僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

文字の大きさ
43 / 165

42.

しおりを挟む
「ところで、態々わざわざ貴方がここに現れた本当の理由は何です?」

アヤさんが不意に冷ややかな声音こわねでクィーリャ様に問うた。
クィーリャ様はおもむろに煙管キセルを咥え、溜め息交じりの煙を吐き出した。

「お前さん達の喧嘩と龍鱗バラ撒きの件で…と言うのは通じんのじゃろうな。ふむ…」
「勿論です。で?」
「ここでは言えん。人目もある事じゃし誰に聞かれるとも知れぬ。2階の儂の部屋でじっくり話を…」
「お断りです」
「じゃろうな。なら命じてでも、言いたいところじゃが…」
「それなら尚の事お断りですよクィーリャ様。いや、ギルドマスター…」

ぎ、ギルドマスタぁ!?
クィーリャ様ってギルドマスターだったのか…
ここで、このギルドで一番偉い人だったなんて!

「探し物が見つかった以上、この『イーリア』にこだわる理由も無くなったという訳じゃな」

クィーリャ様は深く肩で息を吐くと、腰まで伸びた髪を気怠げにき上げた。

「その通りです。このギルドに通い詰めたのも冒険者になって強くなったのも、全てはS級危険区域である『シンラの森』の情報が欲しかったからに過ぎません。命令を聞かなければSランクカードを取り上げて冒険者としての資格を剥奪はくだつすると言われても、もう私には痛くも痒くも無いんですよ。むしろこの国に拘る理由すらも無い訳ですからね」
「お前さん程の男を他国へやる訳にはいかぬ。が、最早もはや儂には何の強制力も無いという訳じゃな。ならばイツキに…」

急に名を呼ばれて、僕は思わずアヤさんの背中にしがみ付いた。
と、アヤさんから薄っすらと青いオーラが揺らめき立った。

「この子にほんの些細ささいな事だろうと何か為さるおつもりなら…それなりの覚悟をお決め下さいクィーリャ様。私には手段を選ぶ気が毛頭ないですから」

気が付けば、ギルド内は夕方の賑わしい時間帯を迎えようとしていた筈だったというのに、誰一人として口を開く事も出来ずにシンと静まり返っていた。
皆一様に青ざめ、固唾を飲んで僕達の方を見詰めている。

「馬鹿者が!その殺気混じりの威圧を解かぬか!一般人もおるのじゃぞ!!」

クィーリャ様に睨み付けられるも、アヤさんは眉一つ動かさずに冷たい眼差しのまま、口角を端を僅かに上げてみせた。

「それが?
こんなモノ、私からほんの少し漏れ出た程度の殺意でしかありませんよ。
大した事はないでしょう?威圧ですらありませんし」

イアラさんは引きった顔で何故か沈黙を続けていたけれど、僕は2人の会話が怖くなってきて思わずアヤさんの服を引いて小さく名前を呼んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...