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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
第二十五話 『バケモノとの遭遇』-慎吾side-
しおりを挟む当時は神の使いである狛犬を視たいと言う気持ちが強くて、毎日時間を見つけては神社周辺で狛犬探しをしていた。
でも、いくら探し回っても狛犬の姿を見つける事は出来なかった。
そして少しずつ成長していった俺は、いつの日か狛犬を探す事をやめてしまった。
狛犬探しをやめてからは、次第に狛犬や神の使いの話も忘れてしまっていた。
「なんで今まで忘れていたんだろう…」
俺がその先代・黒部尊とやらの血を濃く受け継いでいるのかは分からない。
だけど、鳥居の前にいた子犬の姿は、昔父さんに聞いた話の中の神の使いである狛犬の姿と特徴が一致していた。
銀色の瞳に、赤と青の模様。
頭にある小さな角。
そして、はっきりと人間の言葉を話す事が出来ていた。
父さんに見せてもらった書物に描かれた狛犬は、もっと大きな姿をしていたようにも思えるが、それ以外は全部一緒だった。
「まさか…あの子犬が狛犬…?確かに感じ的には、裕也に憑いている龍神様に会った時と近いものはあったけど…。集中して霊力を感じ取る前に消えてしまったし、そんなに霊力が高い感じはしなかったというか…」
学校帰り、途中で裕也と別れて家までの道のりを歩いていた俺は、後ろから物凄く嫌な気配を感じて足を止めた。
「――っ!!」
――いや、足を止めたんじゃない。後ろにいる“何か”に、無理矢理体の動きを封じられたのだ。
(…この、感じ…ッ!ヤバイ…ッ!!)
憎悪に満ち溢れた禍々しい気配を背後から感じ、体中の鳥肌が止まらなくなってしまった。
ヤバイなんていう次元じゃない。
少しでも動いたら、呑み込まれそうになってしまう。
(体中の鳥肌が止まらない…っ!なんだ、これ…ッ)
今までこの世のモノではない存在なんて沢山見て来た。
幽霊や悪霊、妖怪…。悪いモノも良いモノも沢山見て来た。
――でも、今俺の後ろにいる“モノ”の様な、本能で危ないと感じるモノと遭った事はなかった。
脳内が警報を鳴らしているような気がした。
背後からは、息をするのもギリギリなほど、今まで遭った奴らとは比べ物にならない霊力と怨念が伝わって来る。
(やばい…ッ!やばいやばいやばい…ッ体が動かない…ッ!)
(一体どうしたらいい?落ち着け…落ち着いて考えるんだ…ッ!こういう時はどうしたらいい?)
(俺の体の動きを封じて狙って来たって言う事は、最初から俺が狙いなのかもしれない…っ!でもどうしてだ?俺が霊感があって幽霊を視る事が出来るからか?それとも何か他に理由が…ッ)
(くそ…ッ!動け俺の足…!頼むから動いてくれ…ッ!)
(早くこの場所から逃げないと…ッ!すぐに逃げないと絶対にやばい…ッ!殺される…ッ!!)
ふと、真後ろで気配がした。
「ッ!!」
背後にいる何かは、俺の背中にぴったりと付くように立っている事が分かる。
禍々しい憎悪の念と、恐ろしい霊力で俺を取りこもうとしている事だけは感じる事が出来た。
(やばい!…やばい!!…このままじゃ本当に――ッ)
≪ミツケタ…オイシソウナニンゲン……ミ―――ツケタァ…≫
気味の悪い耳障りな声が、脳内に木霊するように聞こえた。
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