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episode6.告白
6話-③
食べ進めていくと、案外量があるように見えて、実は食べやすい量だった。
さすがにこれじゃ少し物足りないので、甘いものを食べる流れを作ってよかったと思う。
「ご馳走さまでした。私、甘いもの注文してくるね。美咲くんは何がいい?」
「俺も今食べ終えたから、一緒に行くよ」
「分かった。でも、その前にトレーとか返してからにしよっか」
「そうだな。まずは片付けてからだな」
まずは食べ終えたので、トレーなどを片付けた。
そして、そのまま甘いものを注文し、写真を撮った。
「可愛く写真撮れたね。これでよし…っと。
早速、食べますか」
私はまたキャラクターの形をしたクッキーサンドアイスにした。
美咲くんも同じものと、更にインスタ映えしそうな甘いドリンクを頼んでいた。
私もドリンクを頼もうとしたが、さすがにもう夕飯も近いので、ただのコーヒーにしておいた。
「このクッキーサンドアイス、めちゃくちゃ美味い…。コンビニとかに置いてほしい。常に食べたい」
「そうなったら嬉しいけど、夢の国で食べるから格別ってのもあるかもよ?」
「それも一理あるな…。またここへ来たら食べてみようと思う。ありがとう。美味しいものを教えてくれて」
昔、食べたような気がする程度なので、手頃に食べれそうなものを適当に選んだなんて言えない。
ここは素直に感謝されておくことにした。
「いえいえ。お役に立てたのならよかったです」
美味しいものを食べると、自然と元気が湧いてきて、エネルギーを回復することができた。
そろそろ休憩も終了にして、写真を撮りに行きたい。
「ねぇ、これを食べ終えたら、写真撮りに行かない?」
「いいよ。そうしようぜ」
そして、私達は食べ終えた後、写真を撮りに行った。
何枚か写真を撮った後、お土産売り場へと足を運んだ。
綾香にお土産を買う約束をしていたので、綾香の分を購入…。
そうこうしているうちに、外も暗くなっていき、そろそろ夕飯時といった時間になった。
「茜、ちょっと早い気もするが、今から俺の後を付いてきてくれないか?」
突然、美咲くんに真剣な面持ちでお願いされた。
あまりにも真剣な表情でお願いされたので、断ることなんて考えられなかった。
「うん、いいよ…」
そのお願いが一体なんなのかよく分からないまま、美咲くんの後を付いて行った。
「…え?ここって……」
着いた先は、なんと夢の国の中でもお高いと噂の高級レストランだった。
「大丈夫。お金のことは気にしないで。俺が全額支払うから」
お金のこと云々以前に、どうしてここへ来たのか謎だった。
他にも素敵なレストランならたくさんある。それなのにも関わらず、この高級レストランをチョイスしたのには、何か理由でもあるのだろうか。
それにこの高級レストランを奢られるのは、却って気になってしまう。
既にチケット代を奢ってもらっている上に、更にこんなお高いレストランまでとなると、友達の域を超えているため、さすがに気が引ける。
ここは丁重にお断りし、自分で支払う意思を見せようと思う。
「美咲くん、さすがに何度も奢ってもらうのは悪いよ…」
「悪いなんて思わないでほしい。俺が勝手にそうしたいだけだから」
「でも…、いいの?チケットも奢ってもらったばかりなのに……」
「うん、いいよ。ここは黙って俺に奢らせて」
そんなに強い目で、真っ直ぐに伝えられてしまうと断れない。
ここはお金のことは一旦忘れて、観念して奢られることにした。
ここでずっと押し問答を繰り返しても、時間の無駄だ。
それに素直に奢られた方が、美咲くんも気分良く過ごせると思ったからである。
「美咲くんがそこまで言うのならば、今回もお言葉に甘えさせていただきます…」
「ありがとう。俺の我儘に付き合わせちゃうけど、よろしくね」
我儘といっていいのか分からないが、ここまで来て逃げるのはなんだか嫌だ。
それならば、美咲くんの我儘に付き合う方がいいと思った。
「それじゃ、お店の中へ入ろう。開けるよ…」
美咲くんが扉を開けてくれた。こういった小さな気遣い等は一体、どこで身につけたのか不思議だ。
「ありがとう。助かります」
いざお店の中へ足を進めると、店員さんが駆け寄ってきてくれて、席へ案内された。
見るからに高級レストランといった店内。あまりこういった雰囲気のお店に足を運ばないため、既に私はこの雰囲気に飲まれ、圧倒されてしまっていた。
「茜、何か食べたいものある?」
テーブルの上に置いてあるメニュー表に、一度目を通してみる。
しかし、こういったお店に慣れていないため、メニュー表を見てもよく分からなかったので、ここは美咲くんにお任せすることにした。
「ごめん。実はこういったお店にあまり慣れていなくて…。
だから、特にこれといって食べたいものがないので、美咲くんと同じもので大丈夫だよ」
「分かった。適当に注文するね」
美咲くんはすぐに店員さんに声をかけ、注文していた。
こういったお店でも怖気づかないで、堂々としている美咲くんに感心していた。
「すごいね…。こういうお店に来るの、慣れてるの?」
「いや、そんなに来たことないから、俺もあまり慣れてないよ。
たまに仕事の付き合いでこういう所に来るくらいかな」
いや、もうそれ充分、慣れている人では…?と心の中で呟いた。
「へぇー、そうなんだ。大変だね。いつもお仕事お疲れ様です」
「ありがとう。茜もいつもお疲れ様」
なんて話していたら、店員さんが飲み物を運んで来てくれた。
「お待たせ致しました、シャンパンでございます」
シャ、シャンパン……?!
まさかお酒が運ばれてくるとは思わなかった。
「ごめん。確認せずに勝手にお酒頼んじゃったけど、大丈夫かな?
嫌だったら、代わりのものを頼むから言ってね?」
この雰囲気に飲まれ、緊張していたので、寧ろお酒で助かった。
お酒を飲めば、少しは緊張が和らぐかもしれないから。
「ううん、全然大丈夫だよ。いただきます……」
一口、口に含んだ瞬間、旨みが一気に口の中へ広がっていった。
これってひょっとして、高いお酒なのでは?一杯幾らなんだろう?なんてことを考えていた。
「このシャンパン、すごく美味しいね…」
「…え?あ、うん…。すごく美味しいね」
あれ?美咲くんにはあまり美味しくなかったのかな?
もしくはこういった高いお酒は飲み慣れているとか?
一瞬、様子がおかしかったことが、とても気になってしまったが、ここは敢えて触れないでおくことにした。
「お待たせ致しました、サーモンとアボカドのタルタルです」
シャンパンの次にサラダ系のものが運ばれてきた。所謂、前菜というやつであろう。
フレンチなんて、学校のテーブルマナーでしか食べたことがなかったので、なんだか緊張してしまう…。
「いただきます…」
恐る恐るも食べてみる。馬鹿舌なので味の違いなどよく分からないが、それでもこの料理がいつも食べている料理と格別なことくらい、食べた瞬間、すぐに分かった。
「美味しい……」
思わず口から零れ出てしまった。それぐらい美味しいと思った。
「ビシソワーズです」
次はスープが運ばれてきた。このスープも絶品で、とても美味しかった。
「牛肉の赤ワイン煮込みです」
お肉が運ばれてきた時点で、これがコース料理なのだということに気がついた。
前菜の段階では、まだサラダはよく一番最初に運ばれてくることが多いので、特に気がつかなかったが、次にスープが運ばれてきた段階でおかしいと思った。
そして、ようやくお肉が運ばれてきて確信した。
まさかコース料理をご馳走になるなんて思わなかった。
きっと美咲くんなりの配慮なのであろう。明かせば私に断られると分かっているから。
そこまでしてご馳走したい理由が、私にはよく分からなかった。
まだ私の誕生日が近いのなら分かる。
しかし、誕生日はとっくに過ぎていて、ちゃんとお祝いの連絡も頂いた。
なので、誕生日のお祝いをしたいという線は薄そうだ。
もし誕生日をお祝いしたいのであれば、綾香も一緒に行ける時を狙うに違いないから。
となると、全く美咲くんの考えている意図が読めない。
単に奢りたいだけならば、こういうことは今後一切、ナシにしてもらいたい。
あまり友達間で、お金のトラブルを起こしたくはないからである。
やっぱりこの件はナシにしてもらおう。そして、もうこういうのは止めてもらうように言おう。
決意し、いざ言おうとした瞬間、先に口を開いたのは美咲くんの方だった…。
「茜、今から大事な話がある。ちょっと場所を移動したいんだが、移動してもいいか?」
また真剣な面持ちで言われてしまったため、完全に言うタイミングを見失ってしまった…。
ここは一旦諦めて、またタイミングを見て言うことにした。
「うん、いいよ」
「それじゃ俺、お会計を済ませてくるから、ちょっと待ってて…」
颯爽とお会計へ行ってしまったため、自分の分のお金を出すタイミングを逃してしまった。
またもやタイミングを逃してしまうとは…。今日の美咲くんはずっと隙がないような気がする。
「お待たせ。それじゃ、移動しよっか」
どこへ行くのだろうか。大事な話って何なのだろうか。よく分からないまま、私は美咲くんの後を付いて行った。
*
着いた先はお洒落な外国風のお城の前だった…。
「茜はずっと俺の気持ちに気づいていなかったみたいだけど、今ここで俺の気持ちを伝えます」
ずっと気づいていなかった…?一体、何のことだろうか。話の意図が全く読めなかった。
「俺は茜のことが大好きです…。だから、俺と付き合ってください……」
…好き?誰を?美咲くんが…私を?
全く気づいていなかったし、まさか今日ここへ来た目的って、告白する為のデートだった…ということになる。
だから、美咲くんは今日、チケット代も高級レストラン代も出してくれたのだと納得することができた。
そうとは知らずに、呑気に遊びに来てしまった。
でも、何て答えたらいいのか分からず、私はその場で立ち尽くしてしまった…。
まず状況を整理しよう。久しぶりに美咲くんから二人で遊ぼうと提案され、夢の国へやって来た…。
妙にいつもより男らしさが垣間見えていたので、なんだかいつもと様子が違うな…と思っていた矢先の出来事だった。なんと美咲くんから告白を受けた。
告白なんて久しぶりにされた。美咲くん、私のことを好きだったのか…。全く美咲くんの気持ちなんて、想像すらしていなかったので、まさかの告白に動揺を隠しきれなかった。
私は美咲くんのこと、どう思っているのかな?好きだとは思う。でもそれが恋愛感情なのかは分からない。
それにこんな大事なこと、今すぐに答えなんて出せない。どうしたらいいのか分からず、動揺してしまった私は、この場から逃げ去ることにした。
「ごめん。先に帰るね…」
と一言だけ言い残し、本当にその場を立ち去った。
酷いことをしているという自覚はある。でも、どうしたらいいのか分からなくなってしまい、頭の中が真っ白になってしまった。
頭が真っ白な状態のまま、自分一人でこの自体を処理することは不可能だと思い、頼れる相手に頼ってみることにした。
プルルル…プルルル…。三コール目で電話に応じてくれた。
『もしもし…どうしたの?』
「綾香、聞いてよ。美咲くんから告白された」
そう告げたが、綾香の反応は驚いた様子はなかった。
あれ?もしかして、綾香は美咲くんの気持ちを知っていたみたいだ。どうやら私だけ知らなかったみたいだ。
『茜、とりあえず、家に来る?』
私の様子を察して心配になった綾香が急遽、お家に誘ってくれた。
今は神にでも縋りたい気持ちなので、こうして頼らせてもらえるのはとても有り難かった。
「うん。行く。ごめんね。急に…。でも、ありがとう」
『大丈夫よ。今日はお仕事だったから、彼氏とは会ってないから安心して』
そうだ。綾香には彼氏がいるんだった…。そんなことすら忘れてしまうほど、私は今、自分のことしか考えられないくらい気持ちに余裕がなかった。
でもせっかくだし、こうしてこちらに気を使わせないようにしてくれる綾香の優しさに甘えてみることにした。
「うん。分かった。それじゃ、今からそっちへ向かいます」
『はーい。待ってます。それじゃまた後で』
そこで一旦、綾香との電話は切れた。
私はとりあえず、頭を切りかえて、綾香ん家へ向かうことにした。
*
綾香ん家に着いたので、とりあえずチャイムを鳴らした。
ピンポーン…という音が鳴り、その後すぐに綾香がインタホーンで応じてくれた。
『はい…』
「茜です。今、着きました」
『ちょっと待ってて。開けるから』
そう言ってからすぐに綾香は鍵を開けてくれた。いつもの優しい笑顔で私を迎え入れてくれた。
「お帰り。そして、お疲れ様…」
「綾香、どうしよう私……、」
「とりあえず、中へ入って。それから話を聞くからさ」
さすがにこれじゃ少し物足りないので、甘いものを食べる流れを作ってよかったと思う。
「ご馳走さまでした。私、甘いもの注文してくるね。美咲くんは何がいい?」
「俺も今食べ終えたから、一緒に行くよ」
「分かった。でも、その前にトレーとか返してからにしよっか」
「そうだな。まずは片付けてからだな」
まずは食べ終えたので、トレーなどを片付けた。
そして、そのまま甘いものを注文し、写真を撮った。
「可愛く写真撮れたね。これでよし…っと。
早速、食べますか」
私はまたキャラクターの形をしたクッキーサンドアイスにした。
美咲くんも同じものと、更にインスタ映えしそうな甘いドリンクを頼んでいた。
私もドリンクを頼もうとしたが、さすがにもう夕飯も近いので、ただのコーヒーにしておいた。
「このクッキーサンドアイス、めちゃくちゃ美味い…。コンビニとかに置いてほしい。常に食べたい」
「そうなったら嬉しいけど、夢の国で食べるから格別ってのもあるかもよ?」
「それも一理あるな…。またここへ来たら食べてみようと思う。ありがとう。美味しいものを教えてくれて」
昔、食べたような気がする程度なので、手頃に食べれそうなものを適当に選んだなんて言えない。
ここは素直に感謝されておくことにした。
「いえいえ。お役に立てたのならよかったです」
美味しいものを食べると、自然と元気が湧いてきて、エネルギーを回復することができた。
そろそろ休憩も終了にして、写真を撮りに行きたい。
「ねぇ、これを食べ終えたら、写真撮りに行かない?」
「いいよ。そうしようぜ」
そして、私達は食べ終えた後、写真を撮りに行った。
何枚か写真を撮った後、お土産売り場へと足を運んだ。
綾香にお土産を買う約束をしていたので、綾香の分を購入…。
そうこうしているうちに、外も暗くなっていき、そろそろ夕飯時といった時間になった。
「茜、ちょっと早い気もするが、今から俺の後を付いてきてくれないか?」
突然、美咲くんに真剣な面持ちでお願いされた。
あまりにも真剣な表情でお願いされたので、断ることなんて考えられなかった。
「うん、いいよ…」
そのお願いが一体なんなのかよく分からないまま、美咲くんの後を付いて行った。
「…え?ここって……」
着いた先は、なんと夢の国の中でもお高いと噂の高級レストランだった。
「大丈夫。お金のことは気にしないで。俺が全額支払うから」
お金のこと云々以前に、どうしてここへ来たのか謎だった。
他にも素敵なレストランならたくさんある。それなのにも関わらず、この高級レストランをチョイスしたのには、何か理由でもあるのだろうか。
それにこの高級レストランを奢られるのは、却って気になってしまう。
既にチケット代を奢ってもらっている上に、更にこんなお高いレストランまでとなると、友達の域を超えているため、さすがに気が引ける。
ここは丁重にお断りし、自分で支払う意思を見せようと思う。
「美咲くん、さすがに何度も奢ってもらうのは悪いよ…」
「悪いなんて思わないでほしい。俺が勝手にそうしたいだけだから」
「でも…、いいの?チケットも奢ってもらったばかりなのに……」
「うん、いいよ。ここは黙って俺に奢らせて」
そんなに強い目で、真っ直ぐに伝えられてしまうと断れない。
ここはお金のことは一旦忘れて、観念して奢られることにした。
ここでずっと押し問答を繰り返しても、時間の無駄だ。
それに素直に奢られた方が、美咲くんも気分良く過ごせると思ったからである。
「美咲くんがそこまで言うのならば、今回もお言葉に甘えさせていただきます…」
「ありがとう。俺の我儘に付き合わせちゃうけど、よろしくね」
我儘といっていいのか分からないが、ここまで来て逃げるのはなんだか嫌だ。
それならば、美咲くんの我儘に付き合う方がいいと思った。
「それじゃ、お店の中へ入ろう。開けるよ…」
美咲くんが扉を開けてくれた。こういった小さな気遣い等は一体、どこで身につけたのか不思議だ。
「ありがとう。助かります」
いざお店の中へ足を進めると、店員さんが駆け寄ってきてくれて、席へ案内された。
見るからに高級レストランといった店内。あまりこういった雰囲気のお店に足を運ばないため、既に私はこの雰囲気に飲まれ、圧倒されてしまっていた。
「茜、何か食べたいものある?」
テーブルの上に置いてあるメニュー表に、一度目を通してみる。
しかし、こういったお店に慣れていないため、メニュー表を見てもよく分からなかったので、ここは美咲くんにお任せすることにした。
「ごめん。実はこういったお店にあまり慣れていなくて…。
だから、特にこれといって食べたいものがないので、美咲くんと同じもので大丈夫だよ」
「分かった。適当に注文するね」
美咲くんはすぐに店員さんに声をかけ、注文していた。
こういったお店でも怖気づかないで、堂々としている美咲くんに感心していた。
「すごいね…。こういうお店に来るの、慣れてるの?」
「いや、そんなに来たことないから、俺もあまり慣れてないよ。
たまに仕事の付き合いでこういう所に来るくらいかな」
いや、もうそれ充分、慣れている人では…?と心の中で呟いた。
「へぇー、そうなんだ。大変だね。いつもお仕事お疲れ様です」
「ありがとう。茜もいつもお疲れ様」
なんて話していたら、店員さんが飲み物を運んで来てくれた。
「お待たせ致しました、シャンパンでございます」
シャ、シャンパン……?!
まさかお酒が運ばれてくるとは思わなかった。
「ごめん。確認せずに勝手にお酒頼んじゃったけど、大丈夫かな?
嫌だったら、代わりのものを頼むから言ってね?」
この雰囲気に飲まれ、緊張していたので、寧ろお酒で助かった。
お酒を飲めば、少しは緊張が和らぐかもしれないから。
「ううん、全然大丈夫だよ。いただきます……」
一口、口に含んだ瞬間、旨みが一気に口の中へ広がっていった。
これってひょっとして、高いお酒なのでは?一杯幾らなんだろう?なんてことを考えていた。
「このシャンパン、すごく美味しいね…」
「…え?あ、うん…。すごく美味しいね」
あれ?美咲くんにはあまり美味しくなかったのかな?
もしくはこういった高いお酒は飲み慣れているとか?
一瞬、様子がおかしかったことが、とても気になってしまったが、ここは敢えて触れないでおくことにした。
「お待たせ致しました、サーモンとアボカドのタルタルです」
シャンパンの次にサラダ系のものが運ばれてきた。所謂、前菜というやつであろう。
フレンチなんて、学校のテーブルマナーでしか食べたことがなかったので、なんだか緊張してしまう…。
「いただきます…」
恐る恐るも食べてみる。馬鹿舌なので味の違いなどよく分からないが、それでもこの料理がいつも食べている料理と格別なことくらい、食べた瞬間、すぐに分かった。
「美味しい……」
思わず口から零れ出てしまった。それぐらい美味しいと思った。
「ビシソワーズです」
次はスープが運ばれてきた。このスープも絶品で、とても美味しかった。
「牛肉の赤ワイン煮込みです」
お肉が運ばれてきた時点で、これがコース料理なのだということに気がついた。
前菜の段階では、まだサラダはよく一番最初に運ばれてくることが多いので、特に気がつかなかったが、次にスープが運ばれてきた段階でおかしいと思った。
そして、ようやくお肉が運ばれてきて確信した。
まさかコース料理をご馳走になるなんて思わなかった。
きっと美咲くんなりの配慮なのであろう。明かせば私に断られると分かっているから。
そこまでしてご馳走したい理由が、私にはよく分からなかった。
まだ私の誕生日が近いのなら分かる。
しかし、誕生日はとっくに過ぎていて、ちゃんとお祝いの連絡も頂いた。
なので、誕生日のお祝いをしたいという線は薄そうだ。
もし誕生日をお祝いしたいのであれば、綾香も一緒に行ける時を狙うに違いないから。
となると、全く美咲くんの考えている意図が読めない。
単に奢りたいだけならば、こういうことは今後一切、ナシにしてもらいたい。
あまり友達間で、お金のトラブルを起こしたくはないからである。
やっぱりこの件はナシにしてもらおう。そして、もうこういうのは止めてもらうように言おう。
決意し、いざ言おうとした瞬間、先に口を開いたのは美咲くんの方だった…。
「茜、今から大事な話がある。ちょっと場所を移動したいんだが、移動してもいいか?」
また真剣な面持ちで言われてしまったため、完全に言うタイミングを見失ってしまった…。
ここは一旦諦めて、またタイミングを見て言うことにした。
「うん、いいよ」
「それじゃ俺、お会計を済ませてくるから、ちょっと待ってて…」
颯爽とお会計へ行ってしまったため、自分の分のお金を出すタイミングを逃してしまった。
またもやタイミングを逃してしまうとは…。今日の美咲くんはずっと隙がないような気がする。
「お待たせ。それじゃ、移動しよっか」
どこへ行くのだろうか。大事な話って何なのだろうか。よく分からないまま、私は美咲くんの後を付いて行った。
*
着いた先はお洒落な外国風のお城の前だった…。
「茜はずっと俺の気持ちに気づいていなかったみたいだけど、今ここで俺の気持ちを伝えます」
ずっと気づいていなかった…?一体、何のことだろうか。話の意図が全く読めなかった。
「俺は茜のことが大好きです…。だから、俺と付き合ってください……」
…好き?誰を?美咲くんが…私を?
全く気づいていなかったし、まさか今日ここへ来た目的って、告白する為のデートだった…ということになる。
だから、美咲くんは今日、チケット代も高級レストラン代も出してくれたのだと納得することができた。
そうとは知らずに、呑気に遊びに来てしまった。
でも、何て答えたらいいのか分からず、私はその場で立ち尽くしてしまった…。
まず状況を整理しよう。久しぶりに美咲くんから二人で遊ぼうと提案され、夢の国へやって来た…。
妙にいつもより男らしさが垣間見えていたので、なんだかいつもと様子が違うな…と思っていた矢先の出来事だった。なんと美咲くんから告白を受けた。
告白なんて久しぶりにされた。美咲くん、私のことを好きだったのか…。全く美咲くんの気持ちなんて、想像すらしていなかったので、まさかの告白に動揺を隠しきれなかった。
私は美咲くんのこと、どう思っているのかな?好きだとは思う。でもそれが恋愛感情なのかは分からない。
それにこんな大事なこと、今すぐに答えなんて出せない。どうしたらいいのか分からず、動揺してしまった私は、この場から逃げ去ることにした。
「ごめん。先に帰るね…」
と一言だけ言い残し、本当にその場を立ち去った。
酷いことをしているという自覚はある。でも、どうしたらいいのか分からなくなってしまい、頭の中が真っ白になってしまった。
頭が真っ白な状態のまま、自分一人でこの自体を処理することは不可能だと思い、頼れる相手に頼ってみることにした。
プルルル…プルルル…。三コール目で電話に応じてくれた。
『もしもし…どうしたの?』
「綾香、聞いてよ。美咲くんから告白された」
そう告げたが、綾香の反応は驚いた様子はなかった。
あれ?もしかして、綾香は美咲くんの気持ちを知っていたみたいだ。どうやら私だけ知らなかったみたいだ。
『茜、とりあえず、家に来る?』
私の様子を察して心配になった綾香が急遽、お家に誘ってくれた。
今は神にでも縋りたい気持ちなので、こうして頼らせてもらえるのはとても有り難かった。
「うん。行く。ごめんね。急に…。でも、ありがとう」
『大丈夫よ。今日はお仕事だったから、彼氏とは会ってないから安心して』
そうだ。綾香には彼氏がいるんだった…。そんなことすら忘れてしまうほど、私は今、自分のことしか考えられないくらい気持ちに余裕がなかった。
でもせっかくだし、こうしてこちらに気を使わせないようにしてくれる綾香の優しさに甘えてみることにした。
「うん。分かった。それじゃ、今からそっちへ向かいます」
『はーい。待ってます。それじゃまた後で』
そこで一旦、綾香との電話は切れた。
私はとりあえず、頭を切りかえて、綾香ん家へ向かうことにした。
*
綾香ん家に着いたので、とりあえずチャイムを鳴らした。
ピンポーン…という音が鳴り、その後すぐに綾香がインタホーンで応じてくれた。
『はい…』
「茜です。今、着きました」
『ちょっと待ってて。開けるから』
そう言ってからすぐに綾香は鍵を開けてくれた。いつもの優しい笑顔で私を迎え入れてくれた。
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