僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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……いい匂い?

言われた通り僕は顔を上げ、意識して匂いを嗅いでみた。

すると、寧ろ今まで気付かなかった事の方が驚きなくらい、美味しそうな匂いが店内には充満していて、僕は思わずスンスンと鼻を鳴らしてしまった。

「ね?いい匂いでしょう?」

魚介類の焼けた芳ばしい香りに、トマトソースの爽やかな香り、ニンニクなんかのスパイシーな香りとかも交じって…
とにかく色んな美味しそうな匂いが店内いっぱいに広がっていた。

残念ながら僕は料理の事なんて良く知らないから、その他の複雑な香りについてはサッパリ分からなかったんだけど、食欲をそそるそれらの匂いに、僕は小さくお腹を鳴らしてしまい、赤くなって俯いた。

「お腹空いた?取り敢えず、私達が今食べる分だけ先に出して貰っちゃおうか?実は余分にたくさん作って貰って、出来立てを無限収納アイテムボックスに仕舞う手筈になってるんだけどね」

アヤさんがそう言いながらナージャさん達を手招きして呼び寄せた。

「悪いがミケに食事を頼むと言ってきてくれないか?仕舞う分は後回しで構わないからと」
「「分かりました」」

二人が声をハモらせてお辞儀をしてから、厨房へと駆けて行く背中を見送って、僕達は店内で一番大きなテーブルの席に着くと、二人横並びで椅子に座った。
今、テーブルを挟んで向かい合わせで座るのは気まずかったから、僕はアヤさんのさり気ない心遣いに感謝しつつ、深々と頭を下げた。

「どうしたの?」
「あの………
聞かないんですか?さっき、僕が…その……」
「話したい?」
「……………いいえ」
「じゃあ無理には聞かないよ。教えてくれるのなら是非にも聞きたいし、知りたいけど。でもそうじゃないのならイツキが話せる時で、話してもいいって思えた時でいいよ」

アヤさんは右手で僕の頭をポンポンと優しく叩いてからそう言うと、トレーに料理をたくさんの乗せて厨房から出て来たミケーリュウスさんに視線を向けた。

「お待たせ致しましたニャ。まずは前菜からお出ししますニャよ。アヤト様にはこちらの二つ以外の料理を無限収納アイテムボックスに仕舞っていって欲しいのですニャ」
「ありがとう。同じ料理を六つずつは流石に大変だったと思うけど、思ったよりもずっと早くて助かったよ。無茶を言ってすまなかったな、ミケ」
「とんでもございませんニャ。ささ、イツキ様はお食事を始めて下さいですニャ」

ミケーリュウスさんは目を細めて笑顔でそう言うと、僕の目の前に海老とか野菜とかが入った飴色のゼリーみたいな物が乗った皿を置いてくれた。

ーー美味しそう。しかもカラフルで綺麗だ…

僕はチラリとアヤさんを見ると、余分に乗せてあったトレーの料理はとっくに仕舞い終わっていて、もう食べる気満々のアヤさんがフォークを握り締めてスタンバイしていた。

は、早ッ!
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