ツインデッド・オルド・オール 20XX年

赤沼 夜

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第16話 プロット5

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 急いで、浴衣を借りたお店に入った。
 店員はあの時と同じ人で、血で付いているリーアを見て、苦笑いを浮かべている。
 リーアはシャワーを貸してもらい、元の衣装に戻った。

「弾痕がなくなっているな」
「この衣装は特別な素材で出来ているからよ。抗菌効果もあるわ」
「便利だな」

 一見穴が空いて、衣装が治るというのはいいかもしれないが、普通は穴が空いているということは、そいつは死にそうなやつになるだろう。
 それで思い出したんだが、リーアはレイジに撃たれた後、どう考えても、再生していた。一体どんな強化実験を受ければ、身体が再生するなんて人間離れした力を手に入れるのだろうか。

 京都の内側にある大きなゲートの前に来た。まだ、忍者が暴れた情報はここまで届いていないようだが、受付場所は行列ができていた。
 リーアはその行列の横を歩いて、受付の場所まで歩いた。俺も周りからの視線を感じながら、リーアに付いていく。

「支配者からの車は手配できてるんでしょうね?」
「は、はい……既に手配済みです。そのお聞きしたいのですが、どうやったら支配者と知り合いになるのでしょうか?」
「なにその質問?」
「いえ、なんでもございません」
 
 ゲートが開いて、車が置いてある場所に向かった。

「デカイな」

 指定された駐車場に着くと、コバルトブルーの車体が止まっている。リーアの瞳の色と似ている。
 
「このブランドは……」

 Uが4つ向かい合うように配置されていて、斜めに線が引かれている。

「確か、支配者が製造している車のブランドだったか」
「そうね」 

 この車の情報を見たことがある。確か戦闘モードになると変形するらしい。支配者が製造する車はほかの車とは一線を画して、性能が段違いだ。
 そもそも、空飛ぶ車を最初に開発したのも支配者で、日本が支配者に征服される時は世界はどこも空飛ぶ車の製造はできていなかった。支配者を除いて。

「乗りましょう」
「そうだな」

 入口の横にある端末にリーアが手をかざすとドアが開いた。
 中に入ると、外からは想像出来なかった、レトロな洋館という感じだった。
 部屋の広さは車内とは思えないほど広く、快適に過ごすことができそうだ。

「普段浮いているリーアの服装もここだと、違和感がないな。支配者はこういう感じのレトロな雰囲気が好きなのか?」
「それはあるかもしれないわね」

 リーアは早速、棚から紅茶を出して入れ始めた。

「しかし、残念だったわ」
「そうだな……」

 何故か、俺達に付きまとい、よく分からないセリフはいたり、テンションは高い奴だった。

「私が予約した旅館だったのに、夕食も食べれなかったわ……温泉に入っただけだなんて……」
「それなら……人格を強引に変えれば良かったんじゃないのか?」
「それが出来たら苦労はないわ、普段はすぐに人格を変えられるのに、あの時は全然駄目だったわ」
「そうだったのか……」

 偉そうな方のリーアにとって金髪は本当にどうでもいい存在だったんだろうな。気にした素振りは一切無かった。それともあえて気にしていない振りをしているのか、聞いてみるしかないのか。

「そういえば、言って無かったわね」
「何を?」
「今から行くところよ」
「確かに、今からどこに向かうんだ」
「大阪よ」
「大阪に行くのか……」
「そこに家があるから、そこに住むわ」
「なるほど、広いのか」
「私は貴族よ。広くないわけが無いわ」
「それもそうか」
 
 結局金髪の事も話せないまま、時間だけが過ぎていった。
 ネットなど情報を収集したりして、時間を潰していたが、流石に違和感を感じた。

「なんか、遠くないか?京都から大阪ってそんなに遠いイメージはないけど」
「そう思うわよね……」
「なんだか、顔色が悪いけど、なんか知っているのか」

 リーアが運転席の方を指さした。

「さっき私も違和感を感じて、座標を確認したところ、プロット5に到着予定になっていたわ」
「プロット5? 俺が住んでいたところの隣じゃないか?」
「あと、住所も変更したと連絡を受けたわ」
「なるほど?」

 プロット5に到着すると、車が自動で止まり、住む予定の住所の近くに降りた。
 周りには似たようなマンションがいくつも建っている。
 
「住所を見ると、あの黒いマンションじゃないか?」 
「そうね……」

 住所はマンション4階の403号室だった。

「ここ、エレベーターないのか……」
「ありえない……」

 ブツブツ何かを言いながら、動きが遅いリーアを連れて、403に向かった。
 
 ドアの前に到着した。

「ほら、カードキーあるんだろう?」
「……」

 リーアがカードキーをかざすると、ピコンと音がなり、ドアがスライドした。
 中に入ると、自動にライトが付いて、部屋をな眺めてみると、黒い壁、黒い床、黒い天井、他には何も無かった。

「なんか、想像していたよりも貴族の家っぽくないな」

 リーアは俺の後ろの玄関前に無言で立ち尽くしている。

「あのな、せめて、玄関に入って、ドアを閉めろよ」
「嘘よ」
「うん?」
「こんなのありえない……」

 リーアは玄関から部屋に上がり、下から崩れ落ちた。

「なんだ、どうしたんだ? 確かに何もないし、想像よりも狭いが、家具とかは買えば良いだろう?」
「使えなくなったの」
「え? 何が」
「今まで支払いに使ってた、口座端末」
「え……そうなると、俺のお金だけしか無いって事になるんだが……」

 外を見ると、俺達が乗ってきた、コバルトブルーの車が離れていく。

「俺、今あまり金を持ってないぞ……」

 リーアは立ち上がると、拳を握り潰している。

「事務所を作るわ」
「事務所……?」

 俺はポケーとしながら、リーアを見た。
 
「そう、事務所、依頼を受けたりして、お金も貰うわ」

 何か考えがあるのか、自信がありそうな表情をしている。しかし、少し考えただけで問題は多くある。
 
「事務所って、まず事務所を作れる資金があるように思えないんだが……」
「あるわよ、自分の口座を見てみなさい」

 言われた通り、口座を確認すると、お金が増えていた。明細表を確認すると、レイブンシャフトとから除名金という名前でお金が振り込まれていた。

「除名金なんてあったんだな。裏切ったような感じになったのに、レイブンシャフトの人達は良い人だ」

 レイブンシャフトは小さい頃から育った場所、言わば実家みたいなものだ。俺が本当は裏切りたくなかったと察してくれたが、色々事情があり、除名するしか無かったのだろう。
 
「何を言っているのよ、そんな事有り得るわけがないじゃない。支配者からお金を断ち切られる可能性を考えて、とりあえず手を打っていたのよ」
「つまり、レイブンシャフトからの除名金なんてものは存在しないということか……」

 しかし、実際にレイブンシャフトから送金は来ているということは、リーアはハッキングとか何らかの方法でお金を送ったんだな。

「貴方の口座にはバレない、ギリギリのお金を送金しておいたわよ。あとは……お金をあげたおっさんを捕まえて、返しもらうしかないわね」
「でもあのおっさんは多分まだ、京都にいるんじゃないか?」
「まぁ、いいわ。とりあえず、明日事務所を作るわ、急ぐわよ」
「あ、ああ」

 謎のリーアのやる気に圧倒されながら、リーアとの共同生活が始まった。

 ――――

 暗がりの中、2人の影かライトに照らされている。

「リーアがマンションに着いたみたいだな。嬉しそうにしていたか?」
「支配者が意地悪をするから、部屋に入るなり、崩れ落ちていました」
「写真は撮ったか?」
「こちらを」

 メイドを服を着た女性が支配者の前に写真を見せた。

「愛らしい表情をきているじゃないか」
「そんな事を言ってるから、2人に嫌われるんですよ」
「リーアの身体に、元の人格が残っていた時はどうなるかと思ったが、とりあえずは大丈夫そうだな」
「そうですね。レイラの方も順調のようですね」
「それは良かった。しかし、2人共、私が生き返らせたのだから、感謝してほしいと思わないか?」
「そうですね」

 慈愛に満ちた表情で壁に掛けられた写真を眺める。その目に映るのは、期待か希望か、あるいはその両方か──感情は、その者しか分からない。
 
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