14 / 14
2.DIVIDED
#2
しおりを挟む
狭い道に乱雑に置かれている生ゴミやダンボールにぶつかりながら、ジグザグに走る。
あと少し、あと少し!!
通りに出たら通行人に助けを求める。
人がいなくても防犯カメラは設置されている通りだ。
こんな開けた通りで殺人なんてできっこない。
急に抜け道から見える灯りが少なくなる。
人のシルエット。
そこに立っていたのは荒巻だった。
どうやって?私の後ろにいたはずだ。
「さすが空手やってただけはある。意外と足が速いんだな。驚いたなあ。」
荒巻はねっとりした気味の悪い笑みを浮かべながら意気揚々と佐々木を見ている。
抜け道があるのか。あいつはそれを知っている。だから、先回りできたんだ。
佐々木は来た道を戻る。
荒巻はやれやれといった表情を浮かべながら、その場に佇む。
佐々木が30メートル程走ったところで3階建ての非常階段から声がする。
「おーい、もう諦めて殺されろよ。・・・ああ、でも、泣いて詫びてくれたら見逃すかもな。」
ありえない。
なぜ、あんなところに一瞬で移動できる。
不安と動機から佐々木をその場に両膝を付き、嘔吐した。
「うわあ、きったねえなあ。住人に迷惑だろうが。」
嗚咽と共に声がする方を見上げる。
荒巻は非常階段の手すりに立ち、佐々木を見下ろしている。
そっちいくわ、と荒巻は手すりから飛び降り、佐々木のそばにすっと着地した。
佐々木は這いずりながら荒巻の足元で、助けてくれ、と懇願する。
「助けて、じゃねえだろ。許して下さい、だろうが!」
足元に縋る佐々木の手を振りほどき、荒巻は彼の痛々しい右手を何度も踏みつける。
「 !!!!!!」
言葉にならない悲鳴。
苦しいというだけの叫びは、もはやただのノイズでしかない。
「お前は俺が3日徹夜して作った企画書をこんな風にみんなの前で踏みにじったんだ。思い出したか!?」
佐々木はほぼ感覚がなくなってきた右手を庇いながら朦朧とした意識の中で荒巻に言われたことを必死に思い出す。
・・・思い出せない。
荒巻のような若い社員の多くに相当に厳しく当たってきた。
なぜなら、自分が若手社員の頃に上司から何度も何度も責められ罵られながも、折れずに今の地位まで登りつめたからだ。
若手の避けられない登竜門。
これが仇となって自分の身に返ってくるとは。
「すまかった。許してくれ。」
佐々木は先程までの威勢がなくなり、老人のような声で荒巻に許しを乞う。
荒巻は膝を折りしゃがんで右手で佐々木の髪の毛をぐしゃりと掴むと
「俺がそうやって謝った時に何て言ったか。覚えてるか。」
荒巻は目にうっすらと涙を浮かべながら呟く。
佐々木の目にも涙が。
両者の涙の根幹は明らかに違う。
憎しみと後悔。
佐々木は最後の力を振り絞り、あうあうと口を動かす。
荒巻はその声を聞こうと佐々木の口元に耳を近づける。
「違いますよー。佐々木部長。・・・正解は死ねよ。だ!」
荒巻の右手が赤く光り出すと佐々木の眉から頭頂部までが火に包まれる。
地面を這いずりながら悶絶する佐々木。
もはや声は出ない。
その苦悶の表情を涙を流し笑いながら見下ろす荒巻。
荒巻は両手を佐々木の方に差し出し、近付くと左手、右大腿、右肩と順に火に包んでいく。
数分後。
コートのフードを被った男がポケットに両手を突っ込んで路地裏から出てくる。
男はそのまま繁華街への消えていった。
路地裏には何かが焼き焦げた異様な臭いと直径10センチメートル程の白い煙が上がっていた。
あと少し、あと少し!!
通りに出たら通行人に助けを求める。
人がいなくても防犯カメラは設置されている通りだ。
こんな開けた通りで殺人なんてできっこない。
急に抜け道から見える灯りが少なくなる。
人のシルエット。
そこに立っていたのは荒巻だった。
どうやって?私の後ろにいたはずだ。
「さすが空手やってただけはある。意外と足が速いんだな。驚いたなあ。」
荒巻はねっとりした気味の悪い笑みを浮かべながら意気揚々と佐々木を見ている。
抜け道があるのか。あいつはそれを知っている。だから、先回りできたんだ。
佐々木は来た道を戻る。
荒巻はやれやれといった表情を浮かべながら、その場に佇む。
佐々木が30メートル程走ったところで3階建ての非常階段から声がする。
「おーい、もう諦めて殺されろよ。・・・ああ、でも、泣いて詫びてくれたら見逃すかもな。」
ありえない。
なぜ、あんなところに一瞬で移動できる。
不安と動機から佐々木をその場に両膝を付き、嘔吐した。
「うわあ、きったねえなあ。住人に迷惑だろうが。」
嗚咽と共に声がする方を見上げる。
荒巻は非常階段の手すりに立ち、佐々木を見下ろしている。
そっちいくわ、と荒巻は手すりから飛び降り、佐々木のそばにすっと着地した。
佐々木は這いずりながら荒巻の足元で、助けてくれ、と懇願する。
「助けて、じゃねえだろ。許して下さい、だろうが!」
足元に縋る佐々木の手を振りほどき、荒巻は彼の痛々しい右手を何度も踏みつける。
「 !!!!!!」
言葉にならない悲鳴。
苦しいというだけの叫びは、もはやただのノイズでしかない。
「お前は俺が3日徹夜して作った企画書をこんな風にみんなの前で踏みにじったんだ。思い出したか!?」
佐々木はほぼ感覚がなくなってきた右手を庇いながら朦朧とした意識の中で荒巻に言われたことを必死に思い出す。
・・・思い出せない。
荒巻のような若い社員の多くに相当に厳しく当たってきた。
なぜなら、自分が若手社員の頃に上司から何度も何度も責められ罵られながも、折れずに今の地位まで登りつめたからだ。
若手の避けられない登竜門。
これが仇となって自分の身に返ってくるとは。
「すまかった。許してくれ。」
佐々木は先程までの威勢がなくなり、老人のような声で荒巻に許しを乞う。
荒巻は膝を折りしゃがんで右手で佐々木の髪の毛をぐしゃりと掴むと
「俺がそうやって謝った時に何て言ったか。覚えてるか。」
荒巻は目にうっすらと涙を浮かべながら呟く。
佐々木の目にも涙が。
両者の涙の根幹は明らかに違う。
憎しみと後悔。
佐々木は最後の力を振り絞り、あうあうと口を動かす。
荒巻はその声を聞こうと佐々木の口元に耳を近づける。
「違いますよー。佐々木部長。・・・正解は死ねよ。だ!」
荒巻の右手が赤く光り出すと佐々木の眉から頭頂部までが火に包まれる。
地面を這いずりながら悶絶する佐々木。
もはや声は出ない。
その苦悶の表情を涙を流し笑いながら見下ろす荒巻。
荒巻は両手を佐々木の方に差し出し、近付くと左手、右大腿、右肩と順に火に包んでいく。
数分後。
コートのフードを被った男がポケットに両手を突っ込んで路地裏から出てくる。
男はそのまま繁華街への消えていった。
路地裏には何かが焼き焦げた異様な臭いと直径10センチメートル程の白い煙が上がっていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる