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第二章
【十三話】報復と螺旋。(3)
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屋敷を出ると、中央街の方から煙が上がっていた。
「まずいわね」
爆音も聞こえてくる。
「街中で大砲を使っているようですね」
「そうみたいね。急ぎましょう」
煙を目印に現場へ急行すると、状況は悲惨だった。
崩れた家。
その瓦礫に引火し、燃え盛る。
パニック状態の人々を、憲兵が懸命に案内している。
そんな光景を見て、改めて実感した。
俺たちがやっているのは、狩りじゃない。戦いだ。
「いたぞ。あっちだ」
リーフさんが指さす方を見ると、
ヒト型の魔物と思われるモノが暴れている。
大柄で、剣を持っている。
「よし、全員つかまれ!」
瞬間移動で魔物のもとへ。
何人もの騎士が応戦——と言うには、あまりに一方的だ。
横目で見ただけでもわかる。
もう、お姉ちゃんの能力では「戻せない」。
《またムシケラが増えたか》
「こいつ……っ」
ここまで流ちょうに話す魔物がいたとは。
《まあいい。ニンゲンは皆殺しだ!》
剣を構え、こちらへ向かってくる。
各自散開し、敵を観察する。
身長は二メートルほど。
大きな魔物を見慣れてしまったせいで、小さく感じるが、
実際、自分より大きい敵と言うのは厄介だ。
右手に持った剣は、一瞬、剣なのか迷わせる見た目をしている。
……肉の中に、突然無機的な刃が見られる。
この世のものとは思えない、無気味なデザインだ。
《まずは、貴様からだ!》
全員の顔を見た挙句、俺に攻撃をしてきた。
——右!
これを冷静に回避。かなり速いが、
過去に二体、これより速い魔物が居た事を思えば……。
「そこ!」
助走をつけていた魔物は、その勢いで前のめり。
攻撃を当てるのはたやすい。すぐに剣を振り、喉元に傷をつけた。
《ほう、やるな》
「くそ、再生できるのかよ……」
俺の攻撃による傷は、みるみるうちに塞がっていく。
《死ね!》
崩れた体勢のまま、剣を振ってきた。地面から抜くはずだと予想していたが、ハズレ。
地面をえぐりながら、力ずくで俺へ殺意を振りまく。回避は間に合わない。
なら、やることは一つだ。
——弾き返す!
《ぐおぉっ⁈》
万全な体勢でなかった魔物は、案の定バランスを崩す。
「はあっ‼」
その隙を見たアイシャが接近し、背中に連撃を浴びせる。
《ええい、鬱陶しい!》
しかし、あまりダメージは見られない。
ゆっくりと立ち上がった魔物は、剣を水平に振ってアイシャを払おうとする。
体を回転し、俺の方に背中が向く。
——傷が浅い。
堅い筋肉で覆われた体は、剣で斬っても、引っ掻き傷程度にしかならない。
今見えている景色は、あれだけの連撃を食らった背中とは思えない。
それに、さっきと同じように、傷が癒えていく。
「そんな攻撃!」
敵の攻撃を潜り抜け、アイシャがこちら側へ。
一瞬目を合わせ、彼女の意図を汲んだ。
「「そこ!」」
示し合わせたように、同時に膝裏から大腿の辺りに剣を刺す。
これは「予言」で右腕たちと戦って学んだことだが、
ヒト型の魔物は、あらゆる種族の中で、一番と言っていいほど弱点が分かりやすい。
理由は簡単で、俺たちがヒトだからだ。
自分が攻められたくない場所、斬られたくない場所、それ以上押し込まれたくない限度。
骨格が同じである以上、そんな弱点は手に取るようにわかる。
今回の敵は、ほぼ全身に硬い筋肉を持っている。
俺やアイシャの攻撃では、浅い傷をつけるので精いっぱい。
なら、一瞬でも敵の動きを制限することに徹するべきだ。
《ぐっ、小癪な!》
敵が膝から崩れた。チャンスだ。
「覚悟!」
エリナさんが走りながら剣に熱をこめる。いくら硬い筋肉でも……!
「はあっ!」
《ぐあぁ⁈》
光剣は筋肉をものともせず、魔物の首を切り落とした。
次いで右腕、胴体と、ダメージを与えていく。
魔物はたまらず、地面へ倒れた。
「ふぅ……」
剣が光を失い、元の姿に。
俺とアイシャも剣を抜き、少し離れた。
「さすがに、ダメージは入ったよね」
「……そう思いたいな」
これで勝利……なんてことは無いだろうな。
《見事だ。》
……やっぱり。
魔物は、よろよろと立ち上がった。
《ふんっ!》
赤黒い液体を飛び散らしながら、右腕が再生。
胴体の傷も、膝裏の傷も、無かったことになっていく。
再生能力の存在は知っていたが……これは、なかなか精神に来るな。
インゼル島の戦いを思い出す。
落ちた頭を拾い、首の断面に乗せると、全て元通りに。
《確信したぞ。フェラライ様やツォルン様を殺したのは、お前たちだな。》
「……?」
首をかしげるアイシャ。しかし、俺、リーフさん、エリナさんは理解した。
フェラライ様やツォルン様ってのは、右腕たちの事だろう。
氷山で戦った奴が現れた時、確かに言った。
「フェラライ殺した」と。
《命令はお前たちを殺すこと。ふん、探す手間が省けたわ!》
数秒、眉と口角を上げたかと思うと、大きく息を吸い始めた。
「な、何をする気だ……?」
「分かんないけど、私たちには不都合だろうね」
《……くらえっ!》
吸った息を、今度は吐く。
しかしそれは空気ではなく——
「ほ、炎⁈」
二メートル程の高さから放たれる炎。
以降、懐にもぐるのは至難の業。
そう思ったが、一つ、とっておきの策があった。
「それがどうした⁉」
《……⁈》
リーフさんの瞬間移動だ。
十メートル以内の任意点に移動できるリーフさんなら、炎の幕は関係ない。
「くらいやがれっ!」
魔物の腹を捉えた切先は、彼の力をもって強引に押し込まれ——
「はあああああっ‼」
——パリンッと、ガラスの割れたような音を鳴らす。
《なん……だと……ぉ⁈》
炎が途絶えた。
コアを破壊したリーフさんは、一度下がった。
「やったわね」
「ああ。」
「ユウ先輩、アイシャ先輩!お怪我無いですか⁈」
「ああ、俺は大丈夫。」
「私も、大丈夫だよ」
「ノエルも……元気そうだな」
「はい! ……でもアタシ、何もできませんでした」
「気にすることは無いさ」
「そうよ。ノエルは、かわいい笑顔で私たちを癒してくれたよ」
「えへへ、良かったです」
いつものように笑っている……ふうに見えた。
《はっはっは。まるで勝ったような雰囲気だな?》
「なに⁈」
……そんなセリフと共に、魔物が立ち上がった。
「そ、そんな!コアは破壊したはずよね?」
「ああ。手ごたえはあったし、音も聞いたはずだ」
《殺してやるぞ!》
「クソがっ!」
リーフさんが再び瞬間移動で距離を詰め——
《二度は食わぬ!》
魔物が左腕で払うような動きをする。
「なに⁈ぐあっ!」
ちょうどその位置から、リーフさんが弾き飛ばされた。
「リーフ!」
「リーフさん!」
震えた。あいつは、リーフさんの瞬間移動を見切ったのか⁈
確かに、理論上は可能だ。
なにせ、彼の能力はあくまで「移動」。
空間転位をしているわけではない。
道のりは存在する。
幸い、リーフさんが飛ばされたのはお姉ちゃんのいる方向。
すぐに治療ができる。
《ほう、治癒能力か。これは厄介だな》
——どの口が言ってやがるんだ。
斬っては再生。反撃されては治癒。そんな均衡状態がしばらく続いた。
「はぁ……はぁ……」
さすがに息切れが起こり始める。
《うむ。これなら、運よくツォルン様を破っても、不思議ではないな。》
「へっ、そりゃあどうも」
《だが、これまでだ。見よ。皆、疲れが出ている。もう勝ち目はないぞ?》
疲れているから勝てない。そんなことは無い。
今まで散々、疲労困憊のなか戦って勝ってきた。
「……?」
見よと言われたので、仲間の方を見ていると、
リーフさんとエリナさんがアイコンタクトで合図し合っていた。
「おい。誰がここまでだって?」
《なんだ、まだ戦う元気があるのか》
「なぁに、まだまだこれからだ!」
《ほう》
リーフさんが走って魔物の左側へ。
そして——
《バカめ。それはもう見切った!》
——見切られている瞬間移動。
だが今度は、弾き飛ばされることは無かった。
《っ!》
見切られていることを見切っていたリーフさんは、魔物の左腕を掴んだ。
「今だ!」
「はああっ!」
エリナさんが突っ込んだ。
《ふん、お前の力などで!》
剣は光っていない。魔物の言う通り、力勝負ではエリナさんに軍配は上がらない。
予想通り、彼女が押され気味の鍔迫り合いになった。
しかし、エリナさんは笑っていた。
「ふふっ、かかりましたね!」
《……?》
「その剣、壊させていただきます!」
そうか。剣身を支えている左手。それさえあれば熱を込められる。
エリナさんの剣が光を帯びると、魔物の無気味な剣を容易く破壊した。
《おのれ、まだそんなエネルギーが残っていたとはな!》
「私に熱を供給したのは……貴方ですよっ‼」
《ぐっ⁈》
光剣で胸を斬られ、怯む。反撃しようにも、剣は壊されている。
余裕のなさそうな魔物。よし、今のうちに背後にまわっておこう。
《今の策は、なかなか良かった。だがっ!》
リーフさんが押さえている左腕。
それを槌のような形に変異させ——
「な、何だと⁈」
「くうっ⁈」
——リーフさんごと、エリナさんを右方向へと吹っ飛ばした。そっちへ歩みだす。
——今、二人は無防備だ。
「うおおお‼」
通らないことは承知で、首元へ攻撃。やはり硬い。
「く!」
だがここで、俺は強引な攻撃に出た。
「なら!」
——反作用も返してやる!
エリナさんほどではないにしろ、刃がどんどん入り込んでいく。
《ええい、邪魔だ!》
魔物はそんな俺をものともせず、無理やり振り返った。
「なっ⁈」
《最初に死ぬのは、お前だ!》
左腕が、今度は槍に変わった。
このまま俺を突き刺すつもりだろう。
——一歩。
——もう一歩。
じわじわと後ろに下がり、突きを待つ。
《死ねぇ!》
——まだ。
——もう一歩下がり。
「今‼」
魔物の左腕がまっすぐ伸びた瞬間、俺はその突きを反射した。
その方が腕へのダメージが大きいだろうと考えたからだ。
《ぐぉ‼》
「そこよ!」
痛めた肘が治癒する前に、お姉ちゃんによる追撃が入った。
剣が抜けると、思わず右手で患部を押さえた。
数秒だが、これで両手が塞がっ——
「はあああああっ!」
「⁈」
叫び声と共に走ってきたのは、ノエルだ。
勢いそのまま、見事な跳躍力で跳びあがり、
地面と垂直に持った剣を、魔物の脳天から突き刺した——。
「まずいわね」
爆音も聞こえてくる。
「街中で大砲を使っているようですね」
「そうみたいね。急ぎましょう」
煙を目印に現場へ急行すると、状況は悲惨だった。
崩れた家。
その瓦礫に引火し、燃え盛る。
パニック状態の人々を、憲兵が懸命に案内している。
そんな光景を見て、改めて実感した。
俺たちがやっているのは、狩りじゃない。戦いだ。
「いたぞ。あっちだ」
リーフさんが指さす方を見ると、
ヒト型の魔物と思われるモノが暴れている。
大柄で、剣を持っている。
「よし、全員つかまれ!」
瞬間移動で魔物のもとへ。
何人もの騎士が応戦——と言うには、あまりに一方的だ。
横目で見ただけでもわかる。
もう、お姉ちゃんの能力では「戻せない」。
《またムシケラが増えたか》
「こいつ……っ」
ここまで流ちょうに話す魔物がいたとは。
《まあいい。ニンゲンは皆殺しだ!》
剣を構え、こちらへ向かってくる。
各自散開し、敵を観察する。
身長は二メートルほど。
大きな魔物を見慣れてしまったせいで、小さく感じるが、
実際、自分より大きい敵と言うのは厄介だ。
右手に持った剣は、一瞬、剣なのか迷わせる見た目をしている。
……肉の中に、突然無機的な刃が見られる。
この世のものとは思えない、無気味なデザインだ。
《まずは、貴様からだ!》
全員の顔を見た挙句、俺に攻撃をしてきた。
——右!
これを冷静に回避。かなり速いが、
過去に二体、これより速い魔物が居た事を思えば……。
「そこ!」
助走をつけていた魔物は、その勢いで前のめり。
攻撃を当てるのはたやすい。すぐに剣を振り、喉元に傷をつけた。
《ほう、やるな》
「くそ、再生できるのかよ……」
俺の攻撃による傷は、みるみるうちに塞がっていく。
《死ね!》
崩れた体勢のまま、剣を振ってきた。地面から抜くはずだと予想していたが、ハズレ。
地面をえぐりながら、力ずくで俺へ殺意を振りまく。回避は間に合わない。
なら、やることは一つだ。
——弾き返す!
《ぐおぉっ⁈》
万全な体勢でなかった魔物は、案の定バランスを崩す。
「はあっ‼」
その隙を見たアイシャが接近し、背中に連撃を浴びせる。
《ええい、鬱陶しい!》
しかし、あまりダメージは見られない。
ゆっくりと立ち上がった魔物は、剣を水平に振ってアイシャを払おうとする。
体を回転し、俺の方に背中が向く。
——傷が浅い。
堅い筋肉で覆われた体は、剣で斬っても、引っ掻き傷程度にしかならない。
今見えている景色は、あれだけの連撃を食らった背中とは思えない。
それに、さっきと同じように、傷が癒えていく。
「そんな攻撃!」
敵の攻撃を潜り抜け、アイシャがこちら側へ。
一瞬目を合わせ、彼女の意図を汲んだ。
「「そこ!」」
示し合わせたように、同時に膝裏から大腿の辺りに剣を刺す。
これは「予言」で右腕たちと戦って学んだことだが、
ヒト型の魔物は、あらゆる種族の中で、一番と言っていいほど弱点が分かりやすい。
理由は簡単で、俺たちがヒトだからだ。
自分が攻められたくない場所、斬られたくない場所、それ以上押し込まれたくない限度。
骨格が同じである以上、そんな弱点は手に取るようにわかる。
今回の敵は、ほぼ全身に硬い筋肉を持っている。
俺やアイシャの攻撃では、浅い傷をつけるので精いっぱい。
なら、一瞬でも敵の動きを制限することに徹するべきだ。
《ぐっ、小癪な!》
敵が膝から崩れた。チャンスだ。
「覚悟!」
エリナさんが走りながら剣に熱をこめる。いくら硬い筋肉でも……!
「はあっ!」
《ぐあぁ⁈》
光剣は筋肉をものともせず、魔物の首を切り落とした。
次いで右腕、胴体と、ダメージを与えていく。
魔物はたまらず、地面へ倒れた。
「ふぅ……」
剣が光を失い、元の姿に。
俺とアイシャも剣を抜き、少し離れた。
「さすがに、ダメージは入ったよね」
「……そう思いたいな」
これで勝利……なんてことは無いだろうな。
《見事だ。》
……やっぱり。
魔物は、よろよろと立ち上がった。
《ふんっ!》
赤黒い液体を飛び散らしながら、右腕が再生。
胴体の傷も、膝裏の傷も、無かったことになっていく。
再生能力の存在は知っていたが……これは、なかなか精神に来るな。
インゼル島の戦いを思い出す。
落ちた頭を拾い、首の断面に乗せると、全て元通りに。
《確信したぞ。フェラライ様やツォルン様を殺したのは、お前たちだな。》
「……?」
首をかしげるアイシャ。しかし、俺、リーフさん、エリナさんは理解した。
フェラライ様やツォルン様ってのは、右腕たちの事だろう。
氷山で戦った奴が現れた時、確かに言った。
「フェラライ殺した」と。
《命令はお前たちを殺すこと。ふん、探す手間が省けたわ!》
数秒、眉と口角を上げたかと思うと、大きく息を吸い始めた。
「な、何をする気だ……?」
「分かんないけど、私たちには不都合だろうね」
《……くらえっ!》
吸った息を、今度は吐く。
しかしそれは空気ではなく——
「ほ、炎⁈」
二メートル程の高さから放たれる炎。
以降、懐にもぐるのは至難の業。
そう思ったが、一つ、とっておきの策があった。
「それがどうした⁉」
《……⁈》
リーフさんの瞬間移動だ。
十メートル以内の任意点に移動できるリーフさんなら、炎の幕は関係ない。
「くらいやがれっ!」
魔物の腹を捉えた切先は、彼の力をもって強引に押し込まれ——
「はあああああっ‼」
——パリンッと、ガラスの割れたような音を鳴らす。
《なん……だと……ぉ⁈》
炎が途絶えた。
コアを破壊したリーフさんは、一度下がった。
「やったわね」
「ああ。」
「ユウ先輩、アイシャ先輩!お怪我無いですか⁈」
「ああ、俺は大丈夫。」
「私も、大丈夫だよ」
「ノエルも……元気そうだな」
「はい! ……でもアタシ、何もできませんでした」
「気にすることは無いさ」
「そうよ。ノエルは、かわいい笑顔で私たちを癒してくれたよ」
「えへへ、良かったです」
いつものように笑っている……ふうに見えた。
《はっはっは。まるで勝ったような雰囲気だな?》
「なに⁈」
……そんなセリフと共に、魔物が立ち上がった。
「そ、そんな!コアは破壊したはずよね?」
「ああ。手ごたえはあったし、音も聞いたはずだ」
《殺してやるぞ!》
「クソがっ!」
リーフさんが再び瞬間移動で距離を詰め——
《二度は食わぬ!》
魔物が左腕で払うような動きをする。
「なに⁈ぐあっ!」
ちょうどその位置から、リーフさんが弾き飛ばされた。
「リーフ!」
「リーフさん!」
震えた。あいつは、リーフさんの瞬間移動を見切ったのか⁈
確かに、理論上は可能だ。
なにせ、彼の能力はあくまで「移動」。
空間転位をしているわけではない。
道のりは存在する。
幸い、リーフさんが飛ばされたのはお姉ちゃんのいる方向。
すぐに治療ができる。
《ほう、治癒能力か。これは厄介だな》
——どの口が言ってやがるんだ。
斬っては再生。反撃されては治癒。そんな均衡状態がしばらく続いた。
「はぁ……はぁ……」
さすがに息切れが起こり始める。
《うむ。これなら、運よくツォルン様を破っても、不思議ではないな。》
「へっ、そりゃあどうも」
《だが、これまでだ。見よ。皆、疲れが出ている。もう勝ち目はないぞ?》
疲れているから勝てない。そんなことは無い。
今まで散々、疲労困憊のなか戦って勝ってきた。
「……?」
見よと言われたので、仲間の方を見ていると、
リーフさんとエリナさんがアイコンタクトで合図し合っていた。
「おい。誰がここまでだって?」
《なんだ、まだ戦う元気があるのか》
「なぁに、まだまだこれからだ!」
《ほう》
リーフさんが走って魔物の左側へ。
そして——
《バカめ。それはもう見切った!》
——見切られている瞬間移動。
だが今度は、弾き飛ばされることは無かった。
《っ!》
見切られていることを見切っていたリーフさんは、魔物の左腕を掴んだ。
「今だ!」
「はああっ!」
エリナさんが突っ込んだ。
《ふん、お前の力などで!》
剣は光っていない。魔物の言う通り、力勝負ではエリナさんに軍配は上がらない。
予想通り、彼女が押され気味の鍔迫り合いになった。
しかし、エリナさんは笑っていた。
「ふふっ、かかりましたね!」
《……?》
「その剣、壊させていただきます!」
そうか。剣身を支えている左手。それさえあれば熱を込められる。
エリナさんの剣が光を帯びると、魔物の無気味な剣を容易く破壊した。
《おのれ、まだそんなエネルギーが残っていたとはな!》
「私に熱を供給したのは……貴方ですよっ‼」
《ぐっ⁈》
光剣で胸を斬られ、怯む。反撃しようにも、剣は壊されている。
余裕のなさそうな魔物。よし、今のうちに背後にまわっておこう。
《今の策は、なかなか良かった。だがっ!》
リーフさんが押さえている左腕。
それを槌のような形に変異させ——
「な、何だと⁈」
「くうっ⁈」
——リーフさんごと、エリナさんを右方向へと吹っ飛ばした。そっちへ歩みだす。
——今、二人は無防備だ。
「うおおお‼」
通らないことは承知で、首元へ攻撃。やはり硬い。
「く!」
だがここで、俺は強引な攻撃に出た。
「なら!」
——反作用も返してやる!
エリナさんほどではないにしろ、刃がどんどん入り込んでいく。
《ええい、邪魔だ!》
魔物はそんな俺をものともせず、無理やり振り返った。
「なっ⁈」
《最初に死ぬのは、お前だ!》
左腕が、今度は槍に変わった。
このまま俺を突き刺すつもりだろう。
——一歩。
——もう一歩。
じわじわと後ろに下がり、突きを待つ。
《死ねぇ!》
——まだ。
——もう一歩下がり。
「今‼」
魔物の左腕がまっすぐ伸びた瞬間、俺はその突きを反射した。
その方が腕へのダメージが大きいだろうと考えたからだ。
《ぐぉ‼》
「そこよ!」
痛めた肘が治癒する前に、お姉ちゃんによる追撃が入った。
剣が抜けると、思わず右手で患部を押さえた。
数秒だが、これで両手が塞がっ——
「はあああああっ!」
「⁈」
叫び声と共に走ってきたのは、ノエルだ。
勢いそのまま、見事な跳躍力で跳びあがり、
地面と垂直に持った剣を、魔物の脳天から突き刺した——。
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