混血のゴブリン

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不穏

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 アモルの誕生日から1週間後。

 北の深林にある渓谷で、不気味な声音が響いていた。

「ギェ、ギェ!」
「ギャッ、ギャッ!」
「ギギッ、ギギッ!」

 3匹の、魔物と呼ばれているゴブリン達が会話じみた奇声を発していた。彼らのそばには、薪の黒炭後、崩れた簡易的なかまどがあった。アモル達が魚を焼いて食べた痕跡。

「ここか」

 低く凄みのある声音が響く。3匹のゴブリン達の背筋が伸び、声の方へ体を向けた。

 体格のある、威厳に満ちた者だった。背筋が曲がっている小柄な3匹のゴブリン達とは格が違う。だが緑色の肌は同じであった。そして、大きな口に、鋭利な歯が見え隠れする。

 彼は炭火後に近づきしゃがむと、手を伸ばし消し炭に触れた。

「1週間前後、といったところか」

 鋭い観察力と豊富な経験からなせる強者の判断力だ。
 
 彼は声を張る。

「引き続き捜索しろ。範囲を広げてな」

「「「ギャッ!!」」」

 甲高い返答とともに、3匹のゴブリン達は森へとかけていった。

「まさか、5年も森で隠れ暮らしていたとはな」

 エルフ達が勘づく前に、捕えなくては。

「俺がヒールを手に入れる絶好の機会だ。逃しはしない」

 彼は力強く拳を握った。勢いよく立ち上がり、野望に満ちた瞳で、遠くを見つめる。

「俺が、新しい王となるッ」

 覇気のある声とともに一陣の風が、彼の背中を押し通る。森全体が不気味にざわめいていた。
 そのなかで、屈強な彼にはあまり似合わない、綺麗な真珠色の鱗が一欠片ついたネックレスが、寂しげに、哀しげに揺れていた。
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