【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「陸、自分で分からないなら、やはり俺が判断するからな。」
「うん……」
コンちゃんは高熱が一週間と言っていた。けれど、コンちゃんが必ずしも正しいとは限らない。
「ニオイがしだしたら叩き出す。何時でも出ていける準備はしておけ」
『ここが一番安全だから』
その安全は蓮兄さんにとっての安全。兄さんが盗み聞き出来ない造りになっているから。
俺の部屋に盗聴器を仕掛けた京極も蓮兄さんの巣にはしかけない。蓮兄さんの会社には仕掛けてるだろうけど、番のいる巣にはしかけない。
上位同士の暗黙のルール

「わかってるよ」
「それから、あの検査用紙も持って帰れ」
Ω値を調べるあの紙。旅行帰りのあの日、兄に言われ、蓮兄さんには言わずにここに置いていっていた。あの後、蓮兄さんは家探しをしたはずだ。番が認めたとはいえ、巣に自分が知らない物があったのだ。黙認、してくれていたのだ。ありがたい、それだけでもありがたい、そう思わなければいけないのに。
殺しきれない泣き声が漏れてしまう。見捨てられる。見捨てられた。
『陸、貴方が好きよ。でも私は京極が怖いの』
『陸、俺はお前を友達と思ってるよ。けど俺は……』
俺…………

「ふざけんな、このクソ野郎!」
「累!?」
兄の怒鳴り声と人が倒れる音。
「なんでここに!」
「社用携帯スピーカーにしてここに隠しておいて、プライベートケイタイで聞いてたんだよ。2度も同じ手を食らってたまるかボケ!陸は大事な弟なんだぞ!」
「だからだよ!この家じゃ俺は無防備になる。コイツがΩテロでもしたら俺は番ってしまう!αはΩのヒートに弱いんだよ。ヒートが終われば俺はコイツを見捨てる!俺はお前しかいらないんだよ!けどそんな俺をお前は許さないだろ!?」
番に捨てられたΩは短命だ。俺が死んだら兄は自分を責め、蓮兄さんの事も恨む。共に居ることもなくなるだろう。
「テロってなんだよ!この家が駄目なら俺と陸が出ていくっ俺はβだ!お前を選んだ事を後悔させないでくれ!」

「「…………!」」
湯船から慌てて飛び出し脱衣場にてる。
ぶわりと蓮兄さんの誘淫フェロモンが襲ってきた。胎がずくりと疼く。
京極にされると思ってたんだけどな……。
蓮兄さんが兄さんの首を噛んでいた。痛そうに呻いている兄さん。蓮兄さんと長いのにαの本能を分かってない。
ああ…。胎が疼く。俺から甘ったるい気持ち悪いニオイがしてくる。
蓮兄さんが更に力を入れようとしているのが分かった。まずい。
番に拒絶されたαは、本能的に番の項に噛みつく、聞き分けの悪い番をしつけるために。噛まれたΩはフェロモンを出して番を宥める。生理的な反応、生存本能がそうさせる。
けれど兄さんはβだ。フェロモンなんて出ない。理性があれば分かるものだが、近寄ろうとするだけで血まみれの歯をカチカチ鳴らして威嚇してくる。
食人鬼、αが一部のβに嫌悪感をもってそう言われるのはこのせいだ。
βと付き合ったαがおこしがちな事件。喧嘩して理性を失ったαが、βの項を噛みちぎるのだ。最愛が自分を求めるフェロモンを感じたくてひたすら噛む。噛みが足りないから最愛は自分を求めてくれないのだ。そうして、噛みちぎっていくのだ。肉食獣が獲物を仕留めるように、噛まれたまま亡くなるβもいる。
そろりと動く。
脱衣場の送風機の電源をいれる。
届いてくれよ……!

蓮兄さんがピクリと反応した。兄さんと俺を交互に見る。……安堵と落胆。やはり俺はもうだいぶΩになっている。
蓮兄さん、来て?
俺を番にして?
俺を喰って?
…ああ、吐き気がするくらい甘ったるいニオイだ…

蓮兄さんが立ち上がる。
……くる!
バンっと、蓮兄さんを背負い投げした。痛みに呻いている数秒の間に、シャツで後ろ手に縛る。足もだ。厳重に厳重に縛っておく。今、αの怪力を披露されると困る。
本当に番にされたら、目も当てられない事態になる。








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