異世界転生したら美少女勇者達の教育係に任命されました。【辛い思いをしている彼女達の幸せのために全力尽くします】

おみくじ

文字の大きさ
10 / 24

異世界転生

しおりを挟む
「何で……、俺じゃないとダメなんですか?」

 純粋に、知りたかった。なぜ、女神ことアリーチェさんは、俺をえらんでくれたのか。

「えっ?」
 
 アリーチェさんは、俺を真っ直ぐに見つめていた。俺は、そのまま、話続ける。
 
「その……、俺の住んでた世界も含めて、108つの世界が存在するんですよね? そのなかで俺が選ばれるのって何か不思議で。いやまあ、色々とタイミングとかあるとは思うんですけど。それでも……、何で俺なんですか?」

 するとアリーチェさんのしょんぼりした表情が、真剣なものになっていく。

「村上様」
「は、はい」

 俺は息を飲む。アリーチェさんの小さな口がそっと開いた。

 ビイー‼‼ ビイー‼‼ ビイイイー‼‼

「「いひゃあああ⁉」」

 豪快な警報音。俺とアリーチェさんは同時に驚いた。するとアリーチェさんは、手にしていた杖を少し上に掲げる。すると警報音が鳴りやみ、

「アリーチェ! 今どこにいるの‼」

 凛とした良くとおる声。アリーチェさんはあたふたしながら話す。

「す、すみませんアリアさん! いま異世界に少しお邪魔していまして‼」

 アリアさん? ……あっ、確か、先輩女神の。

 先輩女神ことアリアさんの怒気を孕んだ声が響く。

「あなたまだ転生作業が完了していないのに何やってるの‼」
「てっ、転生者候補にですね! 色々と異世界についてご説明していました‼ あと、心にまだ迷いがあるのでその説得を今しておりまして‼」
「あなたが選んだ凡人の子? もう……、私はその子は辞めておきなさいって言ったでしょ! 異世界や勇者に怖気ついちゃったってとこでしょ。まったく、才能ある、屈強な、天才達から選んだ方が良いわよ、ってせっかくアドバイスしたのに」
「す、すみません……」

 申し訳なくしているアリーチェさん。そして俺はアリアさんにバッシングされて傷つく。だって女神様に言われていますからね……。凡人って言われた……、いやまあ否定できんけども!!
 
「もし転生が無理だったら、次は自分1人で転生作業しなさいよ。私もう手伝わないから」
「そんな⁉ アリアさん!! そ、そこはご慈悲を~!!」

 おいおい、女神がご慈悲をって言ってるよ。どういう状況だよ。

「いやなら何としてでも転生させなさい‼ それから他の仕事が山積み‼ 後10分で説得と転生を、そこで完了させること‼」
「ええええ⁉ そんなの無理ですよ⁉」
「泣き言は聞きたくないわ。強制送還(時限あり)発動! じゃあね、頑張りなさい♡」
「アリアさーーーーーーーん⁉」

 アリーチェさんの悲痛な叫びがこだました後、アナウンスみたいな音が辺りに響く。
『強制送還(時限あり)が発動されました。アリーチェ様、村上様、今から10分後に天界へ強制送還さます。繰り返します、強制送還(時限あり)が発動されました。今から10分後に天界へ強制送還さます』

 俺とアリーチェさんの体が水色の光を帯びる。

「うそ⁉ どっ、どうしよう⁉」

 あたふたしているアリーチェさん。

 なるほど、この水色の光が発動している証拠なのか。まあ俺はこのまま10分すぎるのを待っていれば……。

「む、村上様‼」
「はい⁉」

 わなわなと震えているアリーチェさん。
 すんなり無事に10分すぎなさそうな予感。そして突如怒涛の勢いでアリーチェさんが詰め寄ってくる。

「お、お願いです‼ 転生してください‼ 無理は無しです‼」
「それ説得じゃないですよねっ⁉」
「そうじゃないと、また新たな転生者を選ぶのに色々と手続きがいるんですよ⁉ それに手間もかかるし⁉ 私1人でやらないとだめなんですよ‼」
「転生しなきゃならん理由はそれ⁉ 俺じゃなくて誰でも良かっただろ⁉」
「……、そうでは……、ないですよ」
「へぇ?」

 アリーチェさんのすがるような態度は一変し、真面目な声音で俺に告げた。水晶のように純粋な瞳で、アリーチェさんは俺を見つめる。その真っ直ぐな瞳に俺は釘付けになる。アリーチェさんはゆっくりと話しだした。

「ほんとは私、屈強で、天才と呼ばれる人達のなかから、転生者を選ぼうと思っていたんです。その方達は特別な力を持っていて、生存時は名をはせた者ばかりで」

 俺はそれを聞いて、思わず口にせずにはいられなかった。

「じゃあ、何で俺を……」
 
 才能と呼べるもんなんて無いし、屈強でもない、天才とは程遠い、凡人だ。

 するとアリーチェさんは優しい声音で、小さな口を動かしこう告げた。

「ほんと、不思議ですよね」
「えええ……」

 俺が悲しくぼやいたときだった。

「凡人ってところが、良いなって思ったんです」
「へっ?」
「だめ、ですかね」

 少し照れ笑いで告白するアリーチェさんに、俺は気持ちがどきどきする。アリーチェさんは微笑みながら話の続きをする。

「転生者を誰にしようか悩んでいた時、何気なく見ていた地球という世界で、後輩を、火に包まれた秦野様を、全力で追いかけて、全力で助ける人間を見ちゃったんです。自分の命をなげうってまで。天賦の才や特別な力を持っていない、天才じゃない、そんな『凡人』さんにですね、良いなあ、って思っちゃったんです」

 じんわりと何か全身が温かく満たされた気分だ。ずるいようにも感じる、でもそんな事言われると、転生するのも悪くないという気持ちも……、いやでも……、あっ! そういや!

「あっ、あの!」
「はい?」
「その、秦野はあっちの世界ではどうなったんですか?」

 するとアリーチェさんはにこっと笑い、手を軽くかざし映像を浮かび上がらせる。そこには、俺が生きていた時に働いていた会社が写っていた。そして、オフィス内に切り替わり、窓際のデスクには、元気に働いている秦野の姿があった。
 
 安心した。良かった、無事で。

 ふと、ある事に気付いた。

 あれ? 秦野の奴なんで部長席に?

 俺が怪訝な顔をしていると、アリーチェさんが声をかける。

「秦野様、今じゃ部長なんですよ」
「えっ⁉ そうなの⁉ いやでも俺が死んでそんなすぐに―」
「村上様が亡くなられて10年の歳月がながれています。千堂様は地方に転勤になっていますよ」
「じゅ、10年……」

 俺が天界で目覚めた時、そんなに経ってたのか。もう俺の事なんか頭の片隅にないような感じだな。あんなにはつらつと明るく働いてるとこみるとさ。過ぎ去ってしまった時間に、何だか寂しさを感じる。

「秦野様、売り上げすごく優秀なんですよ」
「えっ……?」

 アリーチェさんの言葉にしばし考えた後、ふつふつと怒りが湧いてくる。あっ! あいつ‼ まだお客に必要のない高額な保険プランを売りつけて―、

 突然、映像が秦野のデスクに置いてある書類を映し出す。そこにはいろんな保険プランの規格書があった。各年代、職業などを考慮したもので、何十種類も置いてある。さらに、映像は社内の掲示板を映し出した。ある中高年女性向けの保険プランが、顧客満足度1位と表彰されている。そして、企画者の名前が、秦野、と書いてあった。

「こ、これって……」
「村上様が亡くなられたから、秦野様は今までの仕事のやり方を変えていったんです。まるで、村上様の顧客重視のやり方をなぞるように」
「あいつ……」

 そして、映像はまた秦野を映し出す。満面の笑顔で生き生きと仕事していやがる。

 たく……、俺が生きている時にその姿を見せてほしかったっつうの。でも……ほんと良かった。

「村上様、この異世界で、勇者たちのために、転生して頂けないでしょうか。その、秦野様よりも手を焼く子達なのですけど」

 苦笑するアリーチェさん。

 勇者達の、教育係りか……。

「勇者って、何人いるんですか」

 俺は自然とそんなことを口にしていた。アリーチェさんは微笑み、落ち着きながら応える。

「4人です」
「4人、ですか」
「ええ。それぞれが大きな力を持っている子達です。この異世界の平和のため、今も力を振るってくれています。でも、彼女達はその大きな力を持つがゆえに悩み苦しんでいます。そして、勇者としてのあり方に答えを見いだせないまま、孤独に、戦い続けているんです」

 俺は先ほどの紅蓮の髪の少女を思う。
そして、まだ見ぬ少女達のことを思う。
大きな力を持つ彼女達。
大きな力に悩み苦しむ彼女達。
勇者としてのあり方に、答えを見いだせない彼女達。
答えを見いだせないまま、孤独に戦い続けている彼女達。

 俺は……。

 思ってしまった。

 そんな彼女達を救ってあげたい。今度は、ちゃんと生きてさ。

 もう、言う事は決まった。

「異世界転生、よろしくお願いします」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...