、全く予習もしていなかったのか、制御の段階で躓き、魔法に関しては“才能なし”と判定されたそうです。筆記はまあ、そこそこだったようなのですが。
このままフラグが折れた!と喜びたいところなのですが、さすがにそれは楽観的過ぎますかね……………
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