僕たちは正義の味方

八洲博士

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 潮君の話によると男子剣道部の要求としては互いの部員をシェアすることのみ。部員の頭数をそろえることによって部として認定されて榊 次郎を大会の個人戦に送り出せるようになる。メリットはこれしかない。
 一方スポーツ・チャンバラ部のメリットも部員数の水増しによる部への認定だけだ。このままでは(計算高く抜け目のない)元生徒会長からするとうま味のない話となってしまう。
 次郎ちゃんなら個人戦に参加さえできれば、優勝旗を持ち帰ることも夢ではないし悪くても上位三位以内には入れるだろう。確実にスポーツ分野で界皇学園の名前を轟かせることが出来る。そう思える。そんな人材がスポーツ・チャンバラ部にいるかどうかは正直分からないのだ。交流試合の経験すらないからね。部活動紹介の時に見せた立ち回りは見事だったけどね。あれはテレビの時代劇で見る、殺陣のようなものだろう。打ち合わせ済、練習済で、吉田個人があんなに強いわけじゃない。当然だけど剣道部のように個人戦に参加しても勝ち残らないと名前は残らない。団体戦については今のところ論外だ。基本的なルールが違うし剣道用の防具なんて用意できない。
 でも逆はあるのかな。潮君の調べによるとスポーツ特待生の枠が空いているようなのだ。
そこで悟君ともども特待生の優待制度を希望する、というのだ。部活動の係わる用具一式を学園が用意するというアレだ。
 とりあえず、適性、得意な武具がわからないので一通り注文してもらう。それが二人分。
現状、小太刀が六本しかないところに加えて薙刀と太刀が二本ずつ増えることになる。防具は個人装備だから貸し出すわけにはいかないが薙刀と太刀なんて同時に扱えるものでもないので空いた武具を他の部員が使う分にはなんの問題もない。ただ部員をシェアするだけでスポーツ・チャンバラ部の受けるメリットは男子剣道部のそれと比較にならないのだ。
 「ずいぶんとスポーツ・チャンバラ部に有利な条件だね、潮君。ちょっと甘すぎない?」
 「甘いのは認めます。その分向こうが乗り気になりますからね」
 うわべだけは、剣道部の申し出を検討してあげたという態度だけど元生徒会長、吉田の顔はかなり緩んでいた。うれしさが滲み出ていたし。
 「男子剣道部の要望としては榊を全国大会の個人戦に送り出したい。申請手続きを考えると早めに部としての承認が欲しいところです。時間が大事な要素になります」
 それは私にもわかる。
 「一方、スポーツ・チャンバラ部の部への昇格は、出来たらいいな、のレベルまで期待が下がってしまったんです。吉田先輩が引退するまでなら時間がかかっても構わないくらいに」
 「あと一人増えれば自力で部に昇格できるからね。向こうは余裕があるわけだ」
 「そこで今ならお得、という情報を提示して向こうの気持ちを急かす必要がありました」
 顧問の小林先生に報告に行ったのか、吉田の姿はすでに無い。
 「エアーソフト剣は意外と高価です。竹刀よりは高い。部費が認められるようになったとしても一度にまとめては揃えられないでしょう。このチャンスを生かせば、より早く入手できて練習の時間も多く取れるようになる。交流戦や来年の大会にも希望が持てるようになりますからねぇ」
 なんとなくは納得したけど、不満が顔に出ていたようで潮君が説明を続ける。
 「当分は男子剣道部の顧問も小林先生が兼任してくれます。先生としては双方を平等にあつかうように気をつけるでしょうけど。榊が大会個人戦に出る段階で剣道部の事務が増えると思うんです。例えば将来、ふたつの部の顧問を兼任するとして。出ると負けが予想されるスポーツ・チャンバラ部と、榊を筆頭に決勝を勝ち進む男子剣道部。どちらの仕事が優勢になるかはいうまでもないかなと」
 どの位の時間でここまでの先読みをしたのだろう。潮 次善、恐ろしい子。
 「新たに剣道部の顧問を探す必要はなくなりそう?」
 「男子剣道部の顧問が小林先生なのだと知れ渡れば、いろんな問い合わせとか集中するでしょうし兼任してる場合じゃなくなるでしょう。専任になるのは時間の問題だったりして」
 「なるほどねえ。目先の利益に釣られたスポーツ・チャンバラ部は先に話を通した顧問の先生を失う可能性が出てきたってわけだ。事態が発覚するころには吉田は卒業してるかもしれないし」
 「その展開が一番楽、かもしれませんね」
 「よくまあ、そこまで策を練ったねえ」
 「お互いに自分の都合のいい、ベストなアイデアをぶつけあうだけじゃ話し合いは進みませんから。相手にも花を持たせる、ベターなプランを進言する男としてよくあてにされてましたからね。なんかもう、慣れました」
 「まあ、今回はお疲れ様」
 「より状況に適合したA(アイデア)を出せる男、ベターAマン潮を今後もごひいきに」
 なぜか活躍前に不思議な実をカリカリかじってる姿が頭に浮かんだけど気のせいだろう。
 「そういえば、スポーツ特待生の枠が空いていたって話。なんで人気がなかったのかな。希望者はいっぱいいそうだけど」
 「個人的には悪くない仕組みなんでしょうけど。榊の例があるじゃないですか。活動の援助があるのは魅力的だけど部員集めから始めるケースに当たると一年間を棒に振ることになりかねませんから」
 
 ・・・うあぁ、特大のブーメランが返ってきたよ。
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