異世界転生したら美少女勇者達の教育係に任命されました。【辛い思いをしている彼女達の幸せのために全力尽くします】

おみくじ

文字の大きさ
3 / 24

別れ

しおりを挟む
 ふらふらした足取りで歩く秦野に気を配りながら、俺ら2人は日付が変わってしまった深夜の街中を歩いていた。飲み会帰りの人達でまだ賑わいが残っている。
 千堂は酔いが回り過ぎた秦野を俺に押しつけ、さっさとタクシーを拾って帰っていきやがった。
 あのくそ上司が。自分の都合だけ考えて動きやがって。うお⁉
 秦野が急に寄りかかって来やがった。酒臭い荒い息が俺の頬をなでる。そしていきなり俺のスーツの胸内ポケットに強引に手を突っ込んできた。
 なっ、何してんだこいつ⁉ はっ! まっまさかこいつ、男もイケる奴だったのか⁉ 
 秦野のイケメンフェイスが俺の顔のすぐそばにある。
 い、いかん‼ 貞操の危機‼
 バクバク鼓動を打つ俺の心臓。と急にふっと秦野は俺から離れた。手にはライターが握られている。そしていつの間にか口に加えていたタバコに火を付けた。
 はあ……、なるほど、そいうことか……って、べ、別に何にも期待なんてしてないっ! ……俺は誰に弁明をしてんだ……。って秦野あいつ⁉
 秦野は口から煙を吐きながら、まばらな群衆のなかを進んでいく。片手には手持ちタバコ。周りの人との距離に気を配らずふらふらしていやがる。
 俺は慌てて秦野に駆け寄る。

「おい秦野! まだここは人が多いからタバコは消しとけ。当たったら危ねえだろ」

 すると秦野は酔いが回ったうつろな目を俺に向ける。

「なんすか先輩、そんな子供みたいなへましませんから。……、放せよ」

 苛立った声で秦野は、俺が握っている側の手を強引に振りほどいた。さすがにガマンの限界だった。

「おい秦野! いいかげんにしやがれ! 最近お前は調子に乗り過ぎだ!」
「なんすか先輩、説教すか。そんな暇あったら俺より業績上げろよ」
「お前な! 得意げになってんじゃねえ! 客の気持ちに付け込んで高額な保険プランばっか売りつけやがって! そんなこと俺は教えてねえぞ!」
「やり方はもう俺の勝手だ! この仕事は売り上げが全てだ! あんたみたいな客重視の呑気な営業は間違ってんだよ!」
「売上のためなら何でもやって良い、ってわけじゃねぇ!」

 お互い、どちらもカッとなったのがいけなかった。

「はっ! じゃあ捨てりゃあいいんだろ!」

 秦野が手持ちタバコを後ろへ掘り投げたのだ。周りを見ずに。俺は焦った。
 
 ば、バカお前そこには!!

 でも遅かった。ブワッと何かに燃え移る音と同時に、パチンコ店の軒先、秦野のすぐ後ろにあった、のぼり旗が瞬く間に火に包まれる。
 湧き上がる周りの悲鳴。そして秦野の悲鳴。まるでヘビが這うかのように秦野のスーツに真っ赤な火が広がっていく。
 奇声を発しながら駆けだす秦野を慌てて追いかける。
 秦野のスーツにまとわりつく火に躊躇せず手を伸ばし、肩を強引に掴んだ。地面に転がる秦野。俺は脱いだ上着を鞭のように秦野の体に何度も叩きつける。そして、火は無事に消す事が出来た。

「秦野!! 大丈夫かっ!?」

 放心状態の秦野を見やる。

「せ、先輩……」
「すまん、俺のせいで……」
「あっ、い、いや。お、俺が……」
「ふむっ、大きい火傷とかはなさそうだな」 

 火がそんなに燃え広がらなかったのが幸いした。

「ははっ、大事にならなくて良かった」

 俺は安心して笑みをこぼした。すると、秦野は申し訳ない顔つきで、俺を見上げる。あははっ、そんな顔するなよ。
 なんだか懐かしい顔を見た気がした。俺が秦野の研修をしていたとき、よく見ていた純真で、素直な反省の表情。

 ……、またやり直したら良いだけだよな。秦野も、俺も。
 
「立てるか?」
 
 秦野に手を差し出した。

「あっ、は、はい」

 秦野が俺の手を、力を込めて握る。俺はそのまま引っ張り起こした。

「……、なあ秦野」
「は、はい」
「お客の、ほんとの笑顔のためにさ、また頑張りなおさないか」

 これが俺の本心だった。すると秦野は、

「先輩……、……っ!? せ、先輩ッー!!」

 な、なんだ!? 急に大声だして、あっ!

 秦野の突然の大声、そして片側の視線に眩しい光が迫っていた。1台の車が俺らに突っ込もうとしていた。そして気づいた、俺らは車道にいたということに!!

 このままじゃ2人とも車に引かれる。

 そう思ったら俺の体が勝手に動いた。秦野の手を強引に引っ張り、ハンマー投げよろしく、渾身の力でぶん投げた。
 
 バランスを崩し、勢いよく、そして運良く、歩道側に転がる秦野。

 そして、眩しい光が俺の全身を包んだ。

 その瞬間、体を貫く様な激痛が襲った。

 急に周りの景色がスローになる。ふわっと体が軽くなったような浮遊感に酔いしれながら、視線が秦野をとらえた。
 この世の物とは思えないものに出会ってしまったかのような、絶望と悲痛な面持ち。
 ははっ、ばかやろう、お前にそんな面は似合わねえっての。
 ……、お前が笑ってる顔、最後に見たかったな。
 視界の端から漆黒に包まれていく。全身には力が入らない。

 俺はもう……。

 ロウソクの火を吹き消すように、俺の意識は途切れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...