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episode2.初コラボカフェ
2話-①
『茜ちゃんにお願いがあるんだけど…』
ある日突然、いつも通りLINEでやり取りをしていたところに、美咲くんから着たLINEは唐突な内容であった。
美咲くんが私にお願いしたいことって大抵、予想はつく。
『私にできることなら全然大丈夫だよ』
BL関連であるに違いない。初めて会ったあの日、
“男が店頭で買うのは恥ずかしいから、なるべく通販で買うようにしているんだ。
池袋とかなら恥ずかしくないんだろうけど、俺はそんな勇気持てないし。友達もいなかったから、一人で行くにはさすがに…”
なんてことを言っていたので、一緒に付いて来てほしいとか、通販で買えないものの代行といったところであろう。
しかし、この日は違った。まさかあんな展開になるとは思いもよらなかった…。
*
「茜ちゃん、来てもらっちゃってごめんね」
私は都内在住なため、何も問題はなかった。
そう。私が美咲くんに頼まれたお願いとは…。
「気にしないで。私もこのコラボカフェに行きたいなと思っていたところだったから、誘ってもらえて嬉しかった」
そう。コラボカフェに誘われたのである。
美咲くんは男一人でコラボカフェに行くのは恥ずかしいので、私と一緒ならお仲間または彼女の付き添いに見えるので、付いてきてくれると助かるとLINEでお願いされた。
私が興味あるジャンルでなかったとしても、友達の好きなものを知れる機会でもあったし、美咲くんの事情を知っている身でもあり、特に予定もなかったので、断る理由がなかった。
まさか…自分が好きなジャンルでもあったので、誘ってもらえて何よりである。
「それならよかった。まだお互いにこの作品について語ったことなかったもんね」
SNSで繋がっているとはいえ、お互いに必ず好きなことについて投稿したりしなったりする。
たまたまこの作品についてはお互いに触れてこなかったということである。
ちなみに触れてこなかったこの作品は、最近ヲタク女性(たまに男性)の間で流行っている、「idol smile」通称、アイスマである。
「で、茜ちゃんはどこのグループを推してるの?」
アイスマには幾つかのグループがあり、ファンは自分が推しているグループがある。
「私はflowerとKINGを推してるかな。美咲くんは?」
「まじか?俺もKINGを推してる」
まさかアイスマまで被るとは思わなかった。
大好きなお友達と好きなものが被るだけでこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
「KINGはさ、皆ドSな感じが堪らないよね」
名前の通り王子様キャラが多いため、ドSな上から目線なキャラクターが多い。
もちろん、中には敬語を使うような真面目なキャラクターや爽やか王子様系なキャラクターも存在するが、基本、紳士でありながらドSであるという二面性のあるキャラクターが多い。
「分かる。男の俺でもドキドキするわ…」
KINGの醸し出すオーラがあまりにもセクシーで。ドキドキする気持ちはとてもよく分かる。
「さすがKING様だわ…。男もメス化させてしまうなんて」
美咲くんのような美形男子なら、KINGのコスプレも似合いそうと心の中で密かに思った。
「つかぬ事をお聞きしますが、茜ちゃんは誰推しですか?」
推しグループまでは被っても、さすがにキャラクターの方は…。まさか……ね。
「flowerなら百合園 瑞輝様で、KINGなら久遠 慧斗様かな」
百合園 瑞輝様は黒髪ロングな髪型のせいで、女性に間違われる程の中性的な見た目をしているが、中身が男らしいというギャップを持っているキャラである。
それに対して、久遠 慧斗様はKINGというグループなだけあって、見た目から俺様キャラが滲み出ており、中身も正真正銘の王子様キャラである。
全く正反対の二人なわけだが、ゲーム内に配信されている個別ルートのストーリーを読み、完全に惚れてしまったというわけだ。
ちなみに一目惚れをしたのは、久遠 慧斗様の方である…。
「へー。茜ちゃんはその二人なのか」
この反応は一体、どういう意味を示しているのか、私には美咲くんの意図が全く読めなかった。
「美咲くんは誰推しなの?」
私の推しはこの際、今はどうでもいい。問題は美咲くんの推しが誰なのかである。
幸い、今のところ美咲くんは同担拒否(同じキャラを好きになることを受け入れられない人のことをいう)ではなさそうなので安心してはいるが…。
「俺の推しは黒瀬 理人様だよ」
理人様はKINGの中で一番人気キャラクターである。
ちなみにアイスマの中では二位の人気を誇る。
「美咲くんは理人様なのね。これなら推し被りしないから、グッズ被らないしいつでも交換できるね」
同担拒否ではなくとも、友達同士で推しが被らなければグッズを回してもらえる機会が増えるため、とても有難い。
「本当にそれな。でも、同じグループ推してることは嬉しいよな」
もちろん、推しが被ってグッズを回してもらえなかったとしても、それでも構わない。相手が美咲くんなら。
大事なのは同じグループを推しているということである。
「私も嬉しい。KINGについて語れるから」
ちなみにリア友にもアイスマヲタクはいるが、別グループを推しているため、なかなかKINGの話をできる相手がいない。
ちなみにそのリア友は腐ってはいないが、夢女子である。
「俺もアイスマとかKINGについて語れるのは嬉しい。身近に語れる人がいないからさ」
腐男子はレアなため、なかなかオープンにしている人の方が少ない。
そもそも腐男子の友達が腐男子とも限らない。もちろん、逆も然りである。
「分かる。私もアイスマ好きはいても、KING担はいなくてさ…」
それでもアイスマ好きが身近にいるだけ美咲くんよりはマシだが…。
「もしかして、その人ってBL話はNGだったりする?」
そのもしかしなくてもである。大体、夢女子の方々の大半がBLカップリングの話を好まない傾向が多い。
「うん。だから推しのことは話せても、推しカプについては語れなくて…」
同じヲタクであっても相容れないことは多々ある。
だからこそ、同士を見つけた時、とてつもない感動を覚える。
「難しい問題だよな。腐女子に夢女子、同担拒否…。
同じヲタクでもそれぞれ考え方は違うから、その分、地雷も多いし」
皆が同じ考え方になることは難しい。
でも、いつか皆の心が広くなり、仲良くなれる時代が訪れるといいなと思う。
「そうなんだよね。いつか皆が手と手を取り合う日が訪れるといいな」
いつかそんな日が訪れると私は信じたい。
「俺も世の中が腐男子に対してもう少し優しくなってくれたらいいなと思ってる…。
あと、もっと腐男子が増えることを願いたい」
美咲くんと知り合ってから、まだまだ腐男子にとって生きにくい世の中だと知った。
しかし、それはもしかしたら、腐女子も同じなのかもしれないと思った。
自分の周りがたまたま寛容的であったがために感覚が麻痺していたが、人によってはBLが好きなことを許して貰えない環境の人もいるはず…。
そう考えると、自分はとても恵まれた環境にいると思えた。
もし、美咲くんのように苦しむ腐男子、または腐女子がいるのならば、少しでもいいから、その人達が救われてほしいと願っている。
昨今、SNSでのトラブルが増えているため、知らない人と面識を持つことに対して問題視されている。
しかし、こういった苦しむ人達を救うための手助けになるのであれば、私はいいコンテンツであるのではないかと思っている。
もちろん、危険も伴うことをちゃんと理解した上で使うに越したことはないが…。
私の知らなかった世界を知り、私はまた視野が広がった。
もっと知りたい。彼と一緒に居ると、新しい世界を知れるので、ワクワクが抑えられない。
「いつか増えるよ、きっと」
無責任な発言かもしれない。でも、彼の心が少しでも軽くなればいいなと思った。
「俺もそうなると信じたい。いや、信じてる…」
その時、私はまだ美咲くんの隣に居られるかな?と少し不安に思ったことは心の中だけに閉まっておくことにした。
「まずは今日のコラボカフェを楽しもう!」
「お、おう。楽しもう!」
場の空気を変えるために、急に私がテンションを上げたせいで、美咲くんは驚いていたが、嬉しそうな顔をしていたので安心した。
「そういえば、美咲くんって今日が初めてのコラボカフェなんだよね?!」
「そうだよ…。だって俺、友達いないし、現に一人で来れないから、こうして茜ちゃんを誘ってるわけだし」
完全に質問する内容を間違えてしまった。私ってどうしていつも肝心な時に空気が読めないのだろうか。
美咲くんに申し訳ないことをしてしまったと今、とても後悔している。
「ごめん。野暮なことを訊いて…」
「別にいいよ。相手が茜ちゃんだから」
こうやって私に優しくしてくれる美咲くんに、胸が一瞬、高鳴ったような気がした…。
「美咲くん優しいね。ありがとう…」
「いえいえ。で、俺が初めてなのがどうかしたの?」
すっかり本題を忘れて、脱線してしまった。
今大事なのはコラボカフェのことである。話を本筋に戻そうと思う。
「コラボカフェにもよるんだけど、事前にオーダーするところが多いから、先に頼むメニューが決まってるとスムーズにいくからいいよって伝えておきたくて」
コラボカフェでは、まず入店前に紙を渡され、そこに注文するメニューの数を記入する。
もちろんコラボカフェにもよるが、恐らく時間短縮と人権費を削るのが目的なのであろう。
こちらも事前に注文できるため、待ち時間は少なくて助かっている。
しかし、追加注文できない場合もあるため、それだけはどうにかしてほしいものだ。
何故、追加注文できないと厳しいかというと、ドリンクやフードに付いてくる特典があり、その特典がランダム配布なため、なかなか推しが出ないからである。
そもそも一発で推しが当たれば問題ないのだが、欲望センサー(推しがきてほしいという強い思い)が厳しく作動しているため、なかなか推しはきてくれない。
そんな時、店内で客同士が特典の交換をすることが可能なコラボカフェもあれば、もちろん禁止されているところもある。
基本的には禁止されているため、お店の近くで手渡し交換するか、輸送交換が一般的である。
ちなみに私は交換する手続きが面倒臭いので、推しが出るまで何度もカフェに通い続け、自力で出すまで粘るタイプのヲタクだ。
推しのためならば、幾らでも貢ぐことができる。
もちろん限度はあるため、予算オーバーしない範囲内で投資しているが…。
しかし今回は味方がいるため、いつもの二倍は挑戦することができる。
問題は美咲くんがどれくらいの予算を使うつもりなのかである。
「なるほど。つまり入店前にそれなりに考えておかないといけないというわけか」
さすが美咲くん。理解が早くて助かる。
「今回行くコラボカフェは、基本的には追加注文ができるけど、混雑状況によって厳しい時もあるから、ある程度先に考えてから注文する方がいいよ」
私と美咲くんが土日休みなため、週末しか空いていなかった。
つまり、週末ともなれば、店内は混雑されることが予想される。
「なるほど。追加注文が厳しい場合もあるってことか。なるべく先に考えてから注文するよ」
コラボカフェは奥が深い。何度も足を運んでいるが、毎回考えさせられることが多い。
「フードやドリンクも大事だけど、グッズも何を買うか先に考えておくといいかも。
時間制限があるから、何を買いたいか先に考えておけば、時間をスムーズに有効活用できるし、今回の店舗さんはグッズ交換可能だから、トレーディング系のグッズは投資するよりも、交換できる相手を見つける方が早いよ」
つまり、コラボカフェとは始まる前から既に己との戦いが始まっているということになる…。
「考えることがたくさんあるんだな。もう茜ちゃんが居てくれて、本当に助かるよ」
屈託のない笑顔を向けられ、私は一撃を食らった…。
「お、おう。いつでも付き合うぜ」
何故か男口調になってしまった。
誰か…今すぐ私をどこかへ連れ去ってください。この場から早く消え去りたいです……。
「茜ちゃんって本当に面白いよな」
不意に美咲くんが私の頭を撫でた。一気に顔が真っ赤になり、心臓がドキドキしている…。
「え?そう?普通だよ」
どう考えても普通ではない。頭を撫でられただけで顔を真っ赤にさせているのだから。
男性経験が全くないわけではない。彼氏がいたことくらいはある。もう何年も前の話になるが…。
今更、頭を撫でられたくらいでドキドキするなんて。
しかも相手は腐仲間(腐ってる者同士のことをいう)。意識する必要なんてないのに…。
「色々教えてくれてありがとうな。
まだよく分かんないこともあるから、追々教えてほしいです」
きっと一気に説明しすぎたせいで、まだ理解できていないこともたくさんあると思う。
当然、行ってみないと分からないこともあるので、後はカフェに着いたら説明した方が良さそうだ。
もちろん、私が分かる範囲内で良ければ、幾らでも美咲くんに教えるつもりでいる。
「私でよければ、分からないことがあればその都度聞いてくれれば、ちゃんと教えるので」
「助かる。よろしく頼むぜ」
美咲くんにお願いされるのは嫌じゃない。もっと私に頼ってほしいとさえ思っている。彼に頼られることが私の楽しみになりつつもあった。
とても不思議な感覚だ。今まで誰にもこんな感情を抱いたことはない。
もっと一緒に居たい。傍を離れたくない。そう思えば思うほどに、やっと見つけたヲタク友達の大切を実感させられた。
「あのさ、コラボカフェまでまだ時間があるから、その前に寄りたい所があるんだけど、寄ってもいい?」
確かにまだ時間に余裕がある。それにコラボカフェの近くにせっかくお店があるのだから、時間を潰すのには最適だ。
「いいよ。私もちょうど欲しい物があったから、寄りたいと思ってたところだったんだよね」
かくして二人のヲタクはとあるお店に寄ることにしたのであった…。
ある日突然、いつも通りLINEでやり取りをしていたところに、美咲くんから着たLINEは唐突な内容であった。
美咲くんが私にお願いしたいことって大抵、予想はつく。
『私にできることなら全然大丈夫だよ』
BL関連であるに違いない。初めて会ったあの日、
“男が店頭で買うのは恥ずかしいから、なるべく通販で買うようにしているんだ。
池袋とかなら恥ずかしくないんだろうけど、俺はそんな勇気持てないし。友達もいなかったから、一人で行くにはさすがに…”
なんてことを言っていたので、一緒に付いて来てほしいとか、通販で買えないものの代行といったところであろう。
しかし、この日は違った。まさかあんな展開になるとは思いもよらなかった…。
*
「茜ちゃん、来てもらっちゃってごめんね」
私は都内在住なため、何も問題はなかった。
そう。私が美咲くんに頼まれたお願いとは…。
「気にしないで。私もこのコラボカフェに行きたいなと思っていたところだったから、誘ってもらえて嬉しかった」
そう。コラボカフェに誘われたのである。
美咲くんは男一人でコラボカフェに行くのは恥ずかしいので、私と一緒ならお仲間または彼女の付き添いに見えるので、付いてきてくれると助かるとLINEでお願いされた。
私が興味あるジャンルでなかったとしても、友達の好きなものを知れる機会でもあったし、美咲くんの事情を知っている身でもあり、特に予定もなかったので、断る理由がなかった。
まさか…自分が好きなジャンルでもあったので、誘ってもらえて何よりである。
「それならよかった。まだお互いにこの作品について語ったことなかったもんね」
SNSで繋がっているとはいえ、お互いに必ず好きなことについて投稿したりしなったりする。
たまたまこの作品についてはお互いに触れてこなかったということである。
ちなみに触れてこなかったこの作品は、最近ヲタク女性(たまに男性)の間で流行っている、「idol smile」通称、アイスマである。
「で、茜ちゃんはどこのグループを推してるの?」
アイスマには幾つかのグループがあり、ファンは自分が推しているグループがある。
「私はflowerとKINGを推してるかな。美咲くんは?」
「まじか?俺もKINGを推してる」
まさかアイスマまで被るとは思わなかった。
大好きなお友達と好きなものが被るだけでこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
「KINGはさ、皆ドSな感じが堪らないよね」
名前の通り王子様キャラが多いため、ドSな上から目線なキャラクターが多い。
もちろん、中には敬語を使うような真面目なキャラクターや爽やか王子様系なキャラクターも存在するが、基本、紳士でありながらドSであるという二面性のあるキャラクターが多い。
「分かる。男の俺でもドキドキするわ…」
KINGの醸し出すオーラがあまりにもセクシーで。ドキドキする気持ちはとてもよく分かる。
「さすがKING様だわ…。男もメス化させてしまうなんて」
美咲くんのような美形男子なら、KINGのコスプレも似合いそうと心の中で密かに思った。
「つかぬ事をお聞きしますが、茜ちゃんは誰推しですか?」
推しグループまでは被っても、さすがにキャラクターの方は…。まさか……ね。
「flowerなら百合園 瑞輝様で、KINGなら久遠 慧斗様かな」
百合園 瑞輝様は黒髪ロングな髪型のせいで、女性に間違われる程の中性的な見た目をしているが、中身が男らしいというギャップを持っているキャラである。
それに対して、久遠 慧斗様はKINGというグループなだけあって、見た目から俺様キャラが滲み出ており、中身も正真正銘の王子様キャラである。
全く正反対の二人なわけだが、ゲーム内に配信されている個別ルートのストーリーを読み、完全に惚れてしまったというわけだ。
ちなみに一目惚れをしたのは、久遠 慧斗様の方である…。
「へー。茜ちゃんはその二人なのか」
この反応は一体、どういう意味を示しているのか、私には美咲くんの意図が全く読めなかった。
「美咲くんは誰推しなの?」
私の推しはこの際、今はどうでもいい。問題は美咲くんの推しが誰なのかである。
幸い、今のところ美咲くんは同担拒否(同じキャラを好きになることを受け入れられない人のことをいう)ではなさそうなので安心してはいるが…。
「俺の推しは黒瀬 理人様だよ」
理人様はKINGの中で一番人気キャラクターである。
ちなみにアイスマの中では二位の人気を誇る。
「美咲くんは理人様なのね。これなら推し被りしないから、グッズ被らないしいつでも交換できるね」
同担拒否ではなくとも、友達同士で推しが被らなければグッズを回してもらえる機会が増えるため、とても有難い。
「本当にそれな。でも、同じグループ推してることは嬉しいよな」
もちろん、推しが被ってグッズを回してもらえなかったとしても、それでも構わない。相手が美咲くんなら。
大事なのは同じグループを推しているということである。
「私も嬉しい。KINGについて語れるから」
ちなみにリア友にもアイスマヲタクはいるが、別グループを推しているため、なかなかKINGの話をできる相手がいない。
ちなみにそのリア友は腐ってはいないが、夢女子である。
「俺もアイスマとかKINGについて語れるのは嬉しい。身近に語れる人がいないからさ」
腐男子はレアなため、なかなかオープンにしている人の方が少ない。
そもそも腐男子の友達が腐男子とも限らない。もちろん、逆も然りである。
「分かる。私もアイスマ好きはいても、KING担はいなくてさ…」
それでもアイスマ好きが身近にいるだけ美咲くんよりはマシだが…。
「もしかして、その人ってBL話はNGだったりする?」
そのもしかしなくてもである。大体、夢女子の方々の大半がBLカップリングの話を好まない傾向が多い。
「うん。だから推しのことは話せても、推しカプについては語れなくて…」
同じヲタクであっても相容れないことは多々ある。
だからこそ、同士を見つけた時、とてつもない感動を覚える。
「難しい問題だよな。腐女子に夢女子、同担拒否…。
同じヲタクでもそれぞれ考え方は違うから、その分、地雷も多いし」
皆が同じ考え方になることは難しい。
でも、いつか皆の心が広くなり、仲良くなれる時代が訪れるといいなと思う。
「そうなんだよね。いつか皆が手と手を取り合う日が訪れるといいな」
いつかそんな日が訪れると私は信じたい。
「俺も世の中が腐男子に対してもう少し優しくなってくれたらいいなと思ってる…。
あと、もっと腐男子が増えることを願いたい」
美咲くんと知り合ってから、まだまだ腐男子にとって生きにくい世の中だと知った。
しかし、それはもしかしたら、腐女子も同じなのかもしれないと思った。
自分の周りがたまたま寛容的であったがために感覚が麻痺していたが、人によってはBLが好きなことを許して貰えない環境の人もいるはず…。
そう考えると、自分はとても恵まれた環境にいると思えた。
もし、美咲くんのように苦しむ腐男子、または腐女子がいるのならば、少しでもいいから、その人達が救われてほしいと願っている。
昨今、SNSでのトラブルが増えているため、知らない人と面識を持つことに対して問題視されている。
しかし、こういった苦しむ人達を救うための手助けになるのであれば、私はいいコンテンツであるのではないかと思っている。
もちろん、危険も伴うことをちゃんと理解した上で使うに越したことはないが…。
私の知らなかった世界を知り、私はまた視野が広がった。
もっと知りたい。彼と一緒に居ると、新しい世界を知れるので、ワクワクが抑えられない。
「いつか増えるよ、きっと」
無責任な発言かもしれない。でも、彼の心が少しでも軽くなればいいなと思った。
「俺もそうなると信じたい。いや、信じてる…」
その時、私はまだ美咲くんの隣に居られるかな?と少し不安に思ったことは心の中だけに閉まっておくことにした。
「まずは今日のコラボカフェを楽しもう!」
「お、おう。楽しもう!」
場の空気を変えるために、急に私がテンションを上げたせいで、美咲くんは驚いていたが、嬉しそうな顔をしていたので安心した。
「そういえば、美咲くんって今日が初めてのコラボカフェなんだよね?!」
「そうだよ…。だって俺、友達いないし、現に一人で来れないから、こうして茜ちゃんを誘ってるわけだし」
完全に質問する内容を間違えてしまった。私ってどうしていつも肝心な時に空気が読めないのだろうか。
美咲くんに申し訳ないことをしてしまったと今、とても後悔している。
「ごめん。野暮なことを訊いて…」
「別にいいよ。相手が茜ちゃんだから」
こうやって私に優しくしてくれる美咲くんに、胸が一瞬、高鳴ったような気がした…。
「美咲くん優しいね。ありがとう…」
「いえいえ。で、俺が初めてなのがどうかしたの?」
すっかり本題を忘れて、脱線してしまった。
今大事なのはコラボカフェのことである。話を本筋に戻そうと思う。
「コラボカフェにもよるんだけど、事前にオーダーするところが多いから、先に頼むメニューが決まってるとスムーズにいくからいいよって伝えておきたくて」
コラボカフェでは、まず入店前に紙を渡され、そこに注文するメニューの数を記入する。
もちろんコラボカフェにもよるが、恐らく時間短縮と人権費を削るのが目的なのであろう。
こちらも事前に注文できるため、待ち時間は少なくて助かっている。
しかし、追加注文できない場合もあるため、それだけはどうにかしてほしいものだ。
何故、追加注文できないと厳しいかというと、ドリンクやフードに付いてくる特典があり、その特典がランダム配布なため、なかなか推しが出ないからである。
そもそも一発で推しが当たれば問題ないのだが、欲望センサー(推しがきてほしいという強い思い)が厳しく作動しているため、なかなか推しはきてくれない。
そんな時、店内で客同士が特典の交換をすることが可能なコラボカフェもあれば、もちろん禁止されているところもある。
基本的には禁止されているため、お店の近くで手渡し交換するか、輸送交換が一般的である。
ちなみに私は交換する手続きが面倒臭いので、推しが出るまで何度もカフェに通い続け、自力で出すまで粘るタイプのヲタクだ。
推しのためならば、幾らでも貢ぐことができる。
もちろん限度はあるため、予算オーバーしない範囲内で投資しているが…。
しかし今回は味方がいるため、いつもの二倍は挑戦することができる。
問題は美咲くんがどれくらいの予算を使うつもりなのかである。
「なるほど。つまり入店前にそれなりに考えておかないといけないというわけか」
さすが美咲くん。理解が早くて助かる。
「今回行くコラボカフェは、基本的には追加注文ができるけど、混雑状況によって厳しい時もあるから、ある程度先に考えてから注文する方がいいよ」
私と美咲くんが土日休みなため、週末しか空いていなかった。
つまり、週末ともなれば、店内は混雑されることが予想される。
「なるほど。追加注文が厳しい場合もあるってことか。なるべく先に考えてから注文するよ」
コラボカフェは奥が深い。何度も足を運んでいるが、毎回考えさせられることが多い。
「フードやドリンクも大事だけど、グッズも何を買うか先に考えておくといいかも。
時間制限があるから、何を買いたいか先に考えておけば、時間をスムーズに有効活用できるし、今回の店舗さんはグッズ交換可能だから、トレーディング系のグッズは投資するよりも、交換できる相手を見つける方が早いよ」
つまり、コラボカフェとは始まる前から既に己との戦いが始まっているということになる…。
「考えることがたくさんあるんだな。もう茜ちゃんが居てくれて、本当に助かるよ」
屈託のない笑顔を向けられ、私は一撃を食らった…。
「お、おう。いつでも付き合うぜ」
何故か男口調になってしまった。
誰か…今すぐ私をどこかへ連れ去ってください。この場から早く消え去りたいです……。
「茜ちゃんって本当に面白いよな」
不意に美咲くんが私の頭を撫でた。一気に顔が真っ赤になり、心臓がドキドキしている…。
「え?そう?普通だよ」
どう考えても普通ではない。頭を撫でられただけで顔を真っ赤にさせているのだから。
男性経験が全くないわけではない。彼氏がいたことくらいはある。もう何年も前の話になるが…。
今更、頭を撫でられたくらいでドキドキするなんて。
しかも相手は腐仲間(腐ってる者同士のことをいう)。意識する必要なんてないのに…。
「色々教えてくれてありがとうな。
まだよく分かんないこともあるから、追々教えてほしいです」
きっと一気に説明しすぎたせいで、まだ理解できていないこともたくさんあると思う。
当然、行ってみないと分からないこともあるので、後はカフェに着いたら説明した方が良さそうだ。
もちろん、私が分かる範囲内で良ければ、幾らでも美咲くんに教えるつもりでいる。
「私でよければ、分からないことがあればその都度聞いてくれれば、ちゃんと教えるので」
「助かる。よろしく頼むぜ」
美咲くんにお願いされるのは嫌じゃない。もっと私に頼ってほしいとさえ思っている。彼に頼られることが私の楽しみになりつつもあった。
とても不思議な感覚だ。今まで誰にもこんな感情を抱いたことはない。
もっと一緒に居たい。傍を離れたくない。そう思えば思うほどに、やっと見つけたヲタク友達の大切を実感させられた。
「あのさ、コラボカフェまでまだ時間があるから、その前に寄りたい所があるんだけど、寄ってもいい?」
確かにまだ時間に余裕がある。それにコラボカフェの近くにせっかくお店があるのだから、時間を潰すのには最適だ。
「いいよ。私もちょうど欲しい物があったから、寄りたいと思ってたところだったんだよね」
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