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第一章 リーチェ編
第三十四話 大勢の犠牲、一人の犠牲の答え
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部屋に戻れば、従者をたくさんつれたロデラ姫がいた。
ロデラ姫は俺と目が合うなり、抱きついた、甘くストロベリーみたいな匂いが、ふんわり香る。
ただの香水ではなく、惚れ薬なの知ってるからね!?従者たちが、でれでれしてるしな!
「リーチェ様、あの土地で大変な出来事がおきたのですね……ロデラは怖いです」
「ロデラ、俺はこれから忙しくなるから」
「あら……それでは、この虹光薬のレシピ、必要ないのですね。ロデラは、リーチェ様に必要だわと思いましたのに」
「それはっ?!」
ラストで大活躍の、最上位ポーションじゃないか?!
どうしてロデラがレシピを持っている!
「リーチェ様、乙女の秘密を探る眼差しをしてる。いい、いいですわ! その目でロデラをもっと見て……」
「ロデラ、それを俺に……」
「リーチェ様、たった一人の犠牲と、多くの犠牲。覚えてますか?」
「あ、ああ、言ってたな」
「この薬の調合を会得するには、百人の毒混じりの血液を治さないといけないのです、百人毒を与え治療して、初めてコツを覚える。けど、一人例外が。このロデラです、あたくしはリーチェ様を想い続け、沢山の抗体を持ちました。百人治療していくのと同じくらい、あたくしに処方すれば調合の経験が、他に比類できないほどの毒を一種だけ持って参りましたわ。でも抗体を持つからとても治療が難しくあたくしは苦しいし、死ぬかもしれません。それでも一週間くらいで結果は出ますわ。どちらが、お好み?」
お好み、と問いかける顔は嬉々としていて、ぞわりとする。
要するに、ロデラ一人を治療するか、これから時間をかけて百人治療していくか、だ。
ロデラ治療は完治が予測できないうえに、恩を着せられそうだ。
「時間をかけて努力していく」
「リーチェ様、余裕ですのね……あたくしの毒に見向きもしないなんて。悔しいです、ロデラは悲しいです。惚れ薬もききませんし」
「それでレシピをくれるのか? 代償は?」
「リーチェ様、これから世界をお救いになるのにお忙しいでしょう? なら世界を救うのがあたくしへの御礼となりますわ。本当は惚れ薬でお慕いしてほしかったけれど、あたくしの技量では無理そうですし! さぁ、貴方達帰りますわよ」
ロデラ姫は従者たちに声をかけて、部屋を出て行こうとする。出て行く間際、俺を愛しそうに見つめ微笑み帰って行った。
「どうしてタダでくれたんだろ」
「それだけ平和を祈っているということであろう、でれでれしおってからに。本当に百人の犠牲で良かったのか?」
「うん、百人つっても毒あるマップでうろうろして治しまくってりゃいいし。それに、あいつただ一人に死ぬほど苦しめっていうのは違うだろ、何か。何も背負ってない人に、背負わせるこたあねえよ」
オレが寝支度を調えながら言うと、イミテは成る程、と頷いてからニッと笑った。
満足いく回答だったようだ。
「世界を救う御礼というよりかは、たった一人の犠牲を選ばないお前様への称賛かもしれぬな」
「称賛?」
「普通はたった一人の犠牲で済むのであれば、短時間ですむほうを選ぶと思うぞ」
「普通ってのがよくわかんねーんだ、そもそも毒で治療って普通じゃねーしな」
オレが笑ってベッドに寝転ぶと、イミテは側に座り、オレの髪をさらりと撫でた。
表情は穏やかで、聖母のような笑み。
ようやく気持ち穏やかに眠れそうだが――寝ぼけていたのか、シルビアの声が頭の中で反芻される。
『私、リーチェのこと好きよ』
――つきりと何故か痛みが走る、胸の奥にこびりついて離れない声だった。
ロデラ姫は俺と目が合うなり、抱きついた、甘くストロベリーみたいな匂いが、ふんわり香る。
ただの香水ではなく、惚れ薬なの知ってるからね!?従者たちが、でれでれしてるしな!
「リーチェ様、あの土地で大変な出来事がおきたのですね……ロデラは怖いです」
「ロデラ、俺はこれから忙しくなるから」
「あら……それでは、この虹光薬のレシピ、必要ないのですね。ロデラは、リーチェ様に必要だわと思いましたのに」
「それはっ?!」
ラストで大活躍の、最上位ポーションじゃないか?!
どうしてロデラがレシピを持っている!
「リーチェ様、乙女の秘密を探る眼差しをしてる。いい、いいですわ! その目でロデラをもっと見て……」
「ロデラ、それを俺に……」
「リーチェ様、たった一人の犠牲と、多くの犠牲。覚えてますか?」
「あ、ああ、言ってたな」
「この薬の調合を会得するには、百人の毒混じりの血液を治さないといけないのです、百人毒を与え治療して、初めてコツを覚える。けど、一人例外が。このロデラです、あたくしはリーチェ様を想い続け、沢山の抗体を持ちました。百人治療していくのと同じくらい、あたくしに処方すれば調合の経験が、他に比類できないほどの毒を一種だけ持って参りましたわ。でも抗体を持つからとても治療が難しくあたくしは苦しいし、死ぬかもしれません。それでも一週間くらいで結果は出ますわ。どちらが、お好み?」
お好み、と問いかける顔は嬉々としていて、ぞわりとする。
要するに、ロデラ一人を治療するか、これから時間をかけて百人治療していくか、だ。
ロデラ治療は完治が予測できないうえに、恩を着せられそうだ。
「時間をかけて努力していく」
「リーチェ様、余裕ですのね……あたくしの毒に見向きもしないなんて。悔しいです、ロデラは悲しいです。惚れ薬もききませんし」
「それでレシピをくれるのか? 代償は?」
「リーチェ様、これから世界をお救いになるのにお忙しいでしょう? なら世界を救うのがあたくしへの御礼となりますわ。本当は惚れ薬でお慕いしてほしかったけれど、あたくしの技量では無理そうですし! さぁ、貴方達帰りますわよ」
ロデラ姫は従者たちに声をかけて、部屋を出て行こうとする。出て行く間際、俺を愛しそうに見つめ微笑み帰って行った。
「どうしてタダでくれたんだろ」
「それだけ平和を祈っているということであろう、でれでれしおってからに。本当に百人の犠牲で良かったのか?」
「うん、百人つっても毒あるマップでうろうろして治しまくってりゃいいし。それに、あいつただ一人に死ぬほど苦しめっていうのは違うだろ、何か。何も背負ってない人に、背負わせるこたあねえよ」
オレが寝支度を調えながら言うと、イミテは成る程、と頷いてからニッと笑った。
満足いく回答だったようだ。
「世界を救う御礼というよりかは、たった一人の犠牲を選ばないお前様への称賛かもしれぬな」
「称賛?」
「普通はたった一人の犠牲で済むのであれば、短時間ですむほうを選ぶと思うぞ」
「普通ってのがよくわかんねーんだ、そもそも毒で治療って普通じゃねーしな」
オレが笑ってベッドに寝転ぶと、イミテは側に座り、オレの髪をさらりと撫でた。
表情は穏やかで、聖母のような笑み。
ようやく気持ち穏やかに眠れそうだが――寝ぼけていたのか、シルビアの声が頭の中で反芻される。
『私、リーチェのこと好きよ』
――つきりと何故か痛みが走る、胸の奥にこびりついて離れない声だった。
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