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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達

三十八話『雪女との遭遇』【雪女編8】

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「でもリフトを降りてすぐの所にはなにもなかったぞ?」

「うーん…おかしいな…。前に来た時とコースが変わったのか?なんだか全然違う気がする。くっそ…雪も強くなってきているし、このままだとマジで帰られなくなるかもしんねぇ…!」

「はぁ!?ふざけんなよ!帰られなくなるとか絶対嫌だ!無理!…あ、そうだ!昌、裕也と裕貴に電話しようぜ!迷って降りられなくなったことを正直に言うしかない!」
「…すっげぇ怒られそうな気はするが…それしか方法はないな。よし、電話してみよう!俺は裕貴に掛けてみる!」
「じゃあ、俺は裕也に掛ける!」

2人がほぼ同時にスマートフォンを取り出す。

「う、うそ…」

「電波がねぇ…」

「そんなぁぁ~~!」

「どうすんだよ…これじゃ本当に帰れねぇじゃん…!」

絶望したように2人が雪の上に座り込む。

強くなっていた雪は、激しい吹雪へと変わっていった。激しい風に乗って雪が素肌に直撃し、痛さと寒さで2人の顔は赤く染まり始めたその時だった。

強烈な雪を纏った風が2人の体を包み込むように吹き荒れる。


「うわ!!」
「ぐっ…!!」

昌と裕貴が一斉に目を瞑った。


「ふふふ…すごく美味しそうな人間のオトコ、見つけたわ」


冷たくて可憐な透き通る声が聞こえた。


「まだ若いのね…とても美味しそうな精気の匂いがする」


体の中から凍り付いてしまいそうな声に、閉じていた瞳をゆっくり開ける。

「だ、誰だ!?」
「えっ…誰!?」

粉吹雪を纏いながら現れたのは、丈が短い白い着物姿の女が2人。スカイブルーの髪と、美しい青い瞳に色白の肌。
まるで雪のように白くて冷たい雰囲気を持つ美女だった。

「た、助かった!あんたたち、俺たちを助けに来てくれたのか!?」

裕貴がホッとしたように、女へと近づく。

「待て裕貴!!」

女に近づくギリギリのところで昌が叫んだ。

「昌?どうした?」

「こっちに戻ってこい…」

女達の違和感に気付いた昌が、女2人を睨みながら裕貴に言う。


「はぁ?昌…お前なに言ってんだ?せっかく助けに来てくれたのに。きっと俺達が帰ってこないのを心配した裕也と慎吾が助けを寄越してくれたんだ!」
「バカ!そんな訳ないだろ!そいつらの格好を見ろ!」

「…へ?」

「真冬の季節で、こんなに猛吹雪の中で出来る格好じゃないだろ!!もしかしたら…この山に出るって言われている雪女かもしれない!!」

女の姿を見てようやく気付いた裕貴が、顔を真っ青にして固まった。

「え……あ…っ!」

「ふふふ」

雪女の1人が妖艶な笑みを浮かべながら裕貴に近づいた。
色白の手が伸ばされ、真っ青な表情で動けないでいる裕貴の頬に雪女の手が触れる。

「そんなに怯えないで?可愛い人間ねぇ」

途端に雪女が触れた頬から裕貴の体が凍り付いた。

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