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蛇石の封印
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その声にひみかも今の状態を漸く思い出したかのように言った。
「ああ、そうだった。こんな所に長居させてすまない」
いえ、とんでもないです。
そんな言葉を言いかけたと同時に下の雪がエレベーターの様にすうと下がり二人を地面まで運ぶ。
そこに至ってあさかは感じていた疑問を口にする。
「こ、これってひみかさんがやってるんですか? 」
「ああ。信じてもらえないかもしれないけど、私。雪女なんだ」
「えっえええええええええ!」
「お、驚かせてすまないね。ひょうっとしたら気味が悪いとおもうかもしれないけど」
対してひみかは飽くまでクールに言葉を返すが、
「そ、そんな事思いません! 寧ろ、す、素敵です~。私、怪談とか妖怪とか大好きなんです。凄い凄い! 」
予想外の答えに、少し驚いた表情を見せる。
「そ、そうかい? 素敵っていうのはよくわからないけど。信じてもらえてよかった」
「信じますよ。そもそも、そうじゃなかったらこんな暖かい春の日にいきなり雪が現れるはずないですもん。あの、よかったら仲良くしてれませんか? 」
「うん。いいよ、こちらこそよろしく」
彼女らが賑やかなやりとりをしている一方、あゆみは忸怩たる思いでいっぱいだった。
あさかは取り戻したが石はどこかへ飛んで行ってしまい行方がわからない。
封印を重ねるどころか、解き放ってしまったことになる。
金鞠家代表としてこれ以上のない失態だ。
いや、そもそもこうなった原因のほとんどは望月正敏なのだが。
「あ、そうだ。いまり、叔父さんが大変なことになってるんだよ」
「え? なに?お父さん、怪我でもしたの? 」
いまりの口調に不安と緊張が混じるが、
「いや、ぎっくり腰になっちゃったみたいでさ。救急車とか呼ばなくていいのかな」
「また? もう、しようがないな。物を持つときには腰になるべく負担かけないようにっていわれてるのに」
彼女は心配して損したというような呆れ顔を作る。
「だ、大丈夫なのかな? 」
彼も歳若い為ぎっくり腰というのがどの程度の病気なのかがわからない。ただ、脳裏には泣きながら悶絶している姿が浮かんでいる。尋常な状態ではなさそうだったが、
「イノリが診てるんでしょう。対処は分かってるはず。大丈夫よ」
「そっか、それならいいけど」
そんな話をしているところへ、
「は、は……はっはっくしょんっ」
ひみかの大きなくしゃみが響いた。
「あ、ひみかが限界みたい。ちょっといってくるわ」
「はいはい、いってら~」
ひらひらと手を振って見送るいまりを後目にひみかの元へかけよるあゆみ。
傍へいき声をかけると、手水舎の陰に隠れるように入って行く。
きっと熱い抱擁が繰り広げられるのだろう。
二人のそんな様をトンとみてないので私も覗きにいってやろうかしらん。
そう想っているいまりの元へあさかが近づいてきた。
彼女を一人にするわけにもいくまい。とりあえず声をかける。
「間一髪ってとこだったみたいね。無事でよかった」
「ありがとう。いまりちゃん、ねえ、ところでひみかさんて知り合いなんだよね」
望月神社と旧村長である向井家は近い為家族ぐるみの付き合い。勿論、いまりとあさかも古い付き合いだ。
「うん。まあ、自慢の大親友で幼馴染だよ。今日だって私の所へ遊びにきてたんだから」
「そ、そうなんだ。じゃあ、あゆみちゃんと三人で仲良しなんだね」
「あゆみちゃん? へ~、あんたあいつのことあゆみちゃん呼んでんだ」
歳はあゆみの方が上の筈だが、相変わらず舐められやすい……もとい、どの年代にも親しまれやすい性質なのだな、わが従兄弟は。
「ああ、そうだった。こんな所に長居させてすまない」
いえ、とんでもないです。
そんな言葉を言いかけたと同時に下の雪がエレベーターの様にすうと下がり二人を地面まで運ぶ。
そこに至ってあさかは感じていた疑問を口にする。
「こ、これってひみかさんがやってるんですか? 」
「ああ。信じてもらえないかもしれないけど、私。雪女なんだ」
「えっえええええええええ!」
「お、驚かせてすまないね。ひょうっとしたら気味が悪いとおもうかもしれないけど」
対してひみかは飽くまでクールに言葉を返すが、
「そ、そんな事思いません! 寧ろ、す、素敵です~。私、怪談とか妖怪とか大好きなんです。凄い凄い! 」
予想外の答えに、少し驚いた表情を見せる。
「そ、そうかい? 素敵っていうのはよくわからないけど。信じてもらえてよかった」
「信じますよ。そもそも、そうじゃなかったらこんな暖かい春の日にいきなり雪が現れるはずないですもん。あの、よかったら仲良くしてれませんか? 」
「うん。いいよ、こちらこそよろしく」
彼女らが賑やかなやりとりをしている一方、あゆみは忸怩たる思いでいっぱいだった。
あさかは取り戻したが石はどこかへ飛んで行ってしまい行方がわからない。
封印を重ねるどころか、解き放ってしまったことになる。
金鞠家代表としてこれ以上のない失態だ。
いや、そもそもこうなった原因のほとんどは望月正敏なのだが。
「あ、そうだ。いまり、叔父さんが大変なことになってるんだよ」
「え? なに?お父さん、怪我でもしたの? 」
いまりの口調に不安と緊張が混じるが、
「いや、ぎっくり腰になっちゃったみたいでさ。救急車とか呼ばなくていいのかな」
「また? もう、しようがないな。物を持つときには腰になるべく負担かけないようにっていわれてるのに」
彼女は心配して損したというような呆れ顔を作る。
「だ、大丈夫なのかな? 」
彼も歳若い為ぎっくり腰というのがどの程度の病気なのかがわからない。ただ、脳裏には泣きながら悶絶している姿が浮かんでいる。尋常な状態ではなさそうだったが、
「イノリが診てるんでしょう。対処は分かってるはず。大丈夫よ」
「そっか、それならいいけど」
そんな話をしているところへ、
「は、は……はっはっくしょんっ」
ひみかの大きなくしゃみが響いた。
「あ、ひみかが限界みたい。ちょっといってくるわ」
「はいはい、いってら~」
ひらひらと手を振って見送るいまりを後目にひみかの元へかけよるあゆみ。
傍へいき声をかけると、手水舎の陰に隠れるように入って行く。
きっと熱い抱擁が繰り広げられるのだろう。
二人のそんな様をトンとみてないので私も覗きにいってやろうかしらん。
そう想っているいまりの元へあさかが近づいてきた。
彼女を一人にするわけにもいくまい。とりあえず声をかける。
「間一髪ってとこだったみたいね。無事でよかった」
「ありがとう。いまりちゃん、ねえ、ところでひみかさんて知り合いなんだよね」
望月神社と旧村長である向井家は近い為家族ぐるみの付き合い。勿論、いまりとあさかも古い付き合いだ。
「うん。まあ、自慢の大親友で幼馴染だよ。今日だって私の所へ遊びにきてたんだから」
「そ、そうなんだ。じゃあ、あゆみちゃんと三人で仲良しなんだね」
「あゆみちゃん? へ~、あんたあいつのことあゆみちゃん呼んでんだ」
歳はあゆみの方が上の筈だが、相変わらず舐められやすい……もとい、どの年代にも親しまれやすい性質なのだな、わが従兄弟は。
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