桜の樹の下にはゾンビが眠っているーーゾンビVS殺人事件! ゾンビはびこる終末世界でたてこもる人々を襲う連続殺人事件。その真相は!?

しゃぼてん

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第14話 第3の事件

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 宮沢が、か細い震えた声で言った。

「木村君と三上さんがいません。まさか、ふたりも……?」

「ふたりを探そう! あたし、アヤヤンを探してくる!」

 そう言って廊下を走りだそうとするカラを制止し、西浦先生は提案した。

「待ってください。手越先生に何が起こったのかわからない今、一人で行動するのは危険かもしれません。2つのグループに別れて木村さんと三上さんを探しましょう」

 その時、廊下の向こうから声がした。

「わたしなら、ここにいます」

 彩だった。青ざめた顔の彩がぽつんと立っていた。
 カラは駆け寄った。

「よかった。心配したよ。アヤヤン~」

 カラは彩に抱きついた。

「カラちゃん……」

「テゴッチが殺されちゃったよ。キムキムがどこにいるか知らない?」

 彩は即答した。

「知らない」

 西浦先生は言った。

「木村さんを探しましょう。宮沢君、遠野さん、三上さん。3人で5階を見てきてもらえますか? 大鳥さんは僕と一緒に4階を捜索しましょう」

 宮沢、優花、彩は上の階に向かった。3人とも青い顔で生気がなかった。
 カラは亡霊のような様子で階段を上がっていく3人を見送りながら心配そうにつぶやいた。

「大丈夫かな。ザワチンは、悲鳴あげる以外に何もできないし」

「5階は部屋数が少ないので、この階よりは……」

 そう返答する西浦先生も青い顔で具合が悪そうだった。
 西浦先生は何もしていないのに苦しそうな息をしている。

(元気なのは、あたしだけかぁ。あたしがしっかりしないと……)

 カラは西浦先生と一緒に、4階を一部屋ずつ確認していった。
 手越先生の部屋の隣の部屋。
 その隣の部屋。
 何もなかった。

 その先には試作ロボットTGS1が置いてある部屋、つまり、立花が窓の外で死んでいた部屋があった。
 西浦先生は重たいドアを開いた。
 窓は閉まっている。
 TGS1はいつもの場所にあった。
 室内は、一見、昨日から変わっていないように見えた。
 ただ、何かが足りないような気がした。
 カラは首をかしげた。

「なんだろ。何かが足りない……」

 でも、何がないのかわからない。
 カラが考えていると、西浦先生は言った。

「木村さんはいませんね。大鳥さん、次に行きましょう」

「うん。今はキムキムを探すのが先だね」

 廊下を東側に向かって進み、今度は、いつもカラ達がいる院生室を確認した。
 部屋の中には誰もいない。
 変わった所も特にない。

 その後も、誰もいない部屋を確認し続け、北側のエレベーターホールに向かって進んで行った。
 エレベーターホール前のバリケードにはキャビネットやプリンター等、色んな物が使われている。
 それを見ながら、ふと、カラは気が付いた。

「あ、そっか。あたしが作った脱出用装甲じゃん。さっきの部屋になかったの。誰が移動したんだろ」

 「脱出用装甲」は、カラの提案で作ったアルミ板でできた人が入れるサイズの大きな箱だ。
 下部には車輪をつけてある。
 これをかぶって移動すれば、ゾンビに襲われても大丈夫……ということを期待して造ってみたものの、実際に使うのは無謀に思えて、TGS1のある部屋に放置してあったはずだ。
 その大きな箱が、あの部屋から消えていた。
 そして、これまで確認してきたどの部屋にもなかった。

 西浦先生は言った。

「今は木村さんを探しましょう」

「あ、うん。おけ」

 エレベーターの反対側、北東の端に当たる場所には、手越研究室の部屋がある。
 その部屋には遠隔操作ロボットEZ2が置いてあり、EZ2の操作用パソコンやタブレットもそこにある。

 その部屋に向かって歩いていた西浦先生は、足をとめた。
 西浦先生のスマホが突然鳴りだしたのだ。
 西浦先生はスマホを手に取った。
 西浦先生が耳にあてたスマホから、木根文亮の声が漏れ聞こえた。

「西浦先生! 木根です! 工学部に向かって歩いてたんですが、その、建物の窓から、垂れ幕みたいに……」
 
 西浦先生は通話状態のまま、ゆっくりと部屋のドアを開けた。
 奥の窓が開いていて、ブラインドが風でしきりに蠢いていた。

 部屋の中には、長机があり、ロボットの開発と操作に使うためのパソコンが並んでいた。 
 そのデスクの脚部にロープが結び付けられ、窓の外へと、ロープが続いていた。

 カラは西浦先生を追い抜き、先に窓へと近づいていった。
 カラは窓の外を見た。
 地表には、スマホを片手にこちらを見ているフルフェイスヘルメットの木根文亮の姿があった。
 カラは視線を手前に移した。

 ロープの続く先、窓のすぐ下で、木村の茶色い頭髪が風に揺れていた。
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