僕、勇者サマの養い子になりました

髙城

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そう…言われて、
僕はこぼれ落ちそうなほど大きく目を見開いて驚き、絶句してしまった。

まさかアヤさんが僕に気付いてたなんて…
何となく店内で目が合ったような気はしてたんだけど、気のせいじゃなかったんだ!

「学ラン着てなかったら小学生の三・四年くらいにしか見えなかったからね、最初見かけた時は思わず四度見しちゃったもんだよ…」

二度見どころか、四度見ですか。
そうですか…
そこまでですか……

僕はアヤさんからティースプーンを受け取り、砂糖を三杯も入れてから乱暴に掻き混ぜて半分飲むと、ミルクピッチャーの中身を全部ぶち込んで更に掻き混ぜた。

「あれ?イツキなんか不機嫌になってない?怒ってるの?」

怒ってません!

「いや、怒ってるよね?」

怒ってませんよ!
小さな男の子とか、小学生に見えたとか、全く気にしたりしてませんし。
寧ろ言われ慣れてましたし。
別に二度見だろうが、三度見だろうが、四度見だろうが…

「ゴメン!本当にゴメンて!だから怒らないで?だってイツキがちっちゃくて可愛かったんだもん仕方ないじゃないか」

全く反省してない感じで、アヤさんがにぱっと笑うと、僕は鼻から大きく息を吐いて眉間に皺を寄せた。

「あ、こら、そんなトコに皺寄せたりしないで!癖になって皺になったりしたらどうするの!」

慌ててアヤさんが僕の眉間を揉み揉みマッサージし始めると、僕は怒ってるのか拗ねてるのか分からない複雑なこの気持ちを持続させる事が出来なくなって溜め息を吐いた。

そのままアヤさんに体重を預けるようにして身体の力を抜くと、右腕で僕を抱き寄せて背中に覆い被さるようにしてきたアヤさんの右頬に左頬をくっ付ける。

こういう時、アヤさんなら絶対に黙って頭を撫でてくれる筈だと無意識に期待していると、アヤさんは零したりしないよう僕の手からティーカップを取り上げてサイドテーブルに置き、僕を抱き寄せて髪を梳くようにして頭を撫でてくれた。

満腹で、アヤさんの腕の中で、温かくて、安心で、気持ち良くて…

僕は目を閉じてウットリぼんやりしていると、アヤさんが僕を右腕に座らせてゆっくりとソファーから立ち上がった。

「お待たせ致しました。お部屋のご用意が整いましたのでご案内致します」
「いや、案内はいい。部屋は分かっているし、急に来て迷惑を掛けたのだから、ゼアラは宿を閉める為の作業に戻ってやってくれ」
「承知致しました。お部屋のお風呂はすぐ入れるようにしてございますので、ごゆっくりとお寛ぎ下さいませ。それではわたくしはこれにて失礼させて頂きます。おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」

部屋の鍵を受け取り、勝手知ったるといった感じで歩き出したアヤさんに女将が深々と頭を下げると、アヤさんはそれを一瞥いちべつしてから宿の最上部奥へと足を進めた。
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