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足掻き

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 [詩人アルトの言葉:赴くままに 歩いてきた事には利はないが 害もなし あるのは徳が見えるかどうか 見えないとしても それでも今の全てがあり事には変わりない]

 「ッ……」
 「心配するな、カーオル。

お前が本当にクローンだったとしても、俺たちの友情は変わらない。一緒に真相を探そう。」

 「ターケン…ありがとよ」 ショックを感じ続けている様子だ。

 「よし、いくぞ。その前に、何が拡張世界だ…こんな危険な物が…もしも又あのメンソンという男が例えば配下を連れてきて先程の町長のように異形化され力をつけられたら世界が更におかしくなる。奴の組織なるものが力を増すのでは」

 「確かに…」 憂いするカーオル。
 
だから、「ウォォーーッ!!ここを破壊する!!この二本の刃で!! この二階全体の壁にありったけの力をぶつける!!」 

「何を言うかと思ったら、やめなさい!そんな事は無理に決まっている!いまだあなた達の身動きも封じ込めているしそんな力はないだろう。 それにここを建築するのにどれだけの労力が注ぎ込まれたか。石は僅かづつしか採取されないのだ。(もう一つ実験場があるとはいえ)」メンソンは憤る。

「知った事か!!ウォーッ!」
 
「ターケン!やめろ!危険すぎる。例え破壊できたとしても、崩壊して下敷きになって死んでしまうかもしれない!」 カーオルは必死に止めてくる。

 「カーオル! 今すぐ下に降りて街のみんなを避難させろ! ここを破壊したら私もすぐ避難する!早く行け!ここはこのままにしておけないんだ、わかるだろ!」

「クッ、クソ…わかった。絶対死ぬなよ!早く逃げろよ!」 カーオルは一階へ向かう。 

メンソンは感じていた。場の磁場が揺らめいている事を。ターケンの全身から発せられる『気』がエネルギーの振動を壁に与えている事を。 

  ピキッ パキッ

 「(困りましたね…)あの耳飾りの石くらいの大きさでここまでの力を…この二階の壁に共鳴している。奴も出せるか…忌々しい。ヌーリコの石の中で更に貴重な希少種か…」

 ———「おい!みんな直ちにこの館から離れるんだ!!」一階に着いたカーオルは町民達を避難する様必死に呼びかける。 

 —ドドドドドゴオオオオッ——

 「ウオォーッ、私のこの『想い』を壁に全てぶつける!」

その瞬間、私の体の身動きを封じ込めていたメンソンの黒いエネルギーは弱まるかの様に線が細くなっていった。

 「今だ!いけーッ!」

私はありったけの想いを込めて唇を噛み締めて二刀流を同時にクロスさせるよう全力で振り放った。赤い色のエネルギーが放出された。壁に向かって飛んでいく。十字の形の物凄いエネルギーが壁に当たる、が…壁に傷つける事はできなかった。

「ダメだった…か」

 「フ、これだけの立派なヌーリコの壁をそう易々と破壊する事など…(ダンティ、来なさい)」

 —ピキキ——

 微かに聞こえた。壁の方から微かな音が。

「ならばもう一撃食らわせるまでよ。今度は相乗効果戦法をつける。万が一のため兵士に返さなくてよかった。この『手榴弾』も交えてな!」

 「手榴弾だと!そんなものを」 メンソンには聞こえていた。壁全体から僅かながらだがの軋む音を。
そこに執事のダンティが現れた。

「メンソン様、お久しぶりでございます。メンソン様のお声が私の心に聞こえました。申し訳ございません。この様な事態を招いてしまって。」 頭を深々と下げ執事は謝罪する。 

「いや、貴様のせいではない…ただ奴がカリスマ的な能力を持っていた。と言う事だ。」

「……しかしあそこまでの『想いの具現化』を発動するとは、彼は一体何者なのですか?」

「それは、後で話そう。それよりもここは一旦退くぞ。私の推測が正しければ…」

 「ウォーッ!この手榴弾を壁にむけて投げる!その前にありったけのエネルギーを込めて。そして刃で…」

 手榴弾は赤いエネルギーを発してきた。今にも爆発しそうな勢いだ。 
     

    
  







     
 
 



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