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煽られてるんですけど……!?

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「もちろん、お断りですわ」

 と、言ってやった─────のだが。



「……………」

 レオナルドは何故か俯き、肩を震わせた。私は「あ、やっぱり?」なんて言われると思ってたのだが、予想と違う反応だった。もしかして…私に降られたのがそんなにショックだったのかしら?なんて嬉しくなってしまう、のだが。



「…くくっ、ははっ、はははっ」



 レオナルドは何故かまた笑いだした。私は先程のような、吹き出す、というような笑う原因がわからないため、困惑するが次第に苛立ってしまう。



「……今度は何ですか?」



 私は苛立ちを抑え、口元を隠すようにハンカチで抑える。こうしたら笑顔にならなくともいい。



 そして今度はそんな時間がかからず数秒後、レオナルドは落ち着いてから大きく息を吐いた。



「…………はー………やっぱりメイリア嬢は笑わせてくれるよね」

「…は?」



(いや、そっちが勝手に笑ったんだよ)

 そう突っ込みたいが、なるべく冷静に理由を聞く。



「……なぜ笑ったかお聞きしても?」

「ああ、それね。それは……メイリア嬢がだったからかな」

「は………?」

「いやー、メイリア嬢なら絶対断ると思ってたよ。申し訳なさそうに、じゃなくて清清しい程の笑顔で。…結構分かりやすいよね、メイリア嬢は」

「なっ!?」



 最初はぽかんとしていたが、分かりやすいと言われて頭に血が上ってしまう。つい手が出てしまいそうで手を握りしめ、我慢しているが、レオナルドは気にせず話を進める。



「いやもう、きっとこう断るんだろうなー、って思ってたらその通りでさぁー。んー……って言うのかな……」

「~~っ!?」

(こいつ、私が単純!?十年間も王妃教育受けてきたこの私に、なんて言い草!?)

 そう叫びたいのを我慢して、そっと深呼吸をする。ここで怒ってはいけない。



「………言いたいことはそれだけでしょうか」

「ほら、それも。…怒ってるんでしょ?俺に怒鳴りたいんじゃない?」

「っ、このッ…」

「っ、お嬢様!……駄目です…!」



 思わず立ち上がるが、エイミーに止められる。離れているミアとレアも多少慌てているのがわかる。エイミー達は、私がこういう男に対して怒りっぽいのを知ってるから必死で止め、心配しているのだ。

 怒りっぽいのは元々のメイリアの性格を引きずっているのか、はたしての性格だろうか………わからない。

 分かるのはゲームのメイリアでも、私でも王妃は無理だろうな、ということだろうか……?まぁそもそも、王妃なんて嫌だったが。



 気を取り直して、私は深呼吸をする……が。

「…………アドルフ様、取り乱して申し訳ありま────「俺は君の素がみたいんだけどなぁ」

「は……?」

「王宮で見たみたいな……そんな感じのメイリア嬢が見たいな!」



 レオナルドはニコニコ笑顔で(胡散臭い)とこちらを見ている。その態度に私は、ついに堪忍袋の緒が切れた。



「……さい………」

「え?」

「……っ!? お嬢様、駄目です!」



 エイミーが止めるが、もう遅い。私は口を開き、すぅっと息を吸う。そして、



「…うるさいって言ったのよ!なぁにが私の素よ!?あんたが私の何を知ってるっていうの?
私はあんたみたいなチャラチャラした奴に関わりたくないの、嫌いなのよ! あんたなんかと婚約なんて、絶っっ対、嫌よ! それになんなの、その態度は? それが公爵令嬢に対する態度? 婚約したいんならそれなりの態度で接するのがマナーってもんでしょ!?
せっかく浮気野郎と婚約解消出来たんだから、私だって好きな人と結婚したいのよ! 邪魔しないで!」


「…………!」



 はあ、と息を吐いて整える。ここまで言うとは思ってなかったらしい、レオナルドは目を見開き固まっている。エイミー達はため息をつき、呆れている。……そこで私は気づいた。



 ああ、ついにやってしまった…と。





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