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プロローグ
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生体管理室から突然響き渡る警告音に研究所内が次第に騒がしくなっていく中で、室長の空条 真は声を張り上げた。
「35番が研究所から逃げ出した!すぐにヘリの準備を!
万が一35番の存在が一般市民に知れ渡ったら、何が起こるか分からない。すぐに35番を探し出せ!」
「は!」
不思議と空条真は冷静だった。
あの35番が国立生態科学研究所から逃げ出し、一般市民の目に触れるところへ行くなどあってはならないことであるのに。
彼はただーー妻子が無事であることを願った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ー今日も学校をサボってしまった。
「また親に怒られるんだろうなぁ。めんどくせぇ。」
母親はただでさえ子を邪険に扱うような毒親なのに、これ以上毒親になんてなれるものなのか・・・。
はあ、と大きいため息をつくレン。彼女の心の中は負の感情でいっぱいだった。
レンは今年で高校3年生になる。
彼女の事を割合して説明するなら、『毒親を持ち、学校では虐められている可哀想な高校生』だ。
家では母親の聞きたくもない愚痴を毎日聞かされ、学校ではクラスメイトのストレスの捌け口となり様々ないじめを受け、散々だ。
自分のことを知る人のいないどこかへ行けたらどんなに幸せだろうか・・・?そんなことを考えるけれど、レンは隣町へと移動する電車代すらないのだ。
改めて実感する現実の冷たさに2度目のため息をつきながら目の前に広がる海をぼうっと眺めていると、30cmほどの何かが砂浜の上で蠢いているのが見えた。
「何だろ、あれ?」
興味の赴くままに謎の物体へと近づいていくと、輪郭がうっすら見えてきた。
角のようなものが生えた頭にトカゲのような体、そしてその体からは翼が生えている。全体は赤く、ところどころ怪我をしているのか赤黒い血が流れていた。
「・・・・・・・・・?」
何故か既視感がある。しかし何処で見たのか・・・?考えながらトカゲのような生物を凝視していると、あることに気がついた。
この生物はアニメやゲームなどでよく見るあの『ドラゴン』と言われる生物ではないかと。
ドラゴンにしては小さすぎるが、この立派な翼に凛とした顔、触ると硬そうなウロコ・・・これはドラゴンでしかない。
しかし、何故ドラゴンがここに?ドラゴンと言えば架空の生物だったはずだ。
目の前に広がる光景に、これは夢じゃないかと頬を抓ってみるが、頬には痛みを感じる。
「あの・・・キミ・・・喋れたりしないよね?」
この不思議な状況でどうしたらいいか分からず、とりあえず目の前のドラゴンに話しかけるが返答はなく、小さく「キュゥ」と鳴くだけだ。
まだ赤ちゃんなのだろうか?
レンは怪我したドラゴンが可哀想に思え、抱き上げて家に連れ帰ることにした。
「お母さんにバレたら面倒だけど、部屋には滅多に入ってこないし平気だよなぁ。
この子は・・・とりあえずドラゴンだからドラ丸って呼ぼうかな。」
なんともストレートな命名をしたが、意外と可愛くていい名前をつけたと内心で呟くレン。
このドラゴンとの出会いが、彼女の運命を変えてしまうーーー
「35番が研究所から逃げ出した!すぐにヘリの準備を!
万が一35番の存在が一般市民に知れ渡ったら、何が起こるか分からない。すぐに35番を探し出せ!」
「は!」
不思議と空条真は冷静だった。
あの35番が国立生態科学研究所から逃げ出し、一般市民の目に触れるところへ行くなどあってはならないことであるのに。
彼はただーー妻子が無事であることを願った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ー今日も学校をサボってしまった。
「また親に怒られるんだろうなぁ。めんどくせぇ。」
母親はただでさえ子を邪険に扱うような毒親なのに、これ以上毒親になんてなれるものなのか・・・。
はあ、と大きいため息をつくレン。彼女の心の中は負の感情でいっぱいだった。
レンは今年で高校3年生になる。
彼女の事を割合して説明するなら、『毒親を持ち、学校では虐められている可哀想な高校生』だ。
家では母親の聞きたくもない愚痴を毎日聞かされ、学校ではクラスメイトのストレスの捌け口となり様々ないじめを受け、散々だ。
自分のことを知る人のいないどこかへ行けたらどんなに幸せだろうか・・・?そんなことを考えるけれど、レンは隣町へと移動する電車代すらないのだ。
改めて実感する現実の冷たさに2度目のため息をつきながら目の前に広がる海をぼうっと眺めていると、30cmほどの何かが砂浜の上で蠢いているのが見えた。
「何だろ、あれ?」
興味の赴くままに謎の物体へと近づいていくと、輪郭がうっすら見えてきた。
角のようなものが生えた頭にトカゲのような体、そしてその体からは翼が生えている。全体は赤く、ところどころ怪我をしているのか赤黒い血が流れていた。
「・・・・・・・・・?」
何故か既視感がある。しかし何処で見たのか・・・?考えながらトカゲのような生物を凝視していると、あることに気がついた。
この生物はアニメやゲームなどでよく見るあの『ドラゴン』と言われる生物ではないかと。
ドラゴンにしては小さすぎるが、この立派な翼に凛とした顔、触ると硬そうなウロコ・・・これはドラゴンでしかない。
しかし、何故ドラゴンがここに?ドラゴンと言えば架空の生物だったはずだ。
目の前に広がる光景に、これは夢じゃないかと頬を抓ってみるが、頬には痛みを感じる。
「あの・・・キミ・・・喋れたりしないよね?」
この不思議な状況でどうしたらいいか分からず、とりあえず目の前のドラゴンに話しかけるが返答はなく、小さく「キュゥ」と鳴くだけだ。
まだ赤ちゃんなのだろうか?
レンは怪我したドラゴンが可哀想に思え、抱き上げて家に連れ帰ることにした。
「お母さんにバレたら面倒だけど、部屋には滅多に入ってこないし平気だよなぁ。
この子は・・・とりあえずドラゴンだからドラ丸って呼ぼうかな。」
なんともストレートな命名をしたが、意外と可愛くていい名前をつけたと内心で呟くレン。
このドラゴンとの出会いが、彼女の運命を変えてしまうーーー
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