百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

山井縫

文字の大きさ
36 / 40
大蛇の石を追え

1

しおりを挟む
 その日の夜、あゆみは住人が揃う中で昼の出来事を話した。
 
「大蛇の石か、アタシたちがここに来る前の事だね。でも、聞いたことがあるよ」
 メアリーは顎に手をやり自分の脳みその中から遠い記憶を呼び覚ますような顔をする。

「しっかし、正敏も相変わらずね~。ここぞって時にぎっくり腰なんて」
 あきなが呆れるような顔をしていった。

 望月正敏とその弟である敦教、金鞠須磨子は幼馴染だ。
 敦教と須磨子は同い年。正敏はそれよりいくつか年上。
 最終的には敦教が養子に入る形で須磨子と結婚したが、望月兄弟がまだ子供の頃はよく連れだって百鬼夜荘へ遊びに来ていた。故に住人は正敏の事を昔から知っている。
「あらあら。お義兄さん。昔っからそそっかしい所があったのよね」
 のんきな顔で頬に手をあてながら須磨子はいう。

「人一人さらわれる所だったんでしょ。助かって本当に良かったよね」
 そして、あきなは更に辛辣な言葉で言い募る。

「おじさんは相当へこんでたみたいだよ」
 あの後、夕方過ぎ頃までひみかはいまりの部屋に居た。
 帰る時に正敏に挨拶をしようとしたが、人に見せられる状態ではないとのことで直接会うことはできなかった。

「あらあら。珍しいわね、昔っからちょっと失敗しても、すぐにケロッとしてるイメージだけど」
 須磨子にとって、子供の頃から正敏は明るく楽しいでもちょっとドジなお兄さんという感じだ。その彼が落ち込んでいる様が想像できにくいのだろう。

「いやいや、そりゃそうでしょ。そもそも、3つの石も一つに戻っちゃったわけだし」
 対してあきなはキツイ口調で続ける。彼女は正直チャラけた正敏のことをあまり好いていない。

 すると更に続けて須磨子は口を開き、
「…………ヘビの石が元に戻ったのですね」と言う。
「そうだよ。まずは、石がどこへ行ったのか、探さな……」
 あゆみは母の言葉に普通に返しそうになったが途中で違和感に気づく。
「あなたにそれを強いるのは心苦しいのですが、仕方ありません。石の再封印を頼みます」
 その言葉は母の口から放たれたものだが口調がいつもと違う。

「ふむ、多津乃か。久しいな。」
 対面に座っていた紺のスリーピースを着た男が黒縁メガネをクイッと上げて言う。
 見た目は三十代だが、その正体は天狗の大長老白倉陣八。
 あゆみはその言葉を聞いて驚きの声を上げた。
「ば、婆ちゃん? 」

 婆ちゃんとは、彼の祖母金鞠多津乃の事だ。
 そして母の金鞠須磨子は霊媒体質である。
 多津乃は須磨子の身体を借りて現世にもどってきたらしい。
「ええ。そうです。多津乃ですよ。みんな元気そうでなによりですね」
 それを聞いた他の面子も各々が口々に声をかける。
「旧交を温めたいところですが。あまり時間をとることはできません。須磨子の身体にも負担をかけてしまうしね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...