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82嬉しくない再会
※ロキ視点
ショーンとジョフィルが去ってから明らかにマサキ様の元気がない。
屋敷の連中はみんなそれを気にしているようで、マサキ様がため息を吐くと必ず誰かしらがこっそり見つめている。
何故それを知っているのかと言えば、俺もついつい視線がそちらに向いているから気づいてしまうのだ。
心配そうだったり苛立っていたりと反応は様々だったが、マサキ様が普段以上に密かな注目を集めているのは確かだ。
セイレスなんかはマサキ様により一層張り付くようになり、マサキ様もそれを心の支えにしているように見える。
俺も何かあの人の力になれることがあればいいのに…俺にはセイレス以上の関心をマサキ様から得られる力は持っていないのが悔しい。
そんなモヤモヤした思いを抱える日々の中、とうとう裏切り者の仲間たちの目撃情報を手に入れた。
いや、手に入れてしまったと言うのが正しいか。
正直に言ってしまえば、どうでも良かった。
奴隷に堕ちてからあれほど願っていた復讐の糸口に本来ならば喜ぶべきなのに、俺ときたらマサキ様の心情の方が気になっている。
外にも出ず一日中マサキ様を見張っていたいほど心配で仕方ない。
冒険者の仕事は好きだったが、他の連中のように屋敷での仕事を貰えないかも真剣に検討している程だ。
粗雑な俺に屋敷の細やかな仕事が務まるのか不安ではあるが、ジョフィルとショーンが居ない今なら人手も足りていないのではないだろうか。
「マサキ様」
「……」
「マサキ様!」
「え、あ、あ、な、なに?」
ぼんやりしているマサキ様に喋りかけると何度目かにようやく反応があった。
「これ、よかったらどうぞ」
「あ、な、何これ?」
鉢植えに入った植物を渡すと、目を瞬かせて首を捻る。
「冒険中に見つけたムーンランタンの鉢です」
「ム、ムーンランタン?」
よかった、どうやら植物のことは知らないらしい。
これを見つけた時にすぐにマサキ様の顔が浮かんだ。
非常に珍しい植物なので、なんでも手に入れることの出来るマサキ様も喜んでくれるかもしれない。
「月光を吸収する性質があり、部屋に飾っておくと夜に薄ら光を照らしてくれますよ」
マサキ様が夜寝る前に部屋で一人落ち込んでいるのではないかと思ったら、ついこの貴重な植物を採取していた。
これを見て少しでも心に安らぎを与えられたらいいのだが。
「へ、へぇ。は、初めて見た」
俺と鉢植えを何度も見比べて嬉しそうに破顔した。
その顔を見たら潰さないように慎重に運んだことも、枯らさないように何度も気にしたことも報われた気がする。
「まだ大きくなるかもしれないので鉢は都度変えて下さいね」
「わ、分かった。ジョ、ジョフィルに頼んで大きめの鉢を用意…あ……」
パァッと花が咲いたような笑顔だったのに、ジョフィルの名前をうっかり口にしてしおしおと萎れてしまった。
「ほ、本当にありがとうな。た、大切にする」
「………」
しおしおのまま力なく微笑むマサキ様。
他の奴を想って心痛めている顔を俺に向けないで欲しい。
むしゃくしゃしたまま、結局元仲間たちの目撃情報のあった町に向かうことにした。
これ以上あそこに居たら、落ち込んでいるマサキ様に八つ当たりのようなことを言ってしまいそうだったから。
数日かけてたどり着いたその町でさっそく聞き込みをすると、似たような特徴の男女を目撃したという情報を引き出すことに成功した。
どうやら近くの森の中にある宿泊施設に滞在している客だろうという話で、あんな何もない場所に似つかわしくない豪華な施設なのだという。
身なりがいい人間ばかりが出入りしているようで、この町に観光に訪れることも多いらしいが軒並み態度が悪い者ばかりだという。
あいつらはこんな場所で何をやっているのだろうか?
とりあえず1日町で聞き込みをした後、翌日に噂の宿泊施設を見に行くことにした。
しばらく入り口を見張っていたが、確かに何やら金の匂いがする連中が出入りしているようだ。
見張りながら色々なことを考えた。
そもそも俺は奴らを捕まえてどうしたいのだろうか。
冒険者ギルドに報告すれば俺の名誉は回復するだろう。
だがそれがなんだと言うんだ。
最早ソロの今の方がギルドランクは高い。
帰れば心地よい家があり飯があり、お帰りと可愛く迎えてくれるヒトがいる。
それら全てが活力となり俺に力をくれている。
俺の悔しさも悲しさも名誉も、既にすべてマサキ様が救ってくれている。
…やっぱり帰ろう。
あいつらを許した訳ではないが、こんな馬鹿馬鹿しいことはもうやめだ。
こうしている間にも落ち込んでいるマサキ様を慰める方がよほど有益な時間の使い方だ。
町に引き返そうと施設から背を向けて歩き出した時だった。
「ロキ? ロキなの?」
聞き覚えのある女の声に鳥肌が立つ。
出会った頃、一瞬だけマサキ様とコイツを重ねたことがあったが、今にして思えばとんでもない。
コイツらとマサキ様は真逆の存在だ。
「……フルーラ」
「生きていたのねっ!」
うるうると目を潤ませる姿は小動物のような愛らしさがあるが、それが余計に警戒心を抱かせる。
俺に振られた腹いせにパーティを動かして俺を陥れて、依頼人を殺し回った醜悪な奴だ。警戒しない方が難しい。
ショーンとジョフィルが去ってから明らかにマサキ様の元気がない。
屋敷の連中はみんなそれを気にしているようで、マサキ様がため息を吐くと必ず誰かしらがこっそり見つめている。
何故それを知っているのかと言えば、俺もついつい視線がそちらに向いているから気づいてしまうのだ。
心配そうだったり苛立っていたりと反応は様々だったが、マサキ様が普段以上に密かな注目を集めているのは確かだ。
セイレスなんかはマサキ様により一層張り付くようになり、マサキ様もそれを心の支えにしているように見える。
俺も何かあの人の力になれることがあればいいのに…俺にはセイレス以上の関心をマサキ様から得られる力は持っていないのが悔しい。
そんなモヤモヤした思いを抱える日々の中、とうとう裏切り者の仲間たちの目撃情報を手に入れた。
いや、手に入れてしまったと言うのが正しいか。
正直に言ってしまえば、どうでも良かった。
奴隷に堕ちてからあれほど願っていた復讐の糸口に本来ならば喜ぶべきなのに、俺ときたらマサキ様の心情の方が気になっている。
外にも出ず一日中マサキ様を見張っていたいほど心配で仕方ない。
冒険者の仕事は好きだったが、他の連中のように屋敷での仕事を貰えないかも真剣に検討している程だ。
粗雑な俺に屋敷の細やかな仕事が務まるのか不安ではあるが、ジョフィルとショーンが居ない今なら人手も足りていないのではないだろうか。
「マサキ様」
「……」
「マサキ様!」
「え、あ、あ、な、なに?」
ぼんやりしているマサキ様に喋りかけると何度目かにようやく反応があった。
「これ、よかったらどうぞ」
「あ、な、何これ?」
鉢植えに入った植物を渡すと、目を瞬かせて首を捻る。
「冒険中に見つけたムーンランタンの鉢です」
「ム、ムーンランタン?」
よかった、どうやら植物のことは知らないらしい。
これを見つけた時にすぐにマサキ様の顔が浮かんだ。
非常に珍しい植物なので、なんでも手に入れることの出来るマサキ様も喜んでくれるかもしれない。
「月光を吸収する性質があり、部屋に飾っておくと夜に薄ら光を照らしてくれますよ」
マサキ様が夜寝る前に部屋で一人落ち込んでいるのではないかと思ったら、ついこの貴重な植物を採取していた。
これを見て少しでも心に安らぎを与えられたらいいのだが。
「へ、へぇ。は、初めて見た」
俺と鉢植えを何度も見比べて嬉しそうに破顔した。
その顔を見たら潰さないように慎重に運んだことも、枯らさないように何度も気にしたことも報われた気がする。
「まだ大きくなるかもしれないので鉢は都度変えて下さいね」
「わ、分かった。ジョ、ジョフィルに頼んで大きめの鉢を用意…あ……」
パァッと花が咲いたような笑顔だったのに、ジョフィルの名前をうっかり口にしてしおしおと萎れてしまった。
「ほ、本当にありがとうな。た、大切にする」
「………」
しおしおのまま力なく微笑むマサキ様。
他の奴を想って心痛めている顔を俺に向けないで欲しい。
むしゃくしゃしたまま、結局元仲間たちの目撃情報のあった町に向かうことにした。
これ以上あそこに居たら、落ち込んでいるマサキ様に八つ当たりのようなことを言ってしまいそうだったから。
数日かけてたどり着いたその町でさっそく聞き込みをすると、似たような特徴の男女を目撃したという情報を引き出すことに成功した。
どうやら近くの森の中にある宿泊施設に滞在している客だろうという話で、あんな何もない場所に似つかわしくない豪華な施設なのだという。
身なりがいい人間ばかりが出入りしているようで、この町に観光に訪れることも多いらしいが軒並み態度が悪い者ばかりだという。
あいつらはこんな場所で何をやっているのだろうか?
とりあえず1日町で聞き込みをした後、翌日に噂の宿泊施設を見に行くことにした。
しばらく入り口を見張っていたが、確かに何やら金の匂いがする連中が出入りしているようだ。
見張りながら色々なことを考えた。
そもそも俺は奴らを捕まえてどうしたいのだろうか。
冒険者ギルドに報告すれば俺の名誉は回復するだろう。
だがそれがなんだと言うんだ。
最早ソロの今の方がギルドランクは高い。
帰れば心地よい家があり飯があり、お帰りと可愛く迎えてくれるヒトがいる。
それら全てが活力となり俺に力をくれている。
俺の悔しさも悲しさも名誉も、既にすべてマサキ様が救ってくれている。
…やっぱり帰ろう。
あいつらを許した訳ではないが、こんな馬鹿馬鹿しいことはもうやめだ。
こうしている間にも落ち込んでいるマサキ様を慰める方がよほど有益な時間の使い方だ。
町に引き返そうと施設から背を向けて歩き出した時だった。
「ロキ? ロキなの?」
聞き覚えのある女の声に鳥肌が立つ。
出会った頃、一瞬だけマサキ様とコイツを重ねたことがあったが、今にして思えばとんでもない。
コイツらとマサキ様は真逆の存在だ。
「……フルーラ」
「生きていたのねっ!」
うるうると目を潤ませる姿は小動物のような愛らしさがあるが、それが余計に警戒心を抱かせる。
俺に振られた腹いせにパーティを動かして俺を陥れて、依頼人を殺し回った醜悪な奴だ。警戒しない方が難しい。
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