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episode6.告白
6話-⑥
まだ引きずっている。告白されたことも。美咲くんを置いて逃げてきたことも。
何もかも美咲くんで頭は埋め尽くされていて。爆発する寸前な状態だ。
「そっか。そりゃ意識しちゃうよね。だって告白してくれた人…だからね?」
今までそういう目で見ていなかったとしても、気持ちを知った途端、急に意識してしまうものだ。
友達だと思っていた人のことを、急に恋愛として意識することになったら、誰しも戸惑うはずにきまってる。
これから先、どう向き合っていけはわいいのか、今だってパニック状態だ。
「う、うん…。めちゃくちゃ意識してしまって恥ずかしい。次どんな顔して会えばいいかも分からないから……」
ちゃんと目を見て話せるだろうか。きっと目は見れないと思う。
どう接したら正解なのか分からないので、答えがほしいくらいである。
「あんまり気にしない方がいいと思う。なるようになる!くらいに思ってた方が上手くいくんじゃないかな」
確かにそうかもしれない。意気込んだところで上手くいかないし、余計に気まずくなるのは避けたい。できれば今まで通りに楽しく一緒にヲタ活できたらいいなと思ってる。
それはきっと美咲くんも同じことを望んでいるはず。
それを分かっているからこそ、できれば自然体に振る舞いたい。
「そうだね。あんまり気にしないようにする」
気が楽になった。難しく考えすぎてたなと思う。
なるようにしかならない。その時になってみないと分からないから。
「そうだよ。今日は美咲のことは忘れて、思いっきり楽しもう」
景気付けのために、誘ってくれたみたいだ。
好きなことをすれば、私が一旦、現実から目を背けられるから。
本当に良き友達を持ったなと思う。もっと大切にしたい。
「そうだね!美咲くんのことは忘れる!」
それから綾香と池袋で思いっきり満喫した。
気がついたら、あっという間に時間が過ぎていて。綾香と過ごす時間はとても楽しかった。
「それじゃ、またね」
「うん。またね」
いつもの三人で遊ぶのも悪くないが、同性の友達とだけ遊ぶのも楽しい。
たまには綾香と二人だけで遊びたいなと、密かに心の中で思った。
後で綾香にお礼のメッセージを送ろう。今度はちゃんと美咲くんと向き合えるになったから。立ち向かえるまで復活させてもらったことに感謝したい。
怒涛の週末を迎えたが、気がついたら忘れて、あっという間に時間が過ぎた。
美咲くんと早く話したい。自分の気持ちを伝えたいし、美咲くんとの関係性についてもゆっくり考えていきたい。
不意にスマホを見た。美咲くんから返事が返ってきた。
私は慌てて彼の返事を見た。彼からの返事の内容は…。
《美咲:急ですが、来週末はどうですか?》
逃げた私が、あれこれ言えない。それに予定もない。
早く会いたかったので、即返事を返した。
《茜:空いてるので、よろしくお願いします》
先程心配していたことが嘘みたいに感じた。
気にする必要はなかった。直接会ったらまだ気まずいと思うが、画面越しに文面で話すなら今までみたいに話せる。
それだけで安心した。自分の仕出かしたことをなかったことにはできないが、ちゃんと前向きに美咲くんと話ができる安心感が生まれた。
今日を笑顔で終えられた。来週を心待ちにした。
もう私は逃げない。綾香のアドバイス通り、自分の素直な気持ちを伝えることが、私の告白の返事となる。
ちゃんと素直な気持ちを伝えられるように、今から会うまでの間、練習しておこうと思った。
*
そして、ついにいよいよ、告白の返事をする時がやってきた…。
いつまでも逃げられないことは分かっている。
しかし、あまりの緊張で思わず、逃げ出してしまいたい衝動に駆られてしまった。
でももう逃げないと決めたので、ちゃんと逃げずに、待ち合わせ場所へと向かった。
もう気持ちを知ってしまった今なら分かる。絶対に美咲くんの方が先に待ち合わせ場所に来ているということを…。
だから集合時間より前に向かう。あまり美咲くんを待たせないようにするために。
待ち合わせ場所に着くと、やっぱり美咲くんの方が先に到着していた。
改めて美咲くんのこういう姿を見ると、私のことを真剣に好きなんだという気持ちが伝わってきた。
それなのに、私は夢の国に美咲くんを一人置き去りにして帰ってしまった。
最低だ…。人の気持ちを無下にしてしまったのだから。
本当は私なんて、美咲くんに会う資格すらないと思う。
でも、美咲くんはそんなことは望んでいない。ただ告白の返事が欲しいだけ。
もう覚悟を決めたのだから、あとは立ち向かうしかない。
まずは覚悟を見せるために、私の方から美咲くんに声をかけた。
「美咲くん。この間はごめんなさい…」
まずは謝罪から。じゃないと、先へ進めない。
ちゃんと謝ったところで、許してもらえなくても、人として筋を通すのは大事なことだ。
「逃げるなんて、人として最低のことをしたと思う。
だから、今日は絶対に逃げない。ちゃんと向き合うつもりで来ました」
一度、逃げ出した人間の言葉なんて、信じてもらえないかもしれないけど、誠意を伝えることしか今の私にはできなかった。
「正直なことを言うと、遊園地に一人で置き去りにされたのは辛かった。
告白して逃げられたから、完全にもう終わった…って思ったもん」
まさにその通りだ。私は何も否定することすらできない。
「でもその後、ちゃんと連絡がきたから、それで許した」
その言葉が聞けて安心したのと同時に、美咲くんが優しすぎて心配になった。
こんな簡単に許していいはずがない。もっと責められてもおかしくないことをした。
でも、それを怒らずに許せるくらい、私のことが好きだということも分かった。
「それに今日はちゃんと告白の答えを聞かせてくれるんだろう?」
もちろん、そのつもりできた。私の正直な気持ちを伝えるために…。
「うん。ちゃんと告白の返事をするつもりできました」
「それじゃ、ゆっくり話せる場所に移動しよう」
このままここで話すわけにはいかない。周りの視線も気になるし、いつまでもずっとここには居られない。
「そうだね。そうしよう」
なので、私達はちゃんとゆっくり話せる場所へと移動した。
移動してきた場所は、オシャレなカフェだった。
人が少なく、落ち着いた感じのカフェ。私達は窓際の席に座った。
話す内容が内容なだけあり、あまり人目につかない席の方が都合が良かった。
「とりあえず、何か注文しよっか」
何も頼まないまま、居座るわけにはいかないので、とりあえず適当にドリンクを注文した。
「そうだね。何か注文をしよう」
メニュー表の端から端まで吟味する。ただ注文するメニューを選ぶだけなのに、長考する必要はないが、この気まずい空気に耐えられず、つい時間稼ぎをしてしまう。
時間をかけたにも関わらず、最初から注文するメニューは決まっていたのであった…。
「決まった?」
美咲くんにそう問われ、もうこの時間稼ぎも終了を迎えた。
ここで抗ったとしても、ただ無意味なだけに過ぎない。
「うん。決まったよ」
「そっか。それじゃ、店員さん呼んで頼もっか」
美咲くんが店員さんに声をかけてくれた。
すると、店員さんはすぐに私達の元へと駆けつけれてくれた。
「すみません…、アイスコーヒーを一つ」
「ミルクや砂糖はどうなさいますか?」
「どちらも大丈夫です」
「畏まりました。他にご注文はございますか?」
私は慌てて、自分の分も注文した。
「私も彼と同じのでお願いします」
二人共、楽しい雰囲気ではないということもあり、ブラックコーヒーを注文した。まるで心模様をそのまま写したかのようである。
「畏まりました。少々お待ちください」
そのまま店員さんは、注文したメニューを準備すべく、裏へと消えた。
再び私達の間には沈黙が流れ始めた。気まずい。早くこの空気をどうにせねば。
この空気をどうにかしようと思い、画策していたら、美咲くんが先に気まずい空気を断ち切ってくれた。
「茜。俺は逃げたことも、その場で告白の返事をもらえなかったことも、責めたりはしない。
だから、茜のペースで、茜の正直な気持ちを教えてくれ」
美咲くんの優しさと言葉に救われた。ずっと怖かった。自分の正直な気持ちを伝えることが…。
緊張も相まって、上手く喋れるかどうかも不安で。自分でも分かるくらい、テンパっていた。
私は一旦、深呼吸をしてから、ゆっくりと話し始めた。綾香に話したのと同じように…。
「正直に言うとね、美咲くんのことは好きだよ。
でも、その好きって気持ちの種類が、恋愛としてなのか、それともヲタク友達としてなのか、それが今はまだよく分からない……」
美咲くんの反応が怖くて、顔が見れない。きっと美咲くんはショックを受けているに違いない。
自分の正直な気持ちを話して、美咲くんに嫌われることが怖かった。
こんなことで美咲くんに嫌われるなんて、本当にそう思ってはいない。
でも私は、自分に自信がないからつい、マイナスなことばかり考えてしまう。
だからこそ、親しい人に嫌われると思うと怖い。自分の居場所を失うかもしれないから。
それに今の関係性に居心地の良さを感じているため、この関係性を壊すことが怖い。
だから、今の関係性を壊したくないという恐れの方が今は大きい。それが私の紛れもない本音だ。
「茜の気持ちはよく分かった。一つだけ確認してもいいか?
俺のこと、男としてナシってわけではないよな?」
それは絶対に有り得ない。寧ろ男としてアリだからこそ、告白の返事に困っている。
「うん。それはないよ。どちらかというとアリかな。
…って、まだちゃんとした答えは出せてないから、分からないけどね」
こんな曖昧な回答、美咲くんを困らせるだけだ。
それでもこの答えが、今の私の精一杯で。それが少しでも美咲くんに伝わることを願った。
「いや、その答えが聞けただけで、俺はもう充分満足です」
どういうことだろうか。普通ならイライラしたりするはず…。
自分で言うのもなんだが、この答えで満足してもらえるなんて思ってもみなかったので、正直、この反応に驚いている。
しかし、話はここでは終わらなかった。この後、美咲くんが衝撃的な発言をした。
「あのさ。茜さえよかったらなんだけど…」
私さえよければ?!何をお願いされるのだろうかと、身構えてしまう。
「は、はい。なんでしょうか?」
警戒心が強いあまり、敬語になってしまった。これじゃ思いっきり警戒していますと、言っているも同然だ。
なるべく表情は平常心を意識しながら、美咲くんの話の続きを聞いた。
「もう一度、俺とデートしてほしい。もうすぐクリスマスも近いから、クリスマスにリベンジデートをするのはどう?」
クリスマスに美咲くんとデート………?!
告白の返事をしに来ただけのつもりが、まさかデートに誘われるなんて思ってもみなかった。
それに私達はまだ付き合ってもいない。付き合うかどうかさえも怪しい。
恋人同士でもないのに、クリスマスを一緒に過ごしてもいいのだろうか。
世の中の男女は、クリスマスに恋人同士でもないのに、一緒に過ごしている人はいるのだろうか。
もしいたら教えてほしい。そして、このデートは許されるのかどうかも…。
「ごめん。勝手に予定を決めちゃって…。もしかして、もうクリスマスの予定は埋ちゃってる?」
残念ながら予定はない。クリスマスは一人でワインでも飲みながら、アニメを見ようと思っていた。
これこそが独身彼氏ナシ女の史上最高のクリスマスであると、豪語していたくらいだ。
そんな自分が恥ずかしい。今すぐにでも予定がナシと上書き保存することにした。
「いえ。全く予定はないです…」
「本当?それならどう?一緒に過ごさない?」
子犬のような潤んだ瞳で見つめられてお願いされれば、もう断れない。
コイツ、自分がイケメンだということを分かって、わざとやってるな…。
でも、それさえも可愛いと思ってしまうほど、どうでもよかった。
元々特に予定もなかったわけだし。それにこんなイケメンと一緒にクリスマスを過ごせるなんて、贅沢なクリスマスプレゼントだ。
たまには贅沢をしてもいいのかもしれない。それに答えを早く知るためにも、今の私には美咲くんとの時間が必要な気がした。
「…いいよ。一緒に過ごしても」
「やった!超嬉しい!今からクリスマスが楽しみだ」
まさかそんなに喜ばれるとは思わず、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
同時に本当に私のことが好きなのだと、改めて実感することができた。
「でも、まだクリスマスまで時間があるよ?」
「確かに時間はあるけど、なんだかんだあと一ヶ月ぐらいしかないよ」
ちょうどクリスマスまであと一ヶ月…といった感じの頃合いだ。
クリスマスの時期が近くなると、変に意識してしまう。
ここ最近、そういったイベント事とは縁遠かったため、意識することなんてなかった。
何もかも美咲くんで頭は埋め尽くされていて。爆発する寸前な状態だ。
「そっか。そりゃ意識しちゃうよね。だって告白してくれた人…だからね?」
今までそういう目で見ていなかったとしても、気持ちを知った途端、急に意識してしまうものだ。
友達だと思っていた人のことを、急に恋愛として意識することになったら、誰しも戸惑うはずにきまってる。
これから先、どう向き合っていけはわいいのか、今だってパニック状態だ。
「う、うん…。めちゃくちゃ意識してしまって恥ずかしい。次どんな顔して会えばいいかも分からないから……」
ちゃんと目を見て話せるだろうか。きっと目は見れないと思う。
どう接したら正解なのか分からないので、答えがほしいくらいである。
「あんまり気にしない方がいいと思う。なるようになる!くらいに思ってた方が上手くいくんじゃないかな」
確かにそうかもしれない。意気込んだところで上手くいかないし、余計に気まずくなるのは避けたい。できれば今まで通りに楽しく一緒にヲタ活できたらいいなと思ってる。
それはきっと美咲くんも同じことを望んでいるはず。
それを分かっているからこそ、できれば自然体に振る舞いたい。
「そうだね。あんまり気にしないようにする」
気が楽になった。難しく考えすぎてたなと思う。
なるようにしかならない。その時になってみないと分からないから。
「そうだよ。今日は美咲のことは忘れて、思いっきり楽しもう」
景気付けのために、誘ってくれたみたいだ。
好きなことをすれば、私が一旦、現実から目を背けられるから。
本当に良き友達を持ったなと思う。もっと大切にしたい。
「そうだね!美咲くんのことは忘れる!」
それから綾香と池袋で思いっきり満喫した。
気がついたら、あっという間に時間が過ぎていて。綾香と過ごす時間はとても楽しかった。
「それじゃ、またね」
「うん。またね」
いつもの三人で遊ぶのも悪くないが、同性の友達とだけ遊ぶのも楽しい。
たまには綾香と二人だけで遊びたいなと、密かに心の中で思った。
後で綾香にお礼のメッセージを送ろう。今度はちゃんと美咲くんと向き合えるになったから。立ち向かえるまで復活させてもらったことに感謝したい。
怒涛の週末を迎えたが、気がついたら忘れて、あっという間に時間が過ぎた。
美咲くんと早く話したい。自分の気持ちを伝えたいし、美咲くんとの関係性についてもゆっくり考えていきたい。
不意にスマホを見た。美咲くんから返事が返ってきた。
私は慌てて彼の返事を見た。彼からの返事の内容は…。
《美咲:急ですが、来週末はどうですか?》
逃げた私が、あれこれ言えない。それに予定もない。
早く会いたかったので、即返事を返した。
《茜:空いてるので、よろしくお願いします》
先程心配していたことが嘘みたいに感じた。
気にする必要はなかった。直接会ったらまだ気まずいと思うが、画面越しに文面で話すなら今までみたいに話せる。
それだけで安心した。自分の仕出かしたことをなかったことにはできないが、ちゃんと前向きに美咲くんと話ができる安心感が生まれた。
今日を笑顔で終えられた。来週を心待ちにした。
もう私は逃げない。綾香のアドバイス通り、自分の素直な気持ちを伝えることが、私の告白の返事となる。
ちゃんと素直な気持ちを伝えられるように、今から会うまでの間、練習しておこうと思った。
*
そして、ついにいよいよ、告白の返事をする時がやってきた…。
いつまでも逃げられないことは分かっている。
しかし、あまりの緊張で思わず、逃げ出してしまいたい衝動に駆られてしまった。
でももう逃げないと決めたので、ちゃんと逃げずに、待ち合わせ場所へと向かった。
もう気持ちを知ってしまった今なら分かる。絶対に美咲くんの方が先に待ち合わせ場所に来ているということを…。
だから集合時間より前に向かう。あまり美咲くんを待たせないようにするために。
待ち合わせ場所に着くと、やっぱり美咲くんの方が先に到着していた。
改めて美咲くんのこういう姿を見ると、私のことを真剣に好きなんだという気持ちが伝わってきた。
それなのに、私は夢の国に美咲くんを一人置き去りにして帰ってしまった。
最低だ…。人の気持ちを無下にしてしまったのだから。
本当は私なんて、美咲くんに会う資格すらないと思う。
でも、美咲くんはそんなことは望んでいない。ただ告白の返事が欲しいだけ。
もう覚悟を決めたのだから、あとは立ち向かうしかない。
まずは覚悟を見せるために、私の方から美咲くんに声をかけた。
「美咲くん。この間はごめんなさい…」
まずは謝罪から。じゃないと、先へ進めない。
ちゃんと謝ったところで、許してもらえなくても、人として筋を通すのは大事なことだ。
「逃げるなんて、人として最低のことをしたと思う。
だから、今日は絶対に逃げない。ちゃんと向き合うつもりで来ました」
一度、逃げ出した人間の言葉なんて、信じてもらえないかもしれないけど、誠意を伝えることしか今の私にはできなかった。
「正直なことを言うと、遊園地に一人で置き去りにされたのは辛かった。
告白して逃げられたから、完全にもう終わった…って思ったもん」
まさにその通りだ。私は何も否定することすらできない。
「でもその後、ちゃんと連絡がきたから、それで許した」
その言葉が聞けて安心したのと同時に、美咲くんが優しすぎて心配になった。
こんな簡単に許していいはずがない。もっと責められてもおかしくないことをした。
でも、それを怒らずに許せるくらい、私のことが好きだということも分かった。
「それに今日はちゃんと告白の答えを聞かせてくれるんだろう?」
もちろん、そのつもりできた。私の正直な気持ちを伝えるために…。
「うん。ちゃんと告白の返事をするつもりできました」
「それじゃ、ゆっくり話せる場所に移動しよう」
このままここで話すわけにはいかない。周りの視線も気になるし、いつまでもずっとここには居られない。
「そうだね。そうしよう」
なので、私達はちゃんとゆっくり話せる場所へと移動した。
移動してきた場所は、オシャレなカフェだった。
人が少なく、落ち着いた感じのカフェ。私達は窓際の席に座った。
話す内容が内容なだけあり、あまり人目につかない席の方が都合が良かった。
「とりあえず、何か注文しよっか」
何も頼まないまま、居座るわけにはいかないので、とりあえず適当にドリンクを注文した。
「そうだね。何か注文をしよう」
メニュー表の端から端まで吟味する。ただ注文するメニューを選ぶだけなのに、長考する必要はないが、この気まずい空気に耐えられず、つい時間稼ぎをしてしまう。
時間をかけたにも関わらず、最初から注文するメニューは決まっていたのであった…。
「決まった?」
美咲くんにそう問われ、もうこの時間稼ぎも終了を迎えた。
ここで抗ったとしても、ただ無意味なだけに過ぎない。
「うん。決まったよ」
「そっか。それじゃ、店員さん呼んで頼もっか」
美咲くんが店員さんに声をかけてくれた。
すると、店員さんはすぐに私達の元へと駆けつけれてくれた。
「すみません…、アイスコーヒーを一つ」
「ミルクや砂糖はどうなさいますか?」
「どちらも大丈夫です」
「畏まりました。他にご注文はございますか?」
私は慌てて、自分の分も注文した。
「私も彼と同じのでお願いします」
二人共、楽しい雰囲気ではないということもあり、ブラックコーヒーを注文した。まるで心模様をそのまま写したかのようである。
「畏まりました。少々お待ちください」
そのまま店員さんは、注文したメニューを準備すべく、裏へと消えた。
再び私達の間には沈黙が流れ始めた。気まずい。早くこの空気をどうにせねば。
この空気をどうにかしようと思い、画策していたら、美咲くんが先に気まずい空気を断ち切ってくれた。
「茜。俺は逃げたことも、その場で告白の返事をもらえなかったことも、責めたりはしない。
だから、茜のペースで、茜の正直な気持ちを教えてくれ」
美咲くんの優しさと言葉に救われた。ずっと怖かった。自分の正直な気持ちを伝えることが…。
緊張も相まって、上手く喋れるかどうかも不安で。自分でも分かるくらい、テンパっていた。
私は一旦、深呼吸をしてから、ゆっくりと話し始めた。綾香に話したのと同じように…。
「正直に言うとね、美咲くんのことは好きだよ。
でも、その好きって気持ちの種類が、恋愛としてなのか、それともヲタク友達としてなのか、それが今はまだよく分からない……」
美咲くんの反応が怖くて、顔が見れない。きっと美咲くんはショックを受けているに違いない。
自分の正直な気持ちを話して、美咲くんに嫌われることが怖かった。
こんなことで美咲くんに嫌われるなんて、本当にそう思ってはいない。
でも私は、自分に自信がないからつい、マイナスなことばかり考えてしまう。
だからこそ、親しい人に嫌われると思うと怖い。自分の居場所を失うかもしれないから。
それに今の関係性に居心地の良さを感じているため、この関係性を壊すことが怖い。
だから、今の関係性を壊したくないという恐れの方が今は大きい。それが私の紛れもない本音だ。
「茜の気持ちはよく分かった。一つだけ確認してもいいか?
俺のこと、男としてナシってわけではないよな?」
それは絶対に有り得ない。寧ろ男としてアリだからこそ、告白の返事に困っている。
「うん。それはないよ。どちらかというとアリかな。
…って、まだちゃんとした答えは出せてないから、分からないけどね」
こんな曖昧な回答、美咲くんを困らせるだけだ。
それでもこの答えが、今の私の精一杯で。それが少しでも美咲くんに伝わることを願った。
「いや、その答えが聞けただけで、俺はもう充分満足です」
どういうことだろうか。普通ならイライラしたりするはず…。
自分で言うのもなんだが、この答えで満足してもらえるなんて思ってもみなかったので、正直、この反応に驚いている。
しかし、話はここでは終わらなかった。この後、美咲くんが衝撃的な発言をした。
「あのさ。茜さえよかったらなんだけど…」
私さえよければ?!何をお願いされるのだろうかと、身構えてしまう。
「は、はい。なんでしょうか?」
警戒心が強いあまり、敬語になってしまった。これじゃ思いっきり警戒していますと、言っているも同然だ。
なるべく表情は平常心を意識しながら、美咲くんの話の続きを聞いた。
「もう一度、俺とデートしてほしい。もうすぐクリスマスも近いから、クリスマスにリベンジデートをするのはどう?」
クリスマスに美咲くんとデート………?!
告白の返事をしに来ただけのつもりが、まさかデートに誘われるなんて思ってもみなかった。
それに私達はまだ付き合ってもいない。付き合うかどうかさえも怪しい。
恋人同士でもないのに、クリスマスを一緒に過ごしてもいいのだろうか。
世の中の男女は、クリスマスに恋人同士でもないのに、一緒に過ごしている人はいるのだろうか。
もしいたら教えてほしい。そして、このデートは許されるのかどうかも…。
「ごめん。勝手に予定を決めちゃって…。もしかして、もうクリスマスの予定は埋ちゃってる?」
残念ながら予定はない。クリスマスは一人でワインでも飲みながら、アニメを見ようと思っていた。
これこそが独身彼氏ナシ女の史上最高のクリスマスであると、豪語していたくらいだ。
そんな自分が恥ずかしい。今すぐにでも予定がナシと上書き保存することにした。
「いえ。全く予定はないです…」
「本当?それならどう?一緒に過ごさない?」
子犬のような潤んだ瞳で見つめられてお願いされれば、もう断れない。
コイツ、自分がイケメンだということを分かって、わざとやってるな…。
でも、それさえも可愛いと思ってしまうほど、どうでもよかった。
元々特に予定もなかったわけだし。それにこんなイケメンと一緒にクリスマスを過ごせるなんて、贅沢なクリスマスプレゼントだ。
たまには贅沢をしてもいいのかもしれない。それに答えを早く知るためにも、今の私には美咲くんとの時間が必要な気がした。
「…いいよ。一緒に過ごしても」
「やった!超嬉しい!今からクリスマスが楽しみだ」
まさかそんなに喜ばれるとは思わず、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
同時に本当に私のことが好きなのだと、改めて実感することができた。
「でも、まだクリスマスまで時間があるよ?」
「確かに時間はあるけど、なんだかんだあと一ヶ月ぐらいしかないよ」
ちょうどクリスマスまであと一ヶ月…といった感じの頃合いだ。
クリスマスの時期が近くなると、変に意識してしまう。
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