俺たちの共同学園生活

雪風 セツナ

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入学編 ~特別試験~

第18話

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 案内されるままシアター内に入ると、上映はしていないと言っていたが明かりはついていたようだった。また、ここでのスタンプは隠されているわけではなくスクリーンの前中央に置いてあった。さすがに営業中の映画館には迷惑をかけられないからだろう。
「スタンプは簡単に見つかったな。」
「だな、今までみたいにどこかに隠されているんじゃないかって思ってたけど、ラクショーだったな。」
「営業中にずっと居座られても迷惑だからじゃないかしら?または、館内に隠せるような場所があったとしても生徒を入れるわけにはいかなかった、というところかしらね。」
「そう考えるのが普通かもな。」
そう言って俺たちは各々スタンプを押した。これで集めたスタンプは7つになった。今回のメッセージは「よくできました」「みなさんがリーダーとなって」とあった。これで①、②、③の上段が埋まり繋げて読むと「社会のシステムが間違っていると思うならば」「みなさんがリーダーとなって」「新しいルールを作ってください」となった。集めていないのは、⑤だけとなり、ほとんどのメッセージが集まったわけだが、素直にこのままメッセージを受け取るだけでいいのだろうか。メッセージ自体に違和感があるわけではないが何もないということはないと正悟ではないが俺の勘がそう言っている気がする。だが、何があるのだろう。そんなことを考えていると、
「蒼!おーい、蒼ってばー。」
正悟が俺の顔を覗き込むように呼び掛けていた。
「あっ、ああ、すまない。どうした?」
「次行こうぜって話をしてたんだけどまた聞いてなかったな?」
「新庄君、考え事をするのは勝手だけれど、周りの話もちゃんと聞きなさい。貴方は考え事をしすぎだし、その度に話を聞いていないようではいつか大事な話をされていたとしても聞き逃してしまうわよ?」
「そうだな、気を付けよう。」
俺がそう返すと、また榊はこちらを見ており、目が合うと顔をそらされた。
「わかったならいいわ。早くいきましょう。いつまでもここにいては迷惑だわ。」
白崎がそう言うと、
「いえ、大丈夫ですよ。確かにあまり長居をされてしまうのはアレですけど、何かここで気になることがあるならそれを解決していただいた方がいいと思いますので。」
と、俺たちを案内してくれたスタッフの女性がそう言ってくれた。
「いえ、本当に大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみません。この映画館でのやるべきことは終えられましたので。ありがとうございました。」
そう俺は返した。
「わかりました。それでは戻りましょう。」
そう彼女が言うので俺たちはそれに従って、入場口まで戻り、入場口にいた女性にもお礼を言い映画館を出た。

「じゃあ、デパートに行くか!それを押せばこの試験も終わりだぜ!」
正悟は映画館を出て俺たちを見てそう言ってきた。
「正確にはこの集めたスタンプ用紙を提出すればだけれどね。」
「細かいことはいいじゃんかよ。集めたらバスに乗って学園に戻って体育館へ行くだけだろ?」
「はぁ、確かにそうだけれどスタンプを集めたら終わりじゃないということよ。時間内に提出できなければ意味がないわ。」
「わかってるよ。さすがの俺もそこまでバカじゃない、覚えてるよ。」
「ならいいわ。行きましょうか。榊さんも大丈夫かしら?」
そう彼女が問いかけると、榊は頷いた。


 デパートへ行くためには来た道を戻らないといけなった。デパートの位置的には降りたバス停より先にある。ちなみに、ショッピングモールは、俺たちが下りたバス停よりも先の方にあるバス停に行かなければならなかった。


 そして、デパートへ向かう道中トラブルがやってきた。


「おい、お前ら新入生か?」
私服姿ではあるが学園の生徒であると思われる男が三人俺たちの前に立ちふさがった。咄嗟のことではあったが、正悟と俺が白崎と榊の前に出た。
「そうですが、何か用ですか?」
「あーん?何か用だと…?用ならっ、」
そう言って拳を振り上げいきなり殴りかかってきた。
「あるに決まってんだろぉぉ!」
不意を突かれたせいで防御は間に合わなかったが殴られた瞬間に後ろに下がることで見た目ほどダメージを負うことはなかった。
「蒼っ!」
正悟は俺が殴られたことに驚きこちらを振り牟田が、その瞬間に他の男二人に蹴られ、殴られ、その場に崩れてしまった。正悟が蹴られた腹を抱えていると、
「いいよなぁ、新入生はよ~、希望にあふれたようにキャッキャとはしゃいでよ~」
そう言いながら最初に俺を殴ってきた男1が再び正悟に蹴りをいれてきた。
「お前らはまだこの学園のシステムを知らないんだからなぁ!」
「正悟!」
再び男1が蹴ろうとしたところで俺がそう声を上げると、正悟は腹の痛みを耐えながら転がるようにしてその蹴りを避けた。
「ちっ、避けやがったか。だが、」
「新庄君!」
白崎が名前を呼んできたことで気づいた。男2と男3によって二人が捕まってしまっていたのだ。
「白崎、榊!」
「おい!動くんじゃねぇよ。俺たちみたいなやつらはこんなこと慣れてんだからよぉ。」
そう言って二人を人質にするかのように俺たちに話しかけてきた。
「お前らみたいに夢見て生きていけねぇんだよ、俺たちはよ~」
「どういうことだ?」
彼らのあまりに憎々しげにそう言ってくることに強い疑問を抱いた。
「本当に知らないようだなぁ、この学園のシステムを。まぁ知らないならいずれわかるさ、この学園のクソみたいな仕組みをよ!」
「とりあえずお前ら、こいつら返してほしけりゃポイント全部よこしな。そしたらこいつら返してやるよ。」
そう俺たちに言ってきたが、本当に開放するとは俺たちも思っていなかった。正悟はよろけながら俺に近づき小声で、
「…おい、どうする?」
そう聞いてきた。周りに人はいなくはないが、遠巻きに見ているか逃げてしまっていた。警察をだれか呼んでいるとは思うがまだ来ないのだろう。
「おい、どうするんだ?ポイントくれるのか持ち帰っていいのかよ?」
男3がそう俺たちを煽ってきた。
「なぁ、俺限界なんだが、やっちまってもいいか…?」
正悟はそう俺に聞いてきた。俺も久々にこんなにキレてしまっていたが、ここで自分の力を見せてしまっていいのか迷ってしまっていた。過去の出来事が俺を迷わせてしまっているのだ。だが、ふと、今朝の会長の言葉を思い出してしまった。
『“いくら獅子が猫の真似をしたところでその本質は変わらないぞ。獅子であることを辞めることは獅子にはできない。その牙をそぎ、爪を隠したところでオーラはごまかせないからな。”』

「あぁ、そうだな、わけないよな…。」
「…蒼?」
俺の様子が変わったことで正悟は驚いているようだった。
「正悟。」
俺はそう呼びかけると、
「ど、どうした?」
「お前が手を出す必要はない。俺がやろう。」
「お、おう。」
俺の様子の変わりように戸惑っているのかもしれない。だが、そんなことを気にしてはいられなかった。俺の変化には相手も驚いているようだった。
「な、なんだ、お前。やるってのか?」
「こっちには、女もいるんだぞ!」
「そ、そうだ。俺たちに手を出せばこいつらがどうなるかわかってるんだろうな!」
やられ役筆頭のテンプレートなセリフだと思ったが、俺は前髪をたくし上げながら、
「そうか、なら、それより早くお前らをやればいいんだな?」
俺はそう言うと、一番近くにいた榊を捕獲していた男3に素早く詰め寄ると一撃を入れ、男の手が離れた直後に榊を抱き寄せた。この間わずか数秒。
「なっ。」
「は、速い!」
俺は深追いはせずにまずは榊を救出した。そして、
「榊、大丈夫か?」
俺は努めて優しい声でそう言った。だが、気がたっている今の俺が果たして安心させられるような声で言えていたのかはわからなかった。榊は俺をまっすぐ見て頷いてくれたので、手を放し、正悟のもとへ預けた。
「次はお前だな。」
白崎を捕まえている男をまっすぐ見据えながらそう言った。
「く、来るな!こいつがどうなってもいいのか!」
そういうと男2はナイフをポケットから取り出してきた。男1は男3がやられたことに動揺を示したが、まだ人質がいることで優位だと思っているのかまだ臨戦態勢でいた。
「まだやるのか?」
「あ、当たり前だ!それにこいつの治療費まで増えちまったしお前にはその分も払ってもらわないとな。それにお前には痛い目を見てもらう必要もありそうだ。」
男1はそう言いながら男2動揺にナイフを取り出した。それに対して男2はそこまでの余裕はないのか力が入りすぎて白崎に当てているナイフが首筋に傷をつけてしまい白崎の首筋から血が少し流れてしまっていた。

俺はその血が流れているのを見て、

現在時刻12:30  18:00までおよそ5時間 現在集めたスタンプ7
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