腐女子がオフ会で知り合ったのは腐男子でした

和泉 花奈

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episode9.アイスマイベント

9話-③



         *


なんだかんだ開演時間が迫ってきた。ここまであっという間だったというか、今からが本番というか…。

「いよいよって感じだね。緊張してきた…」

「その気持ちよく分かるよ。開演前の列に並ぶと、いよいよイベントが始まるなって感じするよね…」

全体を見渡すと、公演前のイベントの列は、参加者全員がどこかソワソワしていて、緊張している様子だ。

「だな。やっとかっていう気持ちと、もう来ちゃったかっていう感じもするよな」

楽しみなことほど、いつまでもこないでほしいという気持ちもある。
イベントが終わった後、いつも寂しい気持ちになるから。

だって、イベントがまだ先なら、寂しくないし、ずっと楽しみなことが待っている状態でいられる。
結局、いざイベントが始まると、楽しくなって、そんなことは忘れて、次も絶対に来るという気持ちになる。
つまり、楽しいことは始まってしまっても、次があると信じて、高揚感に浸れるということである。

「でも、めちゃくちゃ楽しみだよね。あー、やばい。初の全員集合だし、今回のイベントってライブとかあるのかな?」

「やっぱり茜は茜だな。何だか今ので緊張が解けたわ」

「私も右に同じく。茜、ありがとう」

「え?あ、うん…。二人のお役に立てたみたいでよかった」

「さっきの茜の話に戻るが、ライブじゃなくて、イベントって言ってるから、基本トークがメインだと思われるけど、ライブがあると嬉しいよな」

「そうね。私達の推しグループも含めて、それ以外のグループの歌唱も気になるわよね」

「そう!それ!もう全グループのライブを拝みたい」

せっかくの全員集合なので、ヲタクとして我儘を言わせてもらえるとしたら、この機会にライブをしてもらえたら嬉しい。
特にアイスマはヲタクに優しいコンテンツなため、今日のイベントで数曲歌ってくれるはず…。
なんてことを勝手に期待しておくことにした。

「拝めることを信じて、今から心の準備をしておこう」

「だな。まぁ、ペンライトとリングライトがグッズとしてあるわけだし、ライブはあると思う」

「そうね。これでもし、ライブがなかったら、次は必ずライブよ」

二人共、イベント開始前ということもあり、かなり興奮している。
心の準備どころか、未来を想定して、話し始めている。
私もそんな未来を信じて想像しつつ、二人の楽しそうな姿を微笑ましく眺めていた。

「大変長らくお待たせ致しました。ただいまより、開演させて頂きます」

ついにいよいよ、入場が開始された。大きい会場な上に、混雑が予想されるため、公式から開演開始時刻の前に列に並んで待機してくださいという、注意喚起があった。
その成果もあり、殆どの参加者が既に列に並んでいる。

さすがアイスマスタッフ。ここで他の作品とは違う、スタッフさんの対応力の高さが発揮されていた。

この日、この件に関して、Twitterでトレンド入りしていたことを、私達はまだ知らなかった。
だって、イベント中は携帯やスマートフォンなどの電源を切らなくてはならないから。
なので、イベント終了後に、その事実を知るのであった。

「やべーな。ついに会場の中へ入れるのか。ドキドキするな。
だって、あと一時間もしないうちに、イベントが始まるんだもんな」

「そうね。もう始まるわね…」

宙に浮くような不思議な感覚…。このワクワク感を抑えきれそうにない。
イベントが始まったら、もっと胸の鼓動が早くなっていくのかな、なんてことを考えていたら、今からニヤけが止まらなかった。

「ずっとプレイしてきたゲームだから、こうしてキャストの皆様が全員集合して頂けることに感謝だよね」

「そうだな。次いつ全員集合できるか分からないもんな。
ここにいる人達全員、運が良いよな」

「すごいことよね。今日に感謝ね」

「そうだね。楽しみつつ、感謝の気持ちも込めて、拝もう」

「だな。そして、終わった後も余韻に浸りながら、心の中で拝もう」

「さっきから拝むしか言ってないね?拝むって言葉で語彙力のなさを誤魔化してるわよね?」

「綾香、今日だけは許して。痛いところを衝かないで…」

「そうだそ。イベントが開始される前に、HPをゼロにするな」

「だって、あまりにも発言が似てたから、思わず微笑ましい気持ちになってしまって、つい親心が刺激されてしまって…」

「親心ってなんだよ…。まぁ、そう言ってもらえるのは嬉しいけどな」

顔を赤くして、恥ずかしそうに美咲くんは呟いた。私まで感化され、顔が赤くなった。

「また二人して顔を赤くして。本当、二人は似てるわよね」

「もう止めて。これ以上弄られると、恥ずかしくて爆発しちゃうから」

「俺らが爆発したら、綾香一人でイベントに参加することになるからな?」

「う゛…。それは困るな。でも、ご馳走様です」

最後の最後まで手を抜かずに、爆弾を投下していくのが綾香なのであった。

「それはさておき、もう私達の番ね」

そうこうしているうちに、もう自分達の番が回ってきた。
ちゃんと事前に身分証明できるものを用意しておいたので、慌てずに速やかに提示することができた。

無事に三人共、身分証明とチケットをちゃんと提示できたので、一つの難関をクリアできた。あとは座席に辿り着くのみ…。

ちなみに私達の席は、まさかのアリーナ席だ。三枚チケットをアリーナで用意してもらえるなんて、今年始まって早々、運を使い果たしたかのような神引きである。

「よし!自分達の席まで行きましょ」

三人で番号を確認しながら、席まで無事に辿り着いた。
荷物を整理し、必要な物だけ取り出し、もちろん携帯電話の電源もチェックした。
機内モードにすれば、電波をシャットダウンできるため、電源を切るか、機内モードにするのが通例となっている。
私達は皆、席に着く前から事前に機内モードにしていたため、改めて各々、再確認をした。
ちゃんと機内モードになっていたため、鞄の中に仕舞った。
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