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序章 狂宴
惨劇の始まり
しおりを挟む此の世には、決して開けてはならない禁忌の箱がある。
それを開けた者は、一度だけはどんな願いも叶えられるが、その代償に全てを失い、未来永劫苦しみ続ける。
刹那の快楽と、永久の苦痛。
最期に願うのは、どちらの夢か。
希望か、絶望か――。
―*―*―*―
倭陵大陸北方、女神嫦娥が使わし四神獣がひとつ、玄武が守りし黒陵国――。
険しい山に囲まれたこの国にある、玄武殿と名付けられた黒い甍の大きな屋敷には、玄武の心を伝える国主たる玄武の祠官とその家族が住み、彼らは玄武の力を顕現できる最高武官たる武神将に堅固に護られていた。
その日、星ひとつ見えぬ漆黒の夜空には、真紅に滲んだ丸い月が浮かんでいた。
凶兆を告げる不吉な月影は、玄武殿内の紫宸殿と呼ばれる祠官が祈りを捧げる中枢で繰り広げられた、惨憺たる悲劇の肖像を淡く照らし出す。
床に流れ広がるのは、月が滴を垂らしたような真紅色――。
無残に投げ捨てられているのは、胸に穴を開けた玄武の祠官だった。
その骸の横では半裸の少女が、金色に輝く長い髪を持つ男に、背後から蹂躙されている。
少女は、破瓜の血の滑りだけで容赦なく胎内を穿たれながら、諦観したように目を伏せ、ただひたすら痛みだけを与える、この行為の終焉を願っていた。
金色の男が最後の猛りを響かせ、少女の目から一筋の涙が頬に伝い落ちた時、白濁の欲の残滓に汚辱された少女の身体は、真紅の海の中に崩れ落ちていく。
「お父様……」
少女は弱々しく這いながら、隣にある冷たくなった骸に手を伸ばし、そっと胸に抱きしめながら、僅かにぎこちなく微笑む。
「大好きなお父様……。あたしも、すぐに参ります……」
少女は、頭に挿していた簪を引き抜き、喉元に突き刺そうとしたが、少女の前に立っていた銀の男が、簪ごと彼女の手を上から足で踏みつけられ、動きを封じられてしまう。
そして乱暴に少女の髪を鷲掴み、
「死ねぬ呪いをかけてやる。苦しみ続けろ、永遠に」
憎悪の籠もった呪詛をかけた。
その時――
「ああああああああ――っ!!」
すべてを黙って見届けることを強いられていた、漆黒色の髪を持つ男が、呪縛を破って大きく吼えた。
左耳からぶら下がった白い牙が、青白く発光する。
同時にその光は刃となって、銀色の男の背中を切り裂いた。
その肌に刻まれていたのは烙印――。
「姫様ああああああああ!!」
激情に猛る漆黒の男の目からは、真紅の涙が流れていた。
倭陵暦四九八年。
最強の防護を誇っていた黒陵、堕つ――。
*―――――*★*―――――*
我らは星見。
倭陵の過去と未来を視る力を持つ特殊な一族の末裔なりて、女神嫦娥の命のもと、汝ら倭陵の民に警告を与える者なり。
赤き満月、其は倭陵四神獣の封印破れし前兆なり。
魔に輝けし光を持つ者によりて、倭陵暗黒の時代に入る。
彼の者、我が封せし禁断の小箱を開けんと汝ら供犠にし、四祠官が守りし鍵で邪なる願いを叶えようとしたり。
金銀、其は魔に穢れし虚飾の彩。
忌みし光を纏う者達に、咎の烙印を。
赤き月が満つ前に、彼の者達の一掃を。
魔に輝けし者、倭陵を滅ぼす悪とならん。
*―――――*★*―――――*
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