やがて一つになる君へ

秋月。

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そしてひとつになる君と。

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花火大会が終わり、屋敷に戻っている。


拓斗:彼女の部屋に入り、彼女をベッドに寝かせた。

拓斗:菫が言っていた本がテーブルにこれ見よがしに置かれている。

拓斗:多分、これで間違いないだろう。

拓斗:1冊の児童書。

拓斗:「あの日、紫苑が持ってた本だ」

拓斗:朧気な記憶だけど、間違いないだろう。

拓斗:『お花たちの大冒険』か・・・

拓斗:謙虚で無口なスミレが、アカネ、ユズ、そしてシオンと出会い、成長していく物語・・・

拓斗:「ん?なにか挟んである」


菫:自分と同じ名前のキャラクターが出てくるこの本が、子供の頃は大好きだったみたい


拓斗:なるほど、ね。

拓斗:あの時は読んであげられなくてごめん。

拓斗:「今だったら幾らでも読んでやれるのに・・・寝てるよな」

拓斗:その時、ふと袖を引かれる。


菫:「読んで」


拓斗:「え・・・」


拓斗:彼女は間違いなく寝てる。

拓斗:喋るはずがない。

拓斗:「・・・読んでいくか。昔昔のそのまた昔、まだお花たちが喋ったりしていた頃のお話です───」


翌日。

島の港。


拓斗:彼女はまだ、ぐっすり眠っていた。

拓斗:船の時間もあるし、彼女のことは心配だが帰るしかない。

拓斗:近くの医者に伝えてあるし、大丈夫だろう。

拓斗:「いろいろあったけど、二週間楽しかったよ、じゃあな」

拓斗:そして船が出港する。

拓斗:その時、一人の女性が遠くから駆け寄ってくる。


紫苑:「おにーーーさーーーん!!」


拓斗:「柚子・・・?」


紫苑:「なんで黙って帰っちゃうのよ!!」


拓斗:「君がー、目を覚まさないからー!!」


紫苑:「馬鹿なんじゃないのー!?」


拓斗:「仕方ないだろー!!」


紫苑:「紫苑の花言葉!!アンタに送るから!!」


拓斗:「今のは、茜・・・?」


紫苑:「絶対に、調べてね!!」


拓斗:「分かったー!!二週間、ありがとうー!!」 


拓斗:これはやがて一つになる君と過した、そして、ようやく一つになった君のひと夏の物語だ。


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