18 / 27
第17話 ゾンビ、避難をさせる
しおりを挟む
驚く工学部の人達に、カラは説明した。
「アランがエンジニアを探してるんだって。だから、あたしはフミピョンといっしょに恵庭隈研究所に行くよ」
カラが研究所に来てくれるらしい。
いいニュースだけど、俺は初耳だ。
西浦先生が言った。
「ですが、大鳥さん、中林さんの研究所は……」
「わかってる。隔離地区の中にあるから、パンデミックが収まるまで、どこにも行けなくなるかも」
「カラちゃん……」
ショートヘアの女性が何かを言おうとして、結局何も言えずに黙った。
カラは言った。
「アヤヤン。パンデミックが落ち着いたら、また会お? それで、パフェを食べまくろ。それまでは、オンラインでしか会えなくなるけど、ズッ友だよ」
アヤヤンさんは、涙を飲みこむように、うなずいた。
アヤヤンさんではない、別の女性が言った。
「そんなこと言わずに、避難しないと。せっかく、今、避難できるんだから。一緒に……」
カラはゆっくりと首を横にふった。
「ううん。あたしは行かないよ。ユーカリン。それに……。こんなこと言いたくなかったから、言わないつもりだったけど……。でも、やっぱり、黙ってられない。あたしさ、みんなのことが好き。ザワチン以外はみんな好き。だけどさ、みんな、何かを隠しているよね。たぶん、ザワチン以外、みんな」
西浦先生、アヤヤンさん、ユーカリンさんは、黙ってうつむいている。カラの言う通り、何かを隠しているのかもしれない。
一人だけ、カラに面と向かって抗議したのは、小柄な男性、ザワチンさんだ。
「大鳥さん。なんで、わざわざ、僕以外って連呼するわけ? 別に君に好かれなくてもいいけどさ。わざわざそういう言い方はしないでほしいな」
文句を言うザワチンさんに、カラは言った。
「だいじょぶ。ザワチンのことも好きだよ。そういうKYなとことかマジウケるもん」
「どこまでも、引っかかる言い方をするよね、君。それに、君にだけは空気が読めないとか言われたくないんだけど」
(へー。ケーワイって、空気が読めないってことなのか)
俺は感心した。何気にザワチンさんはカラがしゃべる「外国語?」をちゃんと理解している。
ザワチンさんは不満そうだけど、西浦先生はザワチンさんを無視して、カラに言った。
「大鳥さん。できれば知っていることを全て話すべきだとはわかっています。しかし、今は避難を優先させてください。皆さんの安全を確保できたら、僕は起こってしまったことの責任を取るつもりです」
西浦先生は、顔色も悪く、辛そうだ。
精神的ストレスもあるかもしれないけど、西浦先生は体調がすでに限界ギリギリなのかもしれない。
カラはうなずいた。
「わかってるよ。ニッシー。今は、生き延びなきゃ。だから、みんなは早く避難して」
「すみません。大鳥さん。中林さんによろしく伝えてください。みなさん、行きましょう」
西浦先生はそう言って頭を下げ、カラ以外の工学部の人達はエレベーターに向かった。
「カラちゃん、バイバイ。元気でね。また会おうね」
エレベーターに乗りこんだ後、アヤヤンさんがそう言って、手を振った。
カラも手を振りながら言った。
「うん。アヤヤン、また今度ね。絶対にまた会おうね」
俺はみんなと一緒にエレベーターで1階に降りた。
エレベーターの中で、西浦先生は俺に何かスティック状のものを渡して、小声で「これを大鳥さんに渡してください」と言った。
エレベーターはすぐに1階に到着したから、俺は渡された物が何か確認せず、とりあえずポケットにいれた。
エレベーターの扉が開いた。
非感染者が近づくとゾンビは動き出すから、ここまで来たら急がないといけない。
車のところまでもう一度避難ルートを確認して、俺はみんなを呼んだ。
工学部の4人は一気に車まで移動し、乗りこんだ。
ゾンビ達はすぐに気が付いて近寄ってこようとした。
だけど、ゾンビが近づいた時にはもう車のドアは閉じられていた。
運転席の西浦先生がエンジンをかけて、車はゆっくりと発進した。
だけど、ゾンビに囲まれた車は、サポカーの安全運転システムのせいで発車するとすぐに止まった。
先生が自動停止を解除したようで、車はすぐにゆっくりと動き出した。だけど、その後も車は何度もとまりかけた。
ゾンビ達は車に張り付くようにまとわりつき、ボンネットの上に乗るゾンビまでいたから。
それでも、西浦先生の車はゾンビの群衆の間をかき分けるように進んで行った。
(時間はかかりそうだけど、なんとか避難できそうだな)
去っていく車を見送ると、俺はエレベーターに乗って4階に戻った。
俺がエレベーターから降りた時、カラはまだエレベーター前のバリケードのところにいた。
カラは待ち構えていたように俺に言った。
「フミピョン、早く早く。あたしがここに残ったのは、この事件の真相が知りたいからなんだ。早く一緒に謎を解こ!」
「アランがエンジニアを探してるんだって。だから、あたしはフミピョンといっしょに恵庭隈研究所に行くよ」
カラが研究所に来てくれるらしい。
いいニュースだけど、俺は初耳だ。
西浦先生が言った。
「ですが、大鳥さん、中林さんの研究所は……」
「わかってる。隔離地区の中にあるから、パンデミックが収まるまで、どこにも行けなくなるかも」
「カラちゃん……」
ショートヘアの女性が何かを言おうとして、結局何も言えずに黙った。
カラは言った。
「アヤヤン。パンデミックが落ち着いたら、また会お? それで、パフェを食べまくろ。それまでは、オンラインでしか会えなくなるけど、ズッ友だよ」
アヤヤンさんは、涙を飲みこむように、うなずいた。
アヤヤンさんではない、別の女性が言った。
「そんなこと言わずに、避難しないと。せっかく、今、避難できるんだから。一緒に……」
カラはゆっくりと首を横にふった。
「ううん。あたしは行かないよ。ユーカリン。それに……。こんなこと言いたくなかったから、言わないつもりだったけど……。でも、やっぱり、黙ってられない。あたしさ、みんなのことが好き。ザワチン以外はみんな好き。だけどさ、みんな、何かを隠しているよね。たぶん、ザワチン以外、みんな」
西浦先生、アヤヤンさん、ユーカリンさんは、黙ってうつむいている。カラの言う通り、何かを隠しているのかもしれない。
一人だけ、カラに面と向かって抗議したのは、小柄な男性、ザワチンさんだ。
「大鳥さん。なんで、わざわざ、僕以外って連呼するわけ? 別に君に好かれなくてもいいけどさ。わざわざそういう言い方はしないでほしいな」
文句を言うザワチンさんに、カラは言った。
「だいじょぶ。ザワチンのことも好きだよ。そういうKYなとことかマジウケるもん」
「どこまでも、引っかかる言い方をするよね、君。それに、君にだけは空気が読めないとか言われたくないんだけど」
(へー。ケーワイって、空気が読めないってことなのか)
俺は感心した。何気にザワチンさんはカラがしゃべる「外国語?」をちゃんと理解している。
ザワチンさんは不満そうだけど、西浦先生はザワチンさんを無視して、カラに言った。
「大鳥さん。できれば知っていることを全て話すべきだとはわかっています。しかし、今は避難を優先させてください。皆さんの安全を確保できたら、僕は起こってしまったことの責任を取るつもりです」
西浦先生は、顔色も悪く、辛そうだ。
精神的ストレスもあるかもしれないけど、西浦先生は体調がすでに限界ギリギリなのかもしれない。
カラはうなずいた。
「わかってるよ。ニッシー。今は、生き延びなきゃ。だから、みんなは早く避難して」
「すみません。大鳥さん。中林さんによろしく伝えてください。みなさん、行きましょう」
西浦先生はそう言って頭を下げ、カラ以外の工学部の人達はエレベーターに向かった。
「カラちゃん、バイバイ。元気でね。また会おうね」
エレベーターに乗りこんだ後、アヤヤンさんがそう言って、手を振った。
カラも手を振りながら言った。
「うん。アヤヤン、また今度ね。絶対にまた会おうね」
俺はみんなと一緒にエレベーターで1階に降りた。
エレベーターの中で、西浦先生は俺に何かスティック状のものを渡して、小声で「これを大鳥さんに渡してください」と言った。
エレベーターはすぐに1階に到着したから、俺は渡された物が何か確認せず、とりあえずポケットにいれた。
エレベーターの扉が開いた。
非感染者が近づくとゾンビは動き出すから、ここまで来たら急がないといけない。
車のところまでもう一度避難ルートを確認して、俺はみんなを呼んだ。
工学部の4人は一気に車まで移動し、乗りこんだ。
ゾンビ達はすぐに気が付いて近寄ってこようとした。
だけど、ゾンビが近づいた時にはもう車のドアは閉じられていた。
運転席の西浦先生がエンジンをかけて、車はゆっくりと発進した。
だけど、ゾンビに囲まれた車は、サポカーの安全運転システムのせいで発車するとすぐに止まった。
先生が自動停止を解除したようで、車はすぐにゆっくりと動き出した。だけど、その後も車は何度もとまりかけた。
ゾンビ達は車に張り付くようにまとわりつき、ボンネットの上に乗るゾンビまでいたから。
それでも、西浦先生の車はゾンビの群衆の間をかき分けるように進んで行った。
(時間はかかりそうだけど、なんとか避難できそうだな)
去っていく車を見送ると、俺はエレベーターに乗って4階に戻った。
俺がエレベーターから降りた時、カラはまだエレベーター前のバリケードのところにいた。
カラは待ち構えていたように俺に言った。
「フミピョン、早く早く。あたしがここに残ったのは、この事件の真相が知りたいからなんだ。早く一緒に謎を解こ!」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる