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百鬼夜荘の住人達
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しおりを挟む「きつねさん~。いますかぁ~、ごはんですよぉ~。みなさんお待ちですよぉ~」
真奈美はドンドンと扉を叩きながら大声を上げたが返事はない。
「はぇー、いないんでしょうかぁー」言って扉のノブを回すとガチャっと開いた。
中を覗くと八畳一間の壁際には天井ぎりぎりまで本棚が設えており、ビッシリと本や漫画、DVDやゲーム等が所狭しと並べられている。
そして、この部屋の主は更にその奥にあるパソコンの前に座っていた。
肌は透き通るほどに白く吊り上がった目と眉が特徴的だ。
が、他は全体的に丸みを帯びた体つきをしており、スマートな狐のイメージとはかけはなれいる。チェックのシャツの下には可愛い女の子のプリントされたTシャツを着こんでいた。
パソコンモニターには動画配信サービスのアニメが流れており、それをチラ見しながら片手にもったスマホのアプリゲームに興じている。
そして耳にはヘッドホンをしていた。その為外の音に全く気付かなかったのだ。
そこへ「きつねさん~、ごはんですよぉ~」
いきなり肩を叩かれたから、
「うわっだ、誰だ!?」
当然と言えば当然のことだが飛び上がって驚いた。
「こんにちはぁ~、隣の部屋のぉ~盛狸山ですぅ~」
「な、なんだ。たぬき娘か。驚いた~、勝手に入ってくるなよ」
言いながら、彼はパソコンのモニターに目が行く。
画面には日常系美少女アニメが流れていた。これならまだ良かった。
18禁PCゲームなどをやっていたとしたら目も当てられない。
「ごめんなさぃ~。お声かけても返事がなかったものでぇ~」
「だからといって、人の部屋に勝手に入って言い訳ないだろ。何の用なんだ?」
「お昼ご飯の時間ですよぉ~。メッセージ入れてもぉ~返事がないっていってぇ~」
「お昼?ああ、そうか、もうそんな時間だったか」
「はいぃ~、皆さんは気にしないで先に食べちゃえばいいってぇ~いうんですけどぉ~、今日は私も手伝いましたしぃ~、きつねさんが好きなものって聞いてたんでぇ~」
「ボクが好きなもの?」
「はい~。お稲荷様ですぅ~」
「須磨子の稲荷寿司?」
あゆみの母、須磨子の手作り稲荷寿司。
それは守の大好物だが、久しく食べていなかった。
その味を思い出した途端に現金なもので食欲が湧く。それに、食事時間の事ではメアリーを始めみんなに口うるさく言われている。
(みんなで意地悪してボクの好物を平らげちゃうかもしれない)
その光景を想像するとなんだか寂しくなった。まずい、すぐに向かわねば。と気が逸ったところで、
「きつねさんはぁ~パソコンを使えるんですねぇ~。凄いです」
ノンビリした声に思わず気が抜ける。
「いや、別に凄いって程じゃないけど。パソコン触ったことないの?」
「学校の授業でぇ~少し使いましたぁ~。でも、お家ではお父様とお兄様がぁ~使ってたんですけど、私にはまだ早いって言ってぇ~」
「そっか。じゃあ、自宅では使ってないんだな」
「はい。でもぉ~中学生の入学祝いにぃ~、買ってくれるって約束なんですぅ~。まだ、届いてないんですけどぉ~、よかったら使い方、教えてくれませんかぁ~」
「使い方ね~」
ま、初心者に教えることなんて高がしれてる。隣の部屋だ。教えてやってもいいのだが……。
「あとぉ~スマホ?っていう電話もこっちへ来たときに始めてもたされたんです」
「へ~。これまでスマホ持ってなかったんだ」
お金持ちのお嬢様だって聞いてた。防犯の意味でも持たせておいて不思議じゃないが、
「はい~。学校の行き帰りはぁ~、お迎えがきてましたからぁ~」
「はあ。本当にお嬢様なんだな。それがこんなボロ家に越してきて不満じゃないの?」
「確かにぃ~、お部屋は大分狭いですねぇ~。でも、自由にできてぇ~嬉しいですぅ~」
「ふ~ん。まあ、そういう窮屈さはわからないでもないけどね」
守はこの百鬼夜荘に来る前、ある稲荷神社に仕えていた。
その業務量は半端ないもので。今の彼とは比べものにないくらいテキパキと仕事をこなしていたらしい。。
奉公期間が終わったのが30年くらい前だったか。働きに応じて退職金も出た。暫くのんびり隠居生活を楽しみたいと以来ここに住んであっという間の時間が経った。
「はいぃ~。きつねさんは、パソコンもスマホも同時に使えて凄いですね~。このスマホでは何してるんですかぁ?」
画面の中では露出高めの際どい恰好をした女の子がバトルに興じている。
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