縊れ憑きの部屋 百鬼夜荘(闇)

山井縫

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【お祓い】のその先に

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「い、意地悪をしたつもりはないのだが……」
それまで落ち着きながらも流暢に話していた陣八が初めて言葉を濁した。

「この子の事を想って言ってくださってたんですよね。ありがとうございます。でも、
人はそう簡単に物事を割り切れる物ではないのです」

どうも陣八はあゆみを本気でフォローしようとしていたらしい。
お祓いに失敗した訳ではない。
するべきことはしたのだから後の事は気に病むなと伝えたかったのだ。
事実関係からすればそうなのだろう。が、

「飽くまで事の行く末までも負わなければ気が済まぬか。人の身とは業が深いな」

陣八の言葉からするとまるで田村の身を案じる事そのものが間違っている様にも聞こえる。
それは仕方ないのかもしれない。何百年と生きた天狗と人ではやはり感覚が違うのだ。

「か、母さん。ぼ、僕はどうしたら……」

「あゆみ。そもそもあなたが勝手に請け負ってその結果起こった事よ」

普段のおっとりとした物とは明らかに違う厳しい口調。

そんな母の言葉に彼は力なく返事をする。

「う、うん。それはわかってるよ」

修二の強引な誘いがあったことは事実だがやると決めたのは自分なのだ。

「その上で陣八様がおっしゃったとおり、果たすべきことはした。そう考えることもできるわ」

「うん。それもわかってるつもりだけど」

「でも、あなたは自分で更にその先の責を負うと決めたのよね。ならば自分で考えるべきじゃないかしら?」

「…………」

母に次々言い募られて遂には言葉を失ってします。と、

「……なーんて、いうつもりはないけれど~」
須磨子はトーンを突然変えた。

「え、と。か、かあさん?」

あゆみが余りの豹変ぶりにあっけにとられていると、母はこう続けた。

「一言でもいいから。相談してほしかったわね。それがちょっと寂しいかな」

そうだ、今回の事は余りにも彼が一人で負うには大きすぎた。初めから相談しておくべきだったのだ。

「うん。ごめん、今度からは必ずそうするよ」

「そうしてちょうだい。この家業はね、一筋縄でいかないことがほとんどよ。私はそこからほとんど身を引いてしまった。だから、本来は私がやらなきゃならない事だったのかもしれない」

霊媒、霊能は本来人の五感以上を研ぎ澄まして発現する。身体が弱い須磨子にとってそれは余りにも大きな負担だった。故にそこからは退いたのだ。

「僕は母さんの変わりになれたらと想った。でも、全然なってないよね。本当は母さんがやってたら上手く行ってたのかもしれないのに」

悄然として言うあゆみに、母は力強く言った。

「違うわ。そんな事を言いたいんじゃないの。理由がどうあれ、困っている人を助けようと想ったことは間違ってないと想うわ。その上で起きたこの結果。だから、この起きた結果を私も負うといってるの。あなたと一緒にね」

「スマちゃんだけに負わせないさ」

「勿論、私達も手助けするわよ。アンタも他人事みたいにみてるんじゃないわよ」

「わ、分かってるよ。何にしても山口の旦那がそろそろ来る筈だ、説明はしなきゃならないからね」

言っている所へピンポーンとインターホンが鳴った。

時間は深夜2時、普通なら尋ねる者はいない。

「おう、来たようだな」

修二は言うと玄関先まで迎えに行き、すぐに山口を伴って現れる。

山口はこの深夜の時間に大勢、人がいる事と、女装をしていないあゆみの姿に驚いていた。が、挨拶もそこそこに、あゆみが事情を全て説明する。

「そういう事だったのですか」

「はい。僕の力が未熟でした」

「ま、まあでもね。山口さん。依頼内容はあの部屋お祓いしてくれって話でしたよね。だから、依頼は無事遂行したってことで納得してもらえませんかね」

修二として見ればお祓い自体は無事行われたと認めさせなければ報酬が貰えない。
予定では月末に振り込まれる予定になっていた。

「はい、勿論。それに異存はありません」

「へ? あ、そっすか。それでいいのね。へへへ話が早くて助かるぜ」

修二は山口がに文句をいわれると構えていたらしくあっさりと認められて拍子抜けの様子だった。

それを後目に山口はあゆみに対して言った。

「あの部屋に関わって以来、私は様々な事をしりました。その上で想います。やはり、あの部屋いや土地はおかしい。不思議な力が働いているとしか思えません。そして、あゆみさん。あの部屋からそのモノを追い出してくださった。ありがとうございます」

「いえ、でも……田村さんが大変なことになってるんですよね」

あゆみは言いにくい事ながらも口にせざるを無い言葉を放つ。

「はい。その事も含めてお願いがあります」

「お願いというと?」

尋ねるあゆみに山口は真剣な顔を向けて言った。

「首吊りの呪いを解いてください。お願いします」
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