百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

山井縫

文字の大きさ
39 / 40
大蛇の石を追え

しおりを挟む
あくる日、あゆみとひみかは沼のほとりへやってきていた。
時刻は午前9:00過ぎ頃。
天気はいわゆる花曇りだ。
一日雨の予想はなく、湿度も低い。
外を動くには都合が良い気候と言えるだろう。

既に現地には約束していたイノリに加え、

「やっほ~。あゆみちゃ~ん。ひみかさ~ん」
隣にはにっこにこ笑顔であさかが待っていた。

「やあ、あさかちゃん。待ったかな? ごめんね」
笑顔近づく彼女にあさかも身を使づけていく。

「いえいえ、私こそなんだか勝手について来ちゃってごめんなさい」

「まあ構わないよ。当事者と言えば当事者だしね」
あゆみは二人の様をみて微妙な顔をしそうになるのを堪えながら笑顔を作った。

「でも、昨日は随分危ない目にあってるんだ。十分気を付けて欲しいな、心配だよ」
言ってひみかは近くに迫ったあさかを見つめる。
「きゃー、心配してくれるんですか? ありがとうございます。私も心配になってきちゃいました。だからー、今日は傍にいてもいいですか?」

「う、うん。いいよ、さあ、おいで」
言って、ひみかは手を伸ばす。後ろには満開の桜が咲いていた。思わず見惚れてしまいそうになる光景だった。
「は、はあい」
あさかも遠慮会釈なく伸ばした腕を絡み取った。
「そういえば、昨日と髪型変えたんだね。とても似合ってるよ」
昨日は前髪ぱっつんの姫カットだったが、髪をあげてサイドに編み込んでいた。
「あ、気づいてくれたんですか。何だか早く起きちゃったので、ちょっといじってみたんんです。普段あまりやってないんで、ちゃんとできてるか心配なんですけど」
「大丈夫大丈夫、うん。とっても上手に出来てると思うな。今日の服装にも良く似合ってて可愛いよ」
彼女の今日の服装は真ん中にフレアボウタイ付きのブラウスに黒のショートパンツといういで立ちだった。
「ええっ。そ、それって。ど、どっちの意味だろ。ファ、ファッション。髪型。それとっも……」
「勿論全部さ。今日のあさかちゃんはパーフェクトに可愛いよ」
「きゃー、きゃー。嬉しい~」
他の男が言ったら空々しいお世辞にしか聞こえないかもしれない。同性同士、ひみかだからこそ通じるのかもしれない。

 そんな盛り上がる女子二人を遠目から見ながら、男子二人の間には微妙な空気が流れていた。
 あゆみは相変わらずの女装姿だ。が、あちこちで歩く可能性のあるので巫女装束目立ち過ぎるので控えた。今日は白のブラウスとダブルボタンのジャンパースカートという出で立ち。
「あ、あゆみ兄ちゃんも、似合ってるっすよ」
「あ、ははははは。そ、そう? 変じゃないかな? 」
あゆみはスカートのすそを翻して回って見せる。
「全然大丈夫っす。か、可愛いっす」
「ほ、本当? イッくんに言われるのならお世辞でも嬉しいかも」
女子二人のきらびやかなやり取りとは別に男子二人のやり取りは慎ましやかで微笑ましい。
「と、兎に角。始めよっか。ちょっと待っててくれる? 」
「はいっす」
尚もいちゃつく女子二人はとりあえず放っておき、祠の扉を開けるとあゆみは中に剛霊杖を横に置く。
「剛霊杖。大蛇の石の所在を教え給え」
力を込めるとピカッと光を放ちそれが沼へと届いて反射した。
「あ、なにあれ? 」
あさかが驚きの声を上げるのでそちらに目をやると沼に何かの映像が浮かび上がったのが見える。
「あれは、海だな」
それはどこかの海岸沿い。よくよく見ると大きな建物が一緒にうつっておりその横腹にイルカの絵が描かれているのが分かる。
「水族館が見えるってことは」
「海浜公園のようっすね」
それはここから歩いて15分くらいのところにある市の海浜公園だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...