私はモブ扱いで結構です

第二章 課外活動にはトラブルが付き物です

第二章 プロローグ

　休息日を利用した作戦会議からひと月。
　あれからみなさん、リンジー様が話してくださった攻略情報のもと、『行動パターンの場所には1人で行かない』という対策を取り、ヒロインさんの突撃を華麗に躱している模様。

いえまぁ、私の所にも来るんですけどね、彼女。そして主あるじに敵意の眼差しを向けて『私のリュミエルを解放してください！！』と喚いてきます。なんとかのひとつ覚えというやつでしょうか？
　これにははっきりと申し上げたのですが。そもそも『あなたのものでもありません』と。そう答えたら、今度は『ああ、可哀想な私のリュミエル！洗脳されて、言いたくもない嘘を言わされてるのね⁉︎』と斜め上の解釈をされる始末。正直、開いた口が塞がりませんでした。

………彼女は『不敬罪』の意味を知らないのでしょうか。前世で生きていた日本は、確かにこの世界ほど身分には厳しくありませんでしたが………
　それでも目上の相手に対する礼儀作法は──今世の貴族の作法ほどではなくても──きっちりしてたんですがね………

　─────と思っていたのですが。



　ここ最近、ヒロインさんの突撃がぱたりと無くなりました。確認してみたところ、攻略対象とされているみなさんのところにも来なくなったそうです。何か企んでいるんじゃないかと疑ってはいるのですが、こちらからいってまた絡まれたくはないですし……しばらく様子見ですかね。

　以前みんなで話していた、戦闘パートについてなのですが、つい先日、魔術の授業にて『そろそろ魔物相手の実戦訓練をする頃合いだな』と担当教師の方からのお話がありました。
　そして予想した通り、全学年合同にて行われることとなりました。

　正直なところ、学年ごとに別の日に実施してくれた方が対処しやすかったのですが……こればかりはどうにもなりませんしね。
　ヒロインさん、ここのところ大人しいようで、聞こえてくる噂には『どうやら彼女は玉の輿を諦めたらしい』や、『ようやく身の程を弁えた行動ができるようになった』というものが多く聞こえるようになりました。
　先生方やクラスメイトたちには謝罪してまわっているそうですし。私たちに対しての謝罪がまだなのは、どうやら彼女自身が私たちに近寄らないように立ち回っているからのようです。
　ただ、教会経由で『謝罪文』なるものは王家に、というか主に届いたそうですが。主は、

「手紙には『王子殿下以下、ご迷惑をかけた皆様にはかかわらないように気を付けます』とあったが、信じられるかはともかく、謝罪は謝罪として受け入れておく」

　と言っていました。今は私たちを追いかけ回していた間に落ちた成績を取り戻すべく、図書館に籠っていることが多いみたいですね。
　クレイシェスが様子を見に行ったところ、机にかじりつく勢いで問題集にペンを走らせていたとのこと。彼女、乙女ゲームさえ絡まなければいたって真面目な性格だった模様。この分なら、課外活動も変な行動はしないんじゃないですかね？
　リンジー様から、彼女に続けとばかりに第二、第三の乙女ゲーム脳ヒロインが現れる可能性もあるのでは？　と何やらフラグが建った予感のするご忠告を頂いたのですが……どうなるでしょうねえ………